この記事では、家庭で甘くておいしいぶどうを収穫するための、肥料時期や与え方のポイントなどを、初心者の方にもわかりやすく説明します。
肥料を与えるタイミング 元肥と追肥
用土に肥料を与えるタイミングによって、肥料の呼び名が変わります。具体的には、「元肥」と「追肥」があります。
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。花や結実の後に与える追肥をお礼肥といったり、冬に与える追肥を寒肥(かんごえ)といったりもします。
ぶどうに適した肥料の時期と与え方
それではぶどうの施肥はいつどのように与えればよいのでしょうか。鉢植え・庭植え(地植え)別に一般的な肥料の与え方について説明します。このほかに鉢植えは2月に有機肥料を与える場合もあります。与える場合は、緩効性の肥料を少なめにあたえるとよいでしょう。
- 1月~2月肥料は不要
寒さが厳しいこの時期は、ぶどうの木は休眠しています。肥料は鉢植え・庭植えとも不要です。
- 3月鉢植えは元肥
次第に暖かくなり、目覚めの時期です。植えつけや植え替えの適期です。植えつけや植え替えをしない場合は、肥料は不要です。
鉢植えは、2年~3年に一度植え替えを行いましょう。新しい用土に植え替えた後、元肥として固形の緩効性肥料を株元に置き肥します。
庭植えの植えつけも3月までに行います。掘り起こした土に腐葉土と緩効性肥料を入れて混ぜてから、根を広げて植えつけます。土壌改良の効果もある有機肥料がおすすめです。
- 4月肥料は不要、芽かき・誘引
暖かくなり、萌芽や新しい枝が成長してくる時期です。1節に2芽以上伸びている場合は芽をかきとる芽かきをしましょう。また伸びた枝は誘引しておきます。
この時期もまだ肥料は不要です。
- 5月肥料は不要、摘心・摘房・ジベレリン処理
開花の時期です。開花前に摘心・適房をしておきます。タネなし果実を作るジベレリン処理もこの時期に行います。
肥料は不要です。
- 6月~9月お礼肥のタイミング
6月~9月は、葉の色が薄い・枝が伸びないときには追肥をします。また収穫が終わった木には、お礼肥として追肥をしましょう。
鉢植えの場合は、速効性の化学肥料を株元にばらまきます。庭植えの場合は、速効性の化学肥料を株元にドーナツ状にまいて、表面の土と軽くまぜておきます。
- 10月庭の場合は元肥(寒肥)をあげてもよし
鉢植えは、お礼肥が終わったら次の生育期まで肥料は不要です。
庭植えの場合は、10月下旬から11月に、土壌改良も兼ねて元肥(寒肥)をほどこします。1㎡あたり2kg程度の完熟堆肥を、株元にまいて土とならします。
- 11月庭の場合は元肥(寒肥)をあげてもよし
鉢植えは、お礼肥が終わったら次の生育期まで肥料は不要です。庭植えの場合は、10月下旬から11月に、土壌改良も兼ねて基肥(寒肥)します。1㎡あたり2kg程度の完全堆肥を、株元にまいて土とならします。
寒冷地以外では11月は庭への植えつけの時期です。掘り起こした土に腐葉土と緩効性肥料を入れて混ぜてから植えつけます。土壌改良の効果もある有機肥料がおすすめです。
- 12月肥料は不要
寒い冬は、ぶどうは休眠に入ります。肥料は与えません。
ぶどうにおすすめの肥料
ぶどう栽培で利用する代表的な肥料をご紹介します。散布量などは商品のパッケージをよく読んであたえすぎないようにしましょう。
有機肥料
庭植えにおすすめなのは有機肥料です。有機肥料は土壌の改善になり植え付け時の元肥や、11月の寒肥にも使えます。ぶどう専用の肥料「ぶどうがおいしくなる肥料」や「花ごごろの果樹・花木の肥料」、油かす・鶏けいふん・米ぬかなどの有機肥料も使えます。牛ふんは土壌改良にもおすすめ。いづれも完熟しているものを使いましょう。
化成肥料
庭植えの追肥や鉢植えには、化成肥料がおすすめ。化成肥料は早く効く速効性とゆっくり効く両方の成分を持っているものが多いです。有機肥料は、臭いや虫などが気になるためベランダなどで鉢植えで育てる場合は、有機入りの化成肥料もおすすめです。元肥にも追肥にも使える「マイガーデンベジフル」やハイポネックスジャパンが製造する「錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」などがよいでしょう。
その他 ぶどう果実を育てるためのポイント
剪定・整枝
毎年12月~3月には、よい果実と樹勢の調整・病気の予防のために剪定・整枝をしましょう。また剪定は、枝の途中で切って枝を切る切り戻し剪定で行います。切る枝の長さにより、「短梢剪定」と「長梢剪定」に分かれます
