家庭菜園では少し難易度が高いといわれるメロンですが、作りやすい品種を選べば水耕栽培でも育てることができます。ここでは、メロンの水耕栽培について、種や苗から始める手順や、収穫までの育て方方にもわかりやすく説明します。
メロンの水耕栽培について
メロンの基礎知識
メロンはウリ科のつる性の一年草で、たくさんの系統や品種があります。実の表面に網目模様がでるネットメロンと網目のないマクワ型メロン、マクワウリに大きくわけられます。
メロンの栽培は、マスクメロンなどのネットメロンは温室などで育てられることが多く難易度が高いので、家庭菜園では、ノーネットメロンのプリンスメロンやマクワリがおすすめです。網目のあるメロンを育てたい人は、家庭菜園用に作られた品種の「ころたん」がおすすめです。
暑さに強く寒さには弱いので、遅霜の心配がなくなってから植えつけましょう。タネからも育てることはできますが、育苗には35日程度かかり、発芽温度が高いので保温も必要です。栽培時期になると苗がホームセンターやJAなどで手に入るので、苗から始めるとよいでしょう。
作物名 | メロン |
---|---|
科目 | ウリ科キュウリ属 |
原産地 | 中央アジア、中近東 |
発芽適温(地温) | 25~30℃ |
生育適温 | 25~30℃ |
育てやすさ | 難しい |
栽培時期
メロンの栽培時期は、春にタネをまいて夏に収穫します。寒さに弱いので、植えつけは最低気温が16℃以上になってから植えつけましょう。植えつけから90日程度で収穫できます。
地域 | 播種(タネまき)時期 | 植え付け時期 | 収穫時期 |
---|---|---|---|
寒冷地 | 4月中旬~5月上旬 | 5月下旬~6月下旬 | 7月下旬~9月中旬 |
中間地 | 3月中旬~4月 | 4月下旬~6月 | 7月中旬~9月 |
暖地 | 3月~4月中旬 | 4月中旬~6月 | 7月~9月 |
メロンの水耕栽培のポイント
水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく、観葉植物や果物などのさまざまな植物を衛生的に育てることができます。
水耕栽培は、葉物野菜やハーブなどは特別な設備がなくともペットボトルやスポンジなどをつかって、簡単に栽培することができます。メロンなどの果実や実もの野菜を作る場合には、容量の大きな容器を使い、野菜の生長に必要な酸素を根に直接送れるエアポンプを使った栽培がおすすめ。用具は少し必要になりますが、エアポンプを使うと成長が早くなり、多くの収穫量が見込めます。
畑などでは、地這い栽培が一般的ですが、プランターや水耕栽培では立体栽培(空中栽培)で育てると少ないスペースでも栽培が可能です。つる性なので支柱をたてて誘引し、剪定や人工受粉などの手間がかかるので栽培の難易度は少し高めです。
メロンの水耕栽培の手順
栽培容器を作る
まずは、メロンの水耕栽培用の栽培容器を作りましょう。本格的な栽培キットなどもありますが、ここでは発泡スチロールの箱で手作りする方法を説明します。
用意するもの
- 発砲スチロールの箱(蓋つき)
- スポンジ(キッチンスポンジでOK、シリコンスポンジ不可)
- エアポンプ
- カッター、キリ、定規、マジックなど
作り方の手順
- スポンジを5cm~6cm角にカットし、根を挟むための切り込みを入れます。
- 発砲スチロールのフタの部分の中央に、1で切ったスポンジより少し小さめの穴を空けます
- フタの下部の部分をカットし、そこにエアポンプの管を入れるようの穴を空けます。
- 容器に水をいれ、エアポンプをセットします。
苗の植え付け
苗の選び方
苗は元気な病気のない苗を選びましょう。ポイントは下記のとおりです。接木苗は、連作障害の病気に強い苗です。水耕栽培で育てる場合はどちらでもよいでしょう。水耕栽培では大きい苗より小さめの苗がおすすめです。
- 本葉が4枚~5枚程度ついているもの
- 節がつまっており、茎が間延びしていない。
- 葉の色が濃くツヤがあり、虫や病気などがない
- 株がしっかりしている
- ポットの下からでている根が白い
準備するもの
- スポンジ(5~6cm角にカットして、切込みをいれたもの)
- 発砲スチロールのフタ
- メロンの苗
- 割り箸など
苗の植え付け方の手順
- ポットから苗を取り出します
- バケツに水をいれ、バケツの中で根を傷つけないように土をできるだけ落とします
- 切込みをいれたスポンジに、株元から下の部分を挟みます
- 発砲スチロールのフタの中央の穴の部分に、スポンジごと苗をセットします。
