ここでは、メロンに発生しやすい病害虫と、それを防除するためのおすすめ農薬、そしてメロン栽培に使える除草剤もあわせて紹介します。
より詳しいメロンの情報は、農家web防除暦をご利用ください。
メロンに発生しやすい病害虫とおすすめ農薬
アブラムシ類
アブラムシは直接植物の汁を吸うことで作物に害を与えるだけでなく、排泄物を作物にかけ、黒いすす状のカビを増殖させたり、光合成が妨げられて作物の生育を悪化させます。
また、アブラムシはウイルスを運びます。口針を植物に探り挿入するため、ウイルスを持っていると口針から簡単にウイルスの感染が広がってしまうのです。アブラムシから広がるウイルスで有名なのは、モザイク病です。その中でも特に、キュウリモザイクウィルス(CMV)、カブモザイクウィルス(TuMV)が代表例と言えるでしょう。
メロンでアブラムシ類に使えるおすすめ農薬
IRACコード | グループ名 | 主な農薬 |
---|---|---|
1B | 有機リン系 | マラソン スミチオン エルサン |
3A | ピレスロイド系 | アディオン トレボン テルスター ロディー |
4A | ネオニコチノイド系 | モスピラン アドマイヤー ダントツ スタークル アルバリン アクタラ ベストガード |
9B | ピリジン アゾメチン誘 導体 | コルト チェス |
23 | テトロン酸および テトラミン酸誘導体 | モベント |
28 | ジアミド系 | ヨーバル |
29 | フロニカミド | ウララDF |
ムシラップ サンクリスタル ボタニガード |
アザミウマ類
アザミウマはアザミウマ目に属する昆虫です。現生種は約5000種、スリップス(英名Thrips)とも呼ばれています。大きさは一般に1mm以下で翅があり、細長く、色もまちまちです。うち、農作物をエサにするのは44種と言われています。
アザミウマは直接植物の汁を吸うことで、その傷が農作物、蕾が大きくなるにつれ、非常に見た目が悪くなることや、作物の萎縮、変形、変色の原因となり、出荷できない物が増える(花木だと開花しないものが増える)といった食害があります。
また、最も厄介なのは、アザミウマはウイルスを運ぶということです。アザミウマは、果菜類、葉菜類、根菜類、豆類を含むほとんどの野菜や果樹、花きとさまざまな作物の茎葉、花弁を吸い漁りながらウイルスを広げていきます。一度、保毒すると、ウイルスを一生まき散らしてしまうのです。
アザミウマが媒介するウイルスは主に以下のようになります。
ウイルス名 | 主な発生植物 | 媒介するアザミウマの種類 |
---|---|---|
トマト黄化えそウイルス(TSWV) | トマト、ピーマン、ナス、レタスや、トルコギキョウ、マリーゴールド、ガーベラなどの花きなど | ミカンキイロアザミウマ ヒラズハナアザミウマ ネギアザミウマ ダイズウスイロアザミウマ |
スイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV) | スイカ、トウガン、ニガウリ、キュウリ | ミナミキイロアザミウマ |
メロン黄化えそウイルス(MYSV) | メロン、キュウリ、スイカ | ミナミキイロアザミウマ |
インパチェンスネクロティックスポットウイルス(INSV) | トルコギキョウ、シクラメン | ミカンキイロアザミウマ ヒラズハナアザミウマ |
アイリスイエロースポットウイルス(IYSV) | タマネギ、ネギ、ニラ、トルコギキョウ | ネギアザミウマ |
メロンで、アザミウマ類に使えるおすすめ農薬
ウリハムシ
ウリハムシは名前の通り、キュウリ、スイカ、カボチャ、メロンなど、ウリ科の葉が大好物で、円を描くように丸い食害痕を残します。それだけならまだしも、たくさん発生すると果実の表面もかじりだし、農作物に食害をもたらします。
メロンで、ウリハムシに使えるおすすめ農薬
ネコブセンチュウ
農業において線虫(センチュウ)はとても厄介な害虫です。一度、線虫(センチュウ)による被害に遭ってしまうとその植物体を回復させるのはほぼ不可能だと思われます。センチュウは、センチュウが発生した畑の土壌から、そこで使った機械、道具などに付着して正常な圃場に運ばれてくることによって発現する事が多いです。また、センチュウに侵された植物を他の圃場に持ち込むなども原因となります。
メロンで、ネコブセンチュウに使えるおすすめ農薬
このほか、クロルピクリン錠剤、ネマキック粒剤、ラグビーMC粒剤、パストリア水和剤などもあります。
ハダニ類
ハダニはダニの仲間で、クモの仲間、ハダニ上科に属します。体長は0.3~0.8mmと非常に小さく、吐糸管から糸を出すため、英名は「Spider mite」と呼ばれています。ハダニの種類は非常に多く、主なものでは、ミカンハダニ、カンザワハダニ、ナミハダニなどがいます。農業上でよく問題になるハダニは赤いアカダニ(ミカンハダニ、カンザワハダニ、リンゴハダニなど)を指すことが多いです。(チャノホコリダニは乳白色です)
