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確定申告

農家の確定申告 トラクター、農機具を廃棄・売却した場合の処理は?

軽トラ 確定申告

農機具やトラクターなどの資産は毎年減価償却費を経費としていますが、壊れて廃棄したり、中古品として売却した場合の確定申告はどうしたらよいのでしょうか。ここで個人事業主の農家が減価償却資産を売却したり、廃棄した場合の処理について説明します。

資産を廃棄したり売却したらどうなる?

1台10万円以上の農業用の機械やトラクター、軽トラなどは全額購入した年の経費とはならず、固定資産となり使用期間(法定耐用年数)で按分して経費(減価償却費)にする必要があります。

耐用年数より前に廃棄した資産の場合は、廃棄した年に全額経費として計上することができる場合もあります。また売却した場合には、売却益が出た場合や損が出た場合でも、個人事業主は事業所得で計算せず、「譲渡所得」で確定申告書に別途記載する必要があります。(一括償却資産は事業所得で計上)

資産を廃棄した場合の処理

資産が古くなって買い替えたり、壊れたことにより廃棄した場合の処理は、残った償却額を雑費として、経費にすることができる資産があります。まずは前年の確定申告書を確認しましょう。

廃棄した資産が、20万円以下で一括償却資産になっている場合

1台10万円以上20万円未満の資産は3年で均等償却となる一括償却資産として前年まで償却しているはずです。その場合は、たとえ2年で捨てて一番右側の未償却残高が残っていても廃棄の処理をすることができません。捨てた場合でも、廃棄しなかった場合と同様に減価償却費として3年間で経費計上します。

20万円以上の減価償却資産の場合

20万円以上であれば少額減価償却の特例を使っていない限り、前年の確定申告書減価償却の計算の欄にその資産が載っているはずです。その資産の「未償却残高(期末残高)」を確認しましょう。その金額が固定資産除却損の数字として経費に計上が可能です。

白色申告の場合

白色申告の場合は、収支内訳書の雑費にその金額(前年の未償却残高)を追加で計上するか、その他経費のヨ~ソの欄に固定資産除却損と科目を追加してそこにいれてもよいでしょう。

青色申告の場合

青色申告の場合は仕訳を入れる必要があります。
例えば上記の耕うん機を除却した場合、取得価格450,000円、未償却残高407,100円
【直接法の場合】

借方貸方
固定資産除却損 407,000機械装置 407,000


【間接法の場合】

借方貸方
固定資産除却損 407,000
減価償却累計額  43,000
機械装置 450,000

資産を売却した場合

農業に使っている資産であっても、個人事業主の農家の場合が資産を売却した場合、農業所得にはならず、確定申告時の譲渡所得として計算します。まずは前年の確定申告書を確認しましょう。

売却した資産が、20万円以下で一括償却資産になっている場合

1台10万円以上20万円未満の資産は3年で均等償却となる一括償却資産として前年まで償却しているはずです。その場合は、未償却残高が残っている場合は、減価償却の計算から削除することができません。売却した場合でも、売却しなかった場合と同様に減価償却費として3年間で経費計上します。

20万円以下の資産を売却した場合は、受け取った金額すべてが事業所得の雑収入になります。

20万円以上の減価償却資産の場合

取得した時の価格が20万円以上の軽トラや耕うん機などの減価償却資産を売却した場合は、「総合課税の譲渡所得」になるため、個人事業主の場合は収支内訳書や決算書に利益や損失を計上することができません。

まずは、売却額から前年の期末残高を引いて、利益がでたのか損がでたのか計算しましょう。

売却益が出た場合

例1)2020年5月に軽トラを取得価格1,500,000円で購入、前年(2023年12月31日現在)の期末簿価125,000円、2024年に10月に300,000円で売却した場合

売却額 300,000円 - 前年期末簿価 125,000円=売却益175,000円

譲渡所得は最大50万円の特別控除があるので、譲渡金額は0円となります。

売却益175,000ー特別控除(最大500,000)=譲渡所得0円

例2)2017年10月にトラクターを4,000,000円で購入、前年の(2023年12月31日現在)の期末簿価425,000円、2024年2月に1,500,000円で売却した場合

