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耕うん機

耕運機のすべてがココに!初心者からプロまで知りたかったこと総まとめ

耕運機の写真 耕うん機

耕運機は実に奥深い農業機械です。昔からある古い農業機械でもあり、先端技術が詰め込まれた新しい農業機械でもあります。単純な構造の農業機械でもあり、複雑な改良が重ねられた農業機械でもあります。初心者でも知っている農業機械でもあり、意外とプロでも知らない農業機械でもあります。

本記事では、耕運機に関する知っておきたい情報を網羅的に説明します。詳細はそれぞれ別の記事を用意していますので、ぜひチェックしてみてください。

耕運機とは

耕運機とは、その名の通り耕運、すなわち田畑を耕す作業を行うための農業機械です。教科書や公的文書では、「歩行トラクタ」などと表記されることもあります。

耕運機の誕生は、手作業で田畑を耕すという大変な重労働から農家を開放しました。そして、高度経済成長期の急速な工業化が、耕運機の普及を促すことにつながりました。その後トラクターの普及も加速するのですが、日本では大規模な農場よりも、トラクターの入れない狭い畑や傾斜地が多く、依然として耕運機は広く利用されています。

「耕運」、「耕耘」、「耕うん」の違い

「耕運」は、正しくは「耕耘」と表記します。「耘」が常用漢字ではないため、「耕うん」と表記されることが多いです。ただし、新聞上では「耕運」と表記することが定められているため、一般には「耕運」と表記されることが普通となっています。

耕運機で出来ること

耕運機と一口に言っても、大きさ、性能、機能など多種多様です。とりわけ近年の耕運機は進化が著しく、耕運だけでなく様々な使い方が出来るようになってきています。製品ごとに可否は異なりますが、耕運機で出来ることに以下のようなものがあります。

作業名内容
耕運土を耕します。土の中に空気を混ぜ込むことで、作物にとって生育しやすい環境をつくります。耕運機の重量、馬力、耕運幅などが耕す力に関係します。
畝立て土を盛りあげ、畝やベッドをつくることができます。畝立器溝浚器といったアタッチメントを利用することが多いですが、アタッチメントなしで簡易畝立てができる製品もあります。
培土野菜などの作物の株際に土を寄せます。培土器などのアタッチメントを利用することが多いです。
中耕畝の間の土をほぐすことで農作物の生育を助ける中耕作業もできます。中耕車輪などのアタッチメントを利用することが多いです。
除草スパイラルローターなどのアタッチメントをロータリー部分に装備することで、地際の雑草を除去します。
整地レーキやレベラーといったアタッチメントを利用して、土を平らに均すことができます。
マルチ張りマルチシートを張る、マルチャーとして活躍することもあります。マルチングにより、地温を上昇をさせるとともに、雑草や病害虫の発生、降雨による泥はねなどを防ぐことが期待されます。
播種種を播きます。アタッチメントに応じて、大小さまざまな種に対応します。
収穫農作物の収穫ができます。イモ類やネギ類の収穫で利用されることが多いです。
土壌消毒専用の農薬を圃場に注入することで土壌消毒ができます。

耕運機の使い方

使用する耕運機の機種によって操作方法は異なりますが、基本的な操作方法は以下のようになります。

作業名内容
始動① 機体の安全点検を行う
② 主クラッチレバーと耕運クラッチレバーが「切」、変速レバーが「中立」になっていることを確認する
③ エンジンを始動させる(リコイルスタータの場合はロープを引き、セルスタータの場合はスイッチを使う)
発進① 変速レバーを希望の位置に入れる
アクセルレバーを調整し、エンジンの回転を上げる
③ 主クラッチレバーを入れ、ゆっくりとクラッチをつなぎ発進
変速① 主クラッチレバーを切り、変速レバーを希望の位置に入れる
② 主クラッチレバーを入れ、ゆっくりとクラッチをつなぐ
旋回① エンジンの回転を下げ、速度を十分に落とす
② ハンドルをかるく持ち上げる
③ 曲がる側のかじとりクラッチレバーを握りながら、機体を旋回させる
停止① エンジンの回転を下げ、主クラッチレバーを「切」にする
② 変速レバーを「中立」にし、エンジンを停止させる

耕運機を大きさや用途ごとに分類すると

各メーカーでは、耕運機を大きさや用途ごとに整理して、ラインナップさせています。メーカーによって取り扱いがなかったり、得意不得意がありますが、全体を概観して総合すると次の5つに分類できます。

