サッカー場などの競技場から公園、ご家庭の庭まで、芝生はさまざまなところに植えられています。芝生の緑色は、心安らぐ空間を与えてくれます。
高麗芝(コウライシバ)は切り芝(苗芝・ソッド)として一般的に販売されています。ホームセンターなどでも切り芝を見かけたことがあるのではないでしょうか?
実は、切り芝の芝張りのほかにも種まき(播種・は種)によって、芝草を根付かせる方法もあります。特に西洋芝の種は一般的なホームセンターでも手に入りやすいです。
この記事では、実際にホームセンターで販売されている芝生の種の種類や基礎知識、種まきのやり方まで解説します。
種から育てられる芝生の種類
そもそも種から育てられる芝生の種類にはどのようなものがあるのでしょうか?
種から育てる芝生の種類、基本は西洋芝
種から育てる芝生は、基本的に西洋芝の品種が多いです。西洋芝の品種には、「寒地型」の品種と「暖地型」の品種がありますが、どちらのタイプも種から育てる品種ばかりです。
西洋芝には、暖地型の代表的な品種としてバミューダグラス、ティフトン芝(ティフトンシバ)、センチビードグラス、寒地型の代表的な品種としてケンタッキーブルーグラス、クリーピングベントグラス、トールフェスク、アニュアルライグラス、ペレニアルライグラスなどがありますが、どれも種から育てることが一般的です。
種子から育てるほうがコストが安くなるため、種での販売が主流になったと考えます。もちろん、切り芝(芝苗・ソッド)が販売されている品種もあります。
フェスク類、ライグラス類は地下茎、匍匐茎(ランナー)を持たない叢生型のため、種子によって繁殖させるほかありません。
逆に日本芝の代表的な品種である高麗芝(コウライシバ)は、芝苗(切り芝)を芝張りすることによる栄養繁殖が一般的です。
地下茎(地下匍匐茎) | 地上匍匐茎(ランナー) | 品種名 |
---|---|---|
○ | ○ | コウライシバ、ヒメコウライシバ、ノシバ、ビロードシバ、バミューダグラス、ティフトン芝、センチピードグラス、セントオーガスチングラス、ベントグラス類 |
○ | × | ブルーグラス類 |
× | × | フェスク類、ライグラス類 |
日本芝の野芝(ノシバ)も種から育てられる
日本芝には代表的な品種として、高麗芝(コウライシバ)と野芝(ノシバ)があります。どちらの品種も切り芝による栄養繁殖が主流でした。それは、発芽率が非常に低いためです。
野芝は生長が進むと、穂を付け種ができます。しかし、発芽率が非常に低い(20%前後)ため、種子による繁殖が難しいとされてきました。
ところが近年、野芝については発芽促進処理(催芽処理)による発芽率の向上によって、種子による繁殖が可能となり、種が市販化されるようになりました。
高麗芝(コウライシバ)の種はないのか?
