ぼかし肥料は、米ぬかや油かす、籾殻(もみ殻)、鶏糞(鶏ふん)などの有機質や生ゴミを原料に作ることができます。この記事では、各種ぼかし肥料の簡単な作り方を詳しく解説します。
各種ぼかし肥料の簡単な作り方・手順一覧
ぼかし肥料の作り方は、原材料や発酵の仕方、発酵に使う菌の種類によって、細かな違いがあります。ぼかし肥料の製造は、感覚的に行われる部分も多いです。例えば、発酵が進んでいるか、終わったか、成功したかなどを判断するためには、見た目(白カビの生え具合など)や匂いの情報が大事になってきます。
気温が高い時期はウジ虫が発生しやすかったり、腐敗してしまうリスクが高かったりするので、初心者の方は気温の低い冬期に作るとよいでしょう。
ぼかし肥料を作る前に用意したいもの
ぼかし肥料を作るにあたって、原材料や発酵菌などが必要になることはすでにお分かりいただけたと思いますが、その他にも必要なものがあります。下記を例に、ぼかし肥料づくりの準備をしてください。
- スコップ、移植ゴテなど
- ビニールシート(原材料と発酵菌の混合などに使用)
- 衣装ケース、発泡スチロール、ジップロック、ビニール袋など(限られたスペースで発酵を進める場合)
上記のものに加えて、pH計やEC計などがあると、発酵の目安や含有されている養分濃度の確認ができるので便利です。
米ぬかぼかし肥料の作り方
米ぬかぼかし肥料は、好気性発酵でも嫌気性発酵でも作ることができます。どちらが良いか?という議論はよくあるのですが、難しい化学の話となるため今回は省略します。
嫌気性発酵でも好気性発酵でも得られる肥効(肥料の効果、養分)はほぼ同じです。今回は、好気性発酵の場合では必要となる切り返しなどの作業が不要で手間がかからず、効率よく微生物を増やすことができる発酵促進剤を使った嫌気性発酵での作り方を紹介します。
- 手順1米ぬかなど原材料と水の混ぜ合わせ
米ぬかなど原材料と水を混ぜ合わせます。
- まず最初に米ぬかなどの原材料と発酵促進剤をビニールシートなどの上に広げます。
- その上から水をジョウロなどで加えながら、水分が均等になるように混ぜ合わせます。
- 水分量は混ぜ合わせながら加減をします。目安は混ぜ合わせた材料を強く握るとだんご状になり、軽い力で崩れるくらいが良いです。水のあげすぎには要注意です。
- 手順2容器への格納
混ぜ合わせた米ぬか等を厚手のビニール袋や発泡スチロールの箱、フタのできるプラスチック箱、バケツなどの容器に入れ、口をしっかりと閉め、密閉状態にします。
嫌気性発酵をするため必ず空気に触れないように密閉してください。量が少ない場合はジップロックなどで作られる方もいるようです。
- 手順3保管・発酵
平均気温の積算温度(作った日から日平均の気温を足し算した数値)が600℃以上(平均気温を20℃と考えると30日前後)になると発酵期間終了の目安です。一般的に発酵期間は長ければ長いほどよいと言われています。
- 手順4完成の確認
ぼかし肥料完成の判定基準としては下記2点があります。腐敗臭がした場合や青カビで埋め尽くされてしまった場合は密閉度が悪かったりして失敗した可能性があるので土壌に埋め戻すか、一部を使って再度発酵させましょう。
- pH(酸性度)が5以下になった
- 甘酸っぱい匂いがする
- 手順5保管
保管は密閉したそのままの状態を保ち続けます(嫌気性発酵の場合は、一度でも開けてしまうと空気に触れてしまうため保管が難しくなります)。1日の温度変化が少ない暗いところで保管してください。
長期に渡って使用し続けたい場合というときには、風の通しの良い日陰に完成したぼかし肥料を広げて乾燥させましょう。乾燥させると微生物による発酵も止まり保存が可能となります。乾燥させたものは袋に入れるなどして保管しましょう。但し、肥効の低下やカビの発生などのリスクがありますので、半年以内に使い切ることをおすすめします。
籾殻ぼかし肥料の作り方
