この記事では、カルシウムと並んで重要な多量要素であるマグネシウム系の肥料であり、土壌酸度(pH)を高めない「硫酸マグネシウム肥料」について、その特徴と効果、注意点、上手な使い方、購入方法について解説します。
硫酸マグネシウム肥料とは
硫酸マグネシウム肥料とは、マグネシウムの硫酸塩(MgSO4・nH2O)を主体とした肥料です。
硫酸マグネシウム肥料は、水溶性のマグネシウムを含んでおり、すぐに植物に吸収されるため速効性があります。速効性のため、施肥をするときには施用量を的確に管理しなければなりません。また、持続性がないため、土壌中や植物体内のマグネシウムが不足している間は施肥を続ける必要があります。
肥料名称 | 含有されるマグネシウムの性質 | 肥効のタイプ | 土壌酸度(pH)の矯正効果 |
---|---|---|---|
硫酸マグネシウム | 水溶性マグネシウム | 速効性 | 酸性にする |
硫酸マグネシウム肥料の特徴と効果・注意点
硫酸マグネシウムは性質上、以下の特徴を持っています。
- 硫酸マグネシウムに含有されるマグネシウムは、水溶性マグネシウムであり速効性がある。
- 水に溶けやすいため、地下土壌に溶脱しやすい。
- 土壌酸度(pH)を酸性にする。
- 硫酸根が残りやすい。
上記のとおり、速効性がありますが硫酸根が残りやすいので施用には注意が必要です。
硫酸マグネシウムの特長(優れている点)は、以下のとおりです。
- 光合成に必要な葉緑素の重要な構成元素であるマグネシウムを多く含んでいる。
- 炭酸同化作用(光合成による酸素の供給、窒素化合物の合成など)を良くする。
- 果菜類では、糖度、光沢、肉質などの品質向上が望める。
- 三要素(窒素、リン酸、カリウム)の肥効を更に高め、特に火山灰土ではリン酸の吸収を助ける働きがある。
- 土壌酸度(pH)を低下させる効果があり、連作障害の抑制したり、土壌環境をよくすることができる。
- 苦土石灰とともに施用すると土壌酸度(pH)にあまり影響を与えずにマグネシウムを供給できる。
硫酸マグネシウム肥料の上手な使い方
硫酸マグネシウムは、元肥としても追肥としても使用できます。ただし水溶性であり、持続性がないため、元肥として施用する場合には苦土石灰と合わせて施用すると良いでしょう。
硫酸マグネシウムの一番適している施用方法は追肥と考えます。特に早急に土壌溶液中のマグネシウム濃度を上げたい場合に用いると良いでしょう。水溶性のため、土壌溶液中によく溶け、植物体内への吸収が早いため効果が現れやすいです。マグネシウム欠乏症の対処に最適です。
施用量は保証成分率(含有量)や施用方法、時期によって異なりますので肥料のラベルをよく読みましょう。
また、マグネシウム欠乏症が発生したときには硫酸マグネシウムの葉面散布も効果的です。硫酸マグネシウムを水に溶かして1%程度の硫酸マグネシウム水溶液を作り、噴霧器などで週一回、合計二回程度、葉面散布するとマグネシウム欠乏症が改善したという例もあります。まずは1000倍〜2000倍希釈など薄めから始めてみると障害も起きづらいと思います。
硫酸マグネシウムは水溶性のため、養液栽培や養液土耕栽培にもよく使われます。特に養液栽培では追肥の方法によってはマグネシウムなどの多量要素、微量要素の欠乏症が発生しやすいため、それを補うために持続的にマグネシウムを供給することが重要です。
硫酸マグネシウム肥料のおすすめ商品
硫酸マグネシウムはプロ農家だけではなく園芸・家庭菜園の方にもおすすめできる肥料です。
マグネシウム欠乏症のような症状が出た場合には試してみると良いでしょう。特に果菜類はマグネシウム欠乏症になることが多いので、土壌環境や植物をよく観察して葉脈の間が黄色くなったり、白くなったりしてきたら少しずつマグネシウムを与えると生育が改善されるかもしれません。
硫酸マグネシウムの肥料は、肥料の形状や保証成分率(含有量)こそ異なることもありますが、基本的な性質は同じなので必要な量、扱いやすい保証成分率のものを選ぶと良いでしょう。
そもそもマグネシウムとは?
