この記事では、油かす肥料の作り方や液体肥料としての活用方法について、詳しく紹介します。
油かす肥料とは
油粕(油かす)は、ナタネ(菜種)やダイズ(大豆)から油を搾る工程の残りかすを指し、それを主な原料として使用する有機(有機物)肥料を油かす肥料と呼びます。
油かす肥料は、その油かすの種類によっても成分が異なります。
ナタネ(菜種)油かすは、窒素が主成分で、リン酸やカリウムも多少含んでいることが特徴です。また、土壌で分解されるのが遅いため、効き目が長い、遅効の肥料ということになります。
ダイズ(大豆)油かすも、窒素が主成分ですが、リン酸やカリウムをあまり含んでいないのが特徴です。また、土壌で分解されるのが早いため、ナタネ(菜種)油かすと比較すると、効果が表れるのが早い、即効の肥料ということになります。
単位:% | ナタネ(菜種)油かす | ダイズ(大豆)油かす |
---|---|---|
窒素(N) | 5 | 7 |
リン酸(P) | 2 | 1 |
カリ(K) | 1 | 2 |
油かす肥料は作れる?
その名前から、家庭で使った食用油の廃油や天ぷらの油かすを使って、油かす肥料を作ろうと考える方もいるかもしれませんが、それはできません。そもそも油かす肥料は、絞りカスが原料です。
市販の油かす肥料は、ダイズやナタネなどの絞りカスを原料に肥料として使いやすい形に製造されて販売されています。基本的には、市販で販売されているものを購入したほうが安全かつ、すぐに手に入ります。
肥料として使用する場合は、必ず市販のものを購入するようにしましょう。
但し、油かすを利用して液体肥料(液肥)を作る方法はあります。
油かすを利用した液体肥料の作り方・使い方
油かすは、液体肥料(液肥)として加工し、施用することもできます。液肥にすることで、発酵・分解が進んだ状態となり、化成肥料のように速効性が高くなります。
油かす液肥の作り方
油かす(油粕)に水を加えて、液体肥料(液肥)を作り、追肥に使用する方法もあります。
- 手順1材料を用意する
各材料を用意します。
油かすと水は、1:10〜15程度で混ぜ合わせるので、容器や水はそれに合わせて用意しましょう。例えば、油かすを100g使う場合には、2Lペットボトルと水1Lを用意すると良いでしょう。2Lペットボトルを用意する理由は、空間を空けて振って混ぜやすくするためです。
- 手順2ペットボトルなど容器に油かすを入れる
油かすを入れるときは、紙などを漏斗状に差し込んで実施すると入れやすいです。
- 手順3水を入れ、振ってよく混ぜ合わせる
- 手順4毎日、撹拌しつつ発酵させる
可能であれば毎日、振って混ぜ合わせましょう。また、発酵が始まりガスが発生しますので、定期的にガス抜きをすることも重要です。
- 手順5約1ヶ月後、完成する
油かす液肥の使い方
完成した油かす液肥は、そのまま使用せずに希釈して散布します。
作物や土壌の状態によっても異なりますが、2~10倍ほどに希釈して与えると良いでしょう。まずは、薄めから試してみるのが良いです。
油かす液肥は、すでに醗酵が進んでいる状態なので、植物が吸収しやすくなっており、効果が現れるのが早いです(速効性)。
油かすのその他の利用方法
油かす(油粕)肥料を材料に、「ぼかし肥料」を作成する方法もあります。油かす(油粕)肥料には窒素(チッソ)が多く含まれるので、リン酸(リンサン)が多く含まれる骨粉などと組み合わせることが基本となります。
廃油から肥料を作ることもできる
油かす肥料は、家庭で使った食用油の廃油や天ぷらの油かすを使って作るものではないと先述しました。但し、廃油から肥料を作るという方法はあるようです。
私は実際に試したことがありませんが、使い終わった食用油を米ぬかや堆肥、腐葉土と混ぜ合わせて発酵させることによって、肥料を作ることができるようです。イメージとしてはぼかし肥料や堆肥の作り方と似ていると思います。
