農業の収支が赤字であれば、確定申告をする義務はありません。しかし赤字の場合でも確定申告することによって得られるメリットもある人もいます。ここでは、農業収支が赤字の人が確定申告することによってどんなメリットがあるのかわかりやすく説明します。
確定申告が不要な人とは
農業を個人で営んでいる人は、基本的に「個人事業主」となります。兼業や副業で農業している場合も同様です。個人事業主は、事業所得(収入から経費を引いた金額)を得ている場合確定申告が必要です。
専業農家の場合は、1月1日から12月31日までの事業所得が48万円以下、サラリーマンなどで他に給与所得があり、職場で年末調整が行われている副業や兼業農家の人では、農業での事業所得が20万円以下の場合は確定申告は不要です。
確定申告しないと損する場合とは?
申告が不要な場合でも、事業所得が赤字の場合には申告をすることでメリットがある場合もあります。それは青色申告をしている場合、農業以外に収入がある場合です。
それ以外にも申告することにより、所得課税証明書が発行できるようになり、住民税非課税世帯となることにより、市町村によっても変わりますが、国民健康保険料の減額などのさまざまな優遇を受けることもできます。最近では物価高の影響を軽減するために、住民税非課税世帯向けに、臨時特別給付金などが支給されています。
農業以外に収入がある場合
農業収入以外に、給与所得や不動産所得などがある場合には損益通算することが可能です。損益通算をすることで、課税所得額が減り、税金が戻ってくる可能性があります。
損金通算するには、農業の収入を事業収入として申告することが条件です。また損金通算できない所得もありますので詳しくは国税局の「損金通算」を参照ください。
青色申告をしている場合
青色申告を行っている場合は、今年赤字だったとしてもその赤字分については、翌年以降3年間その赤字を繰り越すことができます。つまり翌年以降3年間の間に黒字になった場合、その所得額から赤字分をマイナスすることができるため、黒字になった時の税負担を軽減することができます。
損金の繰り延べは青色申告の大きなメリットです。今後のために申告はしておくとよいでしょう。
課税(所得)証明書・住民税非課税世帯について
保育園に入る場合や、児童手当をもらう時やその他ローンを組むときや年金手続きなどでも、課税所得が必要な場面があります。確定申告をしていないと前年の所得が不明なので、市町村から課税所得を得ることができません。
また専業農家で、事業所得が45万以下であれば、住民税非課税世帯となり国民健康保険料・国民年金保険料や介護保険のの減免措置や、医療費の軽減措置などが受けられます。地方自治体によっても異なりますが、市の健康診断が無料になったり、補助金などがもらえることもあります。
申告しなくとも事業所得計算は必要
赤字だからと申告しない場合でも、事業所得がいくらなのかは計算し、帳簿や領収書などの保管も必要です。事業所得が赤字という証明ができないと、税務調査が入った時に追徴課税を取られることもあります。
面倒な申告業務ですが、できるだけ毎月収支を記載して確定申告時に手間がかからないようにしておきましょう。収支報告書の書き方の記事もありますので参考にしてください。