ナメコ(滑子、なめこ)は、英名でNameko Mushroomと呼ばれます。その名前からも分かる通り、ナメコを一つの種類としてしっかりと区別しているのは日本独特かもしれません。
なめこは主に日本、台湾などに分布し、日本では食用に栽培されています。味噌汁やそばの具、おひたし、炒めものなど様々な料理に使われます。傘の開ききっていない小さななめこは表面がぬめりでツルツルしており喉越しを楽しむことができ、傘の開いた大きなものは香りと歯ごたえを楽しむことができます。きのこ類の中では、シイタケやシメジ、マイタケなどと並んで人気の作物です。
なめこはプロ農家だけではなく、ガーデニング・家庭菜園として楽しむこともできます。最近では、栽培キットが充実していて手軽に始められるものから、少し本格的な原木栽培を楽しめるものまでさまざまあります。
この記事では、なめこの基礎知識から今人気のなめこ栽培キットの解説まで、ご家庭で始めるための情報をまとめていますので、なめこ栽培に興味のある方はぜひご覧ください。本格的な原木栽培、菌床栽培について知りたい方は、下の記事をご覧ください。
なめこ栽培キットは、ふるさと納税でも手に入れることができます!
なめこの基礎知識
作物名 | 科目 | 原産地 | 育てやすさ | 種の価格 (円/1粒) | 苗の価格 (円/1苗) | 収穫までの日数 (目安) | 栽培できる地域 | 作型 | 栽培方法 | 土壌酸度 (pH) | 連作障害 | 発生適温 | 生育適温 | 日当たり | 光飽和点 |
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ナメコ | モエギタケ科 | 日本 ヒマラヤ | ★★☆☆☆ | – | – | 種駒打ち込み後、2年から3年(原木栽培の場合) | 全国 | 秋どり (品種によって収穫時期は前後) | 原木栽培 菌床栽培 (おがくず) | – | – | 5℃〜15℃(品種による) | 12℃〜17℃(品種による) | 日かげ | – |
ナメコは、ハラタケ目モエギタケ科のきのこです。日本で発見された当初、学名にも日本語の「なめこ」が使用されていましたが、近年ではヒマラヤ原産のきのこと同一種と結論付けられて、学名から「なめこ」が消えてしまいました。
日本においてなめこは、まいたけ、エリンギなどに次ぐ生産量を誇っています。ちなみに生産量が多い順にえのき、しめじ、しいたけ、まいたけ、エリンギ、なめことなっています(出典 きのこ類、木材需給の動向:農林水産省)。
日本におけるなめこ栽培は、風通しが良く湿度が高い場所を選んでホダ場(圃場)を作ります。原木栽培では、直射日光に当たり過ぎず比較的明るい、水はけの良い林内で栽培されます。ナメコを発生させる際に、浸水後ビニールハウスに移して湿度を高い状態に保つなど人工的に環境を作り上げることもあります。
また、なめこは菌床栽培も可能なきのこです。落葉樹のオガクズやフスマ、米ぬかなどを固めた栽培ブロック(菌床)で栽培します。菌床栽培においては、温度、湿度が管理された室内で栽培されることが多く、このような栽培方法が確立されたことで安定的な周年栽培が可能となりました。
大規模・周年でなめこ栽培を行っているプロ農家は菌床栽培を行っていることが多く、スーパーで並んでいるなめこも菌床栽培が多いと思われます。菌床栽培だから良い、原木栽培だから美味いという話ではなく、それぞれに栽培、営農に関する一長一短があります。
なめこ栽培のポイント
- 「原木栽培」と「菌床栽培」があります。
- 原木栽培の場合、種駒(菌がついた駒)を原木となる木に打ち付ける、もしくはオガ菌(オガコ菌・オガクズ菌)を植え付けて栽培を始めます。接種後、最低2年(夏を2シーズン)越したあと本格的に収穫できるようになります。
- 菌床栽培の場合、ものによりますが水と空気(酸素)に触れることによって発生(植物で言う発芽)が促され、比較的短期間で収穫が可能です。
- なめこの生育に適した環境は「暑すぎず、寒すぎない」ところです。なめこの発生(発芽)は、約16℃以下になってくると始まり、5℃以下になってくると終わります。
- 直射日光も大敵です。原木栽培の場合はスペースの都合から、外にて栽培せざるを得ないかもしれませんが、直射日光に当たらないように工夫してやります。例えば、森林の林内に原木を設置したり、原木の上に遮光できる資材を掛けてあげたりします。
