有機肥料として庭や畑によく使われる鶏ふんはナス栽培の肥料として使えるのでしょうか。ここでは、ナス栽培に鶏ふんはおすすめなのか、鶏ふんの特性も踏まえ、使い方の基本についても説明します。
ナス栽培に鶏ふん肥料は有効か
結論としては、「ナス栽培の肥料として鶏糞肥料は使える」といえます。
鶏糞とは鶏(ニワトリ)の糞で、窒素(N)、リン酸(P)、加里(K)が程よく入り、カルシウムも多いのが特徴です。三要素の中ではリン酸が多く含まれています。
肥料成分に加えて、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。それにともない、土壌中のミミズなどの小動物、センチュウなどの微生物の多様性も高まり、病害虫(病気と害虫)の発生も抑制されることが期待できます。
土をふかふかにする効果は少ないので、堆肥としてではなく肥料として使うのがおすすめです。また昨今の肥料の高騰に鶏糞は安価なことから農家でも注目されている肥料です。
ナス栽培での鶏ふん肥料の使い方
ナス栽培には鶏ふんは、元肥として使うのがおすすめです。鶏ふんに含まれているリン酸はク溶性が多くゆっくりと効果がでるため元肥でリン酸の多い鶏糞を使い、追肥には速効性のある窒素を主体とした肥料を与えるのがおすすめです。
リン酸は過剰に与えても生理障害が起きにくいですが、野菜を栽培し続けている畑では、リン酸が過剰に残っていることも多く、リン酸の多施用は、果実の品質低下を下げるため、鶏糞を使う場合にはリン酸を基準にして施肥し、足りない窒素やカリは他の肥料で補いましょう。
ナス栽培の元肥の与え方
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
元肥は種まきか苗の植え付け時に行います。乾燥鶏糞なら植え付けの1か月前、発酵鶏糞であれば1週間前までに行います。
- 牛糞などの堆肥を、1㎡あたり2kg程度をまいてよく施します。
- 堆肥を撒いてから1週間ほどたってから、苦土石灰を1㎡あたり100gと元肥として発酵鶏ふん300g~500g程度施肥し、土とよく混ぜて耕してから畝を立てます。
- 2から10日ほどたってから、種をまくか苗を植えつけます。
土壌と肥料について
よいナスを作るには、土づくりが大切です。ナス栽培の適正土壌pHは6.0〜6.5と言われています。酸度計や酸度測定キットを使用して、土の酸度を測りましょう。一般的に野菜を栽培している畑などでは、土は酸性に傾くことが多いため、苦土石灰を使って酸度調整をします。アルカリ性に傾いている場合には、ピートモス(無調整)や、硫安を使って調整しましょう。
酸性に傾いているときは、堆肥と苦土石灰を使います。しかし堆肥と石灰を一緒にまくと堆肥に含まれている窒素がアンモニアとして逃げてしまうので、1週間ほどあけましょう。
鶏糞には、石灰(カルシウム)が多く含まれています。他の肥料と同量に石灰をまくと、アルカリ性に傾きすぎる可能性があるため注意しましょう。
代表的な鶏糞肥料
鶏糞肥料には色々な製品がありますが、大まかには以下の通り「乾燥鶏糞」、「醗酵鶏糞」、「炭化鶏糞」のように分類することができます。状況に応じて、適したものを利用するようにしましょう。
乾燥鶏糞
乾燥させた鶏糞です。醗酵(発酵)処理や炭化処理をしていないため、肥効が相対的にゆっくりであることが特徴です。また、安価であることも特徴のひとつです。
大量に使用する場合には養鶏場などから仕入れますが、家庭菜園やガーデニングなどで使用する場合には袋詰めされた製品から試してみましょう。相対的に臭いは強めですので、住宅街では要注意です。
醗酵鶏糞
醗酵(発酵)処理をした鶏糞です。
完熟していない鶏糞を散布すると、分解にともなってアンモニアガスが発生し、植物の生育障害を引き起こすことがあります。醗酵(発酵)処理済みの鶏糞では、植物の生育障害を引き起こす可能性を小さくできるほか、臭いも大幅に緩和されている特徴があります。
東商が販売する「醗酵鶏ふん」の成分含有量は、N(窒素)-P(リン酸)-K(加里)=2.6-5.4-3.3となっています。そのほか、マグネシウムや微量要素である亜鉛なども含まれています。菜園、庭木、花壇、鉢、プランターなどで幅広く利用できます。用途としても、元肥、追肥、寒肥、お礼肥など幅広く利用できます。濃縮タイプなので少量で効果を発揮します。
炭化鶏糞
鶏糞を高温処理し、炭化させたものが炭化鶏糞です。したがって、見た目は黒い粉状で、臭いもほとんどありません。
一般に、高温処理された炭化鶏糞では、窒素成分が失われています。しかし、創和リサイクルが販売する「炭化けいふん」の成分含有量は、N(窒素)-P(リン酸)-K(加里)=2.5-8.4-4.9となっているため、便利に利用できます。
土壌がアルカリ性に傾くため、ブルーベリーなどの酸性土壌を好む作物や植物には不向きですが、それ以外の野菜、果樹、庭木、草花などで幅広く利用できます。
たがって、見た目は黒い粉状で、臭いもほとんどありません。一般に、高温処理された炭化鶏糞では、チッソ成分をあまり含まないので、灰分として施すと良いでしょう。
その他 ナスにおすすめの肥料
有機肥料
ナスには鶏糞が有効なことは説明しましたが、このほか米ぬか、油粕、ぼかし肥料などの有機肥料もつかうことができます。油粕は窒素分が豊富なので追肥にも使えます。
化成肥料
臭いや虫などが気になるというかたには化成肥料を使いましょう。化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、元肥にはN-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などがよいでしょう。また野菜やナスの肥料も多く販売されていますので、初心者の人にはおすすめです。
ナスの肥料の過不足について
ナスは、肥料を贅沢吸収(いわゆる肥料食い)すると言われますが、肥料を与えれば与えるほど生長が良くなるというわけではありません。逆に、少なすぎると花や果実が着かないだけではなく、植物体自体が枯れてしまいます。
ナスでは元肥は与えすぎるとつるボケをおこすので、元肥は控えめにし追肥で調整するのが上手な施肥の方法です。肥料の過不足がわかりやすい野菜ですので、下記を参考にして上手に追肥を与えて育てましょう。