雑草はたくさんの種類がありますが、大きく分けると、一年で枯れる「一年生雑草」、複数年生育する「多年生雑草」があり、さらに「イネ科雑草」「広葉雑草」などに分類されます。ここではエンドウで有名な、蔓(つる)を伸ばして繁殖するマメ科の雑草の詳細と、それぞれを駆除、防除するにはどんな方法があるのか、徹底解説していきたいと思います。
クローバー(シロツメクサ)
科 | マメ科シャジクソウ属 |
種類 | 多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Trifolium repens |
別名 | ミツバ、イジンバナ、コボグサ、ナツメグサ |
クローバーの特徴
クローバーは様々な種類がありますが、日本ではシロツメクサ(白詰草)が有名です。シロツメクサはマメ科の多年草で、ヨーロッパから瓶に詰められて輸入されたことから、このネーミングがあります。ミツバ、イジンバナ、コボグサ、ナツメグサまざまな別名を持っていて野原でよく見かけます。
種子とほふく茎で繁殖するのが特徴で、踏みつけや刈り取りには強く、すみやかに再生します。このように地面を覆うように繁殖するため、他の雑草が生えるのを防止するカバープランツとして利用されることもあります。
非常に強い繁殖力を持っており、放っておくと、芝生に勝ってしまい、芝生を枯らしてしまう可能性があるため、繁殖する前に除草しなくてはなりません。
しかし、クローバー(シロツメクサ)は千切れやすいために手で草取りするのは大変困難です。畑地だと耕起して掘り起こすことができるのですが、芝生の場合は耕起するわけにもいきません。このため、芝生に生えると大変厄介なのです。
クローバーの防除方法
非選択制の除草剤が使用できる場合は、グリホサート系除草剤、またより速効性を求める場合は、バスタ、ザクサのようなグルホシネート系除草剤を使用するのもおすすめです。(100均のダイソーもグルホシネート系を販売しています)
芝生の上に生えた場合など、非選択制の除草剤が使えない場合は、メコプロップ(MCPP)が成分になっている除草剤がおすすめです。メコプロップ(MCPP)は、オーキシン型の植物ホルモン作用を有し、植物ホルモン作用を攪乱することによる細胞分裂異常により除草活性を有するフェノキシ酸系除草剤になります。スギナやクローバー、カタバミにピンポイントで効きます。
基本的には、MCPPでクローバーを除草しつつ、MCPPで効かない雑草をアージラン液剤やザイトロンアミン液剤(共に石原バイオサイエンス(株))で補完駆除していくのがベストな方法になります。
葛(くず・クズ)
科 | マメ科 |
種類 | つる性の多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Pueraria montana var. lobata |
別名 | – |
葛(くず・クズ)の特徴
葛(くず・クズ)もヤブカラシと同じく、地下部で栄養繁殖し、地上茎を萌芽して、物体に絡み、巻き付いて伸長していきます。地面を這うつるは10メートル以上伸び、地下茎はサツマイモくらいの大きさまで成長する塊根となります。
ここまで生育した葛(くず・クズ)は非常に広範囲まで近く期、根を張り巡らすため除去するのが困難になります。アメリカでは、その繁茂力、拡散力の凄さから、有害植物ならびに侵略的外来種として指定され、駆除が続けられている程の難雑草です。
葛(くず・クズ)の防除方法
基本的には、地下から新芽が出てきたら早めに抜き取ります。葛(くず・クズ)は地下茎から繁殖するので地上部を草刈り機や鎌で草刈りをしても、効果はないどころか逆に繁殖の手伝いになってしまいます。
葛(くず・クズ)の難点は、他の雑草よりも除草剤が効きにくいことです。高濃度に希釈した除草剤を直接塗る方法を毎年繰り返すか、下記のような、除草剤を染み込ませたピンを直接刺すのが有効です。刺す本数の目安は、葛(くず・クズ)の直径が2cm以下なら1本、2〜5cmなら、2〜5本、5cmを超えている太いものは、5〜10本くらいを刺すのがいいでしょう。
それ以外の方法で根絶するには、草丈の低い休眠期に土地全面を防草シートという資材で覆って密封し、光合成を出来なくして駆除する方法しかありません。防草シートで防除する場合は、耐久性と遮光率が高いシートにすることが望ましいです。下記は防草シートを徹底解説しているので、シートを選ぶ際の参考になります。
カラスノエンドウ
科 | マメ科 |
種類 | つる性の冬生一年草 |
分布 | 本州以南 |
学名 | Vicia sativa L. subsp. nigra (L.) Ehrh. var. segetalis (Thuill.) Ser. |
別名 | ヤハズエンドウ |
カラスノエンドウの特徴
カラスノエンドウは種子で繁殖する冬生一年草です。特徴は出芽深度が10cm以上と深く、種子が大きいため麦に似ているため、麦(ムギ)収穫物に混入してしまうと選別が難しくなり、農家にとっては大問題となる雑草です。田んぼの畔畦や水田、麦畑、空き地、庭によく見られます。
カラスノエンドウの防除方法
カラスノエンドウは、特徴として出芽深度が10cm以上と深いため、土壌処理剤の効果は他の雑草と比べて低いです。非選択性の除草剤の使用が可能な場合は、非選択性除草剤を散布するのが有効です。麦畑や水田、田んぼの畦畔の場合は、選択性の除草剤を使うことになります。例えば、麦畑の場合はジフルフェニカンが配合されているリベレーターフロアブルなどが有効です。
ヤブツルアズキ
科 | マメ科 |
種類 | つる性の夏生一年草 |
分布 | 本州~九州 |
学名 | Vigna angularis (Willd.) Ohwi et H.Ohashi var. nipponensis (Ohwi) Ohwi et H.Ohashi |
別名 | – |
ヤブツルアズキの特徴
ヤブツルアズキは、茎はつる性で赤紫色、たくさん分枝し,長さ2mほどになる夏生一年草です。6月手前から発芽し、8月から花が咲きます。花芽分化期が短いことがアズキに類似しています。畦畔や空き地、ダイズやアズキなどの夏作物の畑でよく出現する厄介な雑草です。
ヤブツルアズキの防除方法
基本的には、まず畑、菜園に侵入させないこと、新芽が出てきたら早めに抜き取ることが重要になります。茎が伸長している場合は、使用可能な場合は非選択性の葉茎処理剤、使用できない場合は、ダイズ、アズキの畑で使用できる選択性の除草剤は効果が薄いため、使用はおすすめできません。
その場合は除草剤を使わず、物理的に除去し、ヤブツルアズキは埋土種子として長期間地中で生存するため、とにかく種子を圃場から減らすことが重要です。
クサネム
