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菌核病

菌核病に効く農薬、防除方法について徹底解説!

菌核病 トマトの発病茎 菌核病

菌核病はキャベツやレタスなどでよく発生する、葉菜類、果菜類、豆類、イネ科の植物、また果樹と幅広い作物に発生する病気です。ここでは菌核病とは何なのか、また菌核病を防ぐために使える農薬やその他の方法もあわせて解説していきます。

菌核病はどんな病気?

菌核病とは?

菌核病は多犯性の糸状菌 (Sclerotinia sclerotiorum)という子のう菌類による病害です。子のう盤が土壌の表面に作られて、そこから感染源になる子のう胞子を出します。また、土壌表面と直に接触することで接触部分から病班が広がっていきます。このため、キャベツなどの結球性葉菜類は土壌に近い、主脈の基部に近い部分から部分から病気に侵されていきます。

発病した作物は、発病部分に病斑を作り、やがてその部分から拡大して葉柄を伝わっていきます。そして結球部に進展し、結球部が柔らかくなり、萎凋し腐っていきます。進展すると、発病部には白い綿のような菌糸(カビ)がまとわりついてくるのが特徴です。

菌核病の発病初期
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集 菌核病の発病初期葉
菌核病・・発病が進展した株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集 菌核病・・発病が進展した株

そして、被害株は写真のように、乾燥した後、発病した部分の表面や内部にネズミの黒い糞のような黒色の菌核を作ります。

菌核病の発病葉上の菌核と白色綿状のかび
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集 菌核病 発病葉上の菌核と白色綿状のかび

菌核病はさまざまな農作物に感染します。その種類は300以上です。特に罹りやすいのは、キャベツやレタスの葉菜類、キュウリナストマトイチゴ、メロン、スイカといった果菜類、またネギ、大根(ダイコン)、大豆、インゲンといった豆類もそうですし、菊といった花木(花き)も感染します。

土壌表面と直に接触することで接触部分から感染が広がるため、キャベツなどの結球性葉菜類は特に要注意です。

発生の仕組み

菌核病は、糸状菌であり、発生した株に潜伏して複数年生存します。子のう盤を土壌の表面に作り、そこから感染源になる子のう胞子を出し、水滴、風によって飛散し、植物にくっついて発病させます。このため、じめじめした多湿状態のときに多発しやすいのが特徴です。

発生の時期

春の4〜5月と秋の10〜11月、年2回発生しますが、春の方が発生が多い傾向にあります。糸状菌は主に、雨や朝露といった多湿状況で多く発生するので、そのような時期は発生の要注意時期だと言えるでしょう。

菌核病の防除のポイント

他の病気との見比べ方

菌核病の発生初期は、すそ枯病や立ち枯れ病、軟腐病、灰色かび病と区別がつかない場合があります。

しかし、菌核病は軟腐病特有の悪臭を発しないため、その点で軟腐病とは区別がつきます。

病状が進展すると、発病部に白い綿のようなカビが発生し、それが黒いネズミの糞のようなものとして多数できる点は、菌核病のみです。黒い菌核が出現することで、菌核病だと判断することができます。

防除のポイント

菌核病は薬剤による防除がメインになってきますが、菌は土壌に潜伏していることもあり、土壌消毒、殺菌も有効な防除方法になります。また同じ系統の薬剤を連用すると、抵抗性を持った病原菌が発生してしまうリスクもあります。

薬剤だけでなく、IPMによる防除体系を作成することが薬剤の使用量を減らすことになり、重要だと言えるでしょう。

IPM(総合的害虫管理)とは?

農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。

  • 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
  • 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
  • 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
  • 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法

(IPM・・・Integrated Pest Management)

菌核病に効果がある農薬

トップジンM水和剤(FRAC 1)

速攻性と残効性を有し、優れた効果が長続きする、広範囲の作物の病害に基幹防除剤として使用できるベンゾイミダゾール系殺菌剤です。低濃度で高い効果があり、作物の汚れが少なく、定期的な予防散布に、激発時のまん延防止に優れた効果を発揮します。

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アフェットフロアブル(FRAC 7)

担子菌、子のう菌、不完全菌に属する幅広い植物病原菌に対し、高い活性を示す新規なチオフェン系殺菌剤で、多くの病害に優れた予防効果を有する薬剤です。

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ベンレート水和剤

ベンレート水和剤は、稲、野菜、果樹、樹木などさまざまな作物に使用できる殺菌剤です。茎葉の病気、貯蔵病害、種子伝染性病害、土壌病害などさまざまな病害に効果を示します。また、浸透性に優れるため、雨が降っても安心です。

