カランコエは、花を楽しむ鉢花として人気の品種の他に、個性的な葉や姿を楽しむ多肉植物としての品種も人気があります。ここでは個性的な姿を楽しむ多肉植物のカランコエの水耕栽培について、わかりやすく説明します。
カランコエの水耕栽培について
カランコエの基礎情報
カランコエは、ベンケイソウ科の多肉植物でマダガスカル島を中心に多くの品種が分布しています。花を楽しむタイプと多肉質の葉を楽しむ品種があります。代表的なのは、「月兎耳」などの兎シリーズ。産毛で覆われた細い葉がウサギの耳のようにみえるため兎にちなんだ名前がつけれれています。その他にも斑点模様が入った品種や、葉の鋸歯部分に子株がつく品種など、個性的な品種が多くあります。
生育タイプは「夏型」で、夏に盛んに生育するタイプです。多くは生育適温が20〜30°Cの範囲にあり、春と秋はゆっくり生育し、冬は休眠します。生育が旺盛で育てやすいですが、多肉植物の中でも特に寒さに弱いので、冬の管理は注意が必要です。
学名 | Kalanchoe |
属名 | ベンケイソウ科カランコエ属 |
原産地 | マダガスカル、南アフリカ、インド、マレー半島、中国 |
草丈・樹高 | 10㎝~300㎝ |
耐寒性等 | 耐寒性 弱い 耐暑性 強い |
花言葉 | 「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」「あなたを守る」 |
種類
カランコエには多くの品種があります。人気の品種をいくつか紹介します。
品種名 | 月兎耳(つきとじ) | 福兎耳 | 胡蝶の舞 | 子宝弁慶草 |
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概要 | ||||
特徴 | 産毛の生えた青みがかった葉のふちには茶色の斑が入る。 高温多湿と寒さが苦手 | 真っ白な産毛に覆われた平たい葉が美しい品種。 月兎耳の変種ではなく、別種。 | 大きめの平たい葉のふちはギザギザでピンク色になる。赤紫に紅葉する | 切込みのある葉のふちに子株がでてくるのが特徴。暑さにも寒さにも強い。 |
カランコエの水耕栽培について
水耕栽培とは、土を使わず培養液(肥料分を含んだ水)で、野菜や草木を栽培する方法です。土の変わりにハイドロボールやゼオライトなどの培土を使った栽培も水耕栽培の一種でハイドロカルチャーと呼ばれます。砂漠地帯などの乾燥した地域に自生して、水やりの手間が少なく他の観葉植物より丈夫なイメージのある多肉植物ですが、多肉植物は水耕栽培でも育てることができます。
カランコエは、葉挿し、挿し木、株分けで増やすことができますが、挿し木が一般的で、水挿しでも行えます。水耕栽培を始めるのであれば、水挿しから始めるのがおすすめです。水挿しで発根させた後は、そのまま水耕栽培で育てるか、土に鉢上げして土耕栽培で育てることもできます。小さな苗なら、土耕栽培から水耕栽培に移行させることも可能です。
カランコエの挿し木(水挿し)
挿し木の時期
挿し木を成功させるには、時期が大切です。挿し木は植物の生育期に行います。カランコエは夏型なので生育期は春4月~9月、真夏の7月~8月は日本の夏は高温多湿のため避けたほうがよいでしょう。挿し木の適期は4月~6月、9月です。
さし木の準備
挿し木にする茎は、切り戻しした茎や、カット苗、子株でも行えます。
茎を切るときは、茎を2~3節の長さに揃えて下葉は取り除きます。取り除いた葉も、葉挿しで増やすことができます。親株の周りにできた子株を使う場合は、茎をなるべく長く残して根元からカットしましょう。親株の根元を残しておけば、切り口から子株が伸びます。
切った茎は、室内の日の当たらない場所で、新聞紙などの上で2~3日乾かします。
準備するもの
- カランコエの挿し穂
- 透明な容器(花瓶やペットボトルなどでも可)
- 水道水
- メネデール(発根促進剤なくても可・あると発根の成功率が上がります)
発根促進剤について
カランコエは、生育期であれば水だけでも発根します。早く発根させたい場合は、発根促進剤を使いましょう。植物活力素 メネデールは、発根だけでなく肥料でも農薬でもないので、発根時以外の水栽培で元気がなくなったときなどにも使えます。水替えのときに発根するまで入れると効果的です。水替えの都度でなくとも、1週間に一度でも入れてあげる、また希釈率を200倍にしても効果はあります。
手順
- 容器に水(水道水)を入れます。メネデールを使う場合は100倍に希釈した水を使います。
- 準備したカランコエの挿し穂を入れます。茎の部分だけ水に浸かるようにし、葉っぱは濡れないように注意しましょう。
- 発芽するまで2~3日に1回に水は変えましょう。
- 明るい日陰で室内で管理しましょう。1か月程度で新しい根っこが生えてきます。