科 | マメ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Aeschynomene indica L. |
別名 | – |
クサネムはアジア,ヨーロッパ,アフリカの温帯から熱帯にかけた広い地域に分布しています。日本の水田,湿った畑地,湿地などあちこちで見られます。
クサネムの特徴
クサネムは水田,畦畔,湿地など、湿った場所に生える一年生雑草です。大型で、ネムの木のような葉っぱの形をしています。種子により繁殖し,5月頃に発芽します。開花は7~10月で,種子は9~11月に成熟し,黒色の種子の大きさが比較的玄米に近く,収穫時に混入すると機械的な除去が困難なため,夾雑物として、水稲農家にとって非常に困る害草です。
中干し後(7月中旬)に出芽、大量発生するケースも多々あります。種子が混入すると米の品質、等級の低下をもたらしてしまうので、しっかり除草することが重要になってきます。
クサネムの防除方法
クサネムは種子からの発芽時は除草剤に弱いため,この適期を逃がさずに一発除草剤などを使用するのが効果的です。初期に逃したものは中後期除草剤でしっかり除草しましょう。
また、畔(アゼ)際に定着したものは、種子をつける前に手で抜き取る等除草しましょう。
クサネムは湛水状態よりも湿潤条件・畑地状態を好みます。このため、耕耘・代かきを丁寧に行い、田面を平らにして土を露出させないように水管理するのも重要な防除方法です。
除草剤の効果を高める方法
市販の除草剤を一度散布しても雑草によっては完全に枯らすことはできません。除草剤の効果を上げるために以下のような方法も取り入れてみましょう。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしても、スギナ、スベリヒユ、シロツメクサ、チドメグサ、セイタカアワダチソウ、ツユクサなどの難雑草がしっかり枯れるので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
サーファクタントのような展着剤を混ぜる
展着剤を混ぜることで雑草への除草剤の浸透を高めることができます。また、アジュバントと呼ばれる機能性展着剤は単に雑草への浸透を高めるだけでなく、速効性・難防除雑草処理・耐雨性の向上など、プラスαの効果があります。
除草剤と展着剤との組み合わせについて詳しく知りたい方は下記を参考にしてみてください。
代表的な除草剤
グリホサート系除草剤
「グリホサート 」とは、主にグリホサートイソプロピルアミン塩、グリホサートカリウム塩のことを指し、アミノ酸である“グリシン”と“リン酸”の誘導体です。
イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木、イシクラゲ、苔などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~ 7日、そして完全な効果に10日~ 2カ月ほどを要します。
グリホサートの大きな特徴としては、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎(スギナなど)、根も含めて全体を枯らす効果があります。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | エイトアップ | ネコソギロングシャワーV9 | グリホエースプロ | はやわざ | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | はや効き! |
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概要 | |||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (有)チャレンジサービス | レインボー薬品(株) | (株)ハート | (株)ハート | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | シンセイ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP A | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
グルホシネート系除草剤
「グルホシネート 」とは、アミノ酸系の除草剤で、植物のグルタミンの生成とアンモニアの解毒に必要な酵素であるグルタミンシンテターゼを阻害します。この結果、植物を枯らしてしまいます。グルホシネートは速効性はあるものの、根や地下茎までは枯らし切ることはできないところが特色です。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 | ゴーオン |
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概要 | |||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) | ハート(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 | グルホシネート |
農耕地使用 | ○ | ○ | ✖️ |
その他、除草剤はさまざまな種類があります。ご興味ある方は下記リストを参考にしてみてください。
まとめ
マメ科雑草は、このほか、コメツブツメクサ、ムラサキツメクサ、ミヤコグサ、スズメノエンドウ、ソラマメ、アレチヌスビトハギ、メドハギ、カスマグサ、フジバカマ、ナンテン、ナヨクサフジ、ヌスビトハギ、ヤハズソウ、シナガワハギ、クサフジ、ウマゴヤシ、イタチ、ササゲ、レンゲ、アカツメクサ、セイヨウミヤコグサ、ギンヨウアカシア、オジギソウ、コメツブウマゴヤシ、ハナズオウ、ミヤギノハギ、ベニバナツメクサ、カワラケツメイ、ナタマメ、クロバナツルアズキなど、さまざまな種類、野草があり、草本図鑑、道端でよく見ます。
つる性の植物も多く、駆除、退治が困難な手強い雑草です。アスファルトの隙間や道ばたでも広範囲に伸びて繁殖します。また、一年草から越年する多年草さまざまです。
まずは早期発見、早期の撤去を軸としつつ、生育したものに対しては、適切なタイミングで除草剤を散布するようにしましょう。
また、除草、草刈りのための農機具、農具、草刈機(刈払機)、ブレード(チップソーなど)、資材については、こちらをご参考ください。
除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのか、まとめたのは下記になります。