ぼかし肥料作りのよくある失敗と、その対処法を紹介します。また、水分管理や発酵のコツを押さえて、失敗しにくいぼかし肥料の作り方を解説します。
ぼかし肥料づくりの失敗とその原因
ぼかし肥料は、有機物を原材料に、微生物を使って発酵をさせていくことで完成します。そのため、ぼかし肥料が完成するまでの間に、何らかの原因で失敗する可能性もあります。
ぼかし肥料づくりのよくある失敗例には、下記のものがあります。
- 切り返し不足・酸素不足(好気性発酵の場合)
- 水分不足・過多
- 過度なpHの偏り
ぼかし肥料失敗例 ①切り返し不足・酸素不足
好気性発酵の場合は、空気に触れさせるため定期的な切り返しが必要です。切り返しをすることで、内部にも酸素を供給し、発酵を均一に促進させることができます。
3日〜1週間程度で内部温度が50℃まで上がってくるので、それを目安に全体的に切り返す必要があります。完成までに3回程度は切り返しが必要ですが、この切り返しの作業が不足すると、発酵が均一に進まず、良質なボカシ肥料になりません。
少量で手間がかからない場合は、2〜3日に1回程度は切り返しして、酸素を供給するようにすると良いでしょう。
なお、嫌気性発酵の場合は切り返しは不要です。
ぼかし肥料失敗例 ②水分不足・過多
ぼかし肥料を作る際は、水分量が鍵となります。
水分量は混ぜ合わせながら加減をします。おおよそ40%〜60%の水分含量となっていれば良いでしょう。目安は混ぜ合わせた材料を強く握るとだんご状になり、軽い力で崩れるくらいが良いです。
逆に、水のあげすぎ、少なすぎには要注意です。水分過多の場合、腐敗したような嫌な臭いがしてきます。逆に水分が少なすぎる場合には思うように発酵が進まないでしょう。
籾殻を入れすぎて、含まれている水分量が分かりづらくなるときがあります。生もみ殻は吸水性が低く、だんご状になりにくいため、気づかずに水分過多になってしまうことがありますので、注意しましょう。
また、逆に水分が多すぎて酸素不足の状態となっているときには籾殻を入れて立て直すことも考えられます。
ぼかし肥料失敗例 ③過度なpHの偏り
使用する原材料の違いによって、pHは変わってきますが、過度にアルカリ性、もしくは酸性に偏った状態となってしまうと、発酵が思うように進まず、失敗するリスクが高まります。
例えば、カルシウム分を補うためにアルカリ性の資材、苦土石灰などの石灰質肥料を混ぜ込んで作ろうとしたとき、多量を混ぜ込んでしまうと失敗しやすくなります。
また、発酵菌によっては、適さない場合もあります。発酵促進剤コーランネオに含まれる有機酸は、石灰類と同時混合しないようにすることと明記されています(参考:香蘭産業 コーランネオ)
使用する原材料にも気を使って、ぼかし肥料づくりを始めましょう。
ぼかし肥料づくりに失敗した場合どうなるか
ぼかし肥料づくりに失敗すると、下記のような事象が発生します。
- ぼかし肥料から強い悪臭がする:ある程度臭いはありますが、さらにツンとさすような臭いを放つときがあります。
- ぼかし肥料が黒カビ、青カビに覆い尽くされる:ぼかし肥料に白カビや青カビ、黒カビなど様々なカビが生えることがあります。「カビが生えてしまったから、このぼかし肥料は使えない」と思いがちですが、そのようなことはありません。しかし、覆い尽くされるほどの黒カビ・青カビが生えてしまったものはこれから作物を植える場所に使うことは避けた方が良いでしょう)
- ぼかし肥料にウジ虫が大量にわく:ウジ虫がわく原因も様々ですが、一つの要因として水分量の調整がうまくいかず、腐敗してきている可能性があります。
ぼかし肥料づくりに失敗したらどうするか
「ぼかし肥料づくりに失敗したなぁ…」という場合、そのぼかし肥料はどうすればよいでしょうか?大きく2つの対処法があります。
- 原材料(籾殻等)を混ぜ込んだり、発酵促進剤・水などを加えたりすることで、水分量を再度調整し、そのまま発酵を進める。
- そのぼかし肥料は諦めて、休ませている圃場にすき込む(ただし、一箇所に多量のぼかし肥料をすき込むのではなく、広い範囲にまんべんなくすき込むほうが良いでしょう)。
失敗しにくい作り方
ぼかし肥料づくりに失敗しない方法はないのでしょうか?ぼかし肥料づくりのコツは、下記の3つです。
- 好気性発酵の場合は、しっかりと複数回、切り返しを行う。
- 水分不足・過多にならないよう、原材料(米ぬか等)と水のバランスを確認する。
- 原材料や発酵促進剤の種類をたくさん使ったり、いろいろ混ぜたりしない。まずはシンプルにやってみる。
ぼかし肥料の簡単な作り方は、下記の記事にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
失敗しにくい使い方
ボカシ肥料を使って失敗したという話も聞くことがあります。ボカシを最初から効かせすぎて、トマトなど植物の樹勢をコントロールできず、最終的に病害虫にやられやすくなったり、収穫量が落ちてしまったり、そのような場合もあります。
基本的には、ぼかし肥料は元肥・追肥として使用することできますが、その使い方・使う量には注意が必要です。下記の記事に、ぼかし肥料の使い方を簡単にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
参考:ぼかし肥料とは
ぼかし肥料とは、油かすや米ぬか、籾殻(もみ殻)、鶏糞(鶏ふん)など複数の有機質資材を配合させたものに土(土着菌)や発酵促進剤などを加えて、発酵させた肥料のことを指します。昔は有機質を土などで肥料分を薄めて肥効を「ぼかす」としていたことから、ぼかし肥料という名前がついたと言われています。
ぼかし肥料は、昔の農家では自分たちで独自で作っていましたが、化学肥料が発明されて窒素、リン酸、カリウム(加里)などの養分が手軽に補えるようになったことから、製造、使用されることも少なくなりました。しかし、近年は可能な限り化学肥料を使わない栽培方法(特別栽培や有機栽培)が人気となり、再び「ぼかし肥料」に注目が集まっています。
発酵させることにより、有機肥料(有機質肥料)に比べて植物が吸収することができるアンモニア態窒素、硝酸態窒素に無機化されるため、施してからすぐに肥料が効き始める速効性が備わっています。緩効性、遅効性という有機肥料の特長に、速効性を併せ持つことによって、より使い方の幅が広がる肥料となっています。
また、自分でぼかし肥料を作ることもできます。正直、良質なぼかし肥料を作るのは結構難しく手間のかかる作業なので、家庭菜園や園芸などで有機栽培に挑戦されたいという方は購入されることをおすすめします。