カブラハバチはアブラナ科野菜では非常にメジャーな害虫です。ここでは、カブラハバチの特性も含めて、カブラハバチに効く農薬を紹介していきます。
カブラハバチとは?
カブラハバチ(Athalia rosae)は、ハチ目ハバチ科の昆虫で、幼虫時にダイコンやカブ、キャベツといったアブラナ科の植物を食害します。日本で見られるカブラハバチは主に、カブラハバチ、ニホンカブラハバチ、セグロカブラハバチです。幼虫時の大きさは、体長15mm~18mm程度で、成虫時は約7mmほどです。幼虫はイモムシの姿、成虫は翅を持ち、胸腹部がオレンジ色なのが特徴です。
ニホンカブラハバチの老齢幼虫は下の写真のように黒色をしており、ナノクロムシとも呼ばれます。
幼虫がアブラナ科の葉を食害するのが特徴ですが、太い葉脈を残して、新しい葉の縁から食害していくことが多く、被害葉を確認することでカブラハバチによるものかどうか判断しやすいと言えるでしょう。
カブラハバチが発生する時期
カブラハバチは春と秋に多く発生します。また、高冷地では夏から初秋に多く発生しますが、それ以外の場所(平地)では、真夏は発生が少なくなります。
カブラハバチの発生回数は種類によって異なってきます。ニホンカブラハバチは年2回ほど、カブラハバチは年5回、セグロカブラハバチは年6回ほどの発生を繰り返すと言われています。
カブラハバチは葉の周縁の葉肉内に1粒ずつ卵を産み付けます。土中に繭を作って、繭内で越冬します。
カブラハバチに効く農薬
カブラハバチはアブラナ科野菜にとって非常に頻出の害虫であること、薬剤の効果が相対的に高いことから、下記のように、多くの適用農薬があります。
カブラハバチに効く代表的な農薬
有機リン系 マラソン、オルトラン、エルサンなど
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやマラソンがあり、どちらもカブラハバチに効く農薬です。マラソンについては下記をご参考ください。
ネオニコチノイド系 モスピランなど
ネオニコチノイドは、昆虫の神経細胞のシナプス部分の後膜に存在する神経伝達物質のアセチルコリンの受容体である「ニコチン性 アセチルコリン受容体(nAChR)」に結合し、神経細胞を興奮させ続ける事で、死に至らしめる効果をもっています。致死濃度以下でも、食害や交尾、産卵や飛行など、虫のあらゆる行動が減少します。
スピノエース
スピノエースはスピノサドを有効成分とし、コナガ,ヨトウガ類,ハマキムシ類,シンクイムシ類、アザミウマ(スリップス)類に速効性を持つ殺虫剤です。接触毒性,食毒性ともに高く,速効的なのが特長です。薬剤が虫に直接かかった以外にも、薬剤のかかった葉を虫が食べたり,葉の上を虫が這ったりすることによっても殺虫効果が見られます。
グレーシア乳剤
グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した非常に新しい殺虫剤です。日産化学(株)が開発した新規化合物である、イソオキサゾリン系の有効成分「フルキサメタミド」が害虫の神経に作用して速攻的な殺虫作用を示します。
コナガなどのチョウ目や、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目等の幅広い作物害虫に高い効果を発揮します。 グレーシアは従来のネオニコチノイド系や有機リン系化合物などの殺虫剤では効きにくかった、つまり抵抗性を獲得している害虫に対しても高い殺虫効果を発揮します。 このため、既存の殺虫剤とのローテーション散布も可能です。
アニキ乳剤
アニキは、三井化学アグロ(株)が開発した、2010年に農薬登録された新しい殺虫剤です。有効成分のレピメクチンとは、害虫の抑制神経系に作用するマクロライド系の化合物です。接触毒と食毒、両方の作用により速効的な殺虫効果を示します。また、有効成分は環境中で容易に分解する性質を持ち、普通物であるため人畜に対する毒性が低く、ハチ類など有用昆虫に対する悪影響も小さいという特徴があります。
カブラハバチに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、アワノメイガに効く代表的な農薬は以下のようになります。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量といった使用基準を守ってお使いください。
殺虫剤はカブラハバチだけでなく、アザミウマ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、ヨトウムシ、コナジラミ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、カメムシ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシ、ナメクジ、シンクイムシなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。希釈方法等については下記をご参考ください。
防除する際のポイント
近年では、特定の農薬に抵抗性(薬剤抵抗性)を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させ、薬害を少なくするために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
防虫ネット、寒冷紗
カブラハバチは春に蛹化し、5月ごろ羽化してアブラナ科野菜に産卵します。葉に卵を産み付けるのを防ぐために、防虫ネット、防虫網(2㎜目程度以下)や寒冷紗などで産み付けれなくするのは有効です。
密植栽培を避け、風通し、日当たりを確保する
密植して風通しが悪い圃場や、日陰が多い圃場には発生が多くなる傾向があります。これを避けるために、密植栽培を避け、風通し、日当たりを確保することは耕種的防除になるでしょう。
また、多肥によって、軟弱徒長に栽培された作物にも多発しやすくなるので、適切な施肥管理も重要です。
まとめ
アブラナ科の葉菜に食害をもたらすカブラハバチ。特にだいこん、カブ、キャベツ、ハクサイ、コマツナ、チンゲンサイなどの作物で代表的な害虫と言えるでしょう。
カブラハバチに効果がある農薬はコナガやヨトウムシ類、モンシロチョウ、ウワバ類、キスジノミハムシ(黄条蚤金花虫)にも効果があることが多いので、これらの病害虫を同時の防除することができます。
適切に退治、防除を行い、本記事が、カブラハバチ対策の一助となれば幸いです。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
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