茎レタスは、レタスの中でも変わった形をしており、茎の部分が長くこの長い茎の部分を食べます。シャキシャキとした独特の食感が特徴のレタスです。
ここでは、茎レタスの栽培について、育て方の基本から収穫まで、初心者の方や、レベルアップしたい方まで、わかりやすく説明します。
茎レタスの栽培について
茎レタスの基礎知識
レタスには、通常の玉レタスのように結球するもの、サニーレタスのように結球しないリーフレタス(葉レタス)、立姿に成長する立レタス、茎レタスに大きく分けられます。中でも茎レタスは見た目が他のレタスに比べてユニークです。草丈が1.5mほどに成長し、肥大した肉厚の長い茎の部分を食します。
別名、ステムレタス、茎チシャ、セルレタス、アスパラガスレタスともよばれ、品種名のケルン、セルタスで呼ばれることもあります。中国では「貢菜」と呼ばれて家庭料理によく使われます。また乾燥したものは「山くらげ」と呼ばれ油炒めや、煮つけなどにも使われます。
収穫は、植え付けから30日~40日程度、種から育てる場合は60日~70日ほど。冷涼な気候を好み、生育時期に温度が高くなると、とう立ちや病害虫が発生しやすくなります。
栽培は特性が玉レタスと似ているので、玉レタスの管理と同様に育てることができます。苗は販売されていることが少ないため、種まきから始めるのが一般的です。深く根を伸ばす特性から、多湿に弱いので、水はけが悪い場所では高畝にして育てます。
作物名 | 茎レタス |
---|---|
科目 | キク科アキノノゲシ属 |
原産地 | 地中海沿岸、中近東内陸 |
発芽適温(地温) | 15℃~20℃ |
生育適温 | 15℃~20℃ |
土壌酸度(pH) | 6.6〜7.0 |
連作栽培 | 不可 2年以上 |
育てやすさ | 普通 |
栽培時期(作型)
茎レタスは、温暖地では春まき栽培や、晩夏から秋まき栽培が、寒冷地では4月から5月初旬の~春・初夏まきの作型が適しています。
作型 | 播種(種まき)時期 | 収穫時期 | 備考 |
---|---|---|---|
春まき栽培 | 2月~3月(暖地) 4月~5月初旬(寒地) | 5月~7月 | 播種が遅くなるほど、とう立ちやすくなります。 |
秋まき栽培 | 8月下旬~9月 | 11月~12月 | 栽培が長くなると保温が必要になります |
初心者の人には春まき栽培がおすすめ。育苗時に保温が必要な場合もありますが、定植してからは病害虫も少なく手間のかからない作型です。秋まき栽培では、畑では平均気温が10℃以下になる晩秋には、防霜、保温が必要になります。
栽培する地域に合わせて、播種・定植の時期を決めることに、種をまくことが成功のポイントです。
茎レタスの育苗の方法
茎レタスの栽培は、レタスの苗はホームセンターなどで買うことができますが、茎レタスの苗はあまり販売されていないので、種から始めます。
地植えの場合は、直まきは発芽がそろわず、欠株、間引きなどの手間がかかるため育苗後、定植する方法が一般的です。プランターなどでは、直播して育てることができます。育苗には、育苗箱やセルトレイ、ポットなどを使って育てます。ここではセルトレイでの育苗方法について説明します。
用意するもの
- 茎レタスの種子
- セルトレイ(200穴)
- セルトレイ用育苗土
育苗の手順
- セルトレイに育苗土を均等にいれます。トントンと叩いて土をならし、空いた隙間に土をいれます。
- 水やりをして、しっかり土に水を含ませます
- セル穴を軽く鎮圧しながら、播種穴を作り、各穴に2~3粒づつまきます。
- 軽く覆土(3㎜程度)します。茎レタスは光がないと発芽しない好光種なので、被せる土が多いと発芽しにくくなります。
- 種が流れないように、細めのジョウロで十分灌水させます。
- 発芽するまでは、新聞紙をかけて日陰で管理します。
- 発芽したら、新聞紙を取りすぐに日当たりの良い場所へ。レタスは日照時間が少ないとすぐに徒長します。
- 本葉がでたら、育ちのよい苗を1本に間引きします。
- セルトレイは乾燥しやすいので、こまめに毎日午前中に水やりをしましょう
- 種まきから20日ほど、本葉が3~5枚程度になれば定植の時期です。
ロメインレタス栽培の手順(畑)
それでは、ここでは畑で茎レタスを栽培する手順について説明していきます。個別の詳しい説明は、茎レタスの育て方で説明しています。
用意するもの
手順
- 手順1
種をまく前の2週間前~10日前までに土づくりと施肥をします。
肥料は、全面施肥で行います。
畑に、堆肥と苦土石灰を入れよく耕します。その後、化成肥料を施肥し、
土とよく混ぜます。
畝幅70~80cmの平畝をたて、ポリマルチを張ります。 - 手順2定植
条間、株間とも25~30cmに植え穴を掘り、苗を植えつけます。
深植せず、根鉢が隠れる程度に植え付けた後、株元にかん水しておきます。 - 手順3
- 手順4
長さ30㎝、太さが3~5cm程度になれば収穫の時期です。
収穫が遅れると、茎が固くなったり徒長したりしやすくなるため早めに収穫をしましょう。
茎レタスの育て方
畑の準備
栽培前に畑を準備しましょう。手順は下記のとおりです。
- 牛糞などの堆肥を、1㎡あたり2kg程度をまいてよく施します。
- 堆肥を撒いてから1週間ほどたってから、苦土石灰を1㎡あたり150gと元肥として有機肥料や化成肥料を施肥し、土とよく混ぜて耕してから畝を立てます。
