自分で作った作物を家で食べたり、人に贈った場合も事業所得の収入として計算する必要があり、これを家事消費(自家消費)といいます。ここでは確定申告時の家事消費の種類や計算方法について説明します。
家事消費とは
家事消費とは、個人の事業者が事業用に作ったり仕入れしたものを、家事のために消費したものいいます。
個人事業主の農家の場合は、自分で収穫した農作物を家族で食べたり、知人や親せきなどに配って消費したもので、自家消費とも呼ばれます。農業で収入を得ている人は、収入として農業所得に含める必要があります。
家事消費の対象となるもの
- 家族で消費した農作物
- 知人・親戚等に贈った農作物
家事消費の収入金額とは
個人事業主の家事消費の収入の額は、「当該消費等の時における通常売買される価額」とされています。しかし家事消費には特例があり、「当該棚卸資産の取得価額以上の金額をもって、その備え付ける帳簿に所定の記載を行っている場合には、通常売買される価額の著しい下落(おおよそ70%未満)でない限りこれを認める」としています。
さらに農業を営む者の取引に関する記載事項等の特例により、農産物の家事消費等の金額については、「収穫時の価額の平均額又は販売価額(出荷価額)の平均額で計算しても差し支えない」とされています。
参照:国税庁 法第39条《たな卸資産等の自家消費の場合の総収入金額算入》関係
原則としては、同時期に出荷した農作物と同じ販売価格単価で計算するが、単価は販売価格(出荷価格)の平均価格をつかってもかまわない。特例では、取得原価以上で帳簿に記載していれば、通常売買される価格の70%で計算してもよいとされています。
参照:国税庁 棚卸資産の自家消費
家事消費の計算方法
販売価格を使った方法
出荷した農作物と同時期に収穫した農作物を自家消費した場合には、出荷した販売価格を使って出荷単価を計算します。出荷にかかる経費は除いてよいことになっているので、出荷の際の包装費用や運賃、出荷にかかる手数料を差し引いた金額を使います。
出荷単価=(農産物の販売価格 ー 出荷にかかる費用)÷ 出荷数量
家事消費金額= 出荷単価 × 家事消費の数量
規格外の農作物などを家事消費した場合
通常の販売金額で流通できないものを自家消費するという場合には、市場の規格外の出荷価格などを参考に計算することもできます。
家事消費価格=市場価格などを参考にした平均単価 × 家事消費数量
通常の販売価格の70%で計算する場合
家事消費の特例を使い、通常の販売価格の70%で計算する場合。単価はこの場合が一番低くなりますが、この計算方法を選ぶときには、取得原価を下回らない場合という条件がついています。例えば仕入れをした製品を販売している場合には、仕入れした金額が取得原価になり、その金額を下回らないことが条件となります。
農家の場合は、自分で作っている作物なので取得原価がないため、単純に販売した価格の単価×70%が認められない場合もあります。特例を使う場合には、最寄りの税務署や税理士に確認するとよいでしょう。
確定申告の処理方法
白色申告の場合
- 家事消費の金額を計算する。
- 収支内訳書の裏面の収入金額の明細に、各作物ごとの家事消費・事業消費の欄に、計算した金額を入力する
- 収支内訳書の表の収入金額②家事消費・事業消費金額欄に、家事消費の合計金額を記入する
青色申告の場合
青色申告の場合は、家事消費の金額を計算したら、仕訳をいれて決算書に反映させましょう。
家事消費の金額が20万円だった場合
借方 | 貸方 |
---|---|
事業主貸 200,000 | 家事消費 200,000 |
まとめ
個人事業主の農家は、自分で作っている農作物を自分で食べることは当たり前なので、家事消費が0円ということはあまり考えられないため、税務調査などで指摘されやすい項目です。販売価格以外の価格で計上する場合には、その金額の根拠となる書類や計算式などを、しっかり保存しておくことが大切です。
家庭菜園などの小規模な畑で出荷せず、家事消費だけの場合は基本的に確定申告は不要ですが、申告する場合は事業所得になはならず、雑所得として申告します。
本サイトの内容は、国税庁の決算のしかた(農業所得編)、令和6年分収支内訳書(農業所得用)の書き方、法令解釈等を参考に記載していますが、税務アドバイスを目的としたものではありません。実際の申告では、税務署や税理士に確認の上、ご自分の判断で申告を行ってください。