イチジクは、落葉性のクワ科イチジク属の植物で、学名はFicus caricaと言います。野菜などと異なり樹木なので多年生ですが、耐寒性がやや弱く、関東より北の露地では越冬できないとされています。品種にもよりますが、長いものでは6月下旬から10月中旬くらいの秋まで収穫できる点も特徴です。
イチジクには、中性〜弱アルカリ性土壌を好むことや有機肥料(有機質肥料)のように肥効が長く続く肥料が合っているなどの条件があること、また愛好家も多いことからイチジク専用肥料が販売されています。この記事では、イチジク専用肥料について詳しく解説、紹介します。
イチジクへ肥料をやる時期
肥料をやる時期(施肥の時期)は、気候や土壌、品種、樹齢などの条件によって異なりますが、イチジクは一般的に「元肥(寒肥)」、「夏肥(追肥)」、「秋肥(礼肥)」の年3回を基準に施肥をします。
元肥(寒肥)とは、一般的に12月から2月までに施される肥料で、イチジクの場合は肥料の効果が長く続く性質の肥料を使うことが望ましいとされています。有機肥料(有機質肥料)や緩行性肥料が適しているでしょう。
夏肥とは、7月以降の果実の発育と枝の充実を促進するために施される肥料で、主に窒素とカリウム(加里)が重要となってきます。一度に全ての夏肥を施すというわけではなく、6月〜8月にかけて2回〜5回に分けて肥料をやると良いでしょう。
秋肥(礼肥)は、樹勢を回復させるための肥料です。翌年の生育初期の養分を蓄えさせることも重要な役目となります。夏肥のタイミングによって、秋肥をスキップする場合がありますが、基本的には礼肥として施したほうが良いでしょう。
- 11月〜2月頃休眠期
冬はイチジクの休眠期となります。休眠期の間に元肥をやることで、翌年の生育期に備えます。
イチジクは他の果樹とは異なり、結果習性という性質を持っています。そのため、肥効(肥料の効果)、特に窒素は長期間にわたって持続するものを元肥として与えると良いでしょう。有機肥料(有機質肥料)を主体にしたり、緩行性の肥料を主体とすると良いでしょう。
また、イチジクの生育適正土壌酸度(土壌pH)は、中性〜弱アルカリ性(pH 7.2〜7.5)を好む傾向があるため、カルシウム等石灰を使用して調節することも重要です。イチジクは石灰の要求量が大きいため、元肥でしっかりと施すと良いでしょう。
- 3月〜5月頃生育期(発根・発芽期)
暖かくなり始めると、イチジクの根が伸び、発芽が促進されてきます。この時期は、主にイチジクの体内に貯蔵された養分を使用して生長します。
- 6月〜8月頃生育期(新梢伸長期→果実肥大成熟期)
さらに新梢が伸び始めると、養分の土壌からの吸収が多くなってきます。また、果実もつけ始めることから、多量の養分が消費されます。
このとき、果実の発育と枝の充実のため、6月頃から窒素とカリウムを重点的に複数回に分けて肥料をやります。肥料をやるときは毎回、樹勢や樹の状態を確認して、肥料のやりすぎや不足が起きないように注意します。
- 9月〜10月頃成熟期
収穫が終わり始めたら、秋肥を施していきます。秋肥は葉の機能を高めて、樹勢を回復させることにあります。そうすることで、樹の体内に翌年の初期生育に必要な養分を蓄えさせることができます。
イチジクに合う肥料とは
イチジクの生育適正pH(土壌酸度)は、7.2〜7.5程度と言われています。栽培にあたっては土壌酸度を中性〜弱アルカリ性にしてあげることが重要です。肥料成分を補いつつ、苦土石灰などを利用して土壌酸度の調節もしてあげてください。pH(土壌酸度)は植物を育てる上では重要な指標なのでぜひ気にしてみてください。
イチジク専用肥料とは
イチジクの専用肥料も市販されています。イチジク栽培の特性に合った肥料成分が配合されています。初心者など栽培に自信のない方は、積極的に活用するとよいでしょう。
イチジク専用 いちじくがおいしくなる肥料
「イチジク専用 いちじくがおいしくなる肥料」は、アミノ酸が入ったこだわりのイチジク専用肥料です。
アミノ酸が持つ、「根から直接吸収される」「速く効き始め、緩やかに効き続ける」という性質は、日照不足、低温、長雨などの悪い環境下でも、光合成の鈍化に関わりなく、木の生長を助けてくれます。
その結果、開花、結実が促進され、健康に育った果樹に成る果実は、「甘みが増し、色や香りが良く、日持ちする、美味しく高い品質」なものになります。
