庭、人工芝へのリニューアルなどで、芝生を剥がしたい場合や、枯らしてしまいたい場合はどんな除草剤を使えばいいのでしょうか?
芝生で使える除草剤はホームセンターなどに多く置かれています。ここでは、逆に芝生を枯らしたい場合のベストな除草剤を紹介します。
芝生を枯らしたい時は、グリホサート系除草剤がベスト
結論から言いますと、芝生を枯らしたい場合は、下記のようなグリホサート系除草剤がベストです。バスタやザクサのようなグルホシネート系の除草剤は即効性があり、枯れますが、根までしっかり枯らすことができません。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | ネコソギロングシャワーV8 | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤(MCPA入り) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
概要 | |||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | レインボー薬品(株) | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA |
農耕地使用 | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ |
完全に根まで枯らすことを考えると、グリホサート系除草剤がベストです。
では、グリホサートとは何か? その効果は?
除草剤の成分として使われる「グリホサート 」とは、主にグリホサートイソプロピルアミン塩、グリホサートカリウム塩のことを指し、アミノ酸である“グリシン”と“リン酸”の誘導体です。
グリホサートは、植物体内での5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸の合成を阻害し、植物固有のアミノ酸を含むタンパク質や代謝産物の合成をできないようにします。この結果、植物を枯らしてしまいます。
このような、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して、枯らしてしまうタイプの代表的な薬剤は、グリホサート 系の他に、スルホニルウレア系(ベンスルフロンメチル、イマゾフルフロン、ピラゾスルフロンメチルなど多数)、非選択性接触型のアミノ酸系(グルホシネート、ビアラホスなど)があります。
グリホサートは、イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木、イシクラゲなどほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~ 7日、そして完全な効果に10日~ 2カ月ほどを要します。
グリホサートの大きな特徴としては、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎(スギナなど)、根も含めて全体を枯らす効果があります。このため、水稲が残る水田や根を残したい田んぼの畦(畔、畦畔)や傾斜地には向きません。非選択性(どんな植物にも効く)のため、作付けや植付け時の場合など、散布の際に、作物にかからないよう注意する必要があります。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | ネコソギロングシャワーV8 | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤(MCPA入り) |
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概要 | |||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | レインボー薬品(株) | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA |
農耕地使用 | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ |
グリホサートは、ある程度生い茂った葉や茎に直接散布することで効果が発生するので、草丈がある程度伸びた時が散布の適期になります。
グリホサート系除草剤は、雨が降っても大丈夫?
グリホサートのような「茎葉処理剤」は、散布された薬剤に接触した部分の植物組織だけを枯らします。このため、散布後すぐに雨が降ると、雑草に付着した薬液を流すため、効果がなくなることがあります。散布後すぐに雨が降りそうな天気予報のときは、散布を避けましょう。
目安としては、「散布後、6時間過ぎた後」 であれば雨の影響を受けなくなり、効果は持続します。
また、朝露が多い、雨上がりなど、葉についた薬液がこぼれ落ちるような場合も効果が薄れることがあります。早朝や雨上がりも避けた方がいいでしょう。
しかしながら、最近のグリホサート系除草剤は、雨に強くなった商品も多く出ています。グリホサートカリウム塩は、従前のグリホサートイソプロピルアミン塩よりも雨に強く、また、界面活性剤の改良や活性成分の吸収力、移行、即効力が大幅に改善して、「散布後、1時間経てば雨が降っても大丈夫」と進化している除草剤もあります。
グリホサートカリウム塩で、散布後1時間経てば雨が降っても大丈夫な除草剤の商品名は
- ラウンドアップマックスロード (AL,ALii,ALiii)
- タッチダウンiQ
- カダン 除草王 ザッソージエース
があります。
除草剤の使い方
主な使い方
グリホサート系除草剤は、液剤の除草剤原液なので、希釈して薄めて使用します。使用薬量と希釈水量は、ラベルの裏に細かい使用薬量と希釈水量が書かれていますので、ぜひご参考にしてください。
基本的な下草、雑草には、原液10mlに1Lの希釈水量、つまり、「100倍」の希釈率を目安にし、1Lを100㎡に散布します。
ただし、多年生雑草(翌年も生える雑草)に場合は、希釈率を100倍から50倍とうすめる濃度を上げた方が効果がでますし、スギナなど、特に強雑草と呼ばれる雑草には、希釈率を25倍まで高めることをおすすめしています。どの雑草に対して使用するかで、うすめる濃度を変えていきましょう。
広範囲に渡るときは、噴霧器や加圧式散布機で散布すると良いでしょう。