- 発生、生育ともに全く光が要らないわけではありません。直射日光は避けたほうが良いですが、木漏れ日くらいの光には当たるようにしてあげると良いでしょう。
- 原木栽培の場合は、発生後5年程度、同一の榾木(ほたぎ、菌床を打ち付けた原木)で収穫が可能と言われています。しかし、榾木の状況によってはさらに長く(もしくは短く)栽培をすることができます。
- 菌床栽培の場合は、菌床に菌が残っているうちは収穫ができます。3ヶ月〜半年程度のサイクルで菌床を交換していきます。一つの菌床で2〜3回程度、収穫することが可能ですが、シイタケなどと比較すると発生させる難易度が高いです。
原木栽培と菌床栽培
なめこ栽培の方法は、「原木栽培」と「菌床栽培」の2つに分けることができます。
なめこの原木栽培
原木栽培とは、天然の木(原木)を用いて、きのこを栽培する方法です。伐採し枯れた丸太に種駒と呼ばれる種菌を打ち付ける、もしくはオガ菌(オガコ菌・オガクズ菌)を植え付けて栽培をします。接種されて活着した原木は「榾木(ほたぎ)」と呼ばれ、榾木を集めて圃場のように管理している場所を「ホダ場」と呼びます。野菜で言うところの農場ですね。
原木栽培の中でも原木の加工状態によって、いくつかの種類に分類することができます。
- 切り倒した切り株を使う「伐根栽培」
- 切り倒した幹の枝を切り払い使う「長木栽培」
- 100cm程度に切断した木を使う「普通原木栽培」
- 15~20cm程度に切断した木を使う「短木栽培」と、短木を加熱殺菌した「殺菌原木栽培」
原木に使用できる木は落葉広葉樹がよく使われます。針葉樹やイチョウなどでもキノコは発生しますが、広葉樹の場合と比べて発生量(収穫量)が少なくなります。また、「使用する樹種や樹齢となめこの品種には相性がある」と言われています。
適している度合い | 一般的な樹種 |
---|---|
★★★ | カエデ、クルミ、サクラ類、シデ類、トチノキ、ブナ |
☆★★ | アオギリ、アサダ、エゴノキ、エノキ、オヒョウ、カシ類、カシワ、カバノキ、クワ類、ケヤキ、ケンポナシ、コナラ、シイ類、ドロノキ、ヌルデ、ネムノキ、ハリギリ、ハルニレ、ハンノキ、ホオノキ、ミズナラ、ムクノキ、モミ、ヤシャブシ、ヤダモチ、ヤナギ類、ヤマナラシ |
☆☆★ | アベマキ、カキ、カラマツ、クリ、ポプラ、ミズキ、リンゴ |
もちろん、エリンギやきくらげ、しいたけなど、他のきのこ類についても同様で適した樹種がありますのでしっかりと調査しましょう。
原木栽培の場合は環境によりますが、接種から収穫まで2年以上かかります。また、収穫期が気温が下がる秋のみ(冬でも気温が氷点下まで下がらないところは秋〜春頃まで)となるため、生で出荷できる期間が限られます。原木栽培のなめこが貴重と言われる所以はここにあります。
原木栽培については、下の記事で詳しくまとめておりますので参考にしてください。
なめこの菌床栽培
菌床栽培とは、おがくずなどの木質材にキノコ栽培用の総合栄養剤、米ぬか、フスマなど栄養体を混ぜて固めた人工培地(菌床)を使って、きのこを栽培する方法です。通常は、湿度が高く保たれた薄暗い室内で栽培されます。室内に棚を設置し、そこにビッシリと菌床を置いて栽培します。なめこの菌床栽培においては湿度が重要となってきますので、菌床の上部を赤玉土などの水分を保持できる土で覆ったりもします。
実は、いつの季節も食卓に生なめこが並ぶようになったのは、菌床栽培が確立されたおかげと言っても過言ではありません。
菌床栽培の場合は、種菌付けから収穫までの時間が原木栽培よりも短く、10〜20週程度で収穫することが可能です。また、原木栽培よりも栽培にかかる期間が短いため、年間4〜8回転程度できます。営農など本格的な菌床栽培では、3ヶ月〜半年程度のサイクルで菌床を交換していきます。
上記のように、条件さえ整っていれば一年を通してなめこを栽培できるようになったため、安定的に供給できるようになりました。
最近では、なめこ栽培キットが販売されていて菌床と赤玉土がセットになっており、ご家庭でもすぐにナメコ栽培を楽しめるようになりました。
菌床栽培については、下の記事で詳しくまとめておりますので参考にしてください。
なめこ栽培キット どのようなものがあるの?