- スポンジは、しっかり固定できるように、割り箸などで押し込みます。
- 水を入れた容器に、蓋をセットして育てます。水の水位は根が3分の1ほどつかる程度です。
栽培管理
- 手順1栽培容器の準備
発砲スチロールとスポンジでメロンの栽培容器をつくります。
- 手順2苗の植えつけ
市販の苗や、育苗した苗を栽培容器に植え付けし、水耕栽培用の根がでるまで育てます。
根がでたら、肥料をいれて日当たりの良い場所で管理します。 - 手順3支柱立て
植え付けしたら、支柱を立てておきましょう。
ボックスの四隅に、90cm~120cm程度程度の支柱を固定します。 - 手順4整枝・摘心
親づるが本葉5枚~6枚になったら、先端を摘心すると、子づるが伸びてきます。元気な子づるを3~4本残して、他の子づるは切り取ります。
子づるは、葉が15枚~20枚になったら摘心して孫づるの発生をうながします。
つるは伸び次第、支柱に誘引して育てましょう。 - 手順5人工授粉
孫づるの6節~12節に、雌花が開花したら、その日の朝早くできれば9時頃までに人工受粉をします。
雄花を摘みとり、花びらを取り除いて雌花の中にある雌しべの柱頭に雄しべの花粉をこすりつけて受粉させます。 - 手順6摘果
作りやすい品種であれば、つる1本につき、果実は1果、1株で2~3果が目安です。育ちの良いものを残し、後は摘果します。雌花もすべて取り除きましょう。
- 手順7果実の吊り下げ
果実が大きくなってきたら、収穫用ネットにいれ、ひもを支柱に結んで吊るします。
- 手順8収穫
人工授粉から40日ほどで収穫できます。成熟すると果皮が緑から黄白色にかわります。果実のつけ根についた葉が枯れて、よい香りがしてきたら収穫のタイミングです。つるをハサミで切って収穫しましょう。
支柱立て
支柱
メロンは、地面につるを這わせる「地這い栽培」が一般的ですが、水耕栽培では、支柱を立てて、立体栽培で育てると小スペースで栽培が可能です。果実が空中に浮いているように見えることから空中栽培とも呼ばれます。
水耕栽培の場合は、プランターなどと違い土に挿してプランターを支柱を立てることができません。容器にビニールひもなどで固定したり、緑のカーテンなどに使われる壁などに立てかけて使う支柱や、自立する支柱などを使うとよいでしょう。庭などで、置いてある場所が土であれば、土に直接挿すこともできます。
容器に固定する支柱は、プリンスメロンなら90cm~120cmほどのものを立てるとよいでしょう。
吊り下げネット・メロンフック
空中栽培では、果実が大きくなると重さで落下や、鳥害から守るためにネットやフックで、吊り下げて重さを支えます。メロンをひっかけて吊るせる、メロンフックもあります。
使い方は、収穫用ネットや、水切りネットの両端に紐をつけて、ハンモック状に吊るせれば大丈夫です。ストッキングなども代用できます。メロンフックは、メロンの主枝に引っ掛けて、麻紐などで支柱に吊るして使います。
メロンの水耕栽培 育て方
容器
水耕栽培に使う容器は、容量が大きいほど培養液(肥料を入れた水)を入れ替える手間も済みますが、場所などに合わせて容量を選びましょう。果実野菜は5ℓ以上は必要です。メロンはできれば10ℓ以上のものを、発砲スチロールは大型のものを選びましょう。
発砲スチロール以外にも、コンテナやごみ箱、バケツなどをつかっても栽培が可能です。バケツやプラスチックのゴミ箱などを使う場合には、蓋の部分を発砲スチロールでつくって上にかぶせて使う方法もあります。
発砲スチロールの箱は、小さなものは100均などでも手に入りますし、ホームセンターなどではいろいろなサイズのものがあります。また魚介類などをインターネットで購入すると、発砲スチロールにはいってくることもありますし、スーパーや魚屋さんでもらえることもあるので、聞いてみるのもよいでしょう。
発砲スチロールは専用のカッターがあると簡単にカットできます。100均などでも置いてあることがあります。
栽培環境
メロンは、日当たりの良い場所で育てましょう。メロンは高温を好む野菜です。昼間は25℃~30℃、夜間は18℃~20℃が必要になります。植えつけ直後は夜間は室内で管理するか、ホットポットや苗カバーなどをすると、生育がよくなり寒さで苗が傷む恐れがありません。また葉は雨に当たると病気にかかりやすくなるので、雨のあたらない場所で管理します。
水のやり・水替え
水耕栽培は培養液(肥料を入れた水)で育てます。培養液が切れないよう毎日水量を確認して、培養液を継ぎ足しして育てます。培養液(肥料を入れた水)の水位は、根が2/3~1/2程度浸かる程度。水の中は空気が少ないので、根元は空気に触れるよう濡れないようにします。培養液は作り置きして、日陰に置いておくとよいでしょう。