売却額1,500,000 - 前年期末簿価 425,000 =売却益1,075,000円

譲渡所得は最大50万円の特別控除があり、さらに所有期間が5年以上たっていると「長期譲渡所得」となり、譲渡所得が1/2になります。そのため譲渡所得は287,500円となります。

売却益(1,075,000-特別控除500,000円)÷2(長期譲渡所得)=譲渡所得287,000円となります。

例1、2は1台のみ譲渡した場合の計算式です。
例1と例2両方の資産を譲渡した場合には、特別控除は年額500,000のため下記になります。

短期譲渡所得 売却益175,000 ー 特別控除175,000=0
長期譲渡所得 売却益1,075,000 - 特別控除(500,000-175,000)=750,000÷2=375,000円

青色申告の場合の仕訳(例1の場合)

【直接法の場合】

借方貸方
現預金 300,000
 
車両  125,000
事業主借  175,000

【間接法の場合】

借方貸方
現預金      300,000
減価償却累計額 1,375,000
車両   1,500000
事業主借  175,000

事業主借勘定は、個人事業主の青色申告にだけ使われる勘定で、事業所得ではない利益、事業主へ返金すべきお金(事業主への借入金)の時に使う負債勘定です。

売却損が出た場合

例1)2020年5月に軽トラを取得価格1,500,000円で購入、前年(2023年12月31日現在)の期末簿価125,000円、2024年に10月に50,000円で売却した場合

売却額 50,000円 - 前年期末簿価 125,000円=売却損 75,000円

土地や建物を除く資産の譲渡所得は事業所得と損益通算が可能です。事業所得から売却損の金額をマイナスすることが可能なので、譲渡所得はマイナス75,000円です。

青色申告の場合の仕訳

【直接法の場合】

借方貸方
現預金  50,000
事業主貸 75,000 
車両  125,000

【間接法の場合】

借方貸方
現預金      50,000
減価償却累計額 1,375,000
事業主貸      75,000
車両   1,500,000

事業主貸勘定は、個人事業主の経理にだけ使われる勘定で、事業所得ではない費用、事業主から返してもらうお金(事業主への貸付金)の時に使う資産勘定です。

譲渡所得について

譲渡所得には、総合課税と分離課税があります。分離課税は土地や建物を売却した場合で、減価償却資産を売却した場合には総合課税に区分されます。

総合課税の譲渡所得はその資産を所有した年数により、5年以上所有した資産を譲渡するときは長期、5年未満の場合は短期に区分されます。譲渡所得には、50万円の特別控除額がありますが資産1つ当たりではなく、トータル50万円までなので2つ以上資産を売却した場合にはまずは短期からマイナスし、まだ残りがある場合には長期から控除します。

譲渡所得 = 短期資産の譲渡益 + 長期資産の譲渡益- 特別控除(50万円)
特別控除は短期資産からマイナスし、残ったら長期資産の譲渡益からマイナスします。長期資産の譲渡益の残高の1/2が課税される譲渡所得額になります。

まとめ

個人事業主の農家では、廃棄した場合は事業所得、売却した場合は譲渡所得になり少し複雑ですが、売却した時には50万円の特別控除があるのは、メリットです。また売却損が出た場合も事業所得からマイナスできるので、トータル的には税金は一緒です。

会計システムなどを使っている場合は、固定資産システムで仕訳が自動的に計算されて、売却や除却をする前の月まで減価償却費として計上する場合もあります。除却の場合は、費用が事業所得にのるので関係ありませんが、売却の時には、前期の期末簿価で益を出した方が特別控除がある分、節税になることもあるので確認してみましょう。

編集さん
編集さん

本サイトの内容は、国税庁の決算のしかた(農業所得編)令和6年分収支内訳書(農業所得用)の書き方法令解釈等を参考に記載していますが、税務アドバイスを目的としたものではありません。実際の申告では、税務署や税理士に確認の上、ご自分の判断で申告を行ってください。

執筆者・監修者情報
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農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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