田んぼや畦(畔)の土中、水中の雑草を放置すると、病害虫の温床になり、作物から養分を吸い取り、品質低下、病原菌の付着を招いてしまいます。このため、稲作には、除草、防草が非常に重要です。
しかし、畦(畔)にグリホサート系のラウンドアップやサンフーロンのような(茎葉)吸収移行型を使ってしまうと、根まで枯らしてしまって、畦(畔)を壊す原因になってしまいますし、何より、田んぼに非選択性の除草剤を使ってしまうと、肝心の稲に影響を与えてしまいます。
ここでは、そもそも除草剤とはどんな種類があるのか、そして特性を説明すると共に、稲作で使える除草剤はどんなものがあるのか、具体的に販売されている、おすすめの稲作に使える除草剤も合わせて、ご紹介します。
田んぼにはどんな害草が生えるのか
田んぼ、水田には様々な雑草が生え、中には害草となって、稲(イネ)に影響を与えるものも数多く存在しています。下記では、代表的な田んぼに生える害草の品種、特徴を解説していますので、是非ご一読ください。
水田除草剤は田んぼにいつ撒けばいいの?
水稲の除草剤は、「初期剤」「中期剤」「後期剤」「一発処理剤」に区分されます。それぞれの除草剤のラベルに使用時期が記載されているので、そちらをよく読み、お手持ちの除草剤がどれに該当するかを確認するようにしましょう。
また、水田で除草剤をうまく撒くためには、下記のような散布機が大活躍します。是非ご参考ください。
田んぼに使える おすすめ選択性除草剤 5選!!
液剤
バサグラン液剤・アクアチノール乳剤 (液剤)
ベンタゾンナトリウム塩・アイオキシニル
ナズナやハコベ、イヌタデ、アメリカセンダングサなどの一年生広葉雑草に 高い効果を示しますが、イネ科雑草およびヒユ類などには効果が劣るため、水稲・稲作の農家の方に使い勝手の良い除草剤です。
クリンチャーバスME液剤
シハロホップブチル3.0%/ベンタゾンナトリウム塩20.0%
クリンチャー バスの成分シハロホップブチルは、イネ科雑草の茎葉部から速やかに吸収され作用点へ移行、また、ベンタゾンは、広葉雑草の茎葉部・根部から吸収され作用点に達し、それぞれ効果を発揮するため、イネ科雑草、広葉雑草、両方に効き目があります。
逆にイネは代謝速度の違いから、高い安全性か確保されています。特に多年生雑草であるウリカワ、ホタルイ、ミズガヤツリ、クログワイによく効く除草剤です。
粒剤
かねつぐ 粒剤 (OATアグリオ(株))
シクロスルファムロン 0.40%/プレチラクロール 4.0%
水田一年生雑草及びマツバイ、ホタルイ(イヌホタルイ)、ウリカワ、ミズガヤツリ、オモダカ、ヒルムシロ、クログワイ、ノビエ、コナギ、イボクサに効果がある水田除草剤です。土壌処理剤なので、撒く時期の目安としては、雑草発生前の代かき時や苗の移植時(田植時)がベストで、その適期を失しないように出来るだけ早めに散布してください。
ハイカット (日産化学(株)) (粒剤)
シハロホップブチル1.8%/ジメタメトリン1.0%/ハロスルフロンメチル0.90%/ベンゾビシクロン2.0%
水田一年生雑草及び、マツバイ、ホタルイ(イヌホタルイ)、ウリカワ、ミズガヤツリ、ヒルムシロ、多年生広葉雑草に効果があり、ノビエ・SU抵抗性雑草も同時に防除できる水田除草剤です。
土壌処理剤のため、雑草の発生前から効果を発揮しますが、かねつぐよりも、既に除草する適期を逃し、生長してしまったクログワイ、シズイなども枯らすことができ、生育初期の除草剤で取りこぼしてしまった雑草の防除として後期にも使える除草剤です。
日産アクト粒剤 (日産化学(株))
ピラゾフルフロンエチル0.070%/メフェナセット3.5%
ピラゾスルフロンエチルは、一発除草剤と呼ばれるスルホニルウレア系化合物(SU)系の除草剤、通称SU一発処理剤の一つです。日本で使用されているSU一発処理剤の成分は、他にベンスルフロンメチル、、イマゾスルフロン、シクロスルファムロン、エトキシスルフロン、アジムスルフロンなどがあります。
田植え後5日後を目安に、水田に撒くだけで、幅広い効果を発揮し、ノビエ、クサネム、アゼナ、カヤツリグサをはじめ、水田一年生雑草及び主要な多年生雑草に優れた効果を発揮し、更にアオミドロや表層はく離にも防止の効果が期待できます。
このような幅広い効果を有するSU一発処理剤ですが、近年、SU系の有効成分であるスルホニルウレア系化合物に抵抗性を持つ雑草、所謂SU抵抗性雑草が出現しています。
SU一発処理剤を連続して使用しているのに、特定の雑草だけが増えている場合などは、SU抵抗性雑草であると疑ったほうがいいでしょう。このような場合は、トラクタやコンバインなどの農業機械にSU抵抗性雑草の種子が付着して周囲に拡がる防ぐため、SU抵抗性雑草が発生した水田での作業は最後に行い、流水経路から拡散しないことに気を使って、丁寧に洗浄してください。
そして、その該当雑草にピンポイントで効く成分を有する除草剤を使用して、適切に除草するようにしてください。
その他、土壌処理剤のカソロンも有効です。
散布にあたっての注意点
水田除草剤は、水を介して土壌表面に処理層を作ります。このため、処理層がしっかりと作られるまでは、水田の水深をきちんと保つ必要があリます。
散布に当っては、圃場の水田の水の出入りを止めて、湛水状態のまま田面に均一に散布し、少なくとも3~4日間は通常の湛水状態(水深3~5cm)を保って、散布後7日間は落水、かけ流しはしないよう注意してください。
除草剤を使わない除草方法 除草機