シグナムWDG

シグナムWDGは、互いに作用機作の異なる薬剤成分(ボスカリド、ピラクロストロビン)が配合されており、より幅広い病害に対応するように作られた野菜用殺菌剤です。 炭疽病のほか、うどんこ病、つる枯れ病、すすかび病など幅広い病害に優れた効果を示します。 

ベルクートフロアブル

フロアブル剤のため粉立ちが少なく、収穫物への汚れも少ないです。幅広い殺菌スペクトラムがあり、多くの病害に対して優れた効果を示します。登録作物が多いため、多品目栽培にも適しています。性状は、類白色水和性粘稠懸濁液体です。

ファンタジスタ顆粒水和剤

新規系統ベンジルカーバメート系の有効成分ピリベンカルブを含有しており、広い範囲の病害に対して高い防除効果を示します。病害の予防効果だけでなく、病斑進展阻止効果もあります。浸達性と浸透移行性の両方があります。性状は、淡褐色水和性細粒です。

アフェットフロアブル

アフェットフロアブルは、性状が類白色水和性粘稠懸濁液体で、ピラゾール系の殺菌剤ペンチオピラドを主成分とするアニライド系の殺菌剤です。 幅広い病害スペクトラムで、多くの対象作物の収穫前日まで使え、幅広い期間で使用することが可能です。

この他、スクラム、セイビアーフロアブル20、バリダシン、カナメフロアブル、カンタスドライフロアブルロブラールアミスター20フロアブル、チオノック、ピクシオDF、パレード20フロアブル、ダイマジンフロンサイドSCなどがあります。

薬害等を出さないように製品ラベルをよく読んで使用しましょう。上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤、乳剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。

土壌消毒

バスアミド微粒剤

バスアミド微粒剤は、刺激臭が少なく使いやすい微粒状の刺激のない製剤です。混和後に緩やかにガス化するので、急激に刺激性のガスにさらされることなく比較的安全に作業できます。 混和後に生成される活性成分である **メチルイソチオシアネート(MITC)** が土壌中の病原菌や雑草種子を不活性化し、連作障害の原因に対処します。 バスアミドの散布には、「バスサンバー」や「バスこまき」というバスアミド専用散布機を使用すると効率的に散布ができます。 性状は、類白色微粒になります。毒性は、劇物となりますので取扱に注意しましょう。

キルパー

土壌病害虫やセンチュウ、雑草に有効で、すでに多くの野菜類、イモ類、花き類・観葉植物などに登録があり、さらにトマト・ミニトマトコナジラミ類蔓延防止のために適用拡大されたカーバムナトリウム塩30%を有効成分とした総合土壌消毒剤です。 全体をビニール等で被覆し、かん水チューブ(点滴チューブまたは水平型散水チューブ)で土壌表面に散布、またはかん水します。 この処理により、被覆したビニール内でタバココナジラミの成幼虫を完全に殺すことができます。

そのほか、ネビジンなども土壌混和に使えます。

薬剤(化学的防除)以外の防除方法

太陽熱土壌消毒

収穫後の畑を耕うんした後、土壌に水を撒いて土壌水分を高め、ビニールで土壌を覆う(マルチング)方法で土壌内を熱して消毒する方法を実践されている方もいらっしゃいます。

土壌の水分状態が高ければ、蓄熱効果を高め、効果が出やすくなります。

実施時期は、梅雨明けの暑くなる時期がベスト(7月中旬から8月)で、30日ほど被覆した状態で置いておきます。被覆後は、水たまりができるのを避けるため、ピンで少しビニールに穴を開けておくと良いでしょう。太陽熱消毒は、土壌くん煙剤の使用に匹敵する効果があるとも言われていますし、何よりも薬剤使用量の減少につながります。

野菜ハウスの太陽熱消毒の様子
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集 野菜ハウスの太陽熱消毒の様子

まとめ

菌核病はさまざまな植物に発生する非常にメジャーな病気です。早期防除できないと、広範囲に作物が萎凋、腐敗してしまう厄介な病害です。土壌消毒と化学的防除等、さまざまな防除方法を組み合わせて対処したい病気といえます。当記事が少しでもそのお役に立てれば幸いです。

編集さん
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