アミノ酸は、果実の「うまみ」となる成分です。アミノ酸がたくさん蓄積されて実った果実は、本当に甘いと評判です。
肥料の主要成分
N(窒素)-P(リン酸)-K(カリウム)の割合は、5-5-5です。その他にも以下の主要成分が含まれています。
マイガーデンベジフル
「マイガーデンベジフル」を利用することもできます。
マイガーデンは、住友化学園芸の登録商標で、粒状の様々な草花・庭木・果樹の元肥や追肥に使うことができる肥料です。栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得していることや、土に活力を与える作用がある腐植酸をブレンドしていることや、肥料成分は樹脂コーディングされていて、土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶出する量が調節され、効き目が持続するのが本製品の特長です(リリースコントロールテクノロジー)。
ハイポネックス 錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用
追肥として「ハイポネックス 錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」を利用することができます。
肥料など園芸用品のメーカーとして信頼と実績があるハイポネックスジャパンの「ハイポネックス 錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」が人気です。果樹に最適な肥料成分、微量要素が配合されています。
- かんきつの生育に必要な肥料成分と、鉄などの微量要素を配合されている。
- 丈夫な株をつくり、大きな果実がたくさん実ります。
- 早く効く成分とゆっくり効く成分配合により、安定した肥料効果が約1〜2ヵ月間持続する。
- 臭いも少なく清潔なため、玄関先などで使用しても安心。
錠剤タイプで、置くだけでOKというのも便利なところです。内容量も多く、一つ購入すると長く使うことができるでしょう。
小さなレモンの苗と鉢植え暖地桜桃のために購入しました。鉢のサイズに合う数を置くだけなので楽チン。数年分はもちそうです。
臭いがないから変な羽虫が寄り付かないところが良いです。
施肥から二週間、レモンはいつのまにか脇芽ががんがん出てきて勢い良く育っています。効いてます。
楽天市場レビュー
マグァンプK
ハイポネックスジャパンが販売する元肥用の定番の粒状肥料です。「チッソ・リンサン・カリ」植物の生育に必要な三要素は勿論、マグネシウムやアンモニウムなどの二次要素・微量要素もしっかりと配合されていて、元肥に申し分ありません。土にしっかり混ぜて、大粒で約2年、中粒で約1年、生長効果が持続します。マグァンプK 小粒は追肥に有効です。
また、果樹用の肥料を使用することもおすすめです。ハイポネックスのマグァンプKや住友化学のマイガーデンベジフルは、果樹の栽培にもよく使用されています。花ごころにも、花木にも効果がある肥料が多く販売されています。
イチジクに使えるその他の肥料
油かす肥料
\イチジクに油かす肥料を使えるか/
イチジク栽培では、有機肥料として油かす(油粕)肥料が利用されることが多いです。油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。
元肥のタイミングで、他の有機肥料(有機質肥料)と合わせて油かす肥料を使用すると良いでしょう。
その他有機肥料(有機質肥料)
イチジクは、元肥に多くの有機肥料(有機質肥料)を活用します。油かす肥料の他にも以下の有機肥料がよく使われます。
その他化学肥料・化成肥料
化学肥料は、緩行性化成肥料と速効性化成肥料がよく使われます。
但し、樹の状態や気候を考慮した施肥が必要です。また、硝酸態窒素やアンモニア態窒素などの無機態窒素(チッソ)は速い効果すなわち速効性があり、よく効くものの「肥料焼け」の原因となるので、利用する場合には様子を見ながらよく観察して、少しずつ与える必要があります。
また、イチジクは酸性土壌を嫌うことから、苦土石灰や熔リンを利用して酸性土壌をアルカリ性に矯正することもあります。
初心者の方は既に配合された果樹用の化成肥料と苦土石灰肥料などを使用することをおすすめします。
肥料をあげすぎて肥料焼け?
