大豆は、根に根粒菌がついて窒素を発生させるため肥料には注意が必要です。ここでは大豆の肥料の植え付け時の元肥や追肥の与え方について地植え、プランター別に説明します。
大豆栽培の肥料の与え方のポイント
大豆栽培では、窒素が多く施肥されるぎると、根粒の着床が阻害されたり、過繁茂をおこします。しかし開花期以降は大量の窒素分が必要になるため、適期に大豆栽培に適した肥料を与えることが重要です。
施肥のポイントは下記の3つです。
- 元肥はやせ地では窒素を少なめに、肥沃地ではほぼ必要ないが、リン酸、カリウムは結実をよくするため施肥する。
- 追肥は開花期に行うが、硝酸態窒素は根粒活性を低下させるため、速効性のアンモニア態窒素を追肥する。
- 暖地では追肥の効果があまりみられないことから、元肥に緩効性の被覆肥料(一発肥料)などを使うとよい。
大豆の肥料の与え方
では実際にどのように肥料をやるのか、説明していきましょう。肥料のやり方は育て方によってもいろいろありますが、基本的な施肥の仕方について説明します。
地植えの場合
元肥
苗を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
元肥の方法は、全面施肥と溝施肥があります。豆類は全面施肥が一般的です。有機肥料を使う場合は2週間前、化成肥料を使う場合は植え付けの1週間ほど前までに行います。
元肥の方法で、畑全体にまんべんなく肥料を与えることを全面施肥(全層施肥)といいます。多くの野菜に使われる元肥の方法です。
- 栽培するスペース(畝)を決め、土壌phの調整が必要な場合は苦土石灰をまいておきます。
- 1から一週間後に完熟堆肥(牛糞など)1㎡あたり1kgを畝全体にまきます。
- クワで堆肥を土にすきこむようによく混ぜます
- さらに緩効性肥料15g程度をを畝全体に撒いて、クワでよく混ぜます。
- 畝幅50~60cm、高さ10㎝の畝を作ります。
- 肥料を施してから7日~10日ほどたってから種をまきます。
追肥
追肥は、花芽がついたころに行います。このとき、葉色(葉の色)を確認しましょう。葉色が薄く生長が遅い場合には追肥の必要性がありますが、葉色が適度に濃く生長が盛んな場合には追肥は必要ありません。
大豆は、空気中の窒素を自分の養分として吸収することができます。そのため、追肥をするとしても少量で様子を見ましょう。過繁茂(葉や枝が多くなりすぎて混む様子)にならないように注意が必要です。
追肥を行うときは、マルチをめくって畝の肩に肥料を散布します。施肥量は、化成肥料15g程度が目安ですが、大豆の生長や土壌の肥沃度によって調整してください。肥料を施したら、まいた肥料が隠れる程度に肥料と土を混ぜ合わせるように軽く耕しましょう。マルチングをしている場合は、マルチをもとに戻します。
その後は2週間後に追肥を行います。葉色が濃くなっている場合は肥料は不要です。生育の途中で葉の色が悪くなるようなら、液体肥料を与えて様子をみるとよいでしょう。
鉢植え・プランター
鉢植えや、プランターなどで育てる場合は、市販の元肥入りの野菜の培養土などが便利です。自分で配合する場合は、赤玉土7、腐葉土2、バーミキュライト1を混合します。自分で配合した場合や、元肥が入っていない場合は、緩効性肥料を施します。
プランターの場合は水やりなどで肥料が流れやすいので、地植えより追肥は多く与えます。大豆の追肥は、液体肥料がおすすめです。花が咲いたら、最初の追肥をしましょう。水やり代わりに与えるか、薄めた液肥を直接葉や茎に霧吹きなどで葉面散布してもよいでしょう。その後、2週間後に同様に肥料を与えます。生育の途中で葉の色が悪くなるようなら、液体肥料を与えて様子をみるとよいでしょう。
土壌について
おいしい野菜をつくるには、土づくりは大切です。大豆は、有機質が多く保水性がよい土が適しています。連作は嫌いますので、3年~4年の輪作にしましょう。他のマメ科(インゲン・エンドウ・ソラマメ)との連作もできません。
牛ふんなどの堆肥は、植え付け1か月前までには行いましょう。土壌酸度(pH)は、6.0〜6.5です。土の酸度が高いようなら、苦土石灰で調整します。
堆肥には、動物の糞をつかった牛糞、馬糞、豚糞、鶏糞、植物性のバーク堆肥、腐葉土などがあります。土壌の改良には牛糞、馬糞、パーク堆肥、腐葉土などがよいでしょう。鶏糞は肥料分が多くふくまれていますが、土壌改良効果は少ないです。鶏糞は肥料としてつかうのがおすすめです。
未発酵のものはガスなどがでて作物に影響を及ぼすことがあるので、完熟堆肥を使うのが安心です。未発酵のものをつかうときは植え付けの1か月前ほどに施しておくとよいでしょう。
大豆におすすめの肥料
大豆は、肥料過多になるとつるボケして実がつかないとよく言われますが、これはマメ科特有の性質にあります。マメ科の植物は、根っこに瘤(こぶ)のようなものがたくさんあります。これは根粒(こんりゅう)と呼ばれ、中には根粒菌という土壌微生物が共生しています。この根粒菌が植物に欠かせない窒素を作り出しているのです。
そのため普通の野菜と同様に窒素を与えると、窒素が多すぎて葉や茎が大きく育ちすぎて、そちらに栄養がいってしまうため実がつかなかったり、大きくならなかったりします。
そのため大豆に与える肥料は、窒素を控えめにする必要があります。結実をよくするためリン酸やカリウムは必要です。窒素を控え、実をつけるのに必要なリン酸(P)と、根肥といわれるカリウム(K)を高めた肥料がおすすめです。
堆肥などの有機物は根粒の活性化させるので、畑などでは堆肥を使い、まめ用の肥料を使うのがおすすめです。追肥には、速効性の窒素肥料の硫安がおすすめです。
その他 大豆の肥料で気をつけるポイント
中耕・土寄せ
根粒菌を活性化させるには中耕・培土が大切です。本葉2~3枚の頃に1回目、本葉5~6枚の頃に2回目を行いましょう。株の周りを軽く耕し、株元に土を寄せます。中耕は除草のためにも重要な作業です。
肥料量は育てる場所で違う
窒素分が多いとつるボケをおこし、実がつきにくくなる大豆ですが、育てる場所によって肥料量は調整しましょう。毎年野菜を作っている畑は、肥料が土に残っていることもあります。その場合は肥料は控えめにして、追肥で調整しましょう。
農家では水田から転換して大豆栽培をする人も増えていますが、水田などは地力が弱いので堆肥や有機肥料をつかって生育初期に窒素分を多く施肥するとよいでしょう。