果樹に肥料は必要?
果樹には肥料が必要か? 必要です。
果樹は他の樹木と比べて、多くの花を付けるタイプが多く、その後結実し果実を大きくしていきます。このため、他の樹木に比べ、肥料を多く必要とするのです。
特に柑橘類の果樹は「肥料食い」と言われ、果樹の中でも多くの肥料を必要とします。白い花をたくさんつけ開花させること、また枝葉を旺盛に茂らせるため、と言われています。
また、果樹は地植えはもちろん、鉢植えの場合も、土壌から養分を吸収して成長します。露地栽培がほとんどということもあり、様々な環境変化に土壌の強さで乗り切っていく必要があります。このため、土壌の水はけの良さ、保水力、たい肥や腐葉土などの有機質が分解、発酵し微生物が活発に活動している団粒構造になっているか、ミネラル豊富なふかふかな土壌か、など土壌の状態にかかっています。
このため、肥料はできる限り有機肥料を元肥で使い、土壌改良に努める必要があります。
肥料を与える時期
果樹の肥料の頻度は、「基肥(元肥)」,「追肥」,「礼肥」の年間3回施肥を行うことを基本とします。
活動しない冬の時期(寒肥とも呼ばれることも。果樹によって異なります)に元肥として有機(有機物)肥料もしくは緩行性化成肥料を年間施肥量トータルの40%ほどを施すようにし、花芽をつける時期を目安に速効性の化成肥料を年間施肥量トータルの20%ほどを追肥するとよいでしょう。そして収穫後20%の緩効性肥料を礼肥として施すようにしてください。
もちろん、樹種によって特性は様々ですから、それぞれに合った肥料のやり方を考え実践したほうが良いです。
名称 | 時期 | 適している肥効タイプ | 肥料の例 | 概要 |
---|---|---|---|---|
基肥(元肥) | 活動しない時期(冬の場合、寒肥と呼ばれる) | 緩効性肥料・遅効性肥料 | 固形肥料 堆肥 油かす などの有機質肥料 緩効性化成肥料 | 魚粉や骨粉なども有機質肥料ですが、窒素、リン酸、カリウムがバランス良く含まれた油かす、鶏糞肥料を使うと良いでしょう。緩効性化成肥料も有効です。 |
追肥 | 花、果実の生育中 | 速効性肥料 | 液体肥料・固形肥料 化成肥料 など | 元肥だけでは栄養が不足してくるので肥料を追加で施します。速効性肥料などを中心に施しましょう。 樹勢が明らかに弱っているときは速効性の液体肥料を使ってみるのも効果的です。 |
礼肥 | 収穫後 | 緩効性肥料・遅効性肥料 | 固形肥料 堆肥 油かす などの有機質肥料 緩効性化成肥料 | 魚粉や骨粉、鶏糞、油かす肥料を使うと良いでしょう。緩効性化成肥料も有効です。 |
果樹によって頻度などは異なりますので、具体的に育ててみたい果樹が決まっている場合は、下の個別種類の説明を参考にしてください。
肥料をあげすぎて肥料焼け?
肥料は、多ければ多いほどよいというわけではありません。土中肥料の濃度が高くなりすぎると、根が吸水できなくなり、植物に障害が発生したり枯れてしまったりすることがあります。これが「肥料焼け」です。成長が楽しみで、ついつい肥料を多くあげたくなってしまうかもしれませんが、一般に肥料をあげすぎると、かえって植物が弱ることがあり、樹や枝葉に障害が生じることもあります。肥料は過多にならないよう注意しなくてはいけません。また、苗(苗木)は成木に比べ弱いので、特に苗(苗木)の段階では施肥量を減らす工夫が必要です。
おすすめの果樹肥料
果樹を育てる際におすすめの汎用的な果樹肥料をご紹介します。
果樹におすすめの有機肥料、有機配合肥料
おすすめの有機肥料としては、油かす、鶏ふん、米ぬかなどがあります。元肥として植え付け時や毎春使用しても良いでしょう。油かすは窒素成分を多く含んでいるので施用する際には施用量に気をつけましょう。また、鶏ふん、米ぬかはリン酸などの豊富に含まれていますが、窒素成分が不足する可能性もあるので、その場合には緩効性化成肥料と併用してみましょう。
油かす(油粕)
油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。
鶏糞
鶏糞は、ニワトリの糞を乾燥させた粒状の有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)、リン酸、カリの各成分が豊富に含まれています。特に、植物の実や花に栄養を与えたい時に使われるリン酸が豊富です。同じ堆肥として牛糞(牛ふん)が比較されることがありますが、成分が異なるとともに、牛糞(牛ふん)は土壌改良の目的でも利用される点が異なります。