マグネシウム(Mg)とは、動物や植物の生命活動を支えるミネラル(必須元素)のひとつであり、とりわけ植物の光合成に必要な葉緑素(クロロフィル)で効性元素の中心として不可欠なものです。
栽培作物などの植物においてマグネシウムが不足すると、葉緑素(クロロフィル)の減少をもたらし、一般に葉脈間の緑色が薄くなり白くなったり、黄色くなったりします(その状態を白化やクロロシスなどと呼びます)。イチゴやバラでは、葉脈間に不規則な黒い斑点ができます。
このとき、光合成の能力が低下し、炭水化物(タンパク質など)の生産も低下するとともに、油脂の合成など植物の健全な生育に必要な作用が阻害されるため、生育不良となります。マグネシウム欠乏が発生すると、果実の品質面で下記の事象が現れやすいです。
- トマト:果実の赤みが薄くなったり、赤くなりづらくなる。
- ブドウ:着色不良になるとともに、糖度が低下する。
- ダイスなどの豆類:実の油脂が減少する。
- ホウレンソウなどの葉菜類:一つあたりの重量、収量が減少する。日持ちが悪くなる。
マグネシウム欠乏や過剰、マグネシウム肥料の基本とその効果については、下記の記事に詳しく記載しておりますのでぜひ参考にしてください。
植物が吸収しやすいマグネシウムとは?
マグネシウムは欠乏しないように施肥することが重要と説明してきました。しかし、ただ単にマグネシウムが含まれている資材を施せばよいというわけではありません。マグネシウム肥料は、どのように溶解するかによって3種類に分けることができ、それぞれ特性を理解した上で使用することが重要です。
- 水溶性マグネシウム
- く溶性マグネシウム
- 可溶性マグネシウム
水溶性マグネシウム
水溶性マグネシウムは、その名の通り水に溶けやすいマグネシウムのことを指します。土壌溶液によく溶けるため、そのままでも植物に吸収されやすいマグネシウムです。
水溶性マグネシウムを含む肥料としては、硫酸マグネシウム(硫酸苦土)や硝酸マグネシウムがあります。
水溶性マグネシウムの主な特徴は、以下のとおりです。
- 水によく溶けて、早く効く。
- 水によく溶けるため、溶脱しやすい。
く溶性マグネシウム
く溶性マグネシウムは、水には溶けませんが2%のクエン酸液に溶けるマグネシウムのことを指します。土壌中のく溶性マグネシウムは、植物の根から分泌される有機酸によって溶解されます。有機酸によって徐々に溶解、溶出されるため、全量が吸収されるまで長期間かかります。肥効がゆっくり長く続くことが特徴です。
く溶性マグネシウムを含む肥料としては、水酸化マグネシウム(水酸化苦土)や苦土入りカキ殻肥料があります。
く溶性マグネシウムの主な特徴は、以下のとおりです。
- 有機酸に溶けてから効果を発揮するため、水溶性マグネシウムのような速効性がなく、緩効性の肥効を示す。
- 肥料持ちが良く、長く効かせることができる。
- 比較的に肥料成分が高い。
可溶性マグネシウム
可溶性マグネシウムとは、水には溶けませんが0.5mol/Lの塩酸に溶けるマグネシウムのことを指します。土壌中の可溶性マグネシウムは、植物の根から分泌される有機酸によって溶解されます。一般に可溶性成分を溶解するためには強い酸性が必要ですが、一部の有機酸が強い酸性性質を持っているため、それらによってゆっくり溶かされます。肥効がゆっくり長く続くことが特徴です。
可溶性マグネシウムを含む肥料としては、炭酸苦土石灰(苦土石灰)があります。
肥料の分類や単肥について、気になる方は下の記事ものぞいてみてください。
硫酸マグネシウム肥料の購入方法、価格
硫酸マグネシウム肥料はさまざまなメーカーが独自で開発・販売しています。店頭に並ぶものもあればインターネットでしか購入ができない商品もあります。ホームセンターなどでも取り扱いされている場合がありますが、店舗に陳列されておらず取り寄せ、もしくは別店舗に探しに行かなければならない場合もあります。
インターネット通販で購入されることもおすすめです。「少し高いかな?」と思われるかもしれませんが、インターネットで購入した場合も、そこまで大きな価格の差はありません。インターネット通販を使用することで店舗に出向く時間が削減されたり、肥料を運ぶ時間も減るので私は積極的に利用しています。また、いろいろな商品をみることができ、ゆっくりと比較できるなど、店舗での購入にはない楽しみも増えます。