- 2から10日ほどたってから、種をまきます。
土づくり
よい野菜を作るには、土づくりが大切です。茎レタスのの適性な土壌酸度は、6.6〜7.0です。酸性土壌に生育が悪くなるため、苦土石灰などでPHの調整をしましょう。
一般的に野菜を栽培している畑などでは、土は酸性に傾くことが多いため、苦土石灰を使って酸度調整をします。アルカリ性に傾いている場合には、ピートモス(無調整)や、硫安を使って調整しましょう。
酸性に傾いているときは、堆肥と苦土石灰を使います。しかし堆肥と石灰を一緒にまくと堆肥に含まれている窒素がアンモニアとして逃げてしまうので、1週間ほどあけましょう。また石灰をまいてからphの数値に変化がでるまで1週間から10日ほどかかるので、種まきはそれから行うとよいでしょう。
元肥
茎レタスは、肥料を好みます。元肥はしっかり与えましょう。定植の前日に500倍程度に希釈した液肥をかん水代りにしておくと、定植後の活着がよくなります。
堆肥にも肥料は含まれます。堆肥は完熟したものを使いましょう。完熟牛糞堆肥などがよいでしょう。肥料は、窒素・リン酸・カリが同量はいった8-8-8などの化成肥料や有機肥料が使えます。
畝立て
土づくりと元肥の散布が終わったら、畝を立てましょう。畝(ウネ)とは、栽培をするために畑の土を細く盛り上げた栽培床です。2条植えで、畝幅は70cm~80cm程度です。水はけの悪い畑では、高うねにして湿害を防ぎましょう。畝幅や条間、通路幅などの用語は下の図を参考にしてください。
畝幅 | 畝高 | 条間 | 株間 |
---|---|---|---|
70~80cm | 10cm | 25~30cm | 25~30㎝ |
マルチについて
茎レタスの栽培は、マルチ栽培がおすすめです。畝を立て終わったら、マルチシート(マルチ)を張りましょう。マルチには黒、白、シルバーなどいろいろな種類があります。マルチを張ることによって、土の乾燥防止、地温の上昇や保温、除草に有効です。また、肥料の流亡を防ぐこともできます。
茎レタス栽培時には、高温期の栽培では白黒ダブルマルチもしくはシルバーマルチ、低温期に栽培する場合には黒マルチがよいでしょう。
追肥
レタスは畑では元肥だけで追肥をしないで育てることがほとんどですが、茎レタスの場合は、生育が停滞すると貧弱な茎なったり、肥料切れをおこすと茎が固くなり、味が落ちるので追肥をして育てます。
定植後、1週間~2週間後に追肥をします。肥料は速効性の肥料がよいでしょう。元肥と同様の肥料でもかまいませんが、窒素とカリを含むNK肥料や、液体肥料などでもよいでしょう。
収穫
定植後30日~40日後、長さ30㎝、太さ3㎝~5cm程度に成長すれば収穫のタイミングです。
茎レタスは、収穫が遅れると徒長したり、茎が固くなって「す」が入ってりして味や食感を悪くします。春まき栽培では、花芽がついてトウが立ちやすくなるので収穫時期を逸しないように注意が必要です。秋まき栽培では、収穫が遅くなる場合には、霜などの凍害を防ぐ必要もあります。
山クラゲ風に乾燥して貯蔵する場合は、若いうちに収穫し、縦に細く裂いて天日干しします。高温多湿な日本では、うまく乾燥しにくいですが10月~11月頃の晴天が続く日であれば、成功率は上がります。
除草について
栽培期間が短い茎レタスですが、雑草が生えると、レタスの生長に影響を及ぼすだけでなく病害虫のリスクも高まります。栽培前にしっかりと除草しておきましょう。
畑の場合は、マルチ栽培が雑草の発生に有効です。除草剤を使う場合は、その野菜に適用のあるものしか使えません。茎レタスの場合は、くきちしゃ、野菜類、茎野菜類に適用のあるものを使いましょう。
防除について
防除という言葉をご存じでしょうか。防除とは、農業でよく使われる言葉で、「農業害虫や病害の予防および駆除」を意味します。
具体的には、農作物の栽培時に発生する、害虫や病気を事前に予防したり、既に発生している場合、それを駆除、排除すること、を指すと言えるでしょう。「防除」はこのように、「予防」という観点が入っていることから、「防除」と「駆除」は意味が異なってきます。また、防除は別名で、ペストコントロールとも呼ばれます。
農作物を作る際には、病害虫は避けられない問題です。それぞれに合った農薬を使うか、農薬を使いたくない場合には、病害虫の発生を抑えるためには、排水がよくない場所では畝を高くしたり、雨よけトンネルやマルチなどが有効です。
茎レタスは、高温多湿になると菌核病、灰色かび病、べと病などのカビの病気や軟腐病、腐敗病などの細菌系の病気にかかりやすくなります。うね間や株間の風通しをよくする、高畝にするなどの対策が必要です。またアブラムシが発生しやすいので、防虫カバーやシルバーテープなども有効です。
農薬を使う場合には、茎レタスは、くきちしゃ、野菜類、茎野菜類のものが使えます。それぞれに適用のある農薬等を使って、対応しましょう。
まとめ
茎レタスはシャキシャキとした食感が生だけでなく、加熱調理しても失われないので、いろいろな調理方法で楽しむことができます。スーパーなどではあまり見かけず、栽培期間も短いのでぜひご自分で、茎レタスの栽培にチャレンジしてみてください。
農家webには、この他にも、ロメインレタス、サニーレタスやリーフレタス、レタスやサンチュ水耕栽培の記事もあります。