グリホサート不使用の除草剤として、アージランなどの選択性除草剤や非選択性のグルホシネート系、ペラルゴン酸系、お酢系の除草剤などがあります。使用時には植物や用途に応じた選択が重要です。それぞれを詳しく紹介します。
グリホサート不使用で、雑草の根まで枯らす除草剤
グリホサート系の除草剤の特徴は、すでに生長している雑草の葉茎に散布して枯らす「茎葉除草剤」で、吸収移行性型のため、薬液がかかった葉や茎だけでなく根を含めて全体を枯らす効果があります。
まずはグリホサート不使用で、根まで枯らす除草剤を紹介します。
アージラン液剤
アージランはアシュラムが成分で一年生、多年生雑草を問わず、広範囲の雑草に効き、多年生雑草の地下茎まで枯死させる優れものです。グリホサートと異なるのは、選択制除草剤であること。芝を枯らさずに、芝に生える雑草の広範囲に効くため、芝生の除草剤によくつかわれます。
畑でも使え、オヒシバ、メヒシバ、スズメノカタビラ(生育中)を防除することができ、生育中の広葉雑草にも高い効果:特にキク科雑草(ヒメジョオン、アレチノギクなど)に有効です。
2,4-D「石原」アミン塩(24d)
2,4-D「石原」アミン塩の成分は2,4PAジメチルアミン塩49.5%で、人畜毒性、環境影響が少なく、ホルモン・吸収移行型の茎葉処理剤です。オーキシン様の作用をもち,雑草の茎葉や根から吸収され,体内の植物ホルモンバランスを攪乱させることで生理的な障害を与え,茎葉を捻転(よじれ)させるなどののちに枯死させます。
特徴は、選択性除草剤で、広域雑草に効力を発揮し、イネ科の雑草には効果が弱いこと。難雑草であるヒメジョオン、アレチノギクなどのキク科の雑草に強い効果を表します。芝生を枯らさないので芝生の除草剤によくつかわれます。
MCPP液剤
MCPP液剤成分は、メコプロップ(MCPP)で、メコプロップ(MCPP)は、オーキシン型の植物ホルモン作用を有し、植物ホルモン作用を攪乱することによる細胞分裂異常により除草活性を有するフェノキシ酸系除草剤になります。芝生を枯らさないので、公園、工場などの芝生用除草剤として定評があります。
広葉雑草、特にクローバーなどの一年生の広葉雑草、またスギナに代表されるトクサ科の雑草に強い効果を発揮します。イネ科、キク科には効果が劣ります
非選択性(なんでも枯らす)除草剤
葉茎処理剤の除草剤には、薬剤がかかった植物何でも枯らす非選択性と、特定の植物にかかっても枯れない選択制除草剤があります。グリホサートは非選択性です。ここでは根まで枯らす効果はないけれど、非選択性の茎葉処理剤のグリホシネート系除草剤を説明します。
バスタ
バスタ液剤は最もメジャーなグルホシネート系の除草剤(液剤)で、バイエルクロップサイエンスが開発した青緑色澄明水溶性液体です。
効果の進展はグリホサートよりも早 く、1 ~ 3日で効果が発現し、5 ~ 20日で完全な効果がでますが、吸収移行型ではないため、根までは枯死せず、雑草・草はグリホサートに比べ、再生しやすい特徴があります。
ザクサ
ザクサ液剤は、明治製菓が除草剤開発研究において長年にわたり工業化を目指してきた、光学異性体の活性本体であるグルホシネートPナトリウム塩を有効成分としている、バスタと同様のグルホシネート系の除草剤(液剤)です。効果はバスタとほぼ同等で、農耕地での使用が可能です。こちらも原液を希釈して薄めて使用するタイプ
植物成分や酢を使った、人にやさしい除草剤
とにかく安全な除草剤を使いたいという人には、植物由来の成分をつかった除草剤や、食酢をつかった除草剤もあります。散布された葉茎のみに効果がでるので、グリホサートのように根まで枯らすことはできません。
ペラゴン酸系除草剤
ペラルゴン酸は、天然にも存在する、お茶やとうもろこし、柑橘、ホップなどの食品に含まれる、直鎖飽和脂肪酸のひとつです。速効性のある除草効果があり、一年生の雑草やしつこいクヅやドクダミなどの多年生雑草など幅広い雑草への効果が期待できます。また、土壌中で速やかに分解されるので、環境に及ぼす影響も少ないのが特徴です。
ペラゴン酸系の除草剤は、アースガーデンの「みんなにやさしい除草剤 おうちの草コロリ 」や、フマキラーの「虫よけ除草王・虫よけ除草王プレミアム」があります。どちらも農薬登録されていないので農耕地では散布できません。フマキラーの虫よけ除草王は、殺虫成分であるトランスフルトリンを有し、クモやムカデ、アリを退治し、またトラロメトリンという虫を寄せ付けない成分で、虫を寄ってこない効果もあります。
お酢系除草剤
お酢は強烈な酸性で、その酸の力でかけた場所の植物を枯らすことができます。食酢は農薬取締法により安全性が認められた特定防除資材(特定農薬)で、自由に使用が可能で、人体にも安全です。
一年生雑草、クズ、ドクダミなどの多年生雑草、またゼニゴケと、幅広い雑草へ効果が期待できます。酸の力でどんな植物でも枯れるため、枯らしたくない植物に飛散しないよう注意してください。ペラルゴン酸と同様、散布された部分のみに効果が出るため、グリホサート系除草剤のように、地中の根や地下茎まで吸引して枯らすことはできません。
お酢系の除草剤にいは、フマキラーの「カダン除草王シリーズ ビネガーキラー」トヨチューの「お酢の除草剤)があります。食品成分100%の食酢をつかった除草剤で、農耕地でも使えます。
その他の除草剤について
ここでは、グリホサートと同様に茎や葉にかけて枯らす「茎葉処理剤」の除草剤について商品や成分について説明してきましたが、除草剤には発生を抑制する」土壌処理剤もあります。
除草剤の種類については、詳しい記事がありますのでそちらも参考にしてください
抵抗性雑草について
同じ成分の除草剤を使い続けると、除草剤がきかない抵抗性を持った雑草がでてきます。近年この抵抗性雑草の問題は大きくなってきています。グリホサートも、ネズミムギ、オヒシバ、ヒメカムシヨモギなどが報告されていますが、それ以外にも多くの雑草が存在しています。
除草剤も殺虫剤と同様に、成分の異なる系統の除草剤をローテーション散布することが大切です。