WEED MAN 水田除草機 | 株式会社オーレック OREC CO.,LTD. 草刈機・管理機・耕うん機・運搬車の製造販売
また、昨今では、有機栽培・自然栽培での水稲栽培で、除草剤を出来るだけ使わずに、田んぼの防草、除草を行いたいという農家のニーズがあります。
これに応えるのが、WEEDMAN という業界初の水稲用除草機です。
水稲栽培での機械による除草は、水稲にダメージを与えないで行うことが難しかったのですが、WEEDMANは、雑草と稲の、根を張る深さの違いに着目し、稲の根は傷つけず雑草根のみを掻き取る新たな除草機構を搭載しており、この課題をクリアした初の除草機になります。
まとめ
水稲栽培における作業で大きな部分を占める、除草作業。しっかり除草できると、害虫の発生を防ぐことになり、殺虫剤などの農薬の使用も大幅に減らせることができ、非常に大きな効能があります。
除草剤や除草機を適期に上手く利用することで、毎年の除草活動の効率化を図りましょう。
メジャーな水田雑草と防除方法
(補足)除草剤の種類
除草剤の種類① 発芽抑制する「土壌処理剤」か、茎葉処理する「茎葉処理剤」か
「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」 特徴と見分け方
まず、除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。
しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、草刈りした後での散布が必要になってきます。
「茎葉処理剤」は、散布された薬剤に接触した部分の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。
実際に除草剤を手にとっても、明確に「土壌処理剤」なのか「茎葉処理剤」なのかわからないケースがありますが、そんな時は、「土壌散布」と書かれているものは、「土壌処理剤」、「茎葉散布」と書かれているものは「茎葉処理剤」と判定してもらって間違いありません。
「土壌処理剤」と「茎葉処理剤」 使う時期は違うの?
「土壌処理剤」を使用する時期は、雑草が発生する前や、まだ生え揃っていない耕耘後、または播種(定植)前後になります。既に大きくなってしまった雑草や、塊根、塊茎から出ている雑草を枯らすことは期待できません。
対して、「茎葉処理剤」は、雑草が発生して育っている時期に使用します。葉や茎にしっかりかかると効果が出るため、あまりにも雑草が繁茂していると、全てにしっかり除草剤がかからず、残ってしまうこともあります。このため、どちらしても、雑草が茂る前に対策することが重要です。それぞれ使用する時期が異なるので、上手く使い分けることが重要です。
除草剤の種類② 非選択性か選択性か
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。
除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。
稲作自体に使用する除草剤は、稲を枯らさないようにして、他の雑草のみを枯らせる必要があるので、選択性除草剤を選んでください。
除草剤の種類③ 農耕地用か、非農耕地用か
除草剤は農薬に該当し、農薬取締法に基づき国に農薬登録をされています。その中でも、農耕地に使用できるものと、使用できないもの(非農耕地用)があります。農耕地に使用できるものは、薬効、薬害・残留性、動植物への毒性・影響を調査し、農林水産省の登録がなされたものに限定されます。
農林水産省の登録がない除草剤を農耕地で使用した場合、「農薬取締法」違反となり、罰則の対象となるので、注意しましょう。
本ページで紹介している除草剤は、全て農薬登録なされたものなのでご安心ください。
具体的には、農薬取締法に基づき国に農薬登録をされている除草剤(農薬として登録された除草剤のパッケージには[農林水産省登録第○○号]と表記されています)しか、畑や田んぼ、菜園、植物を植えた庭などの所謂「農耕地」に散布することはできません。
下記に詳しく書いているので、興味ある方は読んでみてください。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、希釈した除草剤20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。また、展着剤を使って効果を上げる方法もあります。
除草剤の種類一覧については、下記に詳しく説明しています。
また、芝生でスギナ、ツユクサなど芝生に生える雑草使いたい場合、クログワイやコナギなど水田に生える雑草で使いたい場合、また畑地で使いたい場合は、下記に選択制除草剤を詳しく説明しています。
また、除草のための農機具、農具、草刈機(刈払機)、資材については、こちらをご参考ください。
除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのか、まとめたのは下記になります。
雑草の様々な防除、駆除方法は下の記事がおすすめです。
また、特に防草シート(除草シート)での防除に興味ある方は下の記事をご参考ください。
除草剤の安全性について
除草剤については、様々なイメージ、情報が飛び交っています。下記では、そもそも除草剤は安全なのか、また除草剤を使用するときに気を付けたいポイント、また個別の除草剤の安全性について徹底解説しています。