ぶどう(葡萄)の苗は最近はホームセンターなどで手軽に手に入るようになり、家庭菜園としても人気が高まっています。庭植えだけでなく鉢植えでも収穫することができるぶどうですが、おいしく育てるには肥料が大切です。
この記事では、ぶどうに有機肥料を使う場合のおすすめの使い方や有機肥料の基本をわかりやすく説明します。
有機肥料(有機質肥料)とは
有機肥料(有機質肥料)とは、動植物由来(油粕や米ぬかなど植物性の有機物、鶏糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物)の原料を使って作られている肥料を指します。表示された成分以外にも生育に必要な成分(動植物由来のアミノ酸など)が含まれていることもあります。
有機肥料は、有機物を土壌微生物が分解することで、植物が吸収できる養分に変化します。そのため、肥料の効き始めがやや遅く、肥効が長く続きやすい肥料が多いです(緩効性肥料、遅効性肥料)。
ぶどうに有機肥料はつかえるのか
そもそも、ぶどうに有機肥料は使えるのでしょうか。答えはYESです。ぶどうには有機肥料の油粕、鶏糞、米ぬかなどを使うことができます。また土壌改良材としては牛ふんがよく使われます。
有機肥料は、元肥として使いましょう。植えつけの時期や、10月~11月に行う元肥(基肥)として土壌改良と同時に使うとよいでしょう。
ぶどうは元々はやせ地でも育つので、庭植えの場合は土がよくなればお礼肥は与えなくとも元肥(基肥)だけ育てることも可能です。
土壌と肥料について
おいしいぶどうを作るには、土づくりが大切です。よい土に有機肥料を与えることでおいしいぶどうを栽培することができます。水はけと通気性がよく水持ちのよい土がよいぶどうをつくるには必須です。そのためには、堆肥を土に入れてよく耕して土を団粒構造にします。
堆肥とは、鳥や豚・牛などの家畜のふんや、わらや落ち葉などの有機物を堆積して発酵させたもので、腐葉土も堆肥です。堆肥で土づくりをしっかり行い、さらに元肥を施し足りない肥料分を補います。
家畜糞類の鶏糞・牛糞や豚糞は比較されることが多いです。成分の特徴として、鶏糞では全ての成分が、牛糞ではK(加里)が、豚糞ではP(リン酸)が、多く含まれています。家畜糞類は、特殊肥料のため成分含有量に幅がありますが、かつて農林水産省が実施した調査では以下の値が示されています。
肥料分の多い鶏糞ですが、土壌改良効果は牛糞などにくらべ劣ります。肥料成分の少ない牛糞は土壌改良として、鶏糞は化成肥料の代わりの肥料として使われることが多く、豚糞は牛糞と鶏糞の中間の性質をもっています。
N(窒素)% | P(リン酸)% | K(加里)% | |
---|---|---|---|
牛糞 | 1.9 | 1.2 | 3.5 |
豚糞 | 1.8 | 1.7 | 0.7 |
鶏糞 | 3.0 | 5.0 | 2.4 |
ぶどうにおすすめの有機肥料
一般的な有機肥料のほか、ぶどう専用肥料や、果樹用に配合された肥料などは初心者の人にも使いやすい肥料です。
油かす(油粕)
油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。
鶏糞
鶏糞は、ニワトリの糞を乾燥させた粒状の有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)、リン酸、カリの各成分が豊富に含まれています。特に、植物の実や花に栄養を与えたい時に使われるリン酸が豊富です。
米ぬか
米ぬかは、精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用するものです。リン酸が多く含まれている、緩効性のリン酸肥料です。糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
牛ふん
牛の糞を原料に生産した肥料を「牛糞肥料」あるいは「牛糞堆肥」とよびます。カリウムを主な成分として含有しており、リン酸や窒素も多少含んでいます。多くの場合、牛糞肥料(堆肥)には、稲わらに由来する繊維質が含まれています。そのため、土壌改良効果が期待できます。バーク堆肥や腐葉土などの植物性堆肥も併せてつかうとより効果が高まります。
なお、牛糞肥料(堆肥)と石灰資材を同時に施用することは、避けましょう。一般に、石灰資材は土壌の酸度調整のために用いられますが、そこに含まれるカルシウム成分が化学反応してしまうことを防ぐため同時に施用することは避けるようにします。
ぶどうがおいしくなる肥料
つる性の植物用につくられたぶどう専用肥料の有機肥料です。カニガラ・魚かすなどの有機物にマグネシウム・アミノ酸が配合されています。
花ごごろの果樹・花木の肥料
園芸用土や肥料など農業資材を取り扱う会社、花ごごろが販売する「果樹・花木の肥料」です。油かす・米ぬかなどの有機物を含み、リン酸成分が多いので、果実のつきがよくなります。ホームセンターなど手軽に購入できます。
ぶどうの肥料時期の与え方
ぶどうを育てるためには、肥料の与え方や種類も大切です。
ぶどうは肥料を与えすぎると、枝・葉・根などの果実は関係のない樹勢が良くなります。植物にとって果実をつくることは、タネを作って子孫を残すことです。木が弱ると子孫を残そうと植物はタネを作ることに力を注ぎます。よってぶどうは樹勢を抑えることでおいしい果実を実らせることができます。
庭植えの場合は、11月に元肥(基肥)として堆肥などの有機物や有機肥料を使い、収穫がおわったあとお礼肥として化成肥料を与えます。ぶどうは元肥が重要で土壌が良い場合にはお礼肥が不要な場合もあります。
鉢植えは、植え替えのときに元肥として、緩効性肥料を与え、その後は生長期の6月~9月に木の様子をみて元気がないようなら化成肥料を追肥をします。必ず施肥しなくてはいけないわけではありませんので、樹体をよく観察して判断をするようにしましょう。