農業に関する補てん金や補助金、交付金等は収入として確定申告する必要があります。しかし補助金や助成金、交付金の種類によっては確定申告の方法が異なることもあります。ここでは農家の方が受け取る補助金の確定申告の取り扱いについて説明します。
雑収入になる補助金等の種類
農業に関する補てん金や補助金を受け取った場合は、基本的には農業所得の収入の「雑収入」として計上します。雑収入として計上する補助金等は下記のようなものがあります
- 農業共済の共済金
- 米・畑作物の収入減少影響緩和交付金(ナラシ対策)
- 畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)
- 収入保険の保険金等
- 米の精算金
- 家畜伝染病予防法に基づく手当金
- 立毛補償金
- 農業次世代人材投資資金
- 集荷円滑化対策交付金
- 就農準備資金・経営開始資金(事業をまだ始めていない場合は雑所得として確定申告書に記載する)
- その他事業を営む上で交付された補助金、補てん金等
固定資産取得のために得た補助金等の取扱い
個人事業主の農業者が、国、地方公共団体、協会等から固定資産の取得や改良のために経営発展支援事業補助金等の国庫補助金等を受けた場合は「総収入額不算入の特例」を使うことができます。
総収入額不算入の特例とは、補助金を雑収入に計上せず、補助金によって購入した固定資産の取得価格から補助金の金額をマイナスした金額を固定資産の取得価格として計上することができるというもの。
例えば、500万円のコンバインを購入する際に、350万円の補助金をうけた場合。
特例を使わない場合は、350万円が雑収入となり、取得価格500万円で7年間で減価償却した場合最大でも715,000円の減価償却費しか必要経費として認められませんので、その年の課税所得額が大きくなり税負担が重くなります。
しかし特例を使うと、コンバインの取得価格は150万円(500万円-350万円)になり、雑収入は0円。減価償却費は最大214,500円となり、必要経費は少なくなりますが収入がないので取得した年の税負担を抑えることができます。
この特例を受けるには、確定申告時に「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」を提出する必要があります。またこの特例が受けれられるのは固定資産のみ。ソフトウエアなどの無形固定資産には使えないので注意しましょう。
参考:農林水産省 国庫補助金等の総収入金額不算入・固定資産の圧縮額の損金算入の特例
新規就農に関わる補助金について
農林水産省では、新規就労に関わる若い担い手に就農準備資金や経営開始資金(農業次世代人材投資資金)等の補助金を交付しています。
準備金等で農業をまだ開始していない場合に補助金を受け取った場合は、事業所得(農業所得)ではなく雑所得として確定申告をします。他に給与等の収入がある場合は一緒に確定申告する必要があります。親などの生計を一とする親族の元で働いている場合は、親とは別に確定申告する必要があります。
参考:就農準備資金・経営開始資金等受給者の確定申告について(令和5年版)(PDF : 240KB)


収入として計上する時期
補助金等を雑収入や雑所得として計上する時期は、原則「交付決定通知の日」の属する年です。入金のあった日の年と変わらなければ気にすることはありませんが、入金がずれる場合には注意しましょう。
収入保険の保険金及び特約補塡金のうち国庫補助相当分は、保険期間の翌年に入金されますが税務上のルールでは、保険期間に雑収入に計上する必要があります。そのため確定申告の前に、収入保険の加入窓口に見積金額を算出してもらう必要がありますので早めに準備をしましょう。
また米の精算金など離農した後に受け取った補助金は、受け取った年に雑所得として確定申告します。
まとめ
農業に関わる補助金等は多くの種類があるので、迷った時には最寄りの税務署やJA、補助金の事務局等に相談しましょう。消費税課税事業者の場合は、補助金は基本的には不課税取引で消費税対象外となりますので注意しましょう。

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