ハダニは農薬に対して抵抗性を有しやすく、従来の農薬が効かないことが大きな問題になっています。ここでは、農薬を使わないでハダニを防ぐ方法や、できる限り農薬の回数を減らす防除方法を紹介します。
無農薬でハダニを駆除する方法
天敵防除
土着天敵を活かす方法
ハダニの土着天敵は主に、ダニヒメテントウ類やカブリダニ類、その他、様々な生物がいます。これらを殺さずに増やし、活躍してもらうことで、ハダニの発生を抑えることができます。そのためには、下記がポイントになります。
- 6〜7月に土着天敵も殺してしまうような殺虫剤の使用(有機リン系(IRAC 2)、ピレスロイド系(IRAC 3)、マシン油など)は避ける
- 6〜7月時のハダニの発生は、土着天敵を増やすために、ある程度目をつぶる
- 下草は天敵を温存し供給する場所になるので、株元を地面が見えるほど刈り込むのは避ける
また、ソルゴーなどを植えて、ソルゴーを土着天敵の住処として、土着天敵をたくさん発生させ、病害虫を防除する、通称「バンカー法」と呼ばれる防除方法もあります。ハダニ対策としてのソルゴー栽培は、ハダニが高温と乾燥した環境を好み、雨が苦手なため、ソルゴーの根元をしっかり灌水して湿った状態にしておくことが大事です。
市販の生物農薬を利用する
ハダニの代表例である、ナミハダニやカンザワハダニなどの天敵に、カブリダニ類(ミヤコカブリダニ、チリカブリダニ)がいます。このカブリダニ類は、生物農薬として販売されています。
育苗開始には長期間定着しするミヤコカブリダニを放飼し、開花前と収穫前には捕食能力の高いチリカブリダニを放飼すると効果的です。カブリダニの放飼には天敵製剤のスパイカルEX(ミヤコカブリダニ剤)、スパイデックス(チリカブリダニ剤)を使う、といった形で使い分ける方もいます。具体的な商品は下記の通りです。
商品名 | スパイカルEX | スパイデックス | チリガブリ | ミヤコバンカー (システムミヤコくん) | スワルスキー | ボタニガードES |
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有効成分の種類 | ミヤコカブリダニ | チリカブリダニ | チリカブリダニ | ミヤコカブリダニ | スワルスキーカブリダニ | ボーベリア バシアーナ GHA株 分生子 |
作物名 | 野菜類 果樹類 花き類・観葉植物(施設栽培) 茶 | 野菜類(施設栽培) 豆類(種実)(施設栽培) いも類(施設栽培) 果樹類(施設栽培) 花き類・観葉植物(施設栽培) | 野菜類(施設栽培) 花き類・観葉植物(施設栽培) | 果樹類(施設栽培) りんご(露地栽培) 日本なし(露地栽培) おうとう(露地栽培) 野菜類 花き類・観葉植物(施設栽培) | 野菜類(露地栽培) 野菜類(施設栽培) 花き類・観葉植物(施設栽培) | 野菜類 |
適用病害虫名 | ハダニ類 カンザワ ハダニ | ハダニ類 | ハダニ類 | ハダニ類 | アザミウマ類 チャノホコリダニ コナジラミ類 ミカンハダニ | アブラムシ類 アザミウマ類 コナジラミ類 ハダニ類 コナガ アオムシ など |
天敵は、餌がないと生存、定着できません。これは土着天敵も、市販されている天敵も同じです。特にチリカブリダニは主にハダニ類を捕食するため、ハダニ類の発生前に放飼すると定着しにくい点、注意が必要です。これを踏まえると、6〜7月のハダニ発生時に合わせて散布するのが良いと言えるでしょう。
上記リンクをタップすれば、生物農薬の商品の詳細に行き着くでしょう。生物農薬については下記に詳しく説明しているので、ご参考ください。
物理的防除
ハダニの発生は、育苗時に発生した苗から持ち込まれることが多くあります。ハダニは葉裏に生息し、下葉からつきます。水を葉裏にかける、下葉を切り取るなども効果があります。切り取った下葉は、圃場に残さず、別の場所で処分することも大切です。
またうどんこ病にも効果があるUV-B照射はハダニの防除にも効果があります。ハダニは葉裏に生息するので、光反射シートを併用するとうどんこ病にもハダニ防除にも効果がUPします。
有機JAS縛りでハダニ駆除に使える農薬
有機JASで使える農薬は農薬ではありますが、抵抗性ハダニの発生を抑えて、化学的農薬の使用回数を減らす、という意味では、非常に有効は防除方法になります。
還元澱粉糖化物を有効成分とする農薬はハダニを窒息死させるため、有効です。商品名だと、「キモンブロック液剤」、「エコピタ液剤」があります。また、ホームセンターによく置かれている「ベニカマイルドスプレー」「ベニカマイルド液剤」もハダニ駆除に使えます。
またマシン油乳剤は、薬剤抵抗性発達の恐れもないのでハダニ駆除には有効です。マシン油乳剤には様々な種類があり、最もメジャーな「ハーベストオイル」は殺ダニ効果、機能性展着剤効果に優れますが、果実糖度に若干影響があること、また「スプレーオイル」は、効果はやや劣るものの、果実糖度は下がらない、「アタックオイル」はその中間、などそれぞれに特性があります。
その他、ヤシ油を原料にした食用油脂の脂肪酸グリセリドを有効成分とした「サンクリスタル」や微生物由来の「コロマイト」などもイチゴに使うことができます。
そもそも、ハダニはどういう害虫?
ハダニとは?
ハダニはダニの仲間で、クモの仲間、ハダニ上科に属します。体長は0.3~0.8mmと非常に小さく、吐糸管から糸を出すため、英名は「Spider mite」と呼ばれています。ハダニの種類は非常に多く、主なものでは、ミカンハダニ、カンザワハダニ、ナミハダニなどがいます。農業上でよく問題になるハダニは赤いアカダニ(ミカンハダニ、カンザワハダニ、リンゴハダニなど)を指すことが多いです。(チャノホコリダニは乳白色です)
高温と乾燥した環境を好み、雨が苦手なため、ハウスはハダニが繁殖する格好の場所と言えます。ハダニは卵期間2~3日、幼虫~若虫期間6~7日で成虫になる、蛹を経ない不完全変態で、成長サイクルが早く、大量発生しやすい害虫です。
どうしてハダニは害虫なのか?
ハダニは直接植物の葉、果実の汁を吸うこと(吸汁)で、小さな白班が点々とできてしまいます。吸汁が増えると植物の株、葉茎の伸長が悪くなり、最悪、落葉したり、枯れてしまいます(枯死)。
1箇所に大量発生するとハダニの移動性が高まり、あっという間に周りに被害が広がっていきます。このため、早期発見、早期防除が非常に大事です。
抵抗性ハダニの対処法
抵抗性ハダニとは、農薬の種類、活用が増えることで、たまたま耐性があって生き残った特定の農薬が効かない性質のハダニが、世代を重ねて集団化したものです。
ハダニは発育スピードが速く、短期間で世代を繰り返すため、ほかの害虫より抵抗性の発達スピードが速い害虫です。
殺虫剤を散布しても、翌日集団でハダニが生息している場合は、抵抗性を疑ってよいでしょう。
抵抗性ハダニの防除は、何よりも、化学的農薬に頼らず、下記の生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要です。また、化学的農薬を使う場合は、お使いの農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけることで少しでも効果を高めることが大事です。
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