水の交換は、3週間~1か月に1度は行いましょう。すべての培養液を捨て新しい培養液をいれます。根にストレスがかかるのでできれば、日照の弱い曇りの日か、夕方に行いましょう。
成長してくると水を良く吸うので水切れには注意が必要です。また暑い時期は水が腐りやすいので、水が濁っているときには水を交換しましょう。
肥料
水耕栽培でメロンを育てる場合には、水だけでは育ちません。肥料が必要です。しっかり水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。ハイポニカはプロ用のものもありますが、家庭用と成分や配合は同じです。
下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
エアーポンプ
エアーポンプ(エアポンプ)は、必ずないと育たないというわけではありません。葉物野菜やミニトマトなどの小型な果実野菜なら、エアポンプがなくともある程度育ちます。しかし土壌栽培とことなり、水には酸素が少ないためエアーポンプを使うことで、酸素が多く根に供給され、生育が早くよく育ちます。
エアーポンプは、水耕栽培用のものもありますが熱帯魚ようのものでもOK。使用する容器の大きさに合わせてものをつかいましょう。ベランダなどで育てる場合、電源がない場合もあります。そんなときには、太陽光発電ができるエアーポンプや充電が可能なエアーポンプなどもあるのでそちらがおすすめです。
またエアポンプは、水の逆流を防ぐため本体は栽培容器より高い位置に置きましょう。
摘心・摘果
摘心
親づる(最初に成長した茎)が伸びてきたら、親づるの生長をとめ実のつく子づるを伸ばすために、親づるの芽を取る摘心を行います。
摘心は、親づるに葉が5枚~6枚ほどついたら、親づるの先端の芽を手か消毒したハサミで除去します。子づるが勢いよく育ってきたら元気のよい、3~4本つるを残して後の子づるは摘み取ります。左右に誘導してつるが混みあわないようにします。
子づるは、葉が15枚~20枚になったら摘心して孫づるの発生をうながします。
摘果
人工受粉をして、成功するものもあれば失敗して実がつかないものもあります。成功してたくさんの実がついたとしても、全部育てると実に栄養がいかず小さくておいしくない実になってしまうため、摘果を行いましょう。プリンスメロンの場合目安は、1本のつるに1果、1株に2果~3果までです。マスクメロンなどは1株に1果です。
果実が親指大になったころ、追肥をするタイミングで形が整った大きな実を残しあとは、取り除きましょう。
人工授粉
メロンを確実に着果させたいなら、人工授粉が必要です。孫づるの6節~12節に雌花が咲いたら人工受粉をしましょう。雌花と雄花の違いは、蕾の下がふくらんでいるかいないか。蕾の下がふくらんでいるほうが雌花です。
授粉は朝8時~9時に行いましょう。雄花を摘みとり花弁を取り除きます。雄しべ(葯)を当日咲いた雌花の柱頭に軽くなすりつけましょう。で交配日をラベルに書いておくとよいでしょう。
病害虫
病気
メロンは、うどんこ病や、つる枯れ病、つる割れ病、べと病などの病気にかかりやすいです。葉に斑点がでたり、茶色く枯れたりしてきたら病気を疑いましょう。
対策としては高温多湿によるカビの被害が多いので、雨に当てないこと、水やりの際も株を濡らさないように与えましょう。早期発見が大切です。また発生してしまったら殺菌剤の使用も効果的です。
害虫
メロンの葉が食害を受けたり、色が変色している場合は害虫の可能性もあります。アブラムシ、ハダニ、アザミウマ、ウリハムシなどの害虫がつきやすいです。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
まとめ
メロンは、栽培管理が大変ですがその分、収穫できた喜びはひとしおです。スイカも同様の設備でつくれるので、メロンとスイカを一緒にそだててみるのもいいでしょう。土を使わない分、連作障害もありませんしエアーポンプを使えば、土壌栽培より早く育つこともあります。まずは、栽培が簡単な小型の品種から始めてみましょう。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。野菜だけでなくハーブや、観葉植物、多肉植物、花を楽しむ球根なども水耕栽培で育てることができます。
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