また、竹や木などは、ドリルで穴を開けて、原液を注入するのが効果的です。この場合、目安としては、竹一本に対して原液10mlです。また、雑草によって、早春、盛夏、晩秋の時期に散布すればいいのか、根元がいいのか葉がいいのかは変わってきます。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、希釈した除草剤20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
グリホサートの安全性について
グリホサートが危険であるという具体的な主張の内容
近年、グリホサートの安全性、薬害について、様々なシーンで議論がなされています。主には、グリホサートが恐らく発がん性物質であり、ヒトの健康を害するものであるという主張、また内分泌かく乱物質であるという主張、またヒトの母乳や尿中に蓄積して、腎臓などに障害を及ぼすと言う主張、更にはグリホサートを主成分とする除草剤に含まれる界面活性剤に予期しない毒性があるという主張です。
グリホサートが発がん性物質という主張について
2015 年、IARC (国際がん研究機関)はグリホサートを検証する委員会を開催し、既発表の論文を部分的に検証したIARC(国際がん研究機関)は、グリホサートを「クラス 2A」すなわち「ヒトに対して恐らく発がん性がある」に分類しました。(IARC, 2015)
これに加え、学校の校庭整備の業務で使用したラウンドアップが要因で、悪性リンパ腫を発症した、と主張した末期がん患者との裁判で、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ市の陪審は2018年8月10日、ラウンドアップ 販売会社のモンサントに、損害賠償金2億8,900万ドル(約320億円)の支払いを命じました。
しかしながら、本件は、モンサントを買収したバイエルが、ラウンドアップ の責任、不正行為は認めることはないまま、和解を成立させています。
現在では、アメリカ合衆国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、欧州連合(EU)では、それぞれ「ヒトの発がんリスクの可能性は低い」「ヒトにおけるグリホサートばく露及び発がんとの関連に確証的なエビデンスはない」「グリホサートはヒトに発がんリスクをもたらさない」と結論づけていますし、米環境保護庁(EPA)は、除草剤に用いられているグリホサートに「発がんのおそれがある」と表示することを禁止するガイダンスを発布しています。
また、日本でラウンドアップ を販売している日産化学工業も、グリホサートに発がん性は無いと判断している声明を発表し、内閣府食品安全委員会も、発がん性・遺伝毒性は認められなかったと結論を出しています。
他のリスクの主張について
他のリスクの主張についても、米環境保護庁(EPA)は、グリホサートは内分泌かく乱物質ではない、また、検知可能な量のグリホサートが残留していても健康上の懸念とならないこと、母乳には蓄積しないこと、ヒトの腎臓などに障害を及ぼさないことを述べています。
また、グリホサート 系除草剤に含まれている界面活性剤については、グリホサートを含む除草剤及びこれに含まれる界面活性剤について、生態毒性のリスク評価を実施し、水生生息地以外の野生生物に重大なリスクとならないとの結論を出しています。(モンサント 2016年7月)
さらに、メーカーのHPで、土に落ちたラウンドアップの成分は、処理後1時間以内のごく短時間で、土中の土の粒子に吸着し、その後微生物により自然物に分解され、約3~21日で半減、やがて消失すると記載されています。
芝生用の除草剤
逆に、下記のように、芝生を枯らさないで、芝生に生える雑草を除草するための除草剤もあります。
芝生のおすすめ肥料、手入れに関する記事は下記を参考にしてください。
まとめ
ここでは、芝生を枯らすのにベストなグリホサート系除草剤のご紹介と、グリホサートに纏わる様々な話を解説しました。しっかり枯らすことで、害虫、病害虫の発生も防げ、害虫退治の殺虫剤などの使用も抑えることができます。是非、ご参考にしてみてください。
(補足)除草剤あれこれ
除草剤の種類あれこれ
発芽抑制する「土壌処理剤」か、茎葉処理する「茎葉処理剤」か
除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽、生育を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。
しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、草刈りした後での散布が必要になってきます。「茎葉処理剤」は、散布された薬液に接触、吸着した部分の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。
非選択性か選択性か
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。
農耕地で使用できるものとできないものがあるので、注意してください
ラウンドアップやサンフーロンは、畑作や果樹園などの田畑、農耕地で使用することができますが、グリホエースなど、グリホサート系除草剤でも農耕地で使用できないものもあるので、使用の際は必ず確認するようにしましょう。
具体的には、農薬取締法に基づき国に農薬登録をされている除草剤(農薬として登録された除草剤のパッケージには[農林水産省登録第○○号]と表記されています)しか、畑や田んぼ、菜園、植物を植えた庭などの所謂「農耕地」に散布することはできません。
また、農薬登録されているものでも、「作物名」が「 樹木 等」になっている除草剤は注意が必要です。なぜなら、「作物名」が「樹木等」に限られている除草剤は、適用場所が「公園、庭園、堤とう、駐車場、道路、運動場、宅地など」に限られ、畑や菜園、圃場、水田は勿論、田んぼの畦畔にも使用することはできないのです。このため、「樹木等」に限定されている除草剤も、非農耕地用になります。
下記に詳しく書いているので、興味ある方は読んでみてください。
その他
また、除草、草を刈るための農機具、農具、草刈機(刈払機)、資材については、こちらをご参考ください。
除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのか、まとめたのは下記になります。
雑草の様々な防除、駆除方法は下の記事がおすすめです。
また、特に防草シート(除草シート)を敷くことでの防除に興味ある方は下の記事をご参考ください。
除草剤の安全性について
除草剤については、様々なイメージ、情報が飛び交っています。下記では、そもそも除草剤は安全なのか、また除草剤を使用するときに気を付けたいポイント、また個別の除草剤の安全性について徹底解説しています。