「農業法人」とは、法人形態によって農業を営む法人の総称です。他業種からの農業参入や、個人から法人経営への転換も進んでおり、令和4年2月現在では法人経営体数が約3万2,200となっています(出典:令和4年農業構造動態調査結果 – 農林水産省)。
農業法人の設立には、時間も費用もかかります。農業法人設立の際に、活用できる補助金等はないのでしょうか。
この記事では、農業法人設立時に活用できる補助金について、詳しく解説します。
※この記事は2023年11月時点の情報です。補助金の内容等の変更や公募が終了している可能性もあるため、必ず各公募の公式ページをご確認ください。
農業法人とは、法人化するためには
農業法人とは、法人形態によって農業を営む法人の総称です。農業法人は下記のように分類することができます。法人化する場合は、どのタイプの法人を選択するか、それぞれの特色や経営展望にあわせて選択する必要があります。
- 農業法人
- 農事組合法人
- 共同利用施設等の設置を行う法人(1号法人)
- 農業経営を営む法人(2号法人)
- 会社法人
- 合名会社
- 合資会社
- 有限会社
- 株式会社
- 農事組合法人
また、農地で作物を生産する(農業経営)場合には別途、農地法第2条第3項の要件に適合し、農地所有適格法人となる必要があります。なお、農地を利用しない営農、農地を借りて営農する法人は、農地所有適格法人となる必要はありません。
農業法人設立時に活用できる補助金
雇用就農資金(旧:農の雇用事業)
雇用就農者の確保・育成を推進するため、就農希望者を新たに雇用する農業法人等に対して資金を助成する制度です。また、農業法人等がその職員等を次世代の経営者として育成するために国内外の先進的な農業法人や異業種の法人へ派遣して実施する研修を支援します。
農業従事者の育成支援を、農業法人等を通じて行う画期的な制度です。
雇用就農資金には以下の3タイプがあります。
- 雇用就農者育成・独立支援タイプ
- 新法人設立支援タイプ
- 次世代経営者育成タイプ
この中でも、農業法人設立時に活用できるのが「新法人設立支援タイプ」です。
農業法人等が、新たな農業法人を設立して独立就農することを目指す就農希望者を一定期間雇用し、独立就農に必要な技術・経営ノウハウ等を習得させるための研修を実施する場合に資金を国が助成します。支援額、支援期間は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
支援額 | 年間最大120万円(3年目以降は年間最大60万円。新規雇用就農者が障がい者、生活困窮者、刑務所出所者等の場合は年間最大15万円加算) |
支援期間 | 最長4年間 |
雇用側の農業法人等、雇用される側の新規雇用就農者も要件が定まっております。詳しくは各公募ページを参考にしてください。
農の雇用事業については、令和3年度で終了しています。その後継となるのが、雇用就農資金です。
強い農業づくり総合支援交付金
法人化するにあたって、作付面積を増やしたり、利益率向上のためさらなる効率化を進めることもあるでしょう。そのようなときに活用できるのが「強い農業づくり総合支援交付金」です。
強い農業づくり総合支援交付金は、令和5年3月31日に改正された交付金です。特に生産事業モデル支援タイプは、農業用施設(パイプハウス、耐候性ハウス等)や農業用機械(トラクターや収穫機、播種機、定植機、選別機等)の導入にも活用できるものとなっています。
農林水産省の強い農業支援のパッケージは、基本的に農業用機械や施設(ビニールハウス、パイプハウス等)、スマート農業機器に活用できることが多いので注目しておくと良さそうです。
農地利用効率化等支援交付金
強い農業づくり総合支援交付金同様、法人化に伴う規模拡大等への対応に活用できるものとして「農地利用効率化支援交付金」があります。
農地利用効率化等支援交付金は、下記を目的に農林水産省が公募しています。
農業法人設立時に活用できるその他支援制度
農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)及び農業近代化資金の優遇措置
農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)及び農業近代化資金は、農業用機械・施設の整備などに利用できる制度資金です。認定農業者は、農業経営改善計画の達成に必要な資金を長期かつ低利で借り入れすることができます。
さらに、目標地図に位置付けられた場合等は、貸付当初5年間実質無利子化されます。
資本性劣後ローン
日本政策金融公庫から、農業経営安定資金又は施設資金について、期限一括償還(5年1か月以上20年以内)で貸付けを受けられます。
資本性劣後ローンとは、長期間にわたり元本返済が不要であるなど融資条件の面で、負債ではなく、資本に準じたものとして取り扱われるローンを指します。
農業経営基盤強化準備金制度
農業経営基盤強化準備金制度は、簡単に言うと税制上の特例・優遇措置です。
農業者が、経営所得安定対策等の交付金を農業経営改善計画などに従い、農業経営基盤強化準備金として積み立てた場合、この積立額を個人は必要経費に、法人は損金に算入でき、さらに、農業経営改善計画などに従い、積み立てた準備金を取り崩したり、受領した交付金をそのまま用いて、農用地、農業用の建物・機械等を取得した場合、圧縮記帳できる税制上の特例です。
法人化のメリット
農業経営を法人化することによるメリットは、いくつかあります。そのうち代表的なメリットを以下に列挙します。
- 経営上のメリット
- 経営管理能力の向上
- 対外信用力の向上
- 人材確保・育成の円滑化
- 経営継承の円滑化
- 制度上のメリット
- 税制面での優遇措置の活用
- 社会保障制度の徹底
- 制度資金の活用幅拡大
- 農地取得の負担軽減
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