エダマメは、収穫期間が短く、収穫の直後から鮮度が落ちていくため、家庭菜園で栽培すると本来の味が楽しめます。草丈がそれほど大きくならない枝豆は、水耕栽培でも育てることができます。
ここでは、枝豆の水耕栽培について、タネまきや苗から始める手順や収穫までの育て方についてわかりやすく説明します。
枝豆(エダマメ)水耕栽培について
枝豆の基礎知識
まずは枝豆について知っておきましょう。マメ科の枝豆は、大豆の完熟前の実を若どりしたもので、日本発祥の食べ方です。「湯をわかしてから取りに行け」といわれるほど鮮度が大切で、収穫と同時に鮮度が落ちていくので、採れたての価値が高い野菜です。
品種も豊富で、野菜の中でもタンパク質やビタミンA、B1、B2、Cが豊富で「畑の肉」と呼ばれています。アルコールから肝臓や腎臓を守るメチオニンを含むため、ビールのおつまみとしてもよい組合せです。
品種にもよりますが、種まきから植え付けまで10日~2週間、種まきから収穫までは70日~90日ほど。収穫までの日数が短いため、栽培の難易度もそれほど高くはありません。初心者の人は栽培期間の短い早生種を選ぶと失敗がすくないでしょう。
作物名 | エダマメ |
---|---|
科目 | マメ科ダイズ属 |
原産地 | 中国 |
発芽適温(地温) | 28〜30℃ |
生育適温 | 20〜30℃ |
育てやすさ | 簡単~普通 |
品種
枝豆栽培の成功のポイントの1つは、品種選びです。枝豆栽培は、栽培期間が長い品種ほど難易度が高くなります。タネまきから収穫までの日数の違いで、早生種、中生種、晩生種にわけられます。初心者の方には、栽培期間の短い早生種~中生種がおすすめです。
豆の皮や、産毛の色による分類もあります。一般的な枝豆は白毛豆(青豆)で、豆の色が薄い緑色もしくは淡黄色で、産毛は白毛が多く、それに対し豆の色が茶色の茶豆、黒色の黒豆は、産毛も茶毛が多いです。
品種名 | 概要 | 早晩生 | 色 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
おつな姫 | 早生 | 普通種 (白毛豆) | 約80日で収穫できる人気の品種 茶豆に負けない甘みと風味。 丈夫で収穫量が多いビギナーにおすすめ | |
莢音(さやね) | 早生 | 普通種 (白毛豆) | 大きくうまみの強い豆で収穫量が多い。 草丈がコンパクトなので育てやすい | |
湯あがり娘 | 中早生 | 普通種 (白毛豆) | 約85日の中早生種。 ショ糖の含有量が多く甘みが強い。 茶豆のような風味がある人気種 | |
夏の調べ | 極早生 | 茶豆 | 栽培日数77日ほど極早生種。 大ざやで3粒入りのさやが多く収穫できる 香り味ともによい。 | |
茶福 | 早生 | 茶豆 | 80日~85日で収穫可能な早生種。 さやが鈴なりにつき育てやすい 茶豆独特の甘さと風味がある | |
早生黒大豆 | 早生 | 黒豆 | タネまきから80日~90日で収穫が可能 草丈が低いが、良くしげる。 3粒入りのさやが多く風味がよい。 |
栽培時期
枝豆の栽培時期は、春から初夏に種をまいて、夏から秋に収穫します。植え付け時期になると、ホームセンターなどでも枝豆の苗が店頭に並ぶので、苗を植えつけて育てることもできます。
早生種と中生種などを組み合わせて、種をまけば時期をずらして収穫をたのしむこともできます。早生種と中生・晩生種で種まきをする時期が異なります。早採り(早まき)の場合は早生種、遅採り(遅まき)の場合は中生・晩生種を選択しましょう。
地域 | 播種(タネまき)時期 | 植え付け時期 | 収穫時期 |
---|---|---|---|
寒冷地 | 4月下旬~7月下旬 | 5月中旬~8月上旬 | 7月下旬~10月 |
中間地 | 4月上旬~8月上旬 | 4月下旬~8月中旬 | 6月下旬~11月上旬 |
暖地 | 3月下旬~8月中旬 | 4月~8月 | 6月中旬~11月下旬 |
枝豆の水耕栽培のポイント
水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく、観葉植物や果物などのさまざまな植物を衛生的に育てることができます。
水耕栽培は、葉物野菜やハーブなどは特別な設備がなくともペットボトルやスポンジなどをつかって、簡単に栽培することができます。枝豆は簡易的なペットボトル栽培も可能ですが、あまり大きく成長しないので収穫量がすくなくなります。