家庭用耕運機

家庭でも気軽に手軽に使えるような耕運機のことを指します。1万円以内で買える安価なものもあります。オーレック(OREC)高儀(TAKAGI)ナカトミ(NAKATOMI)アルミス(ALUMIS)ヤードフォース(YARDFORCE)パオック(PAOCK)ブラックアンドデッカー(BLACK&DECKER)の製品などが売れ筋です。

小型耕運機

大手農業機械メーカーでは、サイズの小さな小型耕運機のことを「ミニ耕運機」の名称で分類しています。以下に大手農業機械メーカーが販売している小型耕運機の現行機種をまとめました。性能や価格の比較に役立ててください。

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重量(kg)2127224253528715812520378013955627791101203560542261205418275251719323.218376153868718.519
最大出力(馬力)0.41.92.22.73.03.04.27.06.31.63.04.27.03.02.73.84.15.41.62.72.23.02.23.01.51.62.22.04.92.03.34.90.981.43.03.03.06.36.31.7
耕運幅(mm)400420575650500450550600600480550500600500500500500550480550500500575500350450450545630410460510350430600500500550550360360
対応面積目安(坪)~30~20~30~30~120~120~270~600~600~30~5060~60~~120~30~120~270~270~50~80~30~30~100~30~100~300~100~100~300~20~30~150~150~150~300~300~30
希望小売価格(税込)109,780円109,780円89,800円106,480円162,030円157,080円186,230円385,000円308,440円82,500円98,780円183,700363,000円167,200円190,300円187,000円242,000円274,320円72,600円100,100円163,900円160,600円91,300円159,500円109,780円209,000円75,900円109,780円149,380円177,980円175,780円250,800円102,960円94,050円161,700円218,900円220,000円295,900円326,700円61,000円91,000円

大型耕運機

サイズや重量が大きな耕運機を指しますが、「大型耕運機」という呼び方自体は、実はあまり一般的ではありません。大手農業機械メーカーでは、それに相当する呼称として「耕運機」や「テーラー」(もしくは「テイラー」)を使っています。しかしながら、単に「耕運機」と言った場合に、小型の耕運機である「ミニ耕運機」などと混同するケースがあるため、区別するためにも「大型耕運機」と言うことがあります。ガソリンを燃料とするガソリン耕運機のほかに、軽油を燃料とするディーゼル耕運機もラインナップされているのが特徴です。

乗用耕運機

乗用耕運機は、耕運機で耕すには広いものの、乗用トラクタで耕すほど広くはないといった需要を埋める存在として位置づけられることが多いです。車体のサイズを見ると一目瞭然ですが、乗用トラクタより小さいため、中山間地や中小規模圃場で栽培している場合、株間の狭い作物を栽培している場合、棚のある果樹園やハウスで栽培している場合などに、痒い所に手が届くような存在といえるでしょう(管理作業も行えます)。

管理機

管理機」という言葉を広義に捉えると、管理作業に用いる農業機械ということになり、たとえば中耕除草機、溝切機、草刈機なども含まれることになります。しかしながら、一般には狭義の意味で使われることが多く、単に「管理機」という場合には、耕運機(=手押し式の歩行トラクタ)の見た目で、耕運機よりも多彩な管理作業ができるものを指します。

耕運機をメーカーごとに分類すると

耕運機を製造販売する主なメーカーを紹介します。耕運機は、農業、刃物、金属、エンジンなど多くの技術が凝縮された機械ですので、祖業や得意とする技術の異なるメーカーがひしめき合っている分野ともいえます。したがって、ここで紹介する以外にも優れたメーカーが複数存在します。

クボタ

クボタの耕運機は、「ミニ耕運機」、「耕運機」、「管理機」、「テーラー」の4つに大別されています。この中には電動式のほか、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのモデルも含まれています。

ヤンマー

ヤンマーは、日本を代表する農機メーカーです。同時に、艤装や舶用システムなどのマリン製品も手掛けています。耕運機のラインナップとして大きくは、「ミニ耕運機」、「耕運機」、「管理機」、「乗用管理機」の4つに分類されています。この中にはガソリンエンジンのほか、ディーゼルエンジンのモデルも含まれています(ヤンマーディーゼルとしてもおなじみです)。

イセキ

イセキ耕運機には多くの製品がありますが、「ミニ耕運機」、「耕運機」、「家庭菜園用管理機」「管理機」、「乗用管理機」の5つに分類して整理すると理解しやすいです。そのうち、ミニ耕運機については、井関農機株式会社が取り扱う製品、その子会社である株式会社ISEKIアグリ(旧アグリップ)が取り扱う製品の2つのパターンがあります。大まかには、井関農機は系列の販売会社を中心に、ISEKIアグリはホームセンターなどの量販店を中心にそれぞれ販売することで役割分担をしているようです。