なめこの栽培キットには主に下記の2種類があります。
- 原木栽培をベースにしたキット
- 菌床栽培をベースにしたキット
それぞれ、生育の環境や育て方、難易度が異なります。違いをまとめましたので、栽培キットを購入するときに参考にしてください。
定性的な評価のため、編集部の主観となりますm(_ _)m
なめこ栽培キットの種類 | 原木栽培をベースにしたキット | 菌床栽培をベースにしたキット |
---|---|---|
難易度 | ★★★★★ | ☆☆★★★ |
栽培の面白さ | ★★★★★ | ☆★★★★ |
初収穫までの期間 | 2年以上(早いもので1年目から本格的に発生・発芽できるものもあります) | 2週間程度 |
収穫回数 | 品種・榾木の状況によるが初めての発生(発芽)から5年間程度の秋シーズン | 初めての発生(発芽)から2〜3回程度 |
原木栽培のキットは、種駒(木片にきのこの菌糸を培養したもの)が打ち込まれた状態で販売されています。本来、原木栽培では原木を用意して種駒を打ち込むところから始めますが、栽培キットの場合はその作業を省略することができます。また、原木栽培は品種によっては、収穫まで夏を2回越さないと本格的な発生を期待できなかったりしますが、原木栽培のキットの中には届いて一年目から発生させることができるものもあります。
菌床栽培のキットは、菌床にナメコ菌が培養、熟成された状態で販売されています。菌床栽培はおがくずなどを撹拌して固めたブロックに種菌(きのこの菌糸)を接種して培養する必要がありますが、栽培キットの場合はその必要がありません。届き次第すぐに栽培を始められるため、とても手軽になめこ栽培を体験することができます。また、原木栽培と比較して発生(発芽)をさせやすく、室内でも管理できるため人気があります。
初めての方、失敗したくない方には菌床栽培、少し本格的な栽培をしてみたい方には原木栽培がおすすめです。
ちなみに栽培キットには、シイタケやなめこ、エリンギ、シメジ、ヒラタケなどもたくさんの種類があります!好きなキノコを選んで栽培するのも楽しいですよ!
なめこ栽培キットにはもう一つ面白いものがあります。それは「スマホアプリ」です!株式会社ビーワークス(Beeworks/BEEWORKS GAMES)が開発し、株式会社サクセス(SUCCESS)によって配信されている「なめこ栽培キット」シリーズのアプリが人気です!
「んふんふ」と鳴く(?)なめこたちを収穫できます。私もハマってずっと栽培・収穫を繰り返していました(笑)
なめこ栽培キット 栽培のやり方は?
なめこ栽培キットの栽培方法は、各キットによって異なります。特に、原木栽培と菌床栽培では全く栽培方法が違いますので注意しましょう。基本的には、栽培キットに栽培の手引が記載された資料が入っていると思いますので、それを見ながらやれば間違いないと思います。
下記に、それぞれのキットの基本的な栽培の流れを記載しますので一つの参考にしてください(詳しい方法はキットによって異なりますので、必ず栽培方法の手順書をお読みください)。
原木栽培のキット
- 栽培キットが届く前栽培場所の選択と栽培準備
キットが届いたら、まずは栽培する場所を選びましょう。直射日光が当たらず雨に当たる場所がよいでしょう。具体的には、下記のような場所で育てることができます。
- 木の陰、木漏れ日が当たるくらいの場所
- 日が入り、通気性のよい室内(ガレージや物置でも扉を開けておくことで育てることも可能です)
栽培準備に必要なものは、以下のとおりです。
- 栽培キット(短木、長木などの榾木)
- スコップ(地面に穴を掘る)
- 日除け資材(遮光ネット・シェード・不織布など)
また、短木(約15cm〜30cm程度で切断された原木)の栽培セットであればプランターを使用して育てることもできます。プランターで育てる場合は、高さ30cm以上ある深めのプランターと赤玉土を用意しましょう。
- 栽培キットが届いたらすぐ仮伏せ
枕木を置いて、その上に栽培キットの原木を置き遮光ネットなどを上からかけて放置します(この作業は仮伏せ・本伏せと呼ばれます)。このようにすることで、ナメコ菌を原木に活着させることができます。
- 仮伏せ3ヶ月後
(最低でも梅雨までに実施)本伏せ仮伏せが終わったら、本伏せとなります。本伏せとは、仮伏せで活着させたナメコ菌を原木全体に蔓延させることを指します。ナメコ菌が原木に蔓延すると、「榾木」となります。
本伏せは、栽培の準備のときに選定した本圃(ホダ場)に移して行います。これから先の栽培は、この本圃(ホダ場)で行います。原木は、地面にそのまま直接伏せるように置きます(地伏せ)。
発生・収穫までは乾燥や水はけに注意してください。また、秋になるまでに年1〜2回ほど天地返ししてやります。
- 秋〜春発生・収穫