実もの野菜を作る場合には、容量の大きな容器を使い、野菜の生長に必要な酸素を根に直接送れるエアポンプを使った栽培がおすすめ。用具は少し必要になりますが、エアポンプを使うと成長が早くなり、多くの収穫量が見込めます。
また水耕栽培ではスポンジを使った種まきが主流ですが、枝豆の場合は豆を押し上げてでてくるため発芽率もよくないので、バーミキュライトや種まき培土を使って育てる必要があります。少量であれば市販の苗から始めるとよいでしょう。
枝豆の水耕栽培の手順
栽培容器を作る
まずは、枝豆の水耕栽培用の栽培容器を作りましょう。本格的な栽培キットなどもありますが、ここでは発泡スチロールの箱で自作する方法を説明します。
用意するもの
- 発砲スチロールの箱(蓋つき)
- スポンジ(キッチンスポンジでOK、シリコンスポンジ不可)
- エアポンプ
- カッター、キリ、定規、マジックなど
作り方の手順
- スポンジを5cm~6cm角にカットし、根を挟むための切り込みを入れます。
- 発砲スチロールのフタの部分の中央に、1で切ったスポンジより少し小さめの穴を空けます(2株植え付けする場合は株間を20cmほどあけて、穴を2つ開けます)
- フタの下部の部分をカットし、そこにエアポンプの管を入れるようの穴を空けます。
- 容器に水をいれ、エアポンプをセットします。
苗の植え付け
苗の選び方
苗は元気な病気のない苗を選びましょう。ポイントは下記のとおりです。接木苗は、連作障害の病気に強い苗です。水耕栽培で育てる場合はどちらでもよいでしょう。水耕栽培では大きい苗より小さめの苗がおすすめです。
- 本葉が2枚程度ついているもの
- 節がつまっており、茎が間延びしていない。
- 葉の色が濃くツヤがあり、虫や病気などがない
- 株がしっかりしている
- ポットの下からでている根が白い
準備するもの
- スポンジ(5~6cm角にカットして、切込みをいれたもの)
- 発砲スチロールのフタ
- 枝豆の苗
- 割り箸など
苗の植え付け方の手順
- ポットから苗を取り出します
- バケツに水をいれ、バケツの中で根を傷つけないように土をできるだけ落とします
- 切込みをいれたスポンジに、株元から下の部分を挟みます
- 発砲スチロールのフタの中央の穴の部分に、スポンジごと苗をセットします。
- スポンジは、しっかり固定できるように、割り箸などで押し込みます。
- 水を入れた容器に、蓋をセットして育てます。水の水位は根が3分の1ほどつかる程度です。
水耕栽培の手順
- 手順1栽培容器の準備
発砲スチロールとスポンジで枝豆の栽培容器をつくります。
- 手順2苗の植え付け
市販の苗や、育苗した苗を栽培容器に植え付けし、水耕栽培用の根がでるまで育てます。
根がでたら、肥料をいれて日当たりの良い場所で管理します。 - 手順3摘心
本葉が5〜6枚くらい展開した頃に、摘心(摘芯)をしてやります。摘心とは、主枝の上部先端部分の芽(生長点)を摘んでしまうことを指します。こうすることで、上部への伸びは止まり、脇芽から新たな芽が生長して収穫量が増えます。
- 手順4収穫
さやが膨らんで、押すと飛び出すぐらいになったら収穫のタイミングです。
さやが太ったものから、付け根をハサミで収穫しましょう。
糖分が蓄積しているので、夕方の収穫がおすすめです。
枝豆の水耕栽培 育て方
容器
水耕栽培に使う容器は、容量が大きいほど培養液(肥料を入れた水)を入れ替える手間も済みますが、場所などに合わせて容量を選びましょう。枝豆は3ℓ以上、できれば5ℓ以上あるとよいでしょう。
大きめの発砲スチロールなら株間を20cmほどあければ、1つの容器で2株作れるのでたくさんの枝豆が収穫できます。発砲スチロールの箱は、小さなものは100均などでも手に入りますし、ホームセンターなどではいろいろなサイズのものがあります。また魚介類などをインターネットで購入すると、発砲スチロールにはいってくることもありますし、スーパーや魚屋さんでもらえることもあるので、聞いてみるのもよいでしょう。
発砲スチロールは専用のカッターがあると簡単にカットできます。100均などでも置いてあることがあります。
発砲スチロールの他にも、コンテナ、プラスチックのゴミ箱などをつかってもよいでしょう。その場合は、苗を植えつける部分を発砲スチロール板などをつかって加工してつかうとよいでしょう。大きめのタッパーであれば、蓋の部分をくりぬいて苗を植えつけることもかのうです。ペットボトルなら2ℓ以上の大きいものなら栽培は可能です。
栽培環境
