フロアブル剤は、畔から直接散布することができ散布機が必要がありません。ここでは水稲除草剤のフロアブル剤の基礎知識から、おすすめの除草剤、効果的な散布方法についてわかりやすく説明します。
フロアブル剤とは
フロアブル剤とは、除草剤の成分を微粒子に粉砕して、水中に分散させた製剤で粘性がある液体です。
懸濁剤(けんだくざい)とも呼ばれ、水に溶けにくい成分を液状製剤として使いたい場合に使われています。希釈するときの粉立ちや散布時のドラフトが少なく、臭気が弱く引火性がないため安全性が高い剤型です。剤型は異なりますが、水和剤を粒状にした顆粒水和剤をドライフロアブルと呼ぶこともあります。
散布後一度沈殿した後に水に溶けだして広がります。ジャンボ剤と同様に、その後3日~4日ほどかけて、田んぼ全体に広がった後に、土に沈殿して、土壌表面に処理層をつくります。この処理層に雑草の芽が触れることで枯らす効果を発揮します。
水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。
水稲除草剤 おすすめのフロアブル剤
草笛フロアブル(初期剤)
有効成分 クミルロン27.4%、ペントキサゾン…8.2%
草笛フロアブルは、田植同時散布が可能で、2つの異なる除草成分を混合して、幅広い雑草を抑える効果があります。ノビエを始めとする一年生雑草はもちろん、マツバイ、ミズガヤツリ、クログワイなどの多年生雑草や抵抗性のアゼナ、アメリカアゼナ等の一年生の広葉雑草も有効です。中期剤や一発処理剤との体系処理することで、長期の除草効果を持続させる必要があります。ジャンボ剤もあります。
ヨシキタフロアブル(初期一発剤)
有効成分 イマゾスルフロン 1.7%、 ブロモブチド 16.3% 、ペントキサゾン 7.0%
ヨシキタフロアブルは、3つの有効成分配合でノビエだけでなくホタルイ、コナギ、アゼナなどのSU抵抗性雑草にも高い効果が期待できます。移植直後から散布できるため、田植同時散布も可能で効果が40日~50日続きます。オモダカ、クログワイ、コウクキャガラは発生期間が長いので、遅い発生のものは効果が劣るため、それらが発生する田んぼでは、後期剤の使用を体系的に使いましょう。フロアブル剤の他、錠剤、ジャンボ剤もあります。
イネキングフロアブル(初中期一発剤)
有効成分 ピラクロニル3.6%、ピラゾレート20.0%、ベンゾビシクロン4.0%
3成分3製剤をそろえた非SU系の一発除草剤で、ホタルイ、ヘラオモダカ、ミズガヤツリ、ウリカワなどの広い殺草スペクトラムを有し、SU剤抵抗性雑草にも高い効果を発揮します。畦畔からの侵入雑草にも高い効果を発揮します。水稲への薬害が少ないので、移植後1日から使用が可能です。ジャンボ剤・錠剤もあります
ゼータープラスフロアブル(初中期一発剤)
有効成分 フェンキノトリオン5.8%、プロピリスルフロン1.7%
フェンキノトリオン・プロピリスルフロン配合、2成分の一発処理除草剤で、高葉齢のノビエ(3.5葉期まで)をはじめSU(スルホニルウレア化合物)抵抗性雑草にも優れた効果を発揮します。
多年生難防除雑草のオモダカ、クログアイ、コウキヤガラに高い効果を発揮します。粒剤、ジャンボ剤、FG剤もあります。
フロアブル剤の使い方
フロアブル剤の使い方は、原液湛水散布又はまたは用水が豊富であれば、水口処理での流し込みも可能です。
原液湛水散布は、拡張性にすぐれているフロアブル剤は、散布機などが不要で、田んぼにアゼから直接散布することができます。沈殿しやすいのでボトルをよく振り、灌水状態の田んぼに、希釈せずにボトルから直接手振り散布します。幅30mまでの田んぼでは、水田に入らず、アゼを歩いて軽く散布するだけで田んぼ全体に広がります。
水口施用の場合は、まず田んぼはひたひたから深さ2㎝ほどにし、水と一緒に圃場の水口に全量流しこみます。流入水とともに水田全体に拡散していきます。湛水終了後(湛水深5~7cm)に必ず止水します。
フロアブル剤の欠点
便利で使いやすいフロアブル剤ですが、欠点もあります。それは水で広がる特性によるものです。
- 水面を移動するため、藻やワラなどのゴミがあると薬剤が拡散できず、効果が落ちます。
- フロアブル剤は3日~4日かけて広がりますので、水持ちの悪い場所では処理層ができる前に薬剤が逃亡してしまいます。
- 田んぼが均平ではない、棚田のような場所では、薬液が全体に均等に広がらないため薬害や、場所により効果が薄くなる場合もあります。
- 水口施用の場合、水口付近に雑草が生えたりする場合もあります。
効果的な散布のポイント
フロアブル剤の特徴と欠点を知ったところで、効果を最大限にする散布のポイントを説明します。これらのポイントを抑えることで、より効果的に雑草を防除することができます。
- 丁寧な耕起・代かきを行って、凸凹をなくし平坦な田んぼにすること
- 漏水防止のため、もぐらなどの小動物の穴や、あぜからの漏水を防ぐためあぜ塗りや、畦畔シートなどを活用してしっかり漏水防止する
- 水稲をしっかり植え付ける。代かき不足による浮き苗や浅植えは、稲に薬害が生じる可能性があります
- 水管理が重要です。土壌表面に処理層をつくることで除草効果を発揮します。水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わないこと。フロアブル剤は水深が浅いと薬害がおきたり、うまく移動できなかったりします。最低でも5~6㎝ほどの水深があるとよいでしょう。
- 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布するしてください
除草剤の体系処理とは
田んぼには毎年同じ時期に、同じ雑草が生えてきませんか。除草剤をつかっているのに、全然効果がないと思っている人には、事前にしっかり雑草の生える時期・種類を見極めて除草剤を体系的に使ってみることをおすすめします。
体系処理とは、当初から計画的に、効果のある除草剤を組み合わせて複数の除草剤を使うこと。除草剤は適期に散布しないと効果が半減します。そこで発生する雑草の適期に合わせた、効果のある除草剤を使うことで、省力化・コスト減にもつながります。
例えば、田植の頃に生えるのがヒエだけのような場合は、安価な初期剤を使い、5月下旬から6月にかけて大きくなるコナガイ、スズメノヒエ、マツガイが発芽してくるのでそのころに効果的な中期剤を散布する。初中期一発剤は、効果が長く効くので初期にあまり雑草が大きくならないなら、初中期一発剤を遅めに散布して、さらに効果がなくなる時期に中期剤を散布するなど。それぞれの地域に合った方法があります。
一発剤は便利で長く効果がでますが、田植直後には散布できないものもあります。初期剤や中期剤とうまく組み合わせて体系的に除草剤を散布しましょう。