イヌホタルイとは?
科 | カヤツリグサ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | cirpus juncoides Roxb. var. ohwianus T. Koyama |
別名 | – |
イヌホタルイは、東アジア,東南アジアからインドにかけた地域の水湿地に分布する雑草で、日本では全国の水田や水湿地で多く発生しています。イヌホタルイに似ている仲間で、ホタルイ、タイワンヤマイ、コホタルイなどがあります。ホタルイという名は,ホタルのいる湿地に生える,または小さい穂をホタルと見なして名づけたと言われています。(ホタルイは湿地,沼地などに生育し,水田には発生しません。)
根茎から発生、生長する多年生雑草で、叢生して株を作っていきます。茎は直径3~5mmで,やや角のある細い円柱形の緑色をしています。高さは20~80cm程です。葉は,鞘状で口部は斜めに切れています。花茎が成長し、8月ごろに開花を迎えます。
イヌホタルイのSU剤抵抗問題
種子から発生するイヌホタルイは、種子形成量が多く、茎基部が肥大して越冬し,翌年の発生源になります。近年SU剤(スルホニルウレア系除草剤)に抵抗性のあるイヌホタルイが全国的に発生していて、農家の方の頭を悩ませています。
イヌホタルイの除草のポイント
イヌホタルイの防除方法は、まず、種子形成量が多いので,種子発生時に初期除草剤や一発処理剤によってしっかり防除する必要があります。SU剤(スルホニルウレア系除草剤)に抵抗性のあるイヌホタルイの場合には、抵抗性生物型に有効な成分を含む除草剤を使うようにしましょう。
茎基部が肥大して越冬したものは翌年の発生源となるので,水田の耕起,代かき、手取り除草を行って圃場から持ち出す等、除草します。
おすすめの除草剤と具体的な使用時期
稲の生育初期、つまり田植え(移植)前後に、下記のような土壌処理剤や一発処理剤で抑えていく方法があります。
また最近では日産化学の「アルテア」成分が配合された一発処理剤(銀河、月光、コメット、シグナスなど)はSU抵抗性を持つイヌホタルイにも効果があります。粒剤だけでなく、フロアブル剤や水田にそのまま投げ入れれるジャンボタイプもあります。
中期系はこちらおすすめです。
初期を過ぎてしまった場合は、初期剤や一発処理剤の後に使用する、中期・後期の除草剤を使うことになり、体型的に防除していく必要があります。成分ベンタゾンが含有されているクリンチャーバス、バサグラン粒剤、液剤などが良いでしょう。
特にヒエクリーンバサグラン粒剤は、ノビエに対し優れた効果を示すヒエクリーンと、ノビエ以外の一年生広葉雑草や多年生雑草、オモダカ等の難防除雑草までの水田雑草に優れた効果を示すバサグラン(ベンタゾン液剤)をひとつにした水稲用中・後期除草剤の代表格です。
SU(スルホニル尿素)剤に抵抗性を示す一年生広葉雑草(アゼナ、ミゾハコベ等)、コナギ、ホタルイ等に対しても高い除草効果を発揮します。また、多年生難防除雑草でSU抵抗性が確認されているオモダカに対しても優れた効果を示します。
重要なことは、どの雑草も成長、繁茂してからの除草は困難であるということです。地下茎を伸ばしたり、草丈が伸長する前、できるだけ初期に除草、防除することを心がけましょう。
また、田面散布の際は、田面の土壌表面がなるべく均一になるよう、ていねいに砕土・代かきし、均平となるように整地するのが重要です。(湛水散布の際は、水の出入りを止めて湛水のまま田面に均一に散布します。)
散布方法は落水散布又はごく浅く湛水して散布など、各農薬の使用方法をしっかりと確認するようにしましょう。
除草剤を使わない除草方法
農薬を使わずに雑草の発生を防いだり、除草したりする方法として、多くの農家さんが色々な方法を試しています。水田雑草を防ぐためには様々な防除方法を複合的に行い、統合的に防除することが大事です。
ここでは、その方法を何点か紹介しますので、興味あるものがあれば、実行してみてください。
お酢を希釈して散布する
スーパーやドラッグストア、ホームセンターに売っている食酢をイネに影響がないよう酸度2・5%程度に希釈して散布すると、コナギ、イヌホタルイ、オモダカといった水田雑草を枯らす効果があるとして、お酢散布を行っている農家の方がいます。実際かなりの速効性が見られるようです。
出穂後のイネにかかると影響があるので、出穂後のイネにかけないようにするのがポイントです。(出穂前のイネには影響はあまりないとのことです)
アイガモを利用した除草
アイガモはクログワイ、コナギ、ノビエを含む雑草や、ウンカといった害虫を食べてくれるので、生物的防除になります。
イヌホタルイとクログワイの違い
クログワイとイヌホタルイは見た目が似ていますが、防除方法が、表層のタネから生えるイヌホタルイは初期除草が効きやすく、クログワイは冬に耕起して塊茎を地表に出す、と異なってきます。このため、該当雑草がどっちなのか判別する必要があります。
根塊があるのがクログワイですが、引き抜く際に根塊がちぎれるケースも多く、根塊があるかどうかで判断は難しいのが実情です。
一番やりやすい方法は、茎の断面を見る方法です。
写真のように、クログワイは中に節がありますが、ホタルイはありません。クログワイの茎をつまんでなぞると、節が弾けて『プチプチッ』という音がするので、音で確認する農家の方が多いです。