- 新芽がでて根が十分に発根したら、そのまま水耕栽培に移行するか、土に植え替えて育てることもできます。
カランコエの水耕栽培への植え替え
水耕栽培への移行には挿し木がおすすめですが、土耕栽培で育ったポット苗から水耕栽培へ植え替えることもできます。株分けした子株も植え替えが可能です。
準備するもの
- カランコエの苗
- 透明なガラスの器(空き瓶やグラス・ペットボトルなどでもOK)
- ハサミ、カッター(ライターなどであぶって消毒しておく)
手順
- 土から水に植え替えるカランコエは1週間ほど水を上げずに乾燥させてから、鉢から外します。
- 根っこをほぐすように土を落とし水で洗い流します。
- 根元を2㎝ほど残して、カッターやハサミで切り落とします。カッターやハサミはライターなどであぶって消毒をしておきましょう。
- 室内の日の当たらない場所で、新聞紙などの上で2~3日乾かします。切り口が湿ったままだと病原菌が発生する恐れもあり、根の傷口をふさぐためにも大切なステップです。ここで土で育っていた根が役割を終えます。
- 切り口が乾いたら、カランコエの根が、水面ギリギリになるように水をいれて、器にセットします。
- 室内に日陰に置いて、2~3日に一度水を交換して発根するまで待ちます。早ければ2~3週間で根がでてきます。
水耕栽培の手順
水挿しで発根した茎をつかって、水耕栽培に移行しましょう。ここでは培土を使わず水だけで育てる手順を紹介します。
準備するもの
- 水挿しで発根したカランコエの茎 or カランコエの苗
- 容器(透明なガラスのほうが根の成長も見え水量も調整しやすい)
- 根腐れ防止剤(ミリオンA・ゼオライトなど)
手順
- 器の底に根腐れ防止剤をいれます。鉢底が隠れる程度OK
- 苗を入れます。
- 器に水道水を入れます。この時の水位は根が全部浸からない程度。3分の2が水に浸かっているぐらいがよいでしょう。せめて3㎝程度は空気に当ててください。
- 水替えは1週間に一度程度行います。
カランコエの水耕栽培の育て方
置き場所、日当たり
カランコエは日当たりがよく風通しの良い場所を好みます。生育期は日当たりの良い場所で管理しましょう。夏は直射日光に当てると葉焼けや、容器の中の温度が高温になることがあるので、涼しい半日陰などで管理するとよいでしょう。
過湿が苦手なので、梅雨から夏にかけては風通しの悪い場所では、蒸れに注意が必要です。空気が循環しない場所ではサーキュレターなども使うとよいでしょう。
多肉植物の中では寒さに弱いので、品種によりますが、冬は5℃~10℃以下にならない暖かい場所で管理しましょう。水道水を直接入れ替えると水が冷たすぎることもあります。常温にしばらく置いたものを使うとよいでしょう。
水の量と交換時期
植物は葉や茎そして根からも酸素を吸収しています。水栽培で育てている場合は土やハイドロカルチャーに比べて、酸素が吸収しにくくなります。水の温度が上がると酸素の溶け込む量がすくなくなるため、特に夏場は注意が必要です。
理想的な水栽培の水位は、根の半分から3分の2が浸かる程度。少なくとも根元3㎝は空気に触れるようにします。水の交換は週に1回程度、ただし気温が高くなると水が濁るので濁ったら水を交換します。容器に苔がつくことがあります。水替えの時に容器も洗ってあげましょう。
生育期には水を多く吸収します。水切れには注意しましょう。夏や冬は乾かし気味に育てます。根が空気に触れる時間を少し増やします。水位が下がったら水やりをするとよいでしょう。
肥料
カランコエの水栽培は、肥料がなくても育ちます。花を咲かせたい、大きくしたい場合には、生育期に肥料を与えるとよく育ちます。水耕栽培の肥料は、液体肥料(液肥)を薄めて使います。春の4月~6月、秋の9月に与えましょう。水の交換のときに、規定量より薄めて使います。肥料を使うと藻が発生しやすいので、水草用の肥料もおすすめです。
水耕栽培に使える肥料は、野菜などの栽培などにも使える、ハイポネックス微粉やハイポニカ液体肥料などがあります。肥料ではないですが活力剤の水草用メネデールなどをつかってもよいでしょう。
まとめ
カランコエは、多肉植物の中でも水耕栽培に向いているといわれ、品種も豊富です。繁殖力も強いので、土耕栽培で育てている苗が大きくなったら、剪定して、挿し木からまずは初めてみましょう。透明な容器で育てると、根が育つ様子まで楽しめます。可愛らしい花を咲かせる品種も多いので、ぜひお気に入りの品種をみつけて栽培してみましょう。
多肉植物の他にも、観葉植物や花を楽しむ球根、育てて収穫できる野菜やハーブも水耕栽培で育てることができます。100均などで購入した苗やタネを使って、簡単に育てることができます。興味のある方は下記の記事も参考にしてください。育てたい品種や野菜・ハーブ名から育て方がわかります。