石灰窒素とは?
石灰窒素の肥料としての特徴
石灰窒素も単肥としてよく使われる肥料の一つで、窒素肥料の一つです。石灰窒素は石灰石を原料とするカーバイドに高温で窒素を吸収化合させたもので、窒素成分の他に、カルシウムや炭素成分が含まれています。石灰窒素の特長としては、以下の3点が挙げられます。
- 土壌から流亡しにくく、緩効性があり、施肥量・回数を削減することができる。
- 土壌の酸度(pH)矯正ができる。
- 有機物の腐熟を促進し、ふかふかの土を作ることができる。
石灰窒素は、土作りの際、土壌の酸度(pH)を高めつつ窒素を施用したい場合や有機態窒素の無機化を促進させたい場合に使用します。基本的には追肥というより、土作りのときに元肥として施用することがほとんどです。元肥として施用する場合には、植え付け、作付(定植)の2週間前には土壌に混ぜ込んでおくことが必要となります。粉状、粒状などの形態があるので使いやすいものを選択しましょう。
石灰窒素の農薬としての特徴
また、石灰窒素は農薬成分であるカルシウムシアナミドが含まれていて、土壌中で水分と反応して有効成分のシアナミドを分離し、このシアナミドが病害虫と接触して効果をあげる殺虫、殺菌効果を持ちます。さらにシアナミドは除草、防草効果もあります。
畑作では、特に土中のセンチュウの殺虫効果が認められています。暖かくなってきた春先、作付け前に石灰窒素を全面散布し、用土と根和することで効果が出ます。(10aに50〜100kgが目安です)
水稲では、特にスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)、ザリガニ、ユリミミズに効果があります。代かき、灌水時に全面散布してください。灌水状態を保ち、1週間は落水、掛け流しを行わないのがポイントです。(10aに20〜30kgが目安です)
更に石灰窒素最大の特徴として、土壌中で肥料成分として分解されるのは勿論、農薬効果があるシアナミドは、土壌中で肥料成分に分解され残留性がなく、非常に環境保全に合致した農薬であると言えます。
石灰窒素の除草効果は?
また、シアナミドは、植物の根と葉から吸収されることで、植物の生育を阻害する作用を有します。特に一年生雑草の防除に効果があり、水稲の場合も、畑作の場合も、田植え、作付け前に10aあたり50〜70kgを目安として散布することで、明らかに一年生雑草の繁殖が少なくなったという効果が判明されています。代表的な一年生雑草は、コナギ、イヌビエ、スズメノカタビラ、スズメノテッポウ、オヒシバ、メヒシバ、スベリヒユ、ブタクサ、ツユクサなどです。
発生前に繁茂を抑えるために散布する使用方法は、土壌処理剤の使用方法と同じといえます。
他の石灰は除草効果があるの?
また最近では、石灰窒素が除草効果があることから、消石灰や苦土石灰に除草効果があるのではないかという議論もなされています。石灰窒素に除草効果が認められるには、石灰の要素ではなく、シアナミドという成分があるためであり、消石灰や苦土石灰には、シアナミドの成分はないことから、石灰窒素のような除草効果はありません。
考えられるとすると、石灰は土壌を酸性からアルカリ性に変化させる土壌酸度(pH)の調整剤としての働きを持ちます。このため、アルカリ性土壌には生えにくいスギナやメヒシバ、カヤツリグサ、オオバコ、ドクダミ(どくだみ)などは生えにくくなるかもしれません。しかし畑作など作物の栽培を考慮すると、除草のために石灰を多く混入することは除草以外の栽培などへのデメリットの方が大きいため、やらない方が無難かと思われます。ここでは、石灰の種類の紹介を参考までに説明します。
消石灰 (水酸化カルシウム)
空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムとなります。速効性があり、アルカリ性が強いのが特徴です。施肥後、定植・播種まで20日以上おく必要があり、反応が強すぎるので取り扱いづらい石灰です。
生石灰 (酸化カルシウム)
加水により発熱し消石灰に変化します。消石灰と同様、速効性があり、アルカリ性が強いのが特徴です。施肥後、定植・播種まで20日以上おく必要があり、反応が強すぎるので取り扱いづらい石灰です。
苦土石灰
水に溶けにくく、カルシウムの効きは遅いのが特徴です。 マグネシウム も含まれており、補給ができます。散布後すぐに定植・播種することができます。
まとめ
石灰窒素の特長、いかがだったでしょうか?水田(田んぼ)や圃場、菜園において、土壌を保全しつつ除草効果をもつものとして、非常に使い勝手が良いものと言えます。一年生雑草に困っている方は、是非、次の春先、農地、水田に散布してみてはどうでしょうか。