軟腐病(なんぷ病)は、土壌中の病原菌から感染し、非常に幅広い野菜を軟化腐敗させてしまう病気です。
ここでは、軟腐病を予防、治療するためにはどのような農薬を使えばいいのか、その他、効果的な防除法について詳しく解説してきます。
軟腐病とはどんな病気?
軟腐病とは?
軟腐病の病原菌はカビではなく細菌の一種で、病原菌名は「Pectobacterium carotovorum」と命名されています。通常は結球してから発生します。はじめは結球部の軟らかい葉に(水浸状の)小斑点ができ,これがやがて急速に広がっていきます。その後、全体が褐色(飴色)に軟化腐敗してどろどろになり,悪臭を発するようになります。
発育適温は30℃前後,50℃以上で10分経過すると死滅します。イネ科,マメ科以外のほとんどの植物に寄生します。大根(ダイコン)や白菜(ハクサイ)、キャベツ、カリフラワー、レタス、ショウガ、セルリー、パセリ、ネギ、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、トマト、ピーマン、チンゲンサイ、小松菜(コマツナ)、ニラ、カブ、ニンニク等が軟腐病にかかる野菜で有名です。
軟腐病の病原細菌は寄生される植物の根の周辺に生存します。降雨などによるはね返りで土とともに葉上に運ばれ,植物の傷口、害虫の食害痕などから侵入します。発育適温は30℃前後なので、高温期結球のものに多く発生が見られます。具体的には、降雨の多い夏,秋の年に発生が多くなる傾向があります。
軟腐病の症状
軟腐病は、幼苗期に発病すると植物の地際が変色し、葉は黄化して萎凋し、最悪、枯死します。植物の生育が進むと葉が軟化し垂れ下がってきます。
症状が進むと、根の部分が空洞化したり、植物が軟化腐敗し、腐敗した植物は悪臭を放つようになり、収穫量に影響が出ます。ひどい悪臭を放つ点が軟腐病の特徴と言えるでしょう。
(この写真のように、どろっとした感じで腐り、凄まじい悪臭がするのが軟腐病の特徴です)
軟腐病はネギ農家にとっては大変大きな病害で、多発してしまうと、下の写真のような状況になり、収量に大打撃を与えてしまいます。
軟腐病に効果がある農薬
軟腐病は植物に侵入してしまうと、それを治療、防除するのは大変困難なのでそうなる前に予防することが非常に大事になってきます。
軟腐病の科学的防除には、土壌消毒を行うのがおすすめです。また、害虫の食害痕から感染増加するので、食害する害虫の防除は間接的に軟腐病の防除になります。主な害虫の防除については下記を参考にしてください。
アグリマイシン(オキシテトラサイクリン・ストレプトマイシン水和剤)
アグリマイシンは細菌病に優れた効き目があり、作用の異なる2種類(ストレプトマイシンとオキシテトラサイクリン)を配合しているため、広範囲のグラム陰性菌や陽性菌に対して殺菌効果があります。また浸透移行性があるため、薬剤付着以外でも効果が発揮されます。また効果の持続性もあり耐雨性も高い薬剤です。
銅性剤(ハイカッパー、Zボルドウ、コサイドボルドー、キノンドー、オキシボルドー、デランK等)と交互に使うとさらに耐性がつきにくくなります。
オリゼメート粒剤(プロベナゾール粒剤)
世界初の植物防御機構活性化剤(Plant Defence Activator)で、病原菌への直接作用によるものではなく,植物のもつ各種病害抵抗性反応を誘導することによって効果を発揮します。有効成分は根から速やかに吸収されて体内に浸透移行するため、少数回の施用で長期間にわたり安定した効果を得ることができます。
有効成分のプロベナゾールは、作物の抵抗性誘導によって発揮されるため、細菌発生前の散布がより効果的です。初期防除を心がけましょう。
カスミンボルドー、カッパーシン(カスガマイシン・銅水和剤)
有効成分の銅剤(ドイツボルドーA)は古くから幅広い野菜や果樹の病害防除に効果を発揮する汎用性殺菌剤に、細菌性病害に高い効果を発揮しするカスミンを配合しているので、幅広い病害に効果を発揮します。
この他、スターナ水和剤(オキソリニック酸)、バリダシン(バリダマイシン液剤)、ジーファイン、コサイドなどがあります。
薬害等を出さないように製品ラベルをよく読んで使用しましょう。上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤、乳剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
化学的防除以外の防除方法
土壌を乾きやすくする
軟腐病は多湿高温の状態で発生しやすいため、土壌を乾きやすくし、湿度を下げるのは効果的です。
畝(うね)を高くしたり、株間を広くとって通風をよくしたり、散水はなるべく朝行うなど、多湿環境を避けることで発生を減少させることができます。
苦土石灰を水で薄めて散布する
苦土石灰をビニール袋に入れて水で溶き(目安としては1000倍の濃度(10Lに対し苦土石灰10g))、農作物の株元にしっかり石灰水を流し込むと、軟腐病の防除に効くとして実行されている農家の方がいらっしゃいます。過リン酸石灰(過石)を水に溶かして散布して、軟腐病の発生を減少させている農家の方もいらっしゃいます。
病気予防と追肥目的で、上記の苦土石灰の上澄み液を3~4回散布し、さらに軟腐病を発病した株には消石灰の粉をかけることで、軟腐病の発生初期からの進行を止めることができると、白菜と里芋栽培を行っている方もいらっしゃいます。
周りをしっかり除草する
圃場の周りに雑草が多くあるとその雑草に病害虫が発生し、繁殖、促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけ除草しておくことが、間接的にも軟腐病の被害を少なくするのに重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。(この他、イネ科雑草、広葉雑草、多年生やその他の厄介な雑草(スギナやヤブガラシ、スズメノカタビラなど))は個別の対策、防除記事もあります。
まとめ
軟腐病は幅広い品種の作物に発生し伝染、まん延します。発生してからの防除が困難な厄介な病気で、多く発生すると収穫時の収量に多大な影響がでます。
夏から秋にかけて多雨な年は多発しやすいので、早めの薬剤の散布等、予防措置を取るようにしましょう。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
発生してからの圃場の回復は非常に難しいので、予防でしっかり防除することを心がけましょう。
若い葉や茎の表面にうどん粉をまぶしたように白いかびが生えるうどんこ病の防除は下記を参考にしてみてください。市販のベニカ、ベニカスプレーなども使えます。
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