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ウンカ

農業害虫、ウンカ類を駆除、防除する農薬、農薬以外の防除方法について

ウンカ

ウンカは稲(イネ)に被害をもたらす大変有名で、厄介な害虫です。ここではウンカとはどういう虫なのか、その特性と、ウンカを駆除、防除するための農薬について解説します。

そもそも、ウンカはどういう害虫?

ウンカはカメムシ目ヨコバイ亜目の一部のグループで、半翅目ウンカ科に属する昆虫です。様々な種類がいますが、日本の害虫として知られているのは、主に、セジロウンカ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカの3種類です。この中でも特に、近年トビイロウンカの被害が目立っています。

ウンカは東南アジアから毎年、気流に乗って日本にやってきます。それぞれのウンカ毎に下記のような特徴があります。

種類セジロウンカトビイロウンカヒメトビウンカ
成虫の大きさ(体長)3〜4mm4〜5mm3〜4mm
背中に白い(黄白)紋鳶色、茶褐色雄では黒色,雌では淡褐色でやや灰褐色の縦縞
生態梅雨時期に中国大陸南部などからジェット気流に乗って飛来、夏に大量発生するため、「夏ウンカ」と呼ばれる。
越冬できない。
梅雨時期に東南アジアなどから飛来、子供(第1世代)、孫(第2世代)、ひ孫(第3世代)と代を重ね、秋に急激に増殖することから「秋ウンカ」と呼ばれる。
越冬できない。
日本に土着したウンカで、幼虫は越冬し、春季に産卵、6月上旬に第1世代成虫が発生。
被害の内容食害と排泄物によるすす病。食害と排泄物によるすす病。食害の他、イネ縞葉枯ウイルスを体内で保毒、伝染させる。
ヒメトビウンカとセジロウンカの外観比較写真
出典:HP埼玉の農作物病害虫写真集 左上:ヒメトビウンカ雄成虫 左下:セジロウンカ雄成虫 右上:ヒメトビウンカ雌成虫 右下:セジロウンカ雌成虫

このように、それぞれ生態などがまちまちです。

例えばトビイロウンカは、九州では5月、西日本の県では梅雨時期6月中旬〜7月中旬に飛来し、年3〜4回発生します。産卵された卵は1週間ほどで孵化し、2週間ほどで成虫にと、産卵から4週間ほどで成虫と、生長サイクルが早く、稲(イネ)の株元に群れるのが特徴で、最初に飛来したウンカの子供(第1世代)、孫(第2世代)、ひ孫(第3世代)と代を重ね、秋に急激に増殖します。このため、秋ウンカと呼ばれます。秋ウンカの被害発生日は第3世代の発生する時期なので、大体飛来から70日後以降、9月の中旬あたりが目安になります。

逆にヒメトビウンカは越冬するため、比較的幅広い範囲で発生し、セジロウンカは、第2世代をメインに夏に多発生しやすい特徴があります。

どうしてウンカは害虫なのか?

ウンカ類はイネに発生し、幼虫も成虫もイネの茎や葉にストロー状の口針を刺して吸汁します。大量発生し、激しく吸汁されたイネは枯れてしまいます。また、ウンカが寄生している株元には排泄物に発生する白いカビ、すす病を招きます。

吸汁により枯れ、枯死してしまったイネの群は、水田の中にぽっかり穴が空いたように見えることから、このような現象を「坪枯れ」と呼んでいます。

さらに、ヒメトビウンカは食害の他、イネ縞葉枯ウイルスを体内で保毒、稲に伝染させてしまいます。

ウンカに効く農薬

ウンカは生育サイクルが早く、抵抗性を持ちやすいのが特徴です。以前効いていた農薬が効かないことはままあります。シンジェンタなどのメーカーから色んな農薬が展開されています。

以下の代表的な農薬の種類と種類別の対応表を参考に、ローテーション活用など、IPM(総合的害虫管理)をお勧めします。

ウンカに効く代表的な農薬(箱処理剤 以外)

有機リン系 スミチオン

有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサンオルトランスミチオンがあります。

ネオニコチノイド系 モスピラン、スタークル、ダントツなど

ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。

浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。代表的な製剤ダントツやネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。

家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。

ウンカに効く農薬一覧表

RACコード別に分類した、ウンカ類に効く代表的な農薬は以下のようになります。

IRACコードグループ名ウンカ類
1B有機リン系スミチオン
2Bフェニルピラゾール系
(フィプロール系)
アプライプリンス
(プリンス)
3Aピレスロイド系トレボン
4Aネオニコチノイド系アドマイヤー
アルバリン
スタークル
ダントツ
ガッツスター
16ププロフェジン(IGR)アプロード
※アプロードはウンカ類幼虫に適用

※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量、使用適期を守ってお使いください。

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RACコードとは??

RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。

例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。

同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。 

殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。

殺虫剤はウンカだけでなく、アザミウマ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、コナジラミヨトウムシコガネムシハスモンヨトウネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、カメムシ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシナメクジシンクイムシなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。

上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。適切な量、希釈方法等については下記をご参考ください。

ウンカに効く水稲育苗箱処理剤(通称「箱剤」「箱処理剤」)

RACコード別に分類した、ウンカ類に効く代表的な箱剤は以下のようになります。

水稲育苗箱処理剤とは、稲の育苗箱に処理するために作られた農薬で、殺虫剤と殺菌剤の混合剤です。田植え(移植)後の本田での農薬散布を減らせることや、育苗箱時に農薬を使用することで散布ムラをなくし、薬剤効果を安定させます。このため、水稲育苗箱処理剤は次第に普及しています。

特にチェス(ピメトロジン)という、RACコード「9B」(ピリジン アゾメチン誘導体)の農薬が、ネオニコチノイド系やフィプロニルの抵抗性を持つウンカ類に対して、高い効果を発揮することから、チェスが含有された箱粒剤が近年普及しています。

また、最近では、抵抗性ウンカ対策として、規有効成分ピラキサルト(一般名:トリフルメゾピリム)RACコード「4E(メソイオン系)」を含む箱剤ゼクサロンも販売されています。

抵抗性ウンカの対処法

抵抗性ウンカとは、農薬の種類、活用が増えることで、たまたま耐性があって生き残った特定の農薬が効かない性質のウンカが、世代を重ねて集団化したものです。

ウンカ類は発育スピードが速く、短期間で世代を繰り返すため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速い害虫です。

殺虫剤を散布しても、翌日集団でウンカが生息している場合は、抵抗性を疑ってよいでしょう。

このような場合は、お使いの農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、さらには生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要です。

IPM(総合的害虫管理)とは?

農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。

  • 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
  • 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
  • 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
  • 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法

(IPM・・・Integrated Pest Management)

生物農薬(生物的防除)

生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。

その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。

天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。

ウンカの天敵としては、アイガモが有名です。アイガモは虫が大好物で、かなりの量のウンカを食べます。

その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、興味がある方はご参考ください。

物理的防除

廃食油などを水面に垂らして、ウンカを落とし、溺死させる

9月中旬頃に秋ウンカの発生が目立ってきた場合に油を10a当たり約2L(リットル)程、水口側のアゼを歩きながら、5m間隔で水面に垂らして油膜を作ります。

その後、株元にいるウンカを水面に落とすことで溺死させる方法です。雲霞が多発している場合はブロワーなどを使用すると効果的です。

水面に油膜を作ってウンカを落とすこの方法は、江戸時代の書物にも残っているという昔から有効な防除方法です。新しい油は水面で広がりにくいので、使い古しの廃油を使うのがおすすめです。

耕種的防除

チッソ(窒素)を減らす

施肥がチッソ過多になるとイネが必要以上に繁茂し、ウンカの大量発生を招いてしまいます。このため、チッソ過多にならないように適切な施肥量を保つことが重要です。

周りをしっかり除草する

圃場の周りに、イネ科雑草があると、トビイロウンカの発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけ除草して綺麗な田んぼにしておくことが、被害を少なくするのに極めて重要です。

除草については、以下のコンテンツが参考になります。

まとめ

ウンカは江戸時代に享保の大飢饉を招いた元凶とも言われ、日本の水稲栽培において、切っても切れない害虫です。近年、大発生が起こるなど、その存在感は相変わらず際立っており、いもち病、ジャンボタニシと並んで稲作農家にとって非常に厄介な病害虫です。

病害虫防除所や全農、関係機関が示す予察情報、図等に注意し、飛来を予測できると、被害発生時期の予測もでき、初期防除しやすくなります。

ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、退治できると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。

また、これから自由研究などでバケツ稲栽培など、稲の栽培(代かき、播種、灌水、分げつ、出穂、収穫など)について知りたい方は、下記を参考にしてください。

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