黒点病(コクテン病)はミカンをはじめとする、柑橘類にとっては非常にメジャーで厄介な病気です。枯れ枝を伝染源にして雨などの水を介して発生が広がっていきます。
ここでは、黒点病を予防、治療するためにはどのような農薬を使えばいいのか、その他、効果的な防除法について詳しく解説してきます。
黒点病(コクテン病)とはどんな病気?
黒点病とは?
黒点病は、 学名Diaporthe citri Wolf、子のう菌系の糸状菌であり,様々な植物に「黒点病」を引き起こします。
黒点病は下記のように葉っぱに黒色で円形の黒点、班を付けるのが特徴で、進行が進むと徐々に黒点、班の密度が高まり、雨などの水を介して涙斑状に、そして果実一面に感染して泥塊状と変化していきます。
黒点病の発症が激しい果実は商品に出せないため、果に大量に発生すると、経営に大きな問題が生じます。また、軸腐病の発生の原因になり,貯蔵中の果の腐敗が多発し、大きな損失を引き起こします。
黒点病の伝染方法
黒点病は過去に発症した枯れ枝に柄子殻を作って胞子の状態で生息し、気温が高まり雨が降ると胞子が雨滴を介して周りに飛び散り、葉や果実に伝染していきます。一度伝染した枯れ枝は数年間、降雨の度に胞子を出し、伝染源となります。
このことから、伝染を防ぐのに何よりも大事なのは、感染のピークになる6月上旬以降の梅雨や秋雨の時期までに、枯れ枝をきっちり処分することが重要です。
黒点病の症状
黒点病に感染すると発生する主な症状は、下記の写真のように、葉っぱや果実に0.1~0.5mm程度の黒色、黒褐色、うす墨色の丸い円形の斑点ができることです。これが広がると、下の写真のような拡大した斑点ができた状態になります。
黒点病の防除のポイント
黒点病は薬剤による科学的防除だけでは防ぐのに不十分な厄介な病害です。農薬による化学的防除だけでなく、アメダスなどで雨の時期を把握する等、耕種的防除や物理的防除を上手く組み合わせて、予防していくことが重要です。
黒点病に効果がある農薬
黒点病に限らず、一度病気が発症してしまうと、それを完全に防除することは難しくなります。このため、防除は、予防することが非常に大事になってきます。
予防が大事であることを踏まえた上で、下記の薬剤を有効に利用してください。
ボルドー、ICボルドー(銅水和剤)
有効成分の銅剤(ドイツボルドーA)は古くから幅広い野菜や果樹の病害防除に効果を発揮する汎用性殺菌剤です。幅広い病害に効果を発揮します。
ジマンダイセン
ジマンダイセンは、主成分マンゼブの分解物であるイソチオシアネートが、菌の生合成に必要な酵素類の不活化,ATP形成阻害,SH基の不活化などに作用し,菌体の酵素取込みやCO2放出を阻止したり原形質活動を阻害し、幅広い病害虫から作物を守る殺菌殺虫剤です。 かんきつの黒点病対策では、真っ先に挙がる代表的な薬剤です。
トップジンM水和剤(FRAC 1)
トップジンM水和剤は速攻性と残効性を有し、優れた効果が長続きする、広範囲の作物の病害に基幹防除剤として使用できる殺菌剤です。低濃度で高い効果があり、作物の汚れが少なく、定期的な予防散布に、激発時のまん延防止に優れた効果を発揮します。
ベンレート水和剤
ベンレートは、稲、野菜、果樹、樹木などさまざまな作物に使用できる殺菌剤です。茎葉の病気、貯蔵病害、種子伝染性病害、土壌病害などさまざまな病害に効果を示します。また、浸透性に優れるため、雨が降っても安心です。性状は、類白色水和性粉末です。
トリフミン水和剤
トリフミン水和剤は性状が類白色水和性粉末 45μm以下の殺菌剤(DMI剤)です。 幅広い作物の多くの病害に効果があり、予防効果に加えて治癒効果も有する殺菌剤です。
この他、バスアミド、アミスター、スイッチ、チオノック、アフェット、デラン、オーソサイド、ベクルート、ストロビー、ファンタジスタ、ダコニール、エムダイファーなどがあります。
薬害等を出さないように製品ラベルをよく読んで使用しましょう。上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤、乳剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
耐雨性を高めるための展着剤
また、黒点病は降雨時に伝染することから、雨の日にしっかり薬剤の効果を効かせれるか、が大事になってきます。農家の方の中には、ミカンハダニ防除に使っているマシン油乳剤を展着剤として混用し、耐雨性(雨が降っても流れにくくする)を高めることで、しっかり効果を持続させて防除されている方もいらっしゃいます。ジマンダイセンに展着剤アビオンを組み合わせている方もいらっしゃいます。展着剤については、是非下記を参考にしてみてください。
化学的防除以外の防除方法
枯れ枝を除去する
上記で説明した通り、黒点病菌は前年以前に発病した枯れ枝の中で越冬し、翌年に他株に伝染するため、放置すると黒点病の多発を助長してしまいます。このため、枯れ枝を除去することは何よりも大事です。
そして、密植園の伐採,落葉の撤去、防止、落葉を累積させないなど,枯枝ができないように枝をしっかり管理することが予防の観点で非常に大事です。
雨量を把握し、効果的な科学的防除を
黒点病は雨を介して伝染するため、降雨時にしっかり薬剤の効果を効かせられるか、がポイントです。アメダス、雨量計等を利用し、雨が少ない場合は薬剤散布を遅らせたり、雨が多い時は前倒しで散布する等、雨の量を考慮しながらうまく防除するとよいでしょう。
まとめ
黒点病は特に柑橘をはじめとする果樹で発生しやすい病気です。とにかく、枯れ枝、落ち葉の除去、管理、早めの薬剤の散布等、予防措置を取るようにしましょう。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
また、最近では病害虫の抵抗性発達を避けるために、農薬にRACコードがわかるようになっています。RACコードについては下記を参考ください。
(補足)殺虫剤など、他の農薬について
農家webでは、下記のような害虫別のコンテンツがあります。気になるコンテンツがあれば、ぜひ参考にしてみてください。