短梢剪定
鉢植えなど、枝を大きくさせたくないときにおすすめ。前年に実をつけた枝(結果枝)を、基部から1~2節残してすべて枝をきります。乾燥や寒さで枝が傷みやすいので0℃以下の日に行うのはやめましょう。
長梢剪定
前年に実をつけた枝(結果枝)を間引きして、残した枝を長めに残して切る剪定方法です。大半の枝は、基部から枝を切り取ります。残した枝を基部から7節~8節残してきります。4~6節ぐらい残す方法を中梢剪定といいます。残す節が長いほど、基部から切り取る枝を多くきります。
芽かき
4月になると新しい芽がでてきます。一節から2つ以上の芽がでてきたら一つを残して、あとはすべて落とす芽かきをしましょう。葉が6枚以上になる前に行うと、枝の消費を抑えることができます。
風通しをよくし、光があたるようにすることで大きな実がつき、病害虫の予防にもなります。
摘房・花房整形
大きくて糖度の高い果実をとるためには、必ず摘房をしましょう。花が咲く前の5月に行います。一つの枝につける実は、鉢植えの場合は1つ。庭植えの場合は、大粒品種は1つ。中型~小型の品種は2つまででに切り詰めます。
枝のつけ根の花房が大きいものを残して、あとはすべての花房を切り落とします。また残した花房も、花房が2つついている場合は、大きい一つを残して切り取ります。また花房の下の肩の部分も大型種は4段、小型種は2段ほど切り取ります。
栽培環境・水やり
ぶどうは、日当たりのよい風通しの良い場所で栽培しましょう。鉢植えの水やりは、鉢の表面が乾いたら鉢底から水がでるまでたっぷり与えます。庭植えは、乾燥には強いのであまり気にしなくてよいでしょう。夏に日照りがつづときに与えれば十分です。
病害虫
ぶどうの病気としては、うどんこ病、べと病、灰色かび病、晩腐病、黒とう病、褐斑病などがあります。雨で伝染する病気が多いので、予防としては果房に袋がけをしたり、落ち葉や枯れた枝などを取り除いてあげることも重要です。薬剤も効果的です。病気が発生したら、すぐに取り除きましょう。
害虫は、コウモリガ、ブドウトラカミキリ、ブドウスカシバ、フィロキセラ、コガネムシなどが発生します。野外であればある程、発生し易いといえます。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
ぶどう(葡萄)の基礎知識
まず最初にぶどうについて、知っておきましょう。植物の栽培をするうえで、その植物の特徴を知っておくことは大切です。自生地や生育期などを知ればその植物がどのような環境で育てると、枯れずに元気に育つのかわかってきます。
学名 | Vitis vinifera、V.labrusca |
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属名 | ブドウ科 ブドウ属 |
原産地 | ヨーロッパ、北アメリカ |
樹高・草丈 | 3m以上 |
耐寒性等 | 耐寒性 普通 耐暑性 強い |
花言葉 | 思いやり・好意・信頼・陶酔・親切・慈善など |
ぶどうは、つる性の落葉低木です。温帯の農作物ですが、マイナス10℃ぐらいまで耐えることもできるため寒冷地以外では庭植えも可能です。庭植えのほうが収穫は多くできますが、鉢植えやプランターでも、支柱をしっかり立てて育てれば果実を収穫することができます。
やせ地でも育ち、ほとんどの品種が自家受粉をするので、人工授粉の必要性もありません。
品種について
ぶどうは、大きくわけて「欧州種」「米国種」「欧米雑種」の3つに分けられます。耐寒性は普通で耐暑性も強いのですが、乾燥した地域に育つ欧州種は特に多湿が苦手で日本で育てるのは難しいといわれています。米国種は病気につよいのですが、果実の味は欧州種に劣るといわれ、その両方の長所をもつ「欧米雑種」が日本がではよく栽培されています。
日本でおなじみの巨峰やピオーネ、デラウェア、シャインマスカットはすべて「欧米雑種」です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ここまでぶどうを収穫するための肥料の時期や与え方などを中心に、紹介してきました。品種も多いので、品種や鉢植えなどでそだてれば日本中どこでも育てることができます。
自分で育てた果実を味わうのは、格別の喜びがあります。しかもぶどうは植え付けした翌年から、実をつけることができるので、すぐに結果がでるのもよいところです。ぜひ自宅で巨峰やシャインマスカットなどお好きな品種を育ててみてください。
プランター栽培の記事もありますのでそちらも参考にしてください