ダイコン、コマツナなどのアブラナ科の植物が大好きで食害をもたらす害虫として有名なキスジノミハムシ。ここではキスジノミハムシとはどういう虫なのか、その特性と、キスジノミハムシを駆除、防除するための農薬、またその他の効果的な方法、対策についても解説します。
そもそも、キスジノミハムシはどういう害虫?
キスジノミハムシとは?
キスジノミハムシは、ハムシ科の甲虫(コウチュウ)の一種です。ハムシは主にコガネムシを小さくしたような形状のようなものが多く、硬い外観をしています。キスジノミハムシもウリハムシと同じく、ハムシの一種です。
成虫の大きさは体長3〜4mmと小さく、左右の翅に黄褐色の帯状の斑紋があるのが特徴です。後脚は発達していて幅広で、ノミ のように機敏に高く跳ねることができます。
春~秋に発生し、成虫の姿で越冬し、土壌の表面や根部に産卵し、幼虫、蛹を経て新成虫は地上に出てきます。
どうしてキスジノミハムシは害虫なのか?
キスジノミハムシは、キャベツ、ダイコン、ハクサイ、カブ、コマツナ、チンゲンサイなどのアブラナ科作物が大好きで、成虫は葉に食害痕(小さい孔)を残し、幼虫は土中で根を食べてしまいます。苗が小さい頃に被害を受けると、その後の成長が大きく遅れてしまいますし、ダイコンなどでは幼虫が根をかじって、大根の表面を痛めてしまい、収穫時に価値を下げてしまいます。
最近、家庭菜園でも多発するケースが目立ち、メジャーな害虫として認知されてきています。
キスジノミハムシに効く農薬
キスジノミハムシは農作物の代表的な害虫のため、下記のように、多くの適用農薬があります。
キスジノミハムシに効く代表的な農薬
有機リン系 エルサン、ダイアジノン
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオンがあります。
ネオニコチノイド系 スタークル、モスピランなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。ネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
アニキ
アニキ乳剤の最大の特徴は、新規系統の殺虫剤のため、既存の殺虫剤に抵抗性がある害虫に効く可能性が高いこと、また高い即効性(速効性)があること、訪花昆虫・天敵等の有用昆虫に対する悪影響が少ないため、IPM(総合的害虫管理)に非常に適した薬剤であることです。
キスジノミハムシに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、キスジノミハムシに効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。
殺虫剤はキスジノミハムシだけでなく、カメムシ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、ヨトウムシ、コナジラミ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシ、ウリハムシ、アオムシなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
防除する際のポイント
近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させ、薬害を少なくするために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
物理的防除
アルミホイル、シルバーマルチなど、光を乱反射させて防除
キスジノミハムシは、キラキラと、光が乱反射するのを嫌う習性があります。これを利用して、マルチをシルバーマルチに変えるのは、キスジノミハムシの飛来を抑制するのに非常に有効です。
また、防鳥テープも光が当たると乱反射するので有効です。農作物の生長点と株の中の間くらいに、ビーっと一本ずつ張っておくと予防になります。
またアルミホイル(クッキングホイルやガスマット)のような銀色のものも光が反射し、有効です。アルミホイルを使うときは、農作物の株元にマルチングのように敷くのが効果的です。
防虫ネット
また、キスジノミハムシの被害は直接的な食害なので、網目の細かい防虫ネットなどで農作物を物理的に守るのも効果的です。家庭菜園だと、寒冷紗(かんれいしゃ))も便利です。
耕種的防除
圃場の周りにアブラナ科(ナズナやキレハイヌガラシなど)の雑草があると、アブラナ科雑草に寄生してキスジノミハムシの大量発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけこまめに除草するのが、被害を少なくするのに極めて重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
また、アブラナ科の作物を連作すると、大量発生を招きやすくなるので注意が必要です。
まとめ
植える苗や、播種(は種)、定植して生育している苗木、葉菜類に食害をもたらすキスジノミハムシ。特にだいこん、コマツナなどのアブラナ科の作物に多大な被害をもたらします。
適切に退治、防除を行い、本記事が、キスジノミハムシ対策の一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
農家webでは、殺虫剤以外にも、うどんこ病、灰色かび病、根こぶ病、黒星病、半身萎凋病どを防ぐ殺菌剤のコンテンツもありますよ!
栽培に役立つ 農家webのサービス
農家web 農薬検索データベース
作物に適用がある農薬を一覧で探したいときには、「農家web農薬検索データベース」が便利です。
検索機能は、適用作物・適用病害虫に合致する農薬を探す「農薬検索」、「除草剤検索」をはじめ、さまざまなキーワードで検索できる「クイック検索」、農薬・除草剤の製品名で検索できる「製品検索」、農薬・除草剤に含まれる成分名で検索できる「成分検索」の4つで、農薬・除草剤の作用性を分類したRACコードや特性、 効果を発揮するためのポイントなど実際の使用に役立つ情報も知ることができます。
農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。
「農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。
ラベルを見て希釈倍率を入力するだけでなく、農薬検索データベースと連携しているので、使いたい製品・適用ラベルを選択することで、希釈倍数を自動入力することができます。
農家web かんたん栽培記録
作物を栽培するときに、植え付けから収穫までの栽培記録をつけることは、作物の安全性を守る他にも、ノウハウを蓄積し、よりよい作物を栽培するためにも大切な作業です。
農家webのかんたん栽培記録はこれひとつで、無料で作物ごとに栽培記録できるだけでなく、その作物に発生しやすい病害虫やおすすめ農薬、また農薬に頼らない防除方法も、簡単にカレンダーから確認することができます。会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。