ほうれん草は栄養価が高く、さまざまな料理に使えることから家庭菜園でも人気の緑黄色野菜です。
ここでは、ほうれん草の栽培について、育た方の基本はもちろんのこと、肥料や除草剤、さまざまな害虫の防除方法まで、初心者の方から、栽培に慣れた人にも、さらにレベルアップを目指したい方にもわかりやすく説明します。
ほうれん草栽培について
ほうれん草の基礎知識
ほうれん草は、比較的栽培が簡単で畑だけでなく、プランターや水耕栽培でも育てることができます。種まきから収穫まで、春まきや秋まきであれば30日~50日程度と短く、栽培も比較的簡単です。
寒さに強く、冷涼な気候を好みます。酸性土壌と、過湿土壌に弱いので、水はけのよい土で育てる必要があります。直根性のため、苗からではなく種まき(播種)から育てます。
作物名 | ホウレンソウ |
---|---|
科目 | ヒユ科アカザ科 |
原産地 | コーカサス地方 |
発芽適温(地温) | 15℃~20℃ |
生育適温 | 15℃~20℃ |
土壌酸度(pH) | 6.5〜7.0 |
育てやすさ | 簡単、初心者でもOK |
栽培時期(作型)
ほうれん草の栽培時期(作型)は、家庭菜園では春まき栽培と秋まき栽培が一般的が、工夫が必要ですが、夏まき栽培や冬まき栽培も行うことができます。
作型 | 播種(種まき)時期 | 収穫日数 | 備考 |
---|---|---|---|
春まき栽培 | 3月~5月 | 種まき後、30日~40日 | 家庭菜園向け・とう立ちに注意 |
夏まき栽培 | 6月~8月 | 種まき後、30日 | 寒地・高冷地向け。 暖地では、梅雨対策として雨よけ トンネル栽培で病害虫を防除 |
秋まき栽培 | 9月~10月 | 種まき後、30日~50日 | 初心者におすすめ! |
冬まき栽培 | 12月~2月 | 種まき後、90日 | 厳寒期は穴あきトンネル栽培で保温 |
秋まきは、ほうれん草の栽培に最も適しています。初心者の人は、秋まきから始めるとよいでしょう。春まきの場合は日照時間が長いためとう立ち(抽だい)しやすくなります。
品種は種をまく時期によって選びましょう。ほうれん草の種には、適した種まきの時期が書いてありますので、間違わないようにしましょう。春まき、夏まきの種はトウ立ちしにくい晩抽性品種、秋まき、冬まきは耐寒性のある品種の種を選びます。タネまきの時期にあった、品種を選ぶことが大切です。
ほうれん草栽培の手順(畑)
それでは、ここでは畑でほうれん草を栽培する手順について説明していきます。個別の詳しい説明は、栽培方法で説明しています。
用意するもの
手順
- 手順1
種をまく前の2週間前~10日前までに土づくりと施肥をします。
肥料は、全面施肥で行います。
畑に、堆肥と苦土石灰を入れよく耕します。その後、化成肥料を施肥し、
土とよく混ぜます。
畝幅は70cmの平畝をたてます。何列も作る場合は通路は40㎝程度。 - 手順2
畑に、深さ2㎝のまき溝を作ります。条間は15cmです。
種を1cm~2cm間隔ですじまきをして、覆土をして手で軽く鎮圧します。
たっぷりとかん水を行います。 - 手順3
間引きは2回行います。
1回目は双葉がそろったら株間が2~3㎝程度に間引きます。
2回目は本葉が2~3枚になったら、株間が4~5㎝程度に間引きします。 - 手順4
- 手順5
本葉が7~8枚、草丈20cmほどになったら収穫の時期です。
家庭菜園などでは食べる分だけ間引きして収穫しましょう。
ほうれん草の栽培方法
畑の準備
栽培前に畑を準備しましょう。手順は下記のとおりです。
- 牛糞などの堆肥を、1㎡あたり1kg程度をまいてよく施します。
- 堆肥を撒いてから1週間ほどたってから、苦土石灰を1㎡あたり150gと元肥として有機肥料や化成肥料を施肥し、土とよく混ぜて耕してから畝を立てます。
- 2から10日ほどたってから、種をまきます。
土づくり
よいほうれん草を作るには、土づくりが大切です。ほうれん草は、土壌が酸性に傾いていると生育が悪くなります。ほうれん草の適性な土壌酸度は、6.5〜7.0です。酸度計や酸度測定キットを使用して、土の酸度を測りましょう。一般的に野菜を栽培している畑などでは、土は酸性に傾くことが多いため、苦土石灰を使って酸度調整をします。アルカリ性に傾いている場合には、ピートモス(無調整)や、硫安を使って調整しましょう。
酸性に傾いているときは、堆肥と苦土石灰を使います。しかし堆肥と石灰を一緒にまくと堆肥に含まれている窒素がアンモニアとして逃げてしまうので、1週間ほどあけましょう。また石灰をまいてからphの数値に変化がでるまで1週間から10日ほどかかるので、種まきはそれから行うとよいでしょう。
元肥
ほうれん草は、栽培時期が短いため肥料は元肥をしっかり施しましょう。
堆肥にも肥料は含まれます。堆肥は完熟したものを使いましょう。完熟牛糞堆肥などがよいでしょう。肥料は、窒素・リン酸・カリが同量はいった8-8-8などの化成肥料などが使えます。ほうれん草専用の肥料なども販売されていますので、そちらも便利です。
ほうれん草の肥料については、詳しい記事がありますのでこちらも参考にしてください。
畝立て
土づくりと元肥の散布が終わったら、畝を立てましょう。畝(ウネ)とは、栽培をするために畑の土を細く盛り上げた栽培床です。畝幅や条間、通路幅などの用語は下の図を参考にしてください。
畝幅 | 畝高 | 条間(列間) | 通路幅 |