籾殻ぼかし肥料は、好気性発酵でも嫌気性発酵でも作ることができます。籾殻ぼかし肥料は、玄米アミノ酸を使って発酵させる作り方が主流のようです(メーカーの公式サイトにも記載のある作り方です)。
籾殻ぼかし肥料の詳しい作り方については、下記の記事をご覧ください。
EMぼかし肥料の作り方
EMぼかし肥料は、米ぬかなどの有機物資材を原料に作る方法と生ゴミなどを原料に作る方法などがあります。基本的にEMを使う場合は、嫌気性発酵をさせます。
- EMボカシⅠ型:米ぬかにEMを混ぜて発酵させたもの
- EMボカシⅡ型:米ぬかや油かす、魚かすなどとEMを混ぜて発酵させたもの
- EM生ごみ堆肥:EMぼかしⅠ型を使って生ごみを堆肥化したもの
EMぼかし肥料の詳しい作り方・使い方については、下記の記事をご覧ください。
生ごみぼかし肥料の作り方
ぼかし肥料は、家庭から排出される生ゴミからも作ることができます。SDGs(持続可能な開発目標)に則った生活が大事だと言われる昨今ですが、生ゴミから畑に使う肥料ができるとなれば、「地球にも優しい+お財布にも優しい」の一石二鳥になりますよね。
生ゴミを使ったぼかし肥料の作り方については、下記の記事をご覧ください。
好気性発酵と嫌気性発酵の作り方の違い
発酵させる主な方法として、「好気性発酵」と「嫌気性発酵」があります。
それぞれ発酵のさせ方、作り方を簡単にまとめていますので、参考にしてください。
その他ぼかし肥料の作り方
その他にも、鶏糞(鶏ふん)などの有機物資材やコーランネオと呼ばれる人気の発酵促進剤を使った作り方もまとめています。
ぼかし肥料を作るときの原材料
ぼかし肥料は、その原材料となる有機物資材によって成分比が変わってきます。
ぼかし肥料の原料に向いている主な有機物資材の成分をまとめてみましたので、参考にしてください(製品によって、成分比が異なる場合がありますので注意してください)。
米ぬか・籾殻
米ぬかは、精米するときに玄米の表面が削られて粉状になったものを指します。精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用できます。リン酸が多く含まれ、糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
米ぬかは脂質を多く含み、有機物に含まれる炭素(C)含有率(%)と窒素(N)含有率(%)の比を表すC/N比(炭素率)が高いため、土壌中での分解が相対的に遅いので、そのまま使用するよりもぼかし肥料の原材料として使用するのが一般的かと思います。
米ぬかはコイン精米機やJAのライスセンターでもらえることもありますし、資材として販売されていることもあります。
籾殻(もみがら)は、籾(籾米)の最も外側にある皮の部分のことを指します。籾殻は、ケイ酸を多く含み、籾殻くん炭として田畑に散布したり、ぼかし肥料の原材料として使われたりします。
油かす
油かすには主に、大豆からできた「大豆油かす」、菜種からできた「菜種油かす」が一般的です。油かす自体も肥料としてよく使われる資材ですが、米ぬかなどと混ぜ合わせて発酵させることでぼかし肥料になります。
魚かす
イワシ、サンマ、マグロなど魚類から魚油を搾り取ったあとのかすを魚かす(魚滓)と呼びます。また、さらに乾燥・粉末にしたものを魚粉肥料と呼びます。魚かすと魚粉肥料、とても似ていますが、肥料取締上、全く別物として区別されています(魚かすは特殊肥料、魚粉肥料は普通肥料)。
鶏ふん(乾燥鶏ふん)
鶏ふん(鶏糞)とは、ニワトリの糞を乾燥させて作った有機肥料の1種です。乳酸菌や酵母、光合成菌などの微生物によって、ぼかし肥料にすることができます。
コーヒーかす(コーヒーの出がらし)も使用できる
実は、ご家庭で出るコーヒーかすも発酵させることによって肥料として使用することができます。最近では、コーヒーかすを肥料として使用できることをご存知の方も増えてきましたが、実はそのままでは肥料として使用することはできません。そのまま散布しても、コーヒーかすに含まれる阻害物質や炭素率(C/N比)が高いことによる窒素飢餓が起きてしまい、かえって悪影響となります。