野芝には発芽促進処理(催芽処理)された種が販売されていますが、高麗芝(コウライシバ)はどうでしょうか。実は、高麗芝については、日本で市販化された種は存在しません(少なくとも私は見かけたことがありません)。
高麗芝も野芝と同様、発芽率が低い品種であるため、そのままでの種子繁殖は難しいです。日本では基本的に栄養繁殖のみが行われていますが、近年アメリカでは種子が発売されたようです(芝生の基礎知識:芝草の種類 2 – 千葉グリーン技研)。
種から育てられる芝生の種類一覧
先述したように、西洋芝であれば多種多様な品種が、日本芝であれば野芝が種子から育てられるものとなります。
暖地型/寒地型 | 日本芝/西洋芝 | 芝草の種名 |
---|---|---|
暖地型 | 日本芝 | 野芝(ノシバ) |
暖地型 | 西洋芝 | バミューダグラス、センチピードグラス |
寒地型 | 西洋芝 | ケンタッキーブルーグラス、トールフェスク、アニュアルライグラス、ペレニアルライグラス、ベントグラス |
種と切り芝(芝苗・ソッド)、どちらも手に入る品種も多いです。それぞれ、メリット・デメリットがあるのでご自身の栽培イメージに合わせて購入すると良いでしょう。
ホームセンターでも芝生の種は購入できる
実はホームセンターでも芝生の種は購入することができます。園芸の専門店ではなく、カインズやコメリ、ビバホームなど一般的なホームセンターで購入が可能です。サカタのタネや独自のブランドの商品など、複数取り扱いがある場合もあります。基本的には西洋芝の種のみ取り扱いがある店舗が多いです。
以下に、ホームセンターで芝生の種を購入する場合の販売時期、価格感を紹介します。また、カインズで実際に販売されていた芝生の種も紹介します。
販売時期
芝生の種は基本的に1年中見かけることができます。実際に種まきをする時期は品種にもよりますが、春(3月〜5月頃)と秋(9月〜10月頃)が適期となります。品種によっては、出回る時期が限られるものもありますので、詳しくは店舗に確認すると良いでしょう。
価格感
価格は、ピンからキリまであるというのが正直なところです。品種や容量によっても価格が異なります。
ホームセンターで購入できるものは、おおよそ1円/g〜8円/gくらいの価格でしょう。ちなみに品種や発芽率にもよりますが、1平方メートルあたり20g〜50g程度の種を使います。
カインズで販売されていた芝生の種
カインズで実際に販売されていた芝生の種を紹介します。
サカタのタネ みどりの芝生 西洋芝のタネ
サカタのタネ「みどりの芝生 西洋芝のタネ」です。他の野菜作物の種と同じコーナーに陳んでいました。0.5㎡(平方メートル)用と少量使いたいというときに便利な商品です。
品種は複数種類混合されており、製造の時期などによって混合される品種が異なるようです。今回のものは下記の品種が混合されていました。発芽率は70%以上とされていました。
- ペレニアルライグラス リオビスタ
- クリーピングレッドフェスキューコンテンダー
- ケンタッキーブルーグラス エベレスト
もちろん、傷んだ芝生への追い蒔きとしても使えます。
価格は1袋220円(税込)でした。
CAINZ(カインズ) 緑の濃い西洋芝の種
カインズの自社商品、緑の濃い西洋芝の種です。同じく他の野菜作物の種と同じコーナーに陳列されていました。
2Lと大容量なので、床土への初めての播種(は種)も安心して使用できます。品種はペレニアルライグラスで、発芽率は90%以上とされていました。本商品のペレニアルライグラスは、下記の特徴があります。
- 芽が出やすくつくりやすい…発芽が早く安定し、発芽率の良い高品質種を使用。
- 暑さ、寒さ、病気に強く丈夫…耐寒性、耐暑性、耐病性に優れた品種を使用。
- 初心者でも庭をデザインしやすい…立ち株型芝なので、ほふく性・地下茎性のように敷地を超えてしまうリスクがない。狙った場所に芝生を作りやすい。
その他、芝生の種を購入できる場所
芝生の種は、その他にも購入できる場所があります。それは、ネット通販です。ネット通販であれば、何回も店舗へ足を運んだり、重いものを持ったりする必要がありません。最近では、情報提供もしっかりなされていますし、気軽に問い合わせもできます。
芝生(天然芝)の販売形態
天然芝の販売形態には、主に下記の3つの種類があります。
- マット芝
- ロール芝
- 種
マット芝
四角形に切り出された状態で販売され、切り芝とも呼ばれます。1枚単位で販売されていることは少なく、10枚1束となっていることが多いです。高麗芝(コウライシバ)やTM9は、切り芝として販売されることが多いです。