枝豆は、温暖〜やや冷涼な気候を好み、昼夜の温度差があるほど良品多収になります。播種(種まき)後は日当たりの良い、風通しの良い場所で管理しましょう。しかし水耕栽培では、夏の直射日光は容器の中の水が高温になりすぎてしまうことがあります。夏は風通しの良い半日陰か明るい日陰で管理しましょう。
水のやり・水替え
水耕栽培は培養液(肥料を入れた水)で育てます。培養液が切れないよう毎日水量を確認して、培養液を継ぎ足しして育てます。培養液(肥料を入れた水)の水位は、根が2/3~1/2程度浸かる程度。水の中は空気が少ないので、根元は空気に触れるよう濡れないようにします。培養液は作り置きして、日陰に置いておくとよいでしょう。
水の交換は、3週間~1か月に1度は行いましょう。すべての培養液を捨て新しい培養液をいれます。根にストレスがかかるのでできれば、日照の弱い曇りの日か、夕方に行いましょう。
成長してくると水を良く吸うので水切れには注意が必要です。また暑い時期は水が腐りやすいので、水が濁っているときには水を交換しましょう。
肥料
水耕栽培で枝豆を育てる場合には、水だけでは育ちません。肥料が必要です。しっかり水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。ハイポニカはプロ用のものもありますが、家庭用と成分や配合は同じです。
下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
エアーポンプ
エアーポンプ(エアポンプ)は、必ずないと育たないというわけではありません。葉物野菜やミニトマト、枝豆などの小型な果実野菜なら、エアポンプがなくともある程度育ちます。
しかし土壌栽培とことなり、水には酸素が少ないためエアーポンプを使うことで、酸素が多く根に供給され、生育が早くよく育ちます。1000円程度で買えるものもあるので実物野菜を作りたい人にはぜひ使ってほしいグッズです。
エアーポンプは、水耕栽培用のものもありますが熱帯魚用のものでもOK。使用する容器の大きさに合わせてものをつかいましょう。ベランダなどで育てる場合、電源がない場合もあります。そんなときには、太陽光発電ができるエアーポンプや充電が可能なエアーポンプなどもあるのでそちらがおすすめです。
またエアポンプは、水の逆流を防ぐため本体は栽培容器より高い位置に置きましょう。
支柱立て
早生種、中性種であればほとんど支柱立ては不要ですが、茎が大きくなって倒れてしまう場合には支柱を立てて育てましょう。
水耕栽培の場合は、プランターなどと違い土に挿してプランターを支柱を立てることができません。容器にビニールひもなどで固定したり、庭などで、置いてある場所の下が土であれば、土に直接挿すこともできます。
害虫対策
枝豆は、防虫ネットがおすすめです。タネは鳥に食べられやすく、葉が成長すると害虫が多くなります。アブラムシやヨウトウムシ、豆の汁を吸うカメムシなどの被害を防ぐことができます。ネットの中が葉でいっぱいになるまで、かけたまま育てます。
種まき
水耕栽培の場合は、タネまきから始める時はスポンジなどをつかって発芽させますが、スポンジでは発芽が不安定になりやすく、特に実物野菜では苗が重要なためできれば、種まき用の培土をつかって育苗しましょう。土を使いたくない人にはバーミキュライトがおすすめです。容器は、種まきに使われるポリポットやセルトレーでももちろんOKですが、お茶のパックなどを使うと手軽です。
- お茶のパックにバーミキュライトを入れます。
- 直径5cm程度、深さ1cm程度の穴を3ヵ所つくり、種を1カ所につき1粒づつまきます
- 種をまいたら上からバーミキュライトを被せて種を隠し、覆土します。覆土が終わったら、優しく水やりをしましょう。
- 発芽までは水を切らさずに育てます
- 子葉が開いたら2本に間引きます。
- 本葉がでてきたら、植えつけます。
まとめ
採れたての枝豆のおいしさは、家庭菜園の醍醐味です。実もの野菜は水耕栽培では少し難易度が高いですが、苗から始められば枝豆の水耕栽培は意外と手間のかからない簡単な野菜です。試しに作ってみたいという方は、ペットボトルでもよいですが、収穫を楽しみたいのであれば大きな容器をつかって育ててみましょう。
タネから育てるのであれば、直まきして育てられるプランター栽培もおすすめです。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。野菜だけでなくハーブや、観葉植物、多肉植物、花を楽しむ球根なども水耕栽培で育てることができます。
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