「ゴーオン」はグルホシネート系除草剤で、速効性があり雑草の地上部を素早く枯らしますが、根までは枯れないため再生しやすい点に注意が必要です。農耕地では使用できず、宅地や庭、公園などでの利用に限られます。グルホシネートの安全性については、国によって評価が異なっています。
ゴーオンの特徴
ゴーオンはホームセンターでよく置かれている、最もメジャーなグルホシネート系の除草剤(液剤)の一つで、ハート株式会社が販売する青緑色澄明液体(性状)です。成分は、グルホシネート 18.5%、[アンモニウム=DL-ホモアラニン・4・イル(メチル)ホスフィナート] 水、界面活性剤、色素等 81.5%になります。
効果の進展はグリホサートよりも早く、1 ~ 3日で効果が発現し、5 ~ 20日で完全な効果がでますが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死せず、雑草・草はグリホサートに比べ、再生しやすい特徴があります。
ゴーオンで注意したい点は、農林水産省の登録がないため、農耕地での栽培・管理には法律上使用することができない点です。このため、使用できる場所が、例えば、宅地、庭、通路や空き地、公園といった敷地に限られます。
「農耕地」とは、畑や菜園、圃場、水田は勿論、田んぼの畦畔などが当てはまります!
「(補足)除草剤あれこれ」に詳しく記載しているので、チェックしてみて下さい。
ゴーオンとバスタの違い
ゴーオンは農耕地で使用できないので、農耕地で使用したい場合は、バスタやザクサがおすすめです。
バスタ、ザクサは多くの作物に登録があるため、かなりの野菜、水稲、果樹で使用可能で、例えば水田の畦(畔・畦畔)やかんしょなどの畑作での作物の株間、畔間や畦道などで使用するケースが多く見られます。
ゴーオンの使い方
主な使い方
ゴーオンは、液剤の除草剤原液なので、希釈して薄めて使用します。使用薬量と希釈水量は、ラベルの裏に細かい使用薬量と希釈水量が書かれていますので、ぜひご参考にしてください。
ゴーオンは、基本的な下草、雑草には、原液10mlに2Lの希釈水量、つまり、「200倍」の希釈率を目安にし、1Lを100㎡に散布します。希釈については、下記を参考にしてみてください。
ただし、多年生雑草(翌年も生える雑草)に場合は、希釈率を200倍から100倍とうすめる濃度を上げた方が効果がでます。どの雑草に対して使用するかで、うすめる濃度を変えていきましょう。
また、雑草によって、早春、盛夏、晩秋の時期に散布すればいいのか、根元がいいのか葉がいいのかは変わってきます。
散布に関しては、狭い範囲だと、ジョウロで大丈夫ですが、広い範囲は噴霧機を使うと便利です。噴霧機については、下記を参考にしてください。
ゴーオンは、雨が降っても大丈夫?
「茎葉処理剤」は、散布された薬剤に接触した部分の植物組織だけを枯らします。このため、散布後すぐに雨が降ると、雑草に付着した薬液を流すため、効果がなくなることがあります。散布後すぐに雨が降りそうな天気予報のときは、散布を避けましょう。
目安としては、「散布後、6時間過ぎた後」 であれば雨の影響を受けなくなり、効果は持続します。
また、朝露が多い、雨上がりなど、葉についた薬液がこぼれ落ちるような場合も効果が薄れることがあります。早朝や雨上がりも避けた方がいいでしょう。
グルホシネートとグリホサートとの違い
速効性(グルホシネート)と遅行性(グリホサート)
グルホシネートとグリホサートは非選択性の除草剤(液剤)でほぼ全ての草種に有効な点は共通していますが、効果が発現する期間には差があります。
グリホサートは効果の発現に3 ~ 7日、そして完全な効果に10日~ 2カ月ほどを要しますが、グルホシネートは効果の発現に2 ~ 5日、そして完全な効果に5日~ 20日ほどで足り、グリホサートよりも速効性(早く効く)があります。早い効果を求める場合は、グルホシネートがより有効です。
私たちの圃場で実験してみましたが、下記のように、グルホシネートの方がより顕著に褐色化し、枯れているのがわかります。
根まで枯れるかどうか
グリホサートの大きな特徴として、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎(スギナなど)、根も含めて全体を枯らす効果があります。
これに対し、グルホシネートは速効性はあるものの、根や地下茎までは枯らし切ることはできず、また生え易いというデメリットがあります。
このため、多年生雑草など、根が地下に多い、また地下茎が発達し易い雑草が多い場所で、地下茎、根をしっかり枯らしたい場合は、グリホサート系の除草剤の方がおすすめです。
グリホサート系除草剤については、下記ページで詳しく解説していますので、ご参考ください。
グルホシネートの安全性について
地面に落下したグルホシネートは、微生物によって分解され、約半日~1日で半減するなど、グルホシネートの土壌中での分解は非常に速く、土壌、環境に優しい除草剤と言われています。
しかしながら、グルホネシートの残留物は冷凍食品に最長2年間残ることがあり、化学物質は熱湯で食品を調理しても簡単に破壊されないとの報告もなされています。(Pesticide Action Network,2008)