三菱

一般に三菱耕運機といわれているのは、三菱マヒンドラ農機株式会社の耕運機のことです。三菱農機とインド自動車大手であるマヒンドラ&マヒンドラが、2015年に資本業務提携したことにより現在の社名となっています。三菱耕運機に共通する特長として、丈夫で長持ちということがあります。また、エンジンは三菱重工製のものを採用しており、その性能は折り紙付きです。ブランドとしてのミツビシのファンで愛用している人も少なくありません。ラインナップとして大きくは、「ミニ耕運機」、「耕運機」、「管理機」、「テイラー」、「乗用管理機」に分類されています。

マメトラ

マメトラ農機株式会社は、埼玉に本社を構える老舗の農業機械メーカーです。秋田、山形、福島、栃木、茨城、群馬、新潟、長野、岐阜にも営業拠点があり、特にJAグループの展示会などでは頻繁にその製品を目にします。得意とする農機具および機器は、耕運機、管理機、移植機、土壌消毒機、掘取機、水田溝切機、乗用モアー、ハンマーナイフモアーなどです(モアーとは英語で草刈機や芝刈機をあらわす言葉です)。製品の特長として、鉄板の使用により石の飛び跳ねがあっても割れにくい頑丈なつくりになっていること、用途に応じたさまざまな機種があることなどが挙げられます。

ホンダ

ホンダの耕運機はユーザー目線でシンプルに整理されていて、初心者にもわかりやすいです。ただし、性能や使い勝手はいずれも素晴らしく、一線級の製品といえます。「耕運機」と「管理機」の2つに大別されています。

マキタ

マキタは、電動工具のトップメーカーです。耕運機のラインナップは、電力を動力に利用する「充電式耕運機」、燃料を動力に利用する「エンジン管理機」の2つに大別されています。なお、ロビン(Robin)耕運機で知られていた富士ロビン株式会社は、2007年にマキタの完全子会社となり上場廃止、2013年にマキタに吸収合併されています。現在は、ロビン耕運機の後継と位置付けられているラビット(Rabbit)管理機が、別ブランドとして製造販売されています。

リョービ

リョービ株式会社の電動工具、ガーデン機器、清掃機器などDIY機械に馴染みがあるという人も多いのではないでしょうか。実は、これらを手掛けていたパワーツール事業部門は、2018年に京セラグループの京セラインダストリアルツールズ株式会社へと事業譲渡されています。しかしながら、京セラインダストリアルツールズは、認知度の高いRYOBIブランドをそのまま継続して使用しているため、現在でもホームセンターなどでその製品を見かけることができます。事業は京セラインダストリアルツールズに譲渡されましたが、これまで通り変わらずにアフターサポート含めユーザーを大事にしてくれる信頼できるメーカーといえるでしょう。

オーレック

オーレックの耕運機は、管理機のひとつとして位置付けられています。現行の管理機には、バーディー(BIRDIE)、ピコ(PICO)、エースローター(ACE ROTOR)の3シリーズがあります。いずれも乗用タイプではなく、歩行タイプです。耕運には用いないバーディー(BIRDIE)を除き、ここではピコ(PICO)とエースローター(ACE ROTOR)を紹介します。

アルミス

アルミスは、佐賀県に本社を構える、アルミ製品および農業用資材メーカーです。AKT-300WRをはじめとする「耕す造」シリーズは、低価格な電動耕運機として広く知られています。また、2021年1月に販売が開始されたAK4-40Cも、低価格なガス耕運機として今後注目が集まりそうです。

ナカトミ

株式会社ナカトミは、長野県に本社を構えるメーカーで、冷房暖房器具、空気工具、エンジン商品、園芸商品などの産業機械を開発販売しています。株式会社山善と共同で、ドリームパワー(DREAM POWER)という家庭菜園や花壇などでも活躍する機械類のブランドも展開しています。比較的安価な1台を提供するイメージのブランドですが、電源コードを使用するタイプのERC-10D、移動性にも優れるタイプのERC-43DQなど需要に応じた製品を取り揃えています。

耕運機の部品と交換方法

耕運機の主要な構成部品を紹介します。いずれも使用頻度が高いため、概要を押さえておきたいところです。消耗品的な側面もあるため、定期的なメンテナンスや交換が必要になってきます。