ロール芝
マット芝とは異なり、ロール状に巻かれた状態で販売されています。面積が広い庭の場合は、ラクに芝張りができるのでおすすめです。品種混合の西洋芝は、ロール芝として販売されているものを見かけます。
種
各品種について、芝生の種が販売されています。主に西洋芝が一般的です。切り芝よりも安く、コストが下げられる一方、栽培初期の管理が大変となります。追いまきなど、芝生のメンテナンスとして使用されることもあります。
芝生の種の蒔き方
種を蒔く時期
種まきをする時期は品種にもよりますが、春(3月〜5月頃)と秋(9月〜10月頃)が適期となります。種から育てられることが多い寒地型西洋芝は夏越しが難しいので、秋まきをおすすめします。
蒔き方
種の蒔き方はとても簡単です。西洋芝の場合の手順を下記に示しますので、参考にしてください。
- 手順1蒔き床(床土)を準備する
蒔き床(床土)を準備します。まず、芝生を栽培する場所の除草をしっかり行なってください。種から育てる場合は、芝張りしたとき以上に雑草の侵入が生長の障害になります。雑草は害虫を呼び寄せる原因にもなりますので可能な限り取り除いておきましょう。
その後、土壌の改良を行います。粘土質の土壌であれば、川砂などの洗い砂と土壌改良資材を混合して土壌に散布し、軽く耕しながら混和します。
すでに川砂など混和している土壌であれば、地表3cmに砂と同量の土壌改良資材を投入し軽く混ぜ合わせると良いでしょう。
- 手順2溝切りし、種を蒔く
蒔き床(床土)の準備が整ったら、レーキで地表面を引っかき、深さ1cm程度の溝を切ります。
全面的に溝を切ったら、種を蒔いていきます。種の量は、1平方メートルあたりライグラス類やフェスク類で20g〜50g、ケンタッキーブルーグラスで10g〜30g程度使用しますが、詳しくは商品のラベルを確認してください。
- 手順3覆土する
種をまんべんなく蒔いたら、レーキで覆土します。覆土する場合は、溝切りした溝に対して直角方向に引っかきます。このようにすることで、種に自然と土がかぶるようにします。
もちろん、種を蒔いたあとに川砂などで覆土しても構いません。ポイントとしては、種が砂や土で3mm程度覆われるようにすることです。
- 手順4農業用不織布、芝生養生シートで覆う
下記の効果を期待して、農業用不織布もしくは芝生養生シートで覆います。
- 地表面の保温、保湿
- 種の飛散、流亡の防止
- 鳥などの食害防止
詳しくは下記の記事をご覧ください。
- 手順5水やり(散水)をする
すべての工程が完了したら、最後にたっぷりと水やりをします。不織布などの上からでOKですので、しっかりと散水しましょう。
その後も発芽するまで2週間程度は、雨の日以外、ほぼ毎日散水するようにしてください。よく晴れた日は1日に2〜3回程度散水すると良いです。
また、芝草が2〜3cm程度になるまで養生期間とし、なるべく立ち入らないようにしましょう。
芝生の品種と適した栽培地域
種を蒔くときには、その土地に適した品種を選択することが重要です。
芝生に使われるイネ科植物(いわゆる芝、芝草)は、一般的に15属30種類以上あると言われています。それらは生育適温や栽培地域の違いによって、大きく「暖地型」と「寒地型」に分けられます。
また、芝は日本に自生するものと海外から導入されたものがあります。一般的に日本に自生する芝を「日本芝(日本シバ)」、海外から導入された芝を「西洋芝(西洋シバ)」と呼びます。
暖地型/寒地型 | 日本芝/西洋芝 | 芝草の種名 |
---|---|---|
暖地型 | 日本芝 | 野芝(ノシバ)、高麗芝(コウライシバ)、ビロード芝(ビロード芝・キヌシバ) |
暖地型 | 西洋芝 | バミューダグラス、ティフトン芝(ティフトンシバ)、センチピードグラス、セントオーガスチングラス、シーショア・パスパラム |
寒地型 | 西洋芝 | ケンタッキーブルーグラス、クリーピングベントグラス、トールフェスク、アニュアルライグラス、ペレニアルライグラス、クリーピングレッドフェスク、チューイングフェスク、ハードフェスク |
日本を例に適している芝の種類を説明します。北海道から東北北部では、気温が低いため暖地型の日本芝は適さず、ケンタッキーブルーグラスやベントグラスなどの寒地型西洋芝がよく使われます。逆に九州や沖縄では、高温多湿に強い野芝や高麗芝(コウライシバ)、暖地型西洋芝のバミューダグラスなどがよく使われます。