田んぼや畦(畔)の土中、水中の雑草を放置すると、病害虫の温床になり、作物から養分を吸い取り、品質低下、病原菌の付着を招いてしまいます。このため、稲作には、 除草 、防草が非常に重要です。
しかし、畦(畔)に グリホサート 系のラウンドアップやサンフーロンのような非選択性の(茎葉)吸収移行型を使ってしまうと、根まで枯らしてしまって、畦(畔)を壊す原因になってしまいますし、何より、肝心の稲に影響を与えてしまいます。
このため、たくさんの種類の水稲用の除草剤があります。ここではその中でも非常に新しくて強力な後期除草剤ロイヤントをご紹介します。
ロイヤントとは、どんな除草剤?
ロイヤントは、ダウ・アグロサイエンス(現在のコルテバ・アグリサイエンス)が開発したフロルピラウキシフェンベンジル(通称 リンズコア)を成分にする後期除草剤です。
リンズコアは、新たな骨格を有する合成オーキシンで、効果がすぐに発現します。またユニークな作用機構を持っていて、従来のホルモン剤では効果が期待できない、既存除草剤に抵抗性を発達させた(SU抵抗性の)ノビエ、広葉雑草、カヤツリグサに対しても、幅広い殺草スペクトラムで効果が期待できます。
また、フロルピラウキシフェンベンジル(通称リンズコア)を含有し、ペノキススラム、ベンゾビシクロンも含む、中長期除草剤のウィードコア粒剤もあります。粒剤なのでそのまま湛水散布または無人航空機による散布が可能です。
ロイヤントの有効成分、性状
- 有効成分
- フロルピラウキシフェンベンジル(通称リンズコア)・・・2.7%
性状は黄色可乳化油状液体の除草剤です。
ロイヤントの特長
ロイヤントは「後期剤」で、初期剤、一発処理剤と組み合わせて生育の進んだ雑草の取りこぼしをふぜぐ役割の除草剤です。
最大の特徴は、大きくなってしまった5葉期のノビエや、ウリカワ、ミズガヤツリといった多年生雑草、またクサネム、イボクサといった防除が難しい難防除の雑草にしっかり、速やかに効果が発現します。
また、散布後2時間経っていれば降雨の影響を受けません。このためスケジュールに組み込みやすい薬剤です。
使用するときに注意したい点
効果が劣る雑草
ロイヤントはホタルイ、クログワイ、コウキヤガラなどには効果が劣ります。これらの雑草を除草したい場合は、成分ベンタゾンが含有されているクリンチャーバス、バサグラン粒剤、液剤などが良いでしょう。
特にヒエクリーンバサグラン粒剤は、ノビエに対し優れた効果を示すヒエクリーンと、ノビエ以外の一年生広葉雑草や多年生雑草、オモダカ等の難防除雑草までの水田雑草に優れた効果を示すバサグラン(ベンタゾン液剤)をひとつにした水稲用中・後期除草剤の代表格です。
ホタルイやクログワイにお困りの方は下記を参考になるかもしれません。
効果・薬害・毒性
本製品は2回以内、また下記の有効成分を含む農薬の総使用回数は以下の通りなので、使用回数には注意してください。
- フロルピラウキシフェンベンジル(通称リンズコア)・・・ 3回以内
散布後7日間は落水、かけ流しはしないこと、また薬害を避けるため重複散布はしないでください。
その他
本剤は眼に対して刺激性があるので、眼に入った場合には直ちに水洗し、眼科医の手当を受けてください。散布後は、手足、顔などを石鹸で洗い、よくうがいをしてください。
除草剤全般の使用時の服装や注意点については、下記記事を参考にしてみてください。
まとめ
除草剤を上手に使うことで害虫の発生を減らし、殺虫剤の使用量を抑えることができます。田んぼに生えてくる雑草、また全般的な防除方法や除草道具については、下記を参考にしてみてください。
(補足)水稲栽培のスケジュール
稲の生長は、体を作る「栄養成長期」と子孫を残すための「生殖成長期」の2つに分けられ、さらに、「栄養成長期」の中でも「発芽・幼苗期」「分げつ期」、「生殖成長期」の中でも「幼穂形成期」「穂ばらみ期」「出穂期・登熟期」に分かれます。
この成長過程に沿って、作業スケジュールが決まっています。
栄養成長期
発芽・幼苗期
13度以上の温度と十分な水分(酵素含む)で、籾(モミ)のなかの胚乳を養分にして幼芽と幼根が成長し、発芽します。発芽した種籾は苗床(育苗箱)にまき、上から土をかけることで、やがて土の上に芽を伸ばし、葉の数を増やしていきます。
作業としては、育苗箱に「種まき」し苗を育てる「苗づくり」、そして田植え前に「元肥(基肥)」を行って、田んぼの土を耕し、水を入れ起こして平らにする「耕起・代かき」を行います。
稲の「種まき」「苗づくり」は、具体的には、以下の作業をします。
- 床土(とこつち)と肥料を育苗箱に詰めます
- 播種の直前にジョウロなどでしっかり灌水(かんすい)します
- 播種機を使って芽出しをした種を均一にまいて、覆土します
分げつ期
分げつとは、稲の枝(茎)が分かれていくことで、芽を伸ばした種を田んぼに田植えし、苗が田んぼに活着し、根付くと、本格的な分げつ期です。稲は茎の数をどんどん伸ばしていきます。
作業としては、田に苗を植え付ける「田植え」や、田や畔(あぜ)、畦(うね)に雑草が茂る季節なので、草とり、草刈りといった「除草」がメインになります。
生殖成長期
幼穂形成期
夏に入って分げつした茎が1番多くなる頃で、稲は茎元に穂のもとを作り始めます。
作業としては、水を抜いて田の土を乾かす「中干し」や「追肥(穂肥)」を行います。
穂ばらみ期
止葉と呼ばれる最後に出る葉の鞘が膨らんで見える頃です。
作業としては、病害を防ぐための「病害虫の防除」がメインになります。
出穂期・登熟期
夏の暑い頃、淡緑色の穂が止葉の間から顔を出し、次々と開花を開始します。自家受粉の受精が終わると、米の粒を太らせる登熟期が始まります。味は、登熟期にどれだけ光合成を行えたかに影響を大きく受けます。
作業としては、実った米を刈り取る適期のため、「収穫」がメインになります。