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耕うん機

トラクターとの違いは?乗用耕運機と乗用管理機を解説

乗用耕運機の写真 耕うん機

草刈機芝刈機には、人が乗れるタイプの乗用モアというものがあります。同じように、耕運機にも、人が乗れるタイプの乗用耕運機というものがあります。また、乗用耕運機に近い見た目で、近い作業ができる乗用管理機という農業機械もあります。

乗用耕運機と乗用管理機の全体像を把握するために、ぜひ本記事を役立ててください。

乗用耕運機とは(主な製品と価格)

耕運機(=手押し式の歩行トラクタ)は、1920年頃から日本に導入され始めました。その後、1960年代の高度経済成長期を背景に、より作業性の高い耕運機への需要と相まって乗用トラクタが急激に普及していきます。以降は、中山間地や中小規模圃場では耕運機が使われ、平坦な大規模圃場では乗用トラクタが使われるというイメージで大雑把にすみ分けがなされています。

乗用耕運機は、その両者の間の需要(耕運機で耕すには広いものの、乗用トラクタで耕すほど広くはないといった需要)を埋める存在として位置づけられることが多いです。車体のサイズを見ると一目瞭然ですが、乗用トラクタより小さいため、中山間地や中小規模圃場で栽培している場合、株間の狭い作物を栽培している場合、棚のある果樹園やハウスで栽培している場合などに、痒い所に手が届くような存在といえるでしょう(管理作業も行えます)。一方で、耕運機や乗用トラクタで代用できるケースも多いため、あまり一般的でなく、メーカー各社でも取り扱いがほとんどないというのが実情です。

「耕運」、「耕耘」、「耕うん」の違い

「耕運」は、正しくは「耕耘」と表記します。「耘」が常用漢字ではないため、「耕うん」と表記されることが多いです。ただし、新聞上では「耕運」と表記することが定められているため、一般には「耕運」と表記されることが普通となっています。

主な乗用耕運機に次のようなものがあります。なお、乗用耕運機ではない耕運機(=手押し式の歩行トラクタ)、ロータリーの代わりにトレーラーを装着することで運搬機としても利用できるテーラーなどについては、別の記事でも紹介していますので、あわせてご参考ください。

ヤンマー

ヤンマーは大手農業機械メーカーの中で唯一、現在でも「乗用耕運機」と銘打った製品を販売しています。

A-10V(アグリカ)

ヤンマーの乗用耕運機「アグリカ」シリーズのホイルタイプの製品です。乗用トラクタより小さいため、中山間地や中小規模圃場で栽培している場合、株間の狭い作物を栽培している場合、棚のある果樹園やハウスで栽培している場合などに、痒い所に手が届くような存在といえるでしょう。ご年配や女性でも楽に乗り降りできるように、低いステップと低い運転席が採用されています。税込の希望小売価格は、971,300~1,159,400円です。

AC-10V(アグリカクローラ)

ヤンマーの乗用耕運機「アグリカ」シリーズのクローラタイプの製品です。車軸部分が、ホイルすなわちタイヤではなく、クローラになっています。これによって接地面が広くなり、地面にかかる圧力が分散されるため、ホイルでは沈みこんでしまうような湿田でも作業ができます。同様に、人の足やトラクターでは沈みこんでしまうような湿田でも作業ができます。税込の希望小売価格は、1,507,000~1,683,000円です。

ホンダ

ホンダは新規での販売はしていませんが、人気を博した製品があり、中古品として見かけることがあります。

FJ900(ラッキーくるり)

ホンダが1995年に発売した製品です。軽量コンパクトなボディにより軽快な取り回しが可能です。また、「同軸同時正逆転ロータリ」によりパワフルで安定した耕運ができます。空冷4サイクル単気筒傾斜形OHVガソリンが搭載されていて、最大出力は9.0馬力(PS)です。

RT1300(マイティ13R)

ホンダが1988年に発売した製品です。湿田走破性に優れるため、主戦場を狭い水田や山間棚田などに設定しています。

乗用管理機とは(主な製品と価格)

乗用管理機は、防除、中耕除草追肥、収穫など様々な管理作業を行うことができる乗用トラクタの仲間です。農作物の栽培中に田畑に入ることが多いので、軽い機体や細いタイヤで構成されていたり、機体部が地面から離れた高床式になっていたりといった特徴があります。トラクターの入れない圃場での管理作業、より専門的な管理作業が求められる場面で活躍します。なお、基本的には耕運は行えません(本格的な耕運を目的としている農業機械ではありません)。

乗用ではない管理機については別の記事で紹介していますので、あわせてご参考ください。

ヤンマー

ヤンマーは、日本を代表する農業機械をメーカーであると同時に、マリンプレジャー(プレジャーボート、フィッシングボート、漁船、艤装、舶用システム、海洋設備)、大形舶用エンジン(舶用デュアルフューエルエンジン、舶用補機、SCRシステム、二段過給システム、金属ばね防振システム)、エネルギー(GHP、常用コージェネレーション、ポンプ駆動システム、発電機、トータルエネルギーソリューション)、建設機械(ミニショベル、油圧ショベル、ホイルローダー)、さらにスポーツ協賛活動まで手掛けるグローバルカンパニーでもあります。現行の乗用管理機は次の通りです。

HVシリーズ

中耕、培土、追肥、播種、畝立て、マルチ、防除、溝切、草刈など幅広い管理作業を行えます。水冷ディーゼルエンジンを搭載しており、最大出力は23馬力(PS)です。税込の希望小売価格は、2,712,600~7,007,000円です。