- 気温が下がり始める秋から発生する。5℃を下回るようになると発生が終了し始める
- 3年目までは本格的に発生しない可能性がある
- 発生すると、5年程度は同じ榾木から収穫可能(但し、榾木の状態や環境による)
- 収穫が終わったら、本伏せのときと同様の管理を実施し、次の収穫シーズンを待つ
原木栽培の詳細については、下の記事にまとめていますのでこちらも参考にしてください。
菌床栽培のキット
- 栽培キットが届いたらすぐに袋開封
栽培ブロック(菌床)は袋に包まれていますので、まずはこの袋を開封してきます(仮にこの袋を「菌床袋」と呼ぶことにします)。栽培ブロック上面から5cmほど上のところから、ハサミでカットして開封します。このとき、栽培ブロックを菌床袋から取り出してはいけません。あくまで菌床袋を開封するだけです。
菌床袋を開封したら、栽培ブロック(菌床)の上面をスプーンなどで削って、ブロックの茶色い部分が見えるようにしてください。数mm程度で十分だと思います。
その後、栽培ブロック(菌床)の入った菌床袋にそのまま水を入れて貯めるようにします。栽培ブロック上面が浸水するくらい十分に水を入れましょう。使用する水は、水道水で問題ありません。30分ほど浸水させたら、菌床袋に入った水を捨てます。
- 浸水・水切り後覆土・栽培管理
浸水・水切り後は、栽培容器などにセットして栽培を開始します。
まずは、栽培ブロック上面を赤玉土で覆土します。覆土の厚さは、1〜2cm程度で問題ありません。覆土が終わったら、菌床袋の上部をさらに切除していきます。覆土した高さからさらに2〜3cm程度上のところを切除しましょう。
次に菌床袋を、さらに大きな袋に入れます(この袋を「栽培袋」と呼んだりします)。栽培袋は、セットに付属している場合がほとんどです。もしなければ、菌床袋より更に高さのある袋を用意して、そこに菌床袋を入れるようにしてください。その後、栽培容器にセットしていきます。栽培容器は箱など安定するものであればなんでも構いません。
栽培の場所は直射日光が当たらず、気温が高くならないところです。また、湿度も90%を保つことが理想です。湿度を保つためにも、栽培袋は半分閉じた状態にしてください。
日中(朝〜夕方)の温度 夜間(夕方〜朝)の温度 10〜17℃ 10℃以下 編集さん当たり前ですが、秋〜冬場だと温度調節がしやすくて、栽培に向いていると思います!玄関廊下や軒先は、秋〜冬にかけて10℃前後くらいになる日が多いと思いますので、おすすめです。
栽培期間中は菌床が乾かないように霧吹きで水を吹きかけたり、コップで水を垂らしたりしてください。目安としては2日1回程度で、覆土した赤玉土全体が濡れて濃い色になる状態を保持するようにしましょう。
2週間〜3週間程度経ったら、なめこの芽が出てくる(発生・発芽する)はずです。
- 傘が大きくなってきたら収穫
なめこの芽は、どんどん大きくなり、収穫の時期を迎えます。徐々に傘が大きくなってきますので、裏側の膜が切れるか切れないかのときに収穫をします。
収穫作業は、菌床にダメージを与えないようハサミやカッターナイフを使って行いましょう。根本から切るようにして柄の部分を菌床に残さないことがポイントです。赤玉土などの不純物もついてきますが、軽く水洗いすれば簡単に取れます。
- 収穫後2週間〜3週間程度休養・発生
収穫後は、「覆土・栽培管理」作業から順にもう一度実施します。管理がしっかりとされ、栽培の環境が良ければ2週間〜3週間後には、さらになめこの芽が発生してくるでしょう。
菌床栽培の詳細については、下の記事にまとめていますのでこちらも参考にしてください。
なめこ栽培キットの購入方法
なめこ栽培キットは、ホームセンターやインターネット通販で手軽に購入できます。現在では、さまざまな品種の栽培キットがインターネットで簡単に購入することができ、栽培を始めやすくなっています。いくつか、おすすめのなめこ栽培キットを紹介します。栽培方法や育ててみたい品種など、ご自身で選んで栽培してみてください。
私が初めて室内でなめこ栽培に挑戦したときは、栽培袋付きのものを購入しました!他に用意するものとして、霧吹きなどがあれば便利です!
商品名 | もりのなめこ農園 | なめこの成る木(短木) | 原木なめこ栽培キット |
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栽培方法 | 菌床栽培 | 原木栽培 | 菌床栽培 |
おすすめポイント | 届いたらすぐに栽培が始められる! | サクラの木+ナメコ2号の原木!原木栽培に挑戦したいけど、手軽に始めたい方におすすめ! | サクラの木+ナメコ2号の原木!本格的に原木栽培に挑戦できる! |
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