また、日本ではグルホシネート、グルホシネートPナトリウム塩は農薬登録されており、使用方法の規制がある中で、グリホサートの一日摂取許容量を、1mg/kg 体重/dayに対し、グルホシネートは0.0091 mg/kg 体重/day としていることから、グルホネシートのほうが人畜に対して毒性が強いと判断していると解釈できます。
また、ヨーロッパでは、除草剤としての登録が2018年に期限切れになっていることや、フランスで、2017年に食品安全、環境および労働のための国家機関によって生殖毒性化学物質(R1b)として分類されたため、現在では、グルホネシート系除草剤は市場から撤退しています。
まとめ
グルホネシート系除草剤については、安全性について多くの議論がなされていて、グリホサート以上に、安全性についての判断は国によって異なっています。議論されている部分もあれば、使用により雑草を抑えることで病害虫の出現を減らし、殺虫剤などの農薬の使用を減らすといった防除の機能もあると言えます。
グルホネシート系除草剤は、カヤツリグサ、メヒシバ、スベリヒユ、ハマスゲなどの地上部を速やかに枯殺させる水溶性の強力な除草剤です。グルホシネートの特性を十分に考えた上で、畑や水田、その他場所での適切な使用を心がけるようにしたいですね。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 | ゴーオン |
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概要 | |||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) | (株)ハート |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 | グルホシネート |
農耕地使用 | ○ | ○ | ✖️ |
ゴーオンは、お近くのホームセンターや、ECサイト(グラントマト、hanas、ワイズライフ、プラスワイズなど)で購入できます。
(補足)除草剤あれこれ
農耕地で使用できるものとできないものがあります
ラウンドアップやサンフーロン、バスタは、畑作や果樹園などの田畑、農耕地で使用することができますが、グリホエースなど、グリホサート系除草剤でも農耕地で使用できないものもあるので、使用の際は必ず確認するようにしましょう。
具体的には、農薬取締法に基づき国に農薬登録をされている除草剤(農薬として登録された除草剤のパッケージには[農林水産省登録第○○号]と表記されています)しか、畑や田んぼ、菜園、植物を植えた庭などの所謂「農耕地」に散布することはできません。
下記に詳しく書いているので、興味ある方は読んでみてください。
また、農薬登録されているものでも、「作物名」が「 樹木 等」になっている除草剤は注意が必要です。なぜなら、「作物名」が「樹木等」に限られている除草剤は、適用場所が「公園、庭園、堤とう、駐車場、道路、運動場、宅地など」に限られ、畑や菜園、圃場、水田は勿論、田んぼの畦畔にも使用することはできないのです。このため、「樹木等」に限定されている除草剤も、非農耕地用になります。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、希釈した除草剤20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
除草剤の種類あれこれ
発芽抑制する「土壌処理剤」か、茎葉処理する「茎葉処理剤」か
除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽、生育を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。
しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、草刈りした後での散布が必要になってきます。「茎葉処理剤」は、散布された薬液に接触、吸着した部分の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。
非選択性か選択性か
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。
また、除草のための農機具、農具、草刈機(刈払機)、資材については、こちらをご参考ください。
除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのか、まとめたのは下記になります。
雑草の様々な防除、駆除方法は下の記事がおすすめです。
また、特に防草シート(除草シート)での防除に興味ある方は下の記事をご参考ください。
除草剤の安全性について
除草剤については、様々なイメージ、情報が飛び交っています。下記では、そもそも除草剤は安全なのか、また除草剤を使用するときに気を付けたいポイント、また個別の除草剤の安全性について徹底解説しています。