検索をすると、いくつか実際に作った方の情報がヒットしますので、興味のある方は探してみると良いでしょう。
油かす肥料の使い方
油かす肥料は、元肥・追肥のどちらの用途にも使用可能です。一般的に粉末の油かす肥料は、元肥(基肥)として土作りの際に混和させることが多いです。
ただし、微生物の働きにより分解される過程で発生するガス(アンモニアガスや亜硝酸ガス)に芽や根がさらされ、枯れることがあります。これを避けるため、作付けの2週間以上前には土に混ぜるようにしましょう。
また、油かす肥料には固形のものもあります。固形油かす肥料は、油かすのほかに米ぬかや骨粉などの有機質、ミネラル分(海藻成分)、フルボ酸などが混ぜ、水で練り込んだものを発酵・乾燥させたものです。追肥に使用することができ、用土の上に置くことで効果を発揮します。
事前に発酵させ「ぼかし肥料」として利用する方法や、水を加えて発酵させ液体肥料(液肥)として追肥に利用する方法もあります。
油かす肥料の種類
油かす肥料は、原料によって下記の種類に分けることができます。
- 菜種油かす(ナタネ油かす)
- ペレット菜種油かす
- 大豆油かす(ダイズ油かす)
- ニーム油かす
- 椿油粕
- 骨粉入り油かす
- 発酵油かす
- 米ぬか油かす
- カポック油かす
- アマニ油かす
- ゴマ油かす
- ヒマ子油かす
菜種油かす(ナタネ油かす)
菜種油かすとは、ナタネの種子を炒ってタンパク質を固めることで油分を分離しやすくし、それを蒸熱圧搾して油分を取り除いたカス、もしくは搾油不十分なカスを溶剤で再抽出した残りカスを指します。色は黄褐色、または黒褐色です。
菜種油かすは、製造方法によって土壌中における分解速度が異なり、油分の含量が高いほど遅くなります。最近では製造方法や品質管理がしっかりされているので、他の有機質と比較しても効きの遅さなどは問題視されません。
また、ペレット化されたペレット菜種油かすも人気です。菜種油かすは、施用後の分解過程での悪臭や植物生育の阻害作用などデメリットがありますが、ペレット化することでこれらの問題を軽減しています。近年では鉢植え植物や盆栽などに重宝されています。
大豆油かす(ダイズ油かす)
大豆油かすは、通常、黄大豆を原料として搾油した残りカス、もしくは有機溶剤で油を溶かし取り除いた残りカスを指します。家畜の飼料や調味料の原料になることもあります。
大豆油かすは、比較的無機化が早く、肥効が速やかに現れやすい肥料です。但し、低温下で大豆油かすの分解が悪いため、注意が必要です。
ニーム核油かす
ニーム核油かすは、ニームの実からオイルを絞りとったカスです。ニームは害虫忌避効果があることで有名ですが、ニーム核油かすにもその効果があるとされています。
そのため、肥料分としての効果だけではなく、害虫の防除としての効果も期待できます。また、有機JAS適合資材に認定されている資材もあります。
椿油かす
椿油の絞りカスも肥料として使えます。窒素成分施肥を主目的として使用する油かす肥料となります。
椿の実に含まれるサポニンの界面活性効果により、土壌改良効果が期待されます。
また、古くよりナメクジ、カタツムリ、ジャンボタニシ、コガネムシ幼虫などに対して効果があるとされていますが、椿油かすは農薬として登録されていませんので、ジャンボタニシ等の防除の目的では使用することができません。魚毒性も強いため、肥料として使用する際にも周囲の環境に注意してください。
カポック油かす
カポックは、ジャワやフィリピンなどに生育する植物で、その果実から綿と種子を採取します。種子から油を搾り取ったものがカポック油かすとなります。肥料としての成分比は、他のものとそこまで変わりません。
アマニ油かす
アマの種子を水圧法などによって圧搾したものがアマニ油かすです。肥料としての成分比は、他のものとそこまで変わりません。
ゴマ油かす
ゴマ油かすとは、黄ゴマや白ゴマの種子を軽く炒った後、圧搾して油を取り除いたカスです。肥料としての成分比は、他のものとそこまで変わりません。