個人事業主の農家でも繁忙期や臨時で人を雇った場合は、雇人費として経費に計上することができます。しかし人を雇った場合には、源泉徴収をする必要がある場合もあります。ここでは人を雇った場合に確認するべき事項や手続きについて説明します。
雇人費とは
雇人費(やといにんひ)とは、アルバイトやパート社員などの従業員に支払う給与や通勤費のことで、同一生計の親族や配偶者に支払った金額は含まれません。現金(振込)で支払をした場合の他、現物支給の金額も含みます。
申告書には、常用や年間契約して働いている人に対しての給与は氏名と住所を、収穫時や繁忙期などに臨時で働いてもらった場合には、作業名を記入します。金額は源泉所得税を控除した場合は、渡した現金の金額ではなく控除する前の金額を記入します。
通勤費を支払う場合には、実費に基づいて支払いをしましょう。領収書があればそれを保存しておきます。電車の場合なども通勤の経緯を記入したものを残しておきましょう。
源泉徴収が必要な場合
個人事業主でも、誰かに仕事を依頼して給与を支払った場合、所得税を源泉徴収して国に納める義務のある「源泉徴収義務者」になります。源泉徴収とは、給与を支払った側があらかじめ税金を差し引いて給与を支払い、その預かった税金を納税者にかわって納税する仕組みです。
源泉徴収は、支払いが一定の額を超えたら徴収する必要があります。その計算方法はパートやアルバイトの契約期間によって計算方法が変わります。
雇用契約が2ヵ月以上の場合
従業員やパート、アルバイトなどを雇っている場合、あらかじめ働く期間が2ヵ月以上であればこちらに該当します。月給や日給、時間給などの種類は問いませんが1ヵ月あたりの給与金額で計算します。
源泉徴収額は、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を使って求めます。この表には甲欄と乙欄がありますが、給与所得の扶養控除申請書の提出がある場合は、「甲」欄を使います。
甲欄に適用する場合、1ヵ月あたりの給与が88,000円未満であれば、源泉徴収の必要はありません。月額88,000円以上になると源泉徴収・納付が必要です。
雇用契約が2ヵ月以下の日雇い場合
繁忙期に数日間パートやアルバイトを雇ったり、近所の方に手伝いをしてもらう場合の給与がこれに該当します。
雇用契約の期間が2か月以内のパートやアルバイトに対して、日給や時間給で給与を支払う場合の源泉徴収は、「給与所得の源泉徴収税額表(日額表)」の丙欄を使って求めます。時給や日給どちらでもかまいませんが、時給の場合も日額で計算します。
日額の丙が適用される場合、日給9,300円未満であれば源泉徴収の必要はありません。日給9,300円以上になると源泉徴収・納付の必要があります。
源泉徴収が必要な場合の手続き
雇用期間が2ヵ月以上で月額で88,000円以上、雇用期間2か月未満で日給9,300円以上の場合は、源泉徴収が必要になります。月額表と日額表に基づいて源泉徴収をしましょう。
預かった源泉所得税は、翌月の10日までに「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」に必要事項を記載のうえ、税務署か提携している金融機関で納付する必要があります。毎月手続きをするのが面倒な人は、従業員が10人未満であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出すれば納期が1月と7月の半年に1回にする特例が受けられます。
「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」は税務署で手に入ります。初めて源泉所得税を納める場合には、一度税務署で申請書の書き方を聞いてみましょう。
源泉所得税を徴収した場合には、年末に年末調整が必要になることもあります。給与計算ソフトなどを使えば自動的に源泉徴収を計算してくれたり、年末調整を簡単に行えます。無料のソフトも多くあります。
まとめ
給与を支払う場合には、源泉徴収票を作成するなどの手続きが必要になります。それを元に働いている人は年末徴収や確定申告を行います。働いてくれる人のためにも、しっかりと正しい知識を持ち、正しい処理をするように心がけましょう。
税法や制度などは、変更されることがあります。
実際に計算・納付するときには税務署や税理士、社労士などに確認しましょう。