農業を営んでいる人は、常に気候変動や自然災害、盗難や価格変動などのリスクに晒されています。ここでは保険料の一部を国が補助する農業保険の種類や特徴、農業共済や収入保険の違いなどについて説明します。
農業保険とは
農業保険とは、国が掛金を補助する公的な保険のことで、自然災害に備える「農業共済」と、自然災害を含むさまざまな農業経営のリスクに備える「収入保険」の2つがあります。
農業保険といわれる保険はこの2つですが、この他にも国や自治体が補助する、「収⼊減少影響緩和対策(ナラシ対策)」「野菜価格安定制度」などもあるので、作っている作物、規模、保険料、補填したいリスクによって選びましょう。併用できる保険もあります。
農業共済の特徴
加入条件
農業共済はすべての農業者が対象の保険ですが、農業共済は作物ごとにわかれており、その作物ごとに作付面積が一定以上でないと加入できません。(作付け面積はそれぞれの地域によって変わります)
またすべての作物が対象ではないので、自分の作っている作物の農業共済がない場合には加入できません。
種類
農業共済は下記の種類に分かれています。地域によって対象作物がことなるので、実際の対象品目については、自分の地域の全国農業共済組合(NOSAI)で確認してください。
種類 | 対象品目 |
---|---|
農作物共済 | 水稲、陸稲、麦 |
家畜共済 | 牛、馬、豚 |
果樹共済 | うんしゅうみかん、なつみかん、いよかん、指定かんきつ、 りんご、ぶどう、なし、もも、おうとう、びわ、かき、 くり、うめ、すもも、キウイフルーツ、パインアップル |
畑作物共済 | ばれいしょ、大豆、小豆、いんげん、てん菜、さとうきび、 茶、そば、スイートコーン、たまねぎ、かぼちゃ、ホップ、蚕繭 |
園芸施設共済 | 園芸施設(附帯施設、施設内農作物を含む) |
任意共済 | 建物、農機具、保管中農産物 |
特徴
- 自然災害によって受けた収穫量の減少等の損失を補償(家畜共済の場合は、家畜の死亡、廃用、疾病、傷害が対象)
- 作物別に加入が必要
- 共済制度のため、基本的には加入者が払った掛金を積み立てて共同の財産を形成し、被害があった時にはその財産から被害を受けた人に支払いします。
- 掛金は、共済金額×共済掛金率によって決められ、掛金率は過去20年間の被害率によって決められており、加入する作物、場所によってもかわります。
- 掛金のおおよそ半分は国が補助、協会組合の運用費用も多くの費用を国が負担しています
収入保険の特徴
加入の条件
- 青色申告を行っている農業者(個人・法人)
前年1年分の青色申告が必要となりますので、現在青色申告を行っていない場合は、青色申告に切り替えをして1年後から加入することができます。
種類
収入保険には、積立方式併用タイプと保険方式充実タイプがあります。収入保険の掛け金の内訳は、保険料・積立金・付加保険料(事務手数料)の3つに分けられます。
保険料は掛け捨てですが国の補助が50%あります。自動車保険と同様に使わなかった場合は保険料率が下がっていきます。積立金は自分のお金なので掛け捨てではありません、国からの補助が75%あります。
積み立て方式併用タイプの場合は、1年目は保険料と積立金を支払い、保険金の受払がなければ翌年そのまま持ち越すので、保険料のみの支払いとなります。
初年度に積立金を支払うのが大変な場合には、保険料+付加保険料のみの保険方式充実タイプがあります。積立金がないので初年度の保険料は安くなりますが、保険料は掛け捨てなので翌年の保険料は積立方式より高くなります。
例)収入800万円、9割補てんの場合の概算保険料(農業共済組合簡易計算を使った金額)
積立方式併用タイプ | 初年度 | 2年目 |
---|---|---|
保険料 | 86,256円 | 73,872円 |
積立金 | 180,000円 | 0円 |
付加保険料 | 18,756円 | 17,456円 |
保険料合計 | 285,012円 | 91,328円 |
保険方式充実タイプ | 初年度 | 2年目 |
---|---|---|
保険料 | 183,805円 | 157,432円 |
積立金 | 0円 | 0円 |
付加保険料 | 18,756円 | 17,456円 |
保険料合計 | 202,561円 | 174,888円 |
保険料が高いと感じる人は支払率を下げることもできます。農業共済組合のHPで収入保険の簡易計算が可能ですので、自分の収入や負担率などを選んでシュミレーションしてみましょう。
特徴
- 自然災害による損害だけでなく、農業者の経営努力では避けられない収入減少を広く補償します。
- 対象の収入は、農業者が自ら生産し、販売した農産物の販売金額全体を対象収入とし、この農産物には簡易な加工品も含みます。
- 補償の支払いは保険期間終了後になるが、保険金が下りるまでの間無利子のつなぎ融資をうけることができます。
- 積立併用方式と保険方式があり、保険料の支払率は90%~50%、積立方式の支払率は90%~10%と自分選んで設定することができます。保険料・付加保険料(事務手数料)は国が50%補助、積立金は75%を国が補助しています。
農業共済と収入保険の違いについて
項目 | 農業共済 | 収入保険 |
---|---|---|
加入資格 | すべての農業者 | 青色申告を行っている個人・法人 |
補償の対象 | 自然災害で生じた損害 | 自然災害を含む、農業者の経営努力では 避けられない収入減少 |
保険の対象 | 一部の農作物、園芸施設等 | すべての農作物 |
保険料率 | 地域、品目、引受方式等で変わる | 基本的に一律(保険を使わないと安くなる) |
加入条件
農業保険は作付け面積に制限はありますが、基本的にはすべての農家が加入が可能ですが、収入保険は青色申告をしていないと加入ができません。
青色申告は、簿記の知識が必要だから青色申告にていない人もいると思いますが、実は白色申告と同じ簡易帳簿でも、青色申告に移行することもできます。特別控除額が10万円と税務控除が少ないのですがこの制度を利用していても収入保険に加入することが可能です。
補償の対象
農業保険の補償の対象となるのは、自然災害で損害を受けた場合のみ。会社員などは病気や事故で働けなくなった場合には、健康保険から「傷病手当」がでますが、個人事業主の農家の場合、国民健康保険にそのような制度はありません。
収入保険は、自然災害による被害以外にも、病気やケガで収穫ができない、農作物が盗難にあった、市場価格の暴落や為替の下落による損失までさまざまなリスクに備えることができます。
保険の対象
収入保険はすべての農作物が保険の対象なのに対し、農業共済は一部の農作物のみで農業総産出額の6割ほどしかカバーできていません。しかし農業共済には、園芸施設を対象にした共済もあるのでビニールハウスなどが台風によって損害を受けた場合などのリスクに備えることができます。
保険料率
農協共済は、保険料率は地域や、加入する品目、引き受け方法ごとに異なります。収入保険の場合は、積立方式併用タイプと保険料方式充実タイプでは保険料率は異なりますが、保険料は基本的に一律です。
まとめ
農業保険の種類や違いについて説明しましたが、保険制度は少し難しいですよね。加入はともに各地域の農業共済(NOSAI)ですので、保険に悩んでいるようでしたら一度保険料をシュミレーションしてみるとよいでしょう。
最近では大きな災害や台風、川の氾濫なども各地で起きています。農業をつづけていくためにも最小限でもいいので保険をかけておきましょう。この他にも「野菜価格安定制度」「ナラシ対策」などの類似した保険なども検討しましょう。
保険制度や国の補助などについては、毎年様々な変更が起こります
加入する際には、自分の地域のNOSAI団体で詳細を確認したうえで加入してください。