ただし、鶏糞を使用することで果実の品質が下がるとされる場合もあるので、使用には注意が必要です。
米ぬか
米ぬかを肥料として使用するときには、2つのやり方があります。
- 生の米ぬかをそのまま散布する
- 米ぬかをEMや発酵促進剤などの微生物によって発酵させて散布する(米ぬかぼかし肥料)
1月など休眠期の頃に、生の米ぬかをそのまま散布するというやり方をされている方もいます。但し、米ぬかの特性などをよく知った上で施肥をする必要があります。最悪、窒素飢餓(逆に肥料が不足する状況)や発酵熱による被害、カビなど腐敗の温床となることもあります。
米ぬかをそのまま土壌にすき込むとしても、元肥として使用するのが主流です。春〜夏の生育旺盛のときに米ぬかなどの分解に時間がかかる有機肥料(有機質肥料)を施すのは危険です。
生の米ぬかを使用する場合は、表面散布する方法のほうが良いでしょう。また、油分を除いた脱脂米糠を使用しても良いでしょう。
比較的、肥料の効きもわかりやすく、安心して使用できるのはぼかし肥料にしたものです。
米ぬかぼかし肥料とは、米ぬかを主原料としたぼかし肥料です。植物を育てるために必要な三大要素である窒素、リン酸、カリウム(加里)をバランス良く含ませるために、米ぬかの他に油かす、魚粉やカキ殻石灰などを配合し発酵させます。カキ殻石灰などを使用することでカルシウムやミネラル分やアミノ酸などを多く含み、野菜などの栽培においては食味や品質の向上にもつながります。
米ぬかは、リン酸が豊富に含まれている有機物資材で入手もしやすいため、ぼかし肥料の原材料としては人気のものとなります。
米ぬかぼかし肥料の成分比は原材料の配合によって異なりますが、米ぬかを主成分とした場合は窒素成分が少し抑えられたものが多いです(N-P-K=3-5-2など)。
米ぬかぼかし肥料を作る際の発酵のさせ方は、「好気性発酵」「嫌気性発酵」の2種類があります。
この他、おすすめの有機肥料としては、石灰系(牡蠣殻、貝殻)、魚粉(魚を乾燥させた粉末)、骨粉、木灰、熟成させたぼかし(ボカシ)肥料なども取り入れられている農家の方は多くいらっしゃいます。
果樹におすすめの化成肥料
ハイポネックス(Hyponex)
ハイポネックスジャパンが製造販売する「錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」という肥料もあります。追肥に利用する錠剤タイプで、置くだけでOKという簡便な肥料です。窒素:リン酸:カリ=8:10:9で配合されているほか、マグネシウム、マンガン、ホウ素、カルシウムも加えられています。
また、ハイポネックスには「ハイポネックス原液」などの液体肥料シリーズもあり、樹勢が弱っているときに与えると良いでしょう。さらにハイポネックスにはマグァンプなど固形肥料のシリーズも販売されています。適している肥料を選択して、使ってみましょう。
マイガーデンベジフル
マイガーデンは、住友化学園芸の登録商標で、粒状の様々な草花・庭木・果樹の元肥や追肥に使うことができる肥料です。栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得していることや、土に活力を与える作用がある腐植酸をブレンドしていることや、肥料成分は樹脂コーディングされていて、土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶出する量が調節され、効き目が持続するのが本製品の特長です(リリースコントロールテクノロジー)。
追肥として、「マイガーデンベジフル」が有効です。また、「マイガーデン液体肥料」や「花工場原液」、「ベジフル液肥」は速効性の液体肥料なので、樹勢が弱り始めたときに薄めの濃度で与えてあげると良いでしょう。使用方法は各商品のラベルの指示に従ってください。
地植えにおすすめ!打ち込み型肥料グリーンパイル
ちょっと変わった肥料に打ち込み型のグリーンパイルがあります。グリーンパイルは樹木に理想的なバランスで必要な栄養:N(窒素)-P(リン酸)-K(カリウム)を配合した樹木(植木・庭木)専用の打ち込み型肥料です。棒状なので打ち込むだけで施肥が簡単にできます。地植えの樹木におすすめの肥料です。
