ホオズキカメムシはナス科植物に被害を与える害虫で、除草や木酢液の散布、農薬の使用が有効です。農薬はRACコードに基づいてローテーション散布し、IPM防除体系で総合的に対策を行うことが重要です。
ホオズキカメムシとは?
カメムシは、カメムシ目のカメムシ亜目に属します。頭は先端が尖った三角形の形状、体は五角形に近しい形状が特徴です。非常にたくさんの種類があり、四角いミドリカメムシから細長いクモヘリカメムシなど、形は様々です。
そのなかでもホオズキカメムシ(Acanthocoris sordidus (Thunberg))はヘリカメムシ科の一種で、ホオズキによく寄生することから、ホオズキカメムシと命名されています。
卵は綺麗な赤褐色で、葉っぱの裏や落ち葉に産卵します。産卵は6月ごろに葉裏に行なわれ,幼虫の発生は6~9月にかけて見られます。
成虫の体長は11~12mm,体色は灰黒褐色で,体表には短い剛毛が密生し,光沢がないのが特徴です。成虫で越冬し,5月上旬から畑、圃場に飛来し、侵入するようになります。ナス,ピーマン,ホオズキなどのナス科植物やアサガオなどがおもな寄主植物になります。
どうしてホオズキカメムシは害虫なのか?
ホオズキカメムシの幼虫、成虫は、ナスなどの葉や茎を吸汁します。吸汁された植物は、形が萎縮、変形し、落果したり、最悪腐敗してしまい、果樹、葉菜類、花き問わず、多大な被害が出てしまいます。
食害がひどい作物は出荷できないので、収穫量も減少してしまいます。
ホオズキカメムシに限らず、甚大な被害を与えるカメムシに、チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシ、アオクサカメ、クロカメムシ、ミナミアオカメムシなどがいます。
ホオズキカメムシに効くおすすめの農薬
ホオズキカメムシは農作物の代表的な害虫のため、下記のように、多くの適用農薬があります。
ホオズキカメムシに効く代表的な農薬の種類
有機リン系 エルサン、スミチオン
有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、エルサン、オルトランやスミチオンがあり、カメムシの場合、エルサンが適用できます。
ネオニコチノイド系 ダントツ、スタークル、アドマイヤーなど
ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。
浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。ネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。
家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。
ナスで使える農薬
ピーマンで使える農薬
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤(乳剤など)や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
防除する際のポイント
近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させるために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。
また、農薬の散布には噴霧器など適切なツールを使うと効果が格段に上がります。噴霧器、散布機につては下記を参考にしてみてください。
ホオズキカメムシを無農薬で防除する方法
カメムシ駆除には主に農薬が使われますが、農薬を使わないで駆除する方法もあります。直接捕る方法もありますが、匂いも強烈なので、下記を参考に、取り入れてみてください。
除草
カメムシは雑草に身を隠すため、雑草が多いと、カメムシの発生を助長してしまいます。また、イネ科雑草(特にスズメノカタビラなど)を好んで寄生植物にします。このため、圃場をしっかり除草することは重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。
カメムシが大好きなイネ科雑草を減らすために、シソ科の多年草であるミント系を植えて、イネ科雑草を駆逐させ、減らす方法をとっている方もいらっしゃるようです。
木酢液を散布する
カメムシは木酢液を嫌うため、木酢液は忌避剤に使用できます。ペットボトルなどを活用して原液を100倍程度に薄めて、スプレーで作物の周りに散布するのが効果的です。(ハッカ液やタバスコを薄めたものも忌避剤として使えるという意見もあります)
防虫ネット,忌避灯(黄色蛍光灯),袋かけ(二重袋)
水稲ではなく、果樹園などの場合に限られますが、4mm程度の防虫ネットや、黄色の蛍光灯、また物理的に果実の袋かけは有効な防除手段になります。
そのほか、詳しい情報は下記を参考にしてみてください。