エンジン

モーターを搭載した電動耕運機もありますが、耕運機の動力の主役といえばエンジンです。エンジンとは、燃料を燃焼させることで発生する熱エネルギーを機械エネルギーに変換し、動力として利用する装置のことです。より具体的には、燃焼室とよばれる密閉管の中で爆発(急速な燃焼)を起こし、その圧力でピストンを往復運動させることによって機械エネルギーに変換しています。耕運機のエンジンは、その機構に違いにより、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンに大別されます。

エンジンオイルには多くの役割があります。潤滑、清浄、衝撃吸収、密封、冷却、防錆などです。これらの役割を果たすためには、エンジンオイルが劣化していない新鮮なものであることが必要です。エンジンを動かしていなくても、エンジンオイルは自然に劣化していきますので、定期的に交換しなくてはいけません。交換を怠ると機械の寿命を縮めてしまうばかりか、ひどい場合にはエンジンの焼きつきにより新しいものに載せ換えるほかないということにもなりかねません。

耕運機やトラクターの耕運軸に取り付け、ロータリー(もしくはローター)を構成する部品が「耕運爪」です。単に「爪」とよんだり、中には「刃」とよぶ人もいます。爪の種類としてまずは、なた爪、L形爪、花形爪、正逆転兼用爪などを知っておきましょう。

爪は耕運機の使用とともに磨耗する消耗品ですので、定期的に交換する必要があります。爪の交換は、取扱説明書を参照することで比較的簡単に自分で行えます。

タイヤ

耕運機のタイヤという響きだけで、自身での整備や交換を諦めている人もいるかもしれません。専門の業者に依頼すると安心かつ手間はない反面、費用は数万円に及ぶこともあります(これはレイバーレートとよばれる工賃単価に照らし合わせると決して法外ではないのですが、農家にとっては小さくない出費です)。自分自身で行うようにすると出費を抑えることにつながりますので、出来ることから取り組んでみましょう。

耕運機を中古で売買したいときは

耕運機をはじめとする中古の農業機械を手軽に売買できるサービスがあります。中古の農業機械を専門に扱ったサービスもありますが、手軽さという観点では「ヤフオク!」、「メルカリ」、「ジモティー」、「楽天(中古市場)」、「Yahoo!ショッピング(中古マーケット)」などがおすすめです。どれも農業機械以外の売買もできるサービスですので、汎用性があり、すでにアカウントをもっている人も多いはずです。サービスを利用するために、新たに利用者情報を入力してアカウントを作成する面倒な操作を省ける点で優れています。

耕運機をレンタルしたいときは

年に数回しか使わなかったり、保管収納スペースがなかったりという理由から、耕運機をレンタルしたい場合があるかもしれません。農業機械や農業資材といった農機具は、購入するものであってレンタルするものではないという潮流がこれまではありました。しかし、世間一般に「所有」から「共有」への概念の変容があり、農業分野でもレンタルサービスが少しずつ増えてきています。耕運機のレンタルを行っている会社や団体として、以下などがあります。

  • レンタルサービスを手掛ける事業会社
  • JA(農業協同組合)
  • ホームセンター

レンタル商品として取り揃えられている耕運機は、それぞれの会社や団体で異なります。そのため、主に耕運機の大きさに応じて、選ぶべき会社や団体も異なります。たとえば、大型耕運機であれば受け渡しの都合上、JA(農業協同組合)からレンタルするのが現実的といった具合にそれぞれ得意不得意があります。

まとめ

耕運機には多くの種類があり、同時に関連する多くの情報が氾濫しているような状況もあります。そのため、情報を分類して整理することが理解への近道といえます。本記事では、大きさや用途ごと、メーカーごとに分類して整理しましたが、たとえば動力源により分類する方法もあります。具体的には、耕運機の動力源として利用される、無鉛ガソリン、カセットガスボンベ(液化ブタン)、リチウムイオンバッテリーを分類項目にする方法です。奥が深い耕運機の世界ですが、ぜひ本記事を活用して理解に役立ててください。

なお、耕運機はパワフルに土を耕せて便利である反面、怪我や事故の多い農業機械でもあります。農業機械が関わる事故のうち、耕運機が事故原因のものは、依然として大きな割合を占めています。低排気量で軽量な機種であったり、馬力が小さい機種であったりしても操作には十分な注意が必要です。耕運機の使い方や部品などについての基本的な知識をもつことで、怪我や事故を防ぐことができます。基本をしっかりと押さえて、安全で快適な農作業に臨みましょう。

執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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