高温と乾燥した環境を好み、雨が苦手なため、ハウスはハダニが繁殖する格好の場所と言えます。ハダニは卵期間2~3日、幼虫~若虫期間6~7日で成虫になる、蛹を経ない不完全変態で、成長サイクルが早く、大量発生しやすい害虫です。
ハダニは直接植物の葉、果実の汁を吸うこと(吸汁)で、小さな白班が点々とできてしまいます。吸汁が増えると植物の株、葉茎の伸長が悪くなり、最悪、落葉したり、枯れてしまいます(枯死)。
1箇所に大量発生するとハダニの移動性が高まり、あっという間に周りに被害が広がっていきます。このため、早期発見、早期防除が非常に大事です。
メロンで、ハダニに使えるおすすめ農薬
トマトハモグリバエ
ハモグリバエは、ハエ目ハモグリバエ科(学名:Agromyzidae)に属する昆虫です。全世界で2500種以上の種類があり、日本では1990年代から農業害虫として認知されています。主に日本では、トマトハモグリバエ、マメハモグリバエ、ナモグリバエの3種類が有名です。
種類 | トマトハモグリバエ (L.satibae) | マメハモグリバエ (L.trifolli) | ナモグリバエ (C.horticora) |
---|---|---|---|
成虫の大きさ(体長) | 1.3~2.3㎜ | 約2㎜ | 1.7~2.5㎜ |
幼虫の大きさ(体長) | 約3㎜ 蛹:1.3~2.3㎜ | 2.5㎜ 蛹:約2㎜ | 約3㎜ |
特徴 | 主に葉表を食害。 線状、蛇行型の食害痕。 | 主に葉表を食害。 渦巻き型の食害痕。 | 主に葉裏を食害。 点状(斑点)の食害痕。 |
主な寄生植物 | マメ科:インゲン,エンドウ,ソラマメ ナス科:トマト,ピーマン ウリ科:カボチャ,キュウリ,メロン | マメ科:インゲン,エンドウ,ソラマメ ナス科:トマト,ピーマン ウリ科:カボチャ,キュウリ,メロン キク科:キク,シュンギク,ガーベラ アカザ科:ホウレンソウ アブラナ科:コマツナ | マメ科:エンドウ キク科:レタス |
幼虫は葉の内部に潜り込んでトンネルを掘るように食い進みます。成虫は飛来し、歯の表面を傷つけ、葉の汁を舐めます。生長した幼虫は、ナモグリバエは葉の内部で蛹になり、マメハモグリバエは外に出て蛹になります。マメハモグリバエ以外(トマトハモグリバエ、ナモグリバエ、ネギハモグリバエ、ナスハモグリバエなど)は成虫や蛹で越冬します。葉の組織内に産卵し、孵化した幼虫が葉の内部を食害する、というサイクルです。
メロンで、トマトハモグリバエに使えるおすすめ農薬
うどんこ病
うどんこ病はウドンコカビ科の糸状菌によって起こる病害の総称で、糸状菌が繁殖して、葉や茎がうどん粉をかけたみたいに、はじめは白い斑点から、末期は光合成を阻害するくらいに葉全体が白くなる病気です。英語では、「Powdery mildew」と呼ばれます。
うどんこ病は他の灰色かび病などとは異なり、寄生した植物に拒絶反応を起こさせないため、枯らさない、という特徴があります。このため、うどんこ病が蔓延して作物が全滅、ということにはならないのですが、植物と共存する共生菌のため、繁殖しやすく、しぶとくて完治し辛い病気です。
枯れなくても、うどんこ病にかかった農作物は商品にならないので、農家の方にとって厄介な病気であるのは間違いないでしょう。
さらにうどんこ病が蔓延すると、糸状菌を食べるハダニなどが増加し、食害や灰色かび病などのキズ感染性の、被害の大きい病原菌が侵入し、二重感染を引き起こします。
最近はうどんこ病に耐性を持つ品種も広がっていますが、特にイチゴやウリ科の植物(メロン、スイカ、きゅうり、カボチャ、ズッキーニ)、トマト、ぶどう、ナスなどが被害作物として有名です。
うどんこ病と一言で言っても、作物毎に菌は違うことに注意しましょう。ムギのうどんこ病は水に弱いですが、キュウリやピーマンにつくうどんこ病は水に強かったりします。このため水をかけても大半は防ぐことはできないなど、注意が必要です。
メロンで、うどんこ病防除に使えるおすすめ農薬
炭疽病
植物炭疽病菌は、 Glomerella 属(有性時代)あるいは Colletotrichum 属(無性時代)に所属する子のう菌系の糸状菌(Colletotrichum acutatum)であり,様々な植物に「炭疽病」を引き起こします。
これら炭疽病の病原菌は、あらゆる部位に感染、発病し、進展するとほとんどが萎凋・枯死してしまうため、非常に被害が甚大です。
メロンで、炭疽病防除に使えるおすすめ農薬
べと病
べと病は卵菌のうちツユカビ科(Peronosporaceae科)に属する菌による病害に対して名づけられる植物病害です。「露菌(ろきん)病」とも呼ばれます。
水滴と合わさって拡大していくため、雨が続くと多発すること、また葉が湿るとベトベトになることから「べと病」と呼ばれています。
ベト病は非常に広い範囲の植物に感染しますが、特にウリ科、アブラナ科野菜(キュウリ、タマネギ、ほうれん草、ブドウ、レタス、メロン、キャベツ、ブロッコリー、すいか)・ブドウなどで大きな問題となる病気です。
メロンで、べと病防除に使えるおすすめ農薬
斑点細菌病
斑点細菌病は、ハウス栽培では通年、露地では主に梅雨時期によく発生する病気です。葉に多数の病班を作り、果実では黄褐色のヤニを発生させます。