MD20

3輪タイプの乗用管理機です。3輪タイプの場合、タイヤが同じ溝を1回しか通らないため、畑を踏み締めることがないというメリットがあります(4輪タイプの場合、前輪と後輪が同じ溝を通ります)。また、ミッドマウント方式なので、作業機の動きが前を向いたまま常時確認できるメリットもあります。税込の希望小売価格は、2,293,500~2,508,000円です。

クボタ

日本におけるクボタは、稲作関連機器(播種機・育苗機・ほ場水管理システム・ポンプ・色彩選別機・精米機・玄米保冷庫)、野菜関連機器(移植機・野菜収穫機・調整選別機・包装機・管理機用アタッチメント)、果樹関連機器(噴霧機・散布機)などの農業のイメージが強い会社かもしれません。しかし実は、「食料」、「水」、「環境」をキーワードに幅広い領域で事業を展開しているグローバルカンパニーでもあります。現行の乗用管理機は次の通りです。

KV2200

稲作や畑作のほかに、野菜作にも対応しています。中耕、培土、除草、防除など幅広い管理作業ができます。また、PTO3点リンクが採用されているので、他社のアタッチメント製品でも利用できるものがあり作業の可能性が広がります。税込の希望小売価格は、3,025,000~4,422,000円です。

KV2200W

KV2200の機能そのままに、トレッド幅が広いタイプです。税込の希望小売価格は、3,025,000~4,422,000円です。

イセキ

イセキ(井関)グループは、「農家を過酷な労働から解放したい」という創業時の想いそのままに、田植機やコンバインといった優れた農業機械を通じて、日本の営農に貢献してきました。現行の乗用管理機は次の通りです。

防除専用機JK18

ブームを広げて農薬散布をする防除専用機です。高性能防除ポンプ(70L/分)が採用されているため、高速作業時でも安定した散布が行えます。18.9馬力(PS)の水冷ディーゼルエンジンを搭載していて、畑でも水田でも力強い作業が可能です。税込の希望小売価格は、2,904,000~3,124,000円です。

愛さいか JKA・JKBシリーズ

中耕、培土、追肥、播種、畝立て、マルチ、防除、溝切、草刈など幅広い管理作業を行えます。仕様区分が細かく分かれていて、仕様によって行える管理作業が異なり、価格も変化していきます。税込の希望小売価格は、2,712,600~5,687,000円です。

JKB23(キャビン仕様)

「愛さいか JKA・JKBシリーズ」JKB23のキャビン仕様です。窓で区切られた箱状のキャビンが機体についています。キャビンとともに、エアコンもついており、季節を問わず快適に作業を行えます。散布した農薬への暴露が心配な人でも、安心して作業を行えます。税込の希望小売価格は、6,517,500~7,007,000円です。

三菱

三菱農機とインド自動車大手であるマヒンドラ&マヒンドラが、2015年に資本業務提携したことにより現在の三菱マヒンドラ農機株式会社となっています。現行の乗用管理機は次の通りです。

MV170

中耕、除草、防除、追肥、収穫といった幅広い管理作業に対応しています。また、PTO3点リンクが採用されているので、他社のアタッチメント製品でも利用できるものがあり作業の可能性が広がります。スペーサーを利用することで、8段階のトレッドに変更できます。税込の希望小売価格は、2,222,000円です。

中古で買いたいときは

乗用耕運機や乗用管理機は、専門的な作業を行う場合には非常に便利で、ぜひとも入手したいと食指が動く農業機械です。一方で、決して安くはない買い物で、価格的な面で二の足を踏んでしまうことがあるかもしれません。その場合におすすめなのが、大手オークションサイトである「ヤフオク!」を利用する方法です。

オークションというと価格を随時確認しなくてはいけないなど煩わしいイメージがあるかもしれませんが、実は現在の「ヤフオク!」には「定額」で出品されている商品が多くあります。「定額」で出品されている商品は、オークション形式とは異なり、表示されている価格に対し購入ボタンを押すだけで即時取引完了となります。このように煩わしさもなくなっているばかりか、農機商品の取扱い数も急拡大しており、非常に使い勝手のよいサービスに進化しています。

以下にリンクを用意しましたので、ぜひ一度のぞいてみるとよいでしょう。

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まとめ

乗用耕運機は、ヤンマーの「アグリカ」シリーズが中心となり、とりわけネギ産地(埼玉、鳥取、大分など)や長イモ産地(青森、長野など)での普及に力が入れられているようです。ヤンマーでは、「アグリソリューションセンター」や「大形農機センター」といったこれまで以上に役立つ農業機械の情報発信拠点を設置していますので、この動きとも符合します(アグリソリューションセンターには、冬季期間や雨天時でもトラクター試乗ができる全天候型多目的ハウスであったり、日本国内で販売されるジョンディア製品の供給基地があったりします)。

乗用管理機は、近年注目を集めている農業機械でもあり、大手農業機械メーカー各社で製品展開されています。専門作業に特化した農業機械は作業効率がよく、扱いも簡単ですので、いずれは田植機、ハーベスター、スピードスプレーヤーなどのように、これまで以上に普及が進むものと考えられます。

乗用耕運機や乗用管理機は、トラクターなど他の農業機械でも代用ができる場合があります。しかしながら、プロ農家にとっては限られた時間でいかに効率よく作業をするかが重要です。トラクターが入りにくい場所であったり、より効率よくできる作業がある場合には、ぜひ乗用耕運機や乗用管理機の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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