コーヒーかすを発酵させて、ぼかし肥料とすることで本来のコーヒーかすが持っている栄養分が吸収されやすくなります。
ぼかし肥料作りを助ける、発酵促進剤などの資材
ぼかし肥料のもととなる有機物をそのまま置いておくだけでは、ぼかし肥料を作ることはできません。有機物を分解・発酵させることによってぼかし肥料となります。その過程において微生物の存在が欠かせません。
通常、微生物を増やし、より発酵を促進させるために、発酵促進剤などを添加します。コーランネオやEM菌が含まれた資材(EM1号、EM-1など)などが発酵促進剤に当たります。実施にぼかし肥料を作る際には、原材料と一緒にこれらの資材も準備しておくと良いでしょう。
ぼかし肥料の概要・効果
ぼかし肥料とは、油かすや米ぬか、籾殻(もみ殻)、鶏糞(鶏ふん)など複数の有機質資材を配合させたものに土(土着菌)や発酵促進剤などを加えて、発酵させた肥料のことを指します。昔は有機質を土などで肥料分を薄めて肥効を「ぼかす」としていたことから、ぼかし肥料という名前がついたと言われています。
ぼかし肥料の特徴と効果、メリットについては、以下のことが言えます。
- 原料に有機質資材を使用することで、窒素・リン酸・カリウム(カリ)の三大要素を補うだけではなく、二次要素(多量要素)や微量要素、アミノ酸などの補給効果も期待できる。
- 有機質資材を発酵させることで、効き目がすぐに現れやすい。緩効性、遅効性という有機肥料の特長と化学肥料と同じような速効性を併せ持つことによって、追肥として使える。
- 有機質資材を微生物が分解するときに起こる発熱や有害物質による影響のリスクを小さくできる。
- 土壌の物理性や生物性が改善できる。
- 有機質肥料(堆肥など)の場合、植え付けや播種(種まき)の2週間以上前に混ぜ込んで微生物による分解が必要だが、発酵済みのぼかし肥料はすでに分解が進んでいるため、熟成済みの場合は散布してからすぐに植え付けや播種ができる。
- 化学肥料(化成肥料)ではないので、有機肥料を使った栽培に向いている。
有機質資材(堆肥やその他有機質肥料)は、一般的に微生物に分解される事によって植物が吸収されやすい状態に変化し、栄養分として取り込まれます。
微生物による分解は、その有機質資材の性質によりますが時間がかかるため、植物に吸収されるまでに時間がかかります。また、使用方法によっては、微生物が分解をする際に発生する熱や有害物質によって、根が傷んでしまう可能性もあります。
ぼかし肥料は、発酵させることにより、有機肥料(有機質肥料)に比べて植物が吸収することができるアンモニア態窒素、硝酸態窒素に無機化されるため、施してからすぐに肥料が効き始める速効性が備わっています。緩効性、遅効性という有機肥料の特長に、速効性を併せ持つことによって、より使い方の幅が広がる肥料となっています。
また、すでにある程度発酵が進んでいるため、微生物の分解による影響を少なくできます。微生物が住み着いていることと、有機物資材を使用しているということから、土壌の物理性(団粒構造)や生物製の改善の効果も期待できるでしょう。
ぼかし肥料の使い方
ぼかし肥料は、元肥・追肥として使用することできます。ただし、ぼかし肥料は速効性を兼ね備えているとともに窒素も多く含まれているため、使い方には注意が必要です。効かせすぎると樹勢が強くなりすぎたり、病害虫による被害を受けやすくなったりします。
私の印象ですが、速効性があるので、追肥として使用するほうが栽培しやすいかもしれません。元肥として使用して定植後に樹勢が強くなりすぎてしまう方を多く見てきました。
また、ぼかし肥料は、原材料によって成分が異なります。そのため、一概に「どの程度撒けばいいか」ということが言えません。含まれている成分と土壌、作物の様子を見ながら、少量から施していくと良いでしょう。