メロンで、斑点細菌病防除に使えるおすすめ農薬
つる枯病
つる枯病は、茎の地際部分や節からヤニのようなものが出て、次第に表面が白くなって亀裂が生じてくる病気です。発病してしばらく経つと、株は萎えて枯死してしまう場合もあります。
メロンで、つる枯病防除に使えるおすすめ農薬
メロン栽培におすすめの土壌処理剤
トレファノサイド
有効成分 トリフルラリン44.5%(乳剤)・トリフルラリン2.5%(粒剤)
トレファノサイド乳剤・トレファノサイド粒剤は、ジニトロアニリン系の除草剤成分トリフルラリンを有効成分とする土壌処理剤です。一年生イネ科雑草、広葉雑草の抑制に効果が期待でき、ブロッコリーには定植前(植穴掘前)に、全面散布して使います。ツユクサ科、カヤツリグサ科、キク科、アブラナ科には効果が劣ります。
土壌処理剤を2回散布する場合はこちらを1回目に使用できます。トレファノサイドの有効成分は日光の強い光にあたると分解・帰化しやすいので夕方や曇りの日の散布が効果的です。
土壌処理剤の使い方
土壌処理剤は、播種直後(種まき後すぐに)全面に土壌散布します。ラベルに決められた薬量を守って散布します。乳剤は希釈して使います。
- 雑草発生前に散布すること。すでに生えている雑草には効果がありません
- 播種後は、しっかり覆土をして鎮圧し水やりをした後、表面が乾いたら除草剤を散布します。
- 芽が出た後は薬害が生じるため、発芽前に散布しましょう。
- 噴霧器(散布機)を使って散布しましょう。ジョウロでの全面散布は薬量を超える可能性があります。
- 使い方は除草剤によって異なります。しっかりラベルを読んで使いましょう。
メロン栽培におすすめの茎葉処理剤
メロン栽培では、まだ雑草が生えていない時期には、土壌処理剤、すでに生えている雑草には茎葉処理剤をつかって除草しましょう。メロン栽培に使えるおすすめの茎葉処理剤を紹介します。
グルホシネート系除草剤
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~ 20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死せん。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤があります。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
グリホサート系除草剤
有効成分にグリホサートを含む除草剤は、非選択性の茎葉処理剤です。イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~7日、そして完全 な効果に10日~2カ月ほどを要します。
グリホサート系の除草剤は、葉や茎に薬液をかけるだけで根まで枯らす効果があるので、ほうれん草の栽培中ではなく、耕起前までに大きくなってしまった雑草に散布して使います。畑で使えるグリホサート系の除草剤は下記のものなどがあります。散布可能時期はそれぞれの除草剤のラベルを確認してつかってください。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 |
---|---|---|---|---|
概要 | ||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
その他メロンに関する情報
栽培に役立つ 農家webのサービス
農家web 農薬検索データベース
作物に適用がある農薬を一覧で探したいときには、「農家web農薬検索データベース」が便利です。
検索機能は、適用作物・適用病害虫に合致する農薬を探す「農薬検索」、「除草剤検索」をはじめ、さまざまなキーワードで検索できる「クイック検索」、農薬・除草剤の製品名で検索できる「製品検索」、農薬・除草剤に含まれる成分名で検索できる「成分検索」の4つで、農薬・除草剤の作用性を分類したRACコードや特性、 効果を発揮するためのポイントなど実際の使用に役立つ情報も知ることができます。
農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。
「農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。
ラベルを見て希釈倍率を入力するだけでなく、農薬検索データベースと連携しているので、使いたい製品・適用ラベルを選択することで、希釈倍数を自動入力することができます。
農家web かんたん栽培記録
作物を栽培するときに、植え付けから収穫までの栽培記録をつけることは、作物の安全性を守る他にも、ノウハウを蓄積し、よりよい作物を栽培するためにも大切な作業です。
農家webのかんたん栽培記録はこれひとつで、無料で作物ごとに栽培記録できるだけでなく、その作物に発生しやすい病害虫やおすすめ農薬、また農薬に頼らない防除方法も、簡単にカレンダーから確認することができます。会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。