花ごころ IBのチカラ グリーンそだちEX
花ごころの「IBのチカラ グリーンそだちEX」は、N-P-K=10-10-10であり、バランス良く配合されています。バラや花に効く肥料を中心に様々な商品を販売しています。
「IB肥料」(イソブチルアルデヒド縮合尿素(IBDU)を配合した肥料)なので、水にゆっくりと溶け出していく粒状の緩効性肥料です。
果樹の肥料の与え方
果樹の栽培で気をつけたいポイント
果樹全般に該当する気をつけたいポイントをまとめてみました。参考にしてみてください。
栽培方法
果樹は実は、地植えはもちろん、家庭菜園の場合は鉢植えでもほとんどの種類を栽培することができます。
地植え
水はけのよい土であれば育てることができます。地植えの場合、植え替えることが難しいので、日当たりの良好な場所を選んで植え付けるようにしましょう。
植え付けする苗の大きさにもよりますが、約20〜50cm程度の深さの穴を掘り、土:腐葉土:赤玉土を5:3:2位の割合で混ぜ合わせ半分ほど土を戻します。そのあと、苗を植えて残りの混ぜ合わせた土を戻します。植え付けは真夏、真冬を避けて3月〜4月頃がよいでしょう。植え付けのときには根を触らないようにしましょう。
元肥として施用する場合は、緩効性化成肥料や有機肥料(有機質肥料)がおすすめです。
鉢植え
庭土を用土として利用することができます。市販の用土を利用する場合は、赤玉土小粒7~8、腐葉土3~2の割合で配合し混ぜるようにしましょう。果樹専用の培養土もあります。植木鉢は、できればプラスチックのプランターではなく、素焼きやテラコッタのものを選びましょう。素焼きやテラコッタの植木鉢は、通気性、吸水性、排水性に優れています。
植木鉢を使う場合は、鉢底に鉢底石を敷き、そこに用土(培土)を半分程度入れて苗を植え付けます。植え付けた苗の周りにも用土(培土)を入れて苗を安定させ、水をたっぷりと与えると根がしっかりと張ってきます。用土には、果樹用の土が売られていますのでそれを使えば問題ないでしょう。植え付け、植え替えは真夏、真冬を避けて3月〜4月頃がよいでしょう。植え付けや植え替えのときには根を触らないようにしましょう。
病害虫
果樹にはさまざまな害虫が発生し、病気をしてしまいます。主には、病気としては、そうか病、灰色かび病、黒点病、果実腐敗病などが発生する場合があります。害虫としては、アブラムシ類、サビダニ類、カイガラムシ類、カミキリムシ、エカキムシ、オオタバコガなどが発生する場合があります。農薬や殺虫剤を散布するなどして防除および駆除に努めましょう。下記コンテンツに防除方法を詳しく説明しています。
病害虫の発生を予防する方法としては、まず適度な乾燥や、排水の良い土壌を維持するように努める事が重要です。雑草をしっかり除草することも、病害虫の予防に大変有効なのでこまめに除草しましょう。
摘蕾、摘果
果樹によっては一つの花房にたくさんの花芽を付け、100を超える花をつける種類もあります。このため、美味しい果実に育てようとすると、早めの摘蕾が欠かせません。また、摘蕾後、春になっての摘果もできる限り行うようにしましょう。
剪定、整枝
果樹にとって整枝・剪定は大事です。具体的には、古くて伸びすぎた側枝やかぶさり枝や、主枝・亜主枝の背面からでた徒長枝,弱く短い下垂枝を剪除(剪定して取り除くこと)し間引き,中庸な枝に揃えていくことが重要です。
しっかり剪定することで、一見、枝と枝の間が空きすぎて不安になるかもしれませんが、この結果、風通しをよくし木の中まで光が入ってくるため、結果新しい新芽、花芽を促し、生長、樹勢もよくします。
果樹類の肥料 購入場所
果樹類の肥料は、ホームセンター、100均、インターネットなどで購入可能です。肥料を購入できる主な場所・方法は以下のとおりです。
果樹の種類
果樹は、「2年以上栽培する草本植物及び木本植物であって、果実を食用とするもの」と定義されています。(農林水産省HPより)このため、メロンやイチゴ、スイカといった一年生草本植物は果樹には含みません。
果樹には様々な種類があります。いろんな分け方がありますが、大きく分けると下記のように分ける事ができます。
まとめ
果樹は難しそうに感じますが、果実が実るのはもちろん、比較的育てやすく、花が咲くこと、緑鮮やかなことから観葉植物としても楽しめる植物です。是非、お好きな果物の果樹にチャレンジしてみてください。