トマト、ミニトマトが大好きで、そのほかアスパラガスなど様々な農作物を食害するオオタバコガ。ここではオオタバコガとはどういう虫なのか、その生態と、オオタバコガを駆除、防除するための農薬、またその他の効果的な方法、対策についても解説します。
そもそも、オオタバコガはどういう害虫?
オオタバコガとは?
オオタバコガはチョウ目ヤガ科の昆虫で、日本では全国で見られます。もともとタバコを食害するタバコガに似ていることから、オオタバコガという名がついたと言われています。
幼虫は緑色、または褐色で、写真のように黒色の縦線があります。老齢幼虫の体長は4センチもの大きさになります。年間3世代ふ化、羽化し、9月に発生する世代は幼虫が短日下で育ち休眠蛹となり土中で越冬します。
ヨトウガ類などと違って、卵を1個ずつ産むのが特徴です。直径0.4mm程度の大きさで淡黄色をしています。(写真参照)一晩に1頭の雌が200〜300卵も産み付けるケースもあり、1匹ハウス施設に入っただけで多発し、大量被害を出すこともあります。
オオタバコガはタバコガの成虫と似ていますが、羽の模様が異なり、タバコガは、前羽の外側にある黒い縦線模様がギザギザとしているのが特徴で、オオタバコガは縦線が不明確になっています。
どうしてオオタバコガは害虫なのか?
オオタバコガは多くの植物を食べる広食性の害虫です。野菜では、トマト、ミニトマトは大好物、その他ナス、キュウリ、ピーマン、レタス、アスパラバス、イチゴ、キャベツ、ウリ類など、また花きではキク、バラ、カーネーション、トルコギキョウなど、非常に多くの種類の内部に潜り込んでいき食害されます。食害する部分も、成熟した果実だけでなく、苗、蕾、結球部、果実、茎と何でも食入ります。
上記は食害されたトマトです。また、下記のように茎内に侵入し、農作物をダメにしてしまうケースもあります。
オオタバコガを防除する際のポイント
オオタバコガは代表的な害虫のため、下記のように、シンジェンタジャパンや住友化学園芸などのメーカーから多くの適用農薬が販売されています。下記の農薬(殺虫剤)は、基本的に成虫、卵の状態に散布しても駆除することはできません。
果実の内部にいる幼虫には農薬を散布できないので、殺虫剤の効果を出すのは難しい害虫です。このため、成虫をハウス内に入れないようにする、捕殺するなど、科学的防除だけでなく、物理的防除も合わせた、IPM(総合的害虫管理)が大事になってきます。
オオタバコガに効く代表的な農薬
有機リン系
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオン、マラソンがあります。
ネオニコチノイド系 モスピランなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。ネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
オオタバコガに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、オオタバコガに効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、還元澱粉糖化物やネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしており、チャドクガに適用があります。
殺虫剤はヨトウムシだけでなく、カメムシ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ、コガネムシ、キスジノミハムシ、ネキリムシ、ヨトウムシ、ハスモンヨトウ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、チャドクガ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシ、ウリハムシ、アオムシ、ゾウムシ、ハバチ、グンバイムシ、モモハモグリガ、ハモグリガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
生物農薬(生物的防除)
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
オオタバコガの天敵はスズメバチ、鳥類などになってくるため、市販されている生物農薬はありませんが、他の害虫に適用する生物農薬は多くあります。
生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご興味ある方はご参考ください。
物理的防除
オオタバコガの物理的、耕種的防除方法は、昔から様々な方法が存在します。これ一つで完全に防除できる、といった方法はありません。下記情報を参考に、是非、様々な方法を複数試してみてください。
4mm以下の防虫ネットを張る
4mm以下の防虫ネットで作物、施設の開口部を防げば、飛来するオオタバコガの侵入を防ぐことができます。
電撃殺虫機を設置する
オオタバコガの成虫は蛾の一種で、夜の蛍光灯のような外灯に集まる習性があります。このため、灯りで感電死させる電撃殺虫機は、有効な防除方法です。(成虫を駆除できると産卵を防ぐことが出来、防除になります)
耕種的防除
オオタバコガの物理的、耕種的防除方法は、昔から様々な方法が存在します。これ一つで完全に防除できる、といった方法はありません。下記情報を参考に、是非、様々な方法を複数試してみてください。
フェロモントラップを設置する
フェロモンルアーと呼ばれる蓋があるバケツのようなトラップの容器にフェロモン剤を設置することで、蛾の成虫を誘引・捕殺することができます。畑の周りに設置すると、オオタバコガの成虫を捕殺できます。
フェロモン剤を使う
フェロモン剤とは、圃場を偽の雌性フェロモンで満たす薬剤で、交信かく乱効果があり、害虫の交尾を抑制、阻害し、交尾が減るのでどんどん害虫が減る、という仕組みです。
オオタバコガをはじめ、様々な種類の害虫に効くフェロモン剤が販売されています。
しっかり除草する
圃場の周りに、雑草があると、オオタバコガの発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけこまめに除草するのが、害虫被害を少なくするのに極めて重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
まとめ
トマト、ミニトマトは大好物、その他ナス、キュウリ、ピーマン、レタス、アスパラバス、イチゴ、オクラ、ウリ類など、また花きではキク、バラ、カーネーション、トルコギキョウなど、非常に多くの種類が加害され、生育、品質、収量減に影響を及ぼします。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
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