農家webかんたん栽培記録サービスのバナーです。
病害虫

カキノヘタムシガを防除する農薬と方法

カキノヘタムシガが柿の果実を食害している写真 病害虫

通称ヘタムシとも呼ばれるカキノヘタムシガは、カキ農家にとって最も厄介な害虫の一つです。ここではカキノヘタムシガとはどういう虫なのか、その特性と、カキノヘタムシガを防除するための方法を、農薬、またその他の効果的な方法も合わせて徹底解説していきます。

そもそも、カキノヘタムシガはどういう害虫?

カキノヘタムシガとは?

カキノヘタムシガはチョウ目のガの一種で、学名Stathmopoda masinissa Meyrick、別名、ヘタムシ、カキミガ、カキミムシなどと呼ばれます。

カキノヘタムシガの幼虫は体長約4(中齢)〜15mm(老齢)ほどです。

カキノヘタムシガの中齢幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
柿の実の中にいるカキノヘタムシガの老齢幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

孵化してすぐに葉柄と芽の間から食入していき、ヘタの部分から果実まで食入し、中を食い荒らし加害します。被害芽には幼虫が排出した糞(褐色の小粒)が見られます。

食い荒らされた実は写真のように、早期着色し、ヘタを残して落果してしまいます。このような現象を起こすことから、ヘタムシなどと呼ばれているのです。

カキノヘタムシガに食害されて早期着色した果実
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

果実1つに対し、大体1匹の幼虫が食入します。幼虫は果実が落下する前に別の果実に移ることが多く、1匹で通算4個ほどの果実を食害すると言われています。このため、多発するとかなり収穫に影響を与えてしまう、恐ろしい害虫です。

老齢幼虫は、枝の樹皮の割れ目や粗皮の下などに薄い繭を作り、越冬します。4月頃から蛹になり、5月上旬〜中旬に第1回目の成虫が発生します。(発生時期は地域差があります。)成虫は枝の芽の付近に産卵し、10日ほどで孵化(ふ化)、食入して芽から果実に被害を与えます(第1世代)。

カキノヘタムシガの繭
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

そして30日程度で幼虫期を終え繭を作って蛹になり、15日程度で羽化し、第2回目の成虫が発生します。その後産卵、ふ化を経て、7月中旬あたりに幼虫になり加害します。(第2世代)発生時期は内陸部ではそれよりも遅くなる傾向があります。1回目と同様、発生時期には地域差があるので注意しましょう。

このように、発生のタイミングは年に2回ですが、東北地方では年1回の地域もあります。近年、発生時期が長期化していて、防除が難しい病害虫の一つになっています。

成虫の体長は6〜7mmほどで、紫黒色、毛束が多い外見をしています。

カキノヘタムシガの成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

カキノヘタムシガに効く農薬

カキノヘタムシガは果実に侵入してしまうと薬剤を付着させれないので、孵化幼虫が果実に食入する以前の,芽を食害している時期に散布することが重要です。このため、散布時期が薬剤での防除の要と言えるでしょう。

カキノヘタムシガに効く代表的な農薬

カキノヘタムシガには、様々な農薬の適用があります。下記から気になるものをピックアップしてみてください。

有機リン系 

有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサンオルトランスミチオンがあります。

ピレスロイド系

ピレスロイド系は殺虫剤の中でもメジャーで、速効性が高い薬剤です。アディオン水和剤、ロディー水和剤やアーデント水和剤が使えます。

ネオニコチノイド系

ネオニコチノイドは、昆虫の神経細胞のシナプス部分の後膜に存在する神経伝達物質のアセチルコリンの受容体である「ニコチン性 アセチルコリン受容体(nAChR)」に結合し、神経細胞を興奮させ続ける事で、死に至らしめる効果をもっています。致死濃度以下でも、食害や交尾、産卵や飛行など、虫のあらゆる行動が減少します。

パダンSG水和剤

パダンは特異な殺虫作用のため、他剤が効きにくくなった害虫にも効果を発揮します。

カキノヘタムシガに効く農薬一覧表

RACコード別に分類した、カキノヘタムシガに効く代表的な農薬は以下のようになります。

IRACコードグループ名農薬名
1B有機リン系エルサン
オルトラン
スミチオン
3Aピレスロイド系アディオン
アーデント
ロディー
MR.ジョーカー
ISKテルスターフロアブル
スカウトフロアブル
4Aネオニコチノイド系モスピラン
スタークル
ダントツ
アルバリン
アクタラ
バリアード
5スピノシン系ディアナ
14ネライストキシン類縁体パダンSG水溶剤
28ジアミド系フェニックス
キックオフ
ヨーバルフロアブル

※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。

RACコードとは??

RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。

例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。

同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。 

殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。

殺虫剤はカキノヘタムシガだけでなく、ヨトウムシカメムシ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミコガネムシキスジノミハムシネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシナメクジシンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシ、ウリハムシアオムシ、ゾウムシ、ハバチ、グンバイムシ、モモハモグリガ、ハモグリガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。

上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤(乳剤など)や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。

防除する際のポイント

近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させ、薬害を少なくするために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。

IPM(総合的害虫管理)とは?

農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。

  • 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
  • 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
  • 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
  • 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法

(IPM・・・Integrated Pest Management)

物理的防除

カキノヘタムシガの物理的、耕種的防除方法は、昔から様々な方法が存在します。これ一つで完全に防除できる、といった方法はありません。下記情報を参考に、是非、様々な方法を複数試してみてください。

12月〜2月に粗皮削りを行う

カキノヘタムシガは粗皮の下などに薄い繭を作り、越冬するので、冬に粗皮削りを行うのは非常に効果的です。粗皮削りをする方法としては、専用の刃物で行う方法と、バークストリッパー(高圧水流を噴射する器具)の水圧で剥がす方法があります。バークストリッパーが使用できる場合は、水圧で害虫自体を圧殺できます。ただし、分枝部などの粗皮は,粗皮削りガマなどを使って丁寧に削り取るのがいいでしょう。

また、粗皮削りは柿(カキ)でよく発生するカイガラムシの防除にも有効です。カイガラムシにお困りの方は、下記を参考にしてみてください。

被害果を早めに除去

被害を受けた果実は着色するため、変色し始めたらすぐに摘み取り、果実の中にいる幼虫を殺して、その後の被害の拡大を防ぐことは有効です。

また、カキノヘタムシガの性フェロモンの研究が進んでおり、防除するためのフェロモン剤も近い将来使えるようになるかもしれません。

まとめ

柿(富有柿、太秋など)の代表的な病害虫で、大量発生すると収穫に大打撃を与えるカキノヘタムシガ。本記事が、適切に退治、防除を行うためのカキノヘタムシガ対策の一助となれば幸いです。

ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。

栽培に役立つ 農家webのサービス

農家web 農薬検索データベース

作物に適用がある農薬を一覧で探したいときには、「農家web農薬検索データベース」が便利です。

検索機能は、適用作物・適用病害虫に合致する農薬を探す「農薬検索」、「除草剤検索」をはじめ、さまざまなキーワードで検索できる「クイック検索」、農薬・除草剤の製品名で検索できる「製品検索」、農薬・除草剤に含まれる成分名で検索できる「成分検索」の4つで、農薬・除草剤の作用性を分類したRACコードや特性、 効果を発揮するためのポイントなど実際の使用に役立つ情報も知ることができます。

農家web農薬データベースの広告バナーです。

農家webかんたん農薬希釈計算アプリ

除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。

農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。

ラベルを見て希釈倍率を入力するだけでなく、農薬検索データベースと連携しているので、使いたい製品・適用ラベルを選択することで、希釈倍数を自動入力することができます

農家web かんたん栽培記録

作物を栽培するときに、植え付けから収穫までの栽培記録をつけることは、作物の安全性を守る他にも、ノウハウを蓄積し、よりよい作物を栽培するためにも大切な作業です。

農家webのかんたん栽培記録はこれひとつで、無料で作物ごとに栽培記録できるだけでなく、その作物に発生しやすい病害虫やおすすめ農薬、また農薬に頼らない防除方法も、簡単にカレンダーから確認することができます。会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。

執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

農薬販売届 受付番号:210-0099

皆さまに本当に有益な情報をお伝えできるよう、心を込めて運営しています。
執筆者・監修者の詳細についてはこちら

\SNSはじめました!フォローお願いします!/

掲載内容については、調査のうえ、情報の正当性、公平性に万全を期して執筆しておりますが、誤記や誤りなどが見受けられる場合には「お問い合わせ」よりご連絡お願い申し上げます。

スポンサーリンク
\良い!と思ったらシェアお願いします/
\SNSはじめました!フォローお願いします!/
タイトルとURLをコピーしました