肥料は、多ければ多いほどよいというわけではありません。土中肥料の濃度が高くなりすぎると、根が吸水できなくなり、植物に障害が発生したり枯れてしまったりすることがあります。これが「肥料焼け」です。
成長が楽しみで、ついつい肥料を多くあげたくなってしまうかもしれませんが、一般に肥料をあげすぎると、かえって植物が弱ることがあり、樹や枝葉に障害が生じることもあります。肥料は過多にならないよう注意しなくてはいけません。また、苗(苗木)は成木に比べ弱いので、特に苗(苗木)の段階では施肥量を減らす工夫が必要です。
イチジク(いちじく)の肥料の購入場所
イチジクの肥料は、ホームセンター、100均、インターネットなどで購入可能です。肥料を購入できる主な場所・方法は以下のとおりです。
各購入場所・購入方法のメリット・デメリットをまとめました。購入方法選びの参考にしてください。
購入方法 | ホームセンター | 100均 | インターネット |
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メリット |
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デメリット |
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補足:イチジク(いちじく)の基礎知識
イチジクは、落葉性のクワ科イチジク属の植物で、学名はFicus caricaと言います。野菜などと異なり樹木なので多年生ですが、耐寒性がやや弱く、関東より北の露地では越冬できないとされています。
イチジクは漢字で「無花果」と書く通り、果実の中に花をもつため、外から花を見ることができません(単為結果により、受粉することなく果実ができます)。品種にもよりますが、長いものでは6月下旬から10月中旬くらいの秋まで収穫できる点も特徴です。
日照時間が長い方が好ましいので、日陰ではなく日当たりのよいところをイチジクの置き場として設定しましょう。樹高は1m〜5m程度になりますが、鉢植えでの栽培の場合は剪定をしっかりと行えば、そこまでの樹高にはなりません。
学名 | Ficus carica |
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属名 | クワ科イチジク属 |
原産地 | アラビア南部、南西アジア |
樹高・草丈 | 1.5〜5m |
耐寒性等 | 耐寒性はやや弱く、温暖湿潤な土地で育ちやすい |
補足:イチジクの肥料のやり方詳細
庭植え(地植え)の場合
庭植え・地植えのイチジクの肥料のやり方の基本は、根が広がっている範囲に施すことです。「根の広がる範囲なんて掘り返してみないとわからない」と思われるかもしれませんが、一般的な樹木は基本的に「葉の広がっている範囲が根の広がっている範囲」と言えます。葉の広がっている範囲を確認して、その下の土にまんべんなく散布すると良いでしょう。
施肥するときには、株元にドーナッツ状に散布します。少し広げることと軽く土に混ぜ込むことを意識するとよいでしょう。
「施肥量はどのくらいが良いの?」とよく聞かれますが、品種や樹齢、樹・土壌の状態、剪定の強さによって異なるのでなかなか的確なアドバイスはできません。また、水田から転換した畑では植え付け後、1年〜2年は肥効が十分で、施肥が不要となることも多いです。
以下に、奈良県の「イチジクづくりのポイント」で記載されていた施肥量を掲載します。以下で記載されている肥料成分の他に、土壌酸度(pH)を考慮して苦土石灰を100kg/10aを基準に施します。完熟堆肥などを使って土壌改良することも求められます。
年間施肥量の合計から、元肥50〜70%、夏肥25〜50%、秋肥0〜12%程度の割合で配分し、肥料をやります。
樹齢 | 成分 | 年間施肥量合計(kg/10a) |
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2年 | N P K | 4 2 2 |
3年 | N P K | 6 5 5 |
4年 | N P K | 10 10 10 |
成木 | N P K | 16 14 16 |
肥料には、ラベルの裏に大まかな施肥基準が載っている場合もありますので、参考にすると良いでしょう。
鉢植えの場合
鉢植えのイチジクにも同様に施肥が必要です。鉢植えのイチジクに施肥する場合は、株元(根元)を囲むように肥料を施します。
施肥量は、品種や樹齢、樹の状態、プランター・鉢の大きさなどによって異なります。庭植えの場合の施肥量よりも少なめを意識して肥料をやるといいでしょう。
肥料には、ラベルの裏に大まかな施肥基準が載っている場合もありますので、参考にすると良いでしょう。