---|---|---|---|
70cm | 10cm | 15cm | 40㎝ |
種まき
種について
ほうれん草は、種が固い果皮に覆われており発芽がしにくかったり、発芽がそろわないことがあります。人工的に発芽を早める加工がされた「プライマックス種子」や、果皮をやわらかくする処理をした「エボプライム種子」、皮に穴を空けた「アップシード種子」、果皮を除去した「ネーキット種子」を使うのがおすすめです。
これらの種を使わない場合、特に夏まき栽培では、種子を半日ほど浸けてから撒くとよいでしょう。また、種子の撒く時期により育てられる品種が異なります。必ず栽培時期にあった品種を選びましょう。
種まき
種まきは、すじまきか点まきでも行えます。すじまきの場合は、深さ2cm提訴のまき溝をつくり、1cm~2cm程度の間隔でタネをまき、土を被せ、軽く上から手で鎮圧します。
点まきの場合は、条間を15cmとり、指などで深さ2cmのまき穴をつくり、一穴につき3~5粒程度まいて土を被せ軽く上から手で鎮圧します。
ジョウロのハス口を上に向けて、水を十分に与えます。発芽までは土が乾かないようにして、乾く前にかん水して育てましょう。
寒さに強いほうれん草ですが、秋まきや冬まきなどで温度が低すぎると発芽率が落ちます。トンネルや不織布・寒冷紗などを使い、防寒すると発芽が早くなります。
間引き
ほうれん草の根は直根性のため、株の根が傷めないように育てます。間引きは、残す根に影響がでないようにするため、本葉が2~3枚までに完了させましょう。
間引きは2回行います。1回目は双葉がそろったら株間が2~3㎝程度に、2回目は本葉が2~3枚になったら、株間が4~5㎝程度に間引きします。
間引きするときは、抜く株の株元の土を片方の手でおさえ、片方の手で苗を指でつかんで抜きます。点まきした場合は、うまく成長できていない苗や病気の苗などは取り除く必要がありますが間引きは不要です。
間引き後は、水やりはせずやや乾燥気味に育てましょう。あまりに乾燥が続くときのみ水やりをすればよく、通常であれば水やりは不要です。
追肥
畑で栽培するときには、栽培期間が短いため追肥は不要です。プランター栽培などでは、水やりで肥料が流れてしまうため、液体肥料などを追肥することもあります。冬まきなどで栽培期間が長い場合には、元肥の肥料の量を増やすなどをして対応しましょう。
元肥をしっかり上げていないと肥料切れすることもあります。葉が黄色くなった場合には、肥料切れの可能性もありますが、土壌や病害虫の可能性もあります。見分け方や対処法については下記の記事を参考にしてください。
収穫
草丈が20cmほど、本葉が7枚~8枚になったら収穫の時期です。家庭菜園などでは、食べる分だけ収穫します。株間を広げるようにして、大きな株から間引いて収穫します。
引っこ抜いてもいいですが、ハサミを土の中に突っ込み、地際でカットして収穫してもよいでしょう。春まき栽培では、春から夏に日長が13時間以上と長日になると、成長点に花芽ができてとう立ちしはじめます。とう立ちしても、柔らかい先端の葉や茎は食することができます。
除草について
栽培が比較的簡単で栽培期間も短いほうれん草ですが、雑草が生えると、ほうれん草の生長に影響を及ぼすだけでなく病害虫のリスクも高まります。栽培前にしっかりと除草しておきましょう。
除草剤を使う場合は、ほうれん草は収穫頃に散布できる除草剤は少なく、非選択性の除草剤を使うとほうれん草に薬害が出やすく手間がかかります。栽培期間も短いので、ほうれん草には雑草の発芽を止めて生えさせない「土壌処理剤」で、雑草が生えさせないことが大切です。種まきと同時に、土壌処理剤を散布することで収穫まで雑草の繁殖を防ぐことができます。
土壌処理剤は、播種後発芽前までに散布することで雑草の発生を抑制します。ほうれん草には、ラッソー乳剤やアージラン液剤などが使えます。
除草剤はほうれん草に適用のあるものしか使えません。使い方を間違えないようにしましょう。こちらの記事も参考にしてください。
防除について
防除という言葉をご存じでしょうか。防除とは、農業でよく使われる言葉で、「農業害虫や病害の予防および駆除」を意味します。
具体的には、農作物の栽培時に発生する、害虫や病気を事前に予防したり、既に発生している場合、それを駆除、排除すること、を指すと言えるでしょう。「防除」はこのように、「予防」という観点が入っていることから、「防除」と「駆除」は意味が異なってきます。また、防除は別名で、ペストコントロールとも呼ばれます。
農作物を作る際には、病害虫は避けられない問題です。それぞれに合った農薬を使うか、農薬を使いたくない場合には、病害虫の発生を抑えるためには、排水がよくない場所では畝を高くしたり、雨よけトンネルやマルチなどが有効です。
ほうれん草の栽培には、病害としては菌核病、腐敗病、べと病などにかかりやすくなります。害虫は、アブラムシ類、ネキリムシ類、ナモグリバエ、ヨウトウムシ、ナモグリバエ、オオタバコガなどが発生します。
しかし栽培時期、地域により発生する病害虫はことなります。農家などでは、防除暦と呼ばれる、作物ごとの病害虫を防除するために、農薬名・希釈倍数・散布時期・散布回数・使用方法などが記載された表が、各地域で作成され配布されています。
農家webには、各地域、作物、を選ぶと、その作物に発生する病害虫、それを防除するための複数のおすすめ農薬を一覧で見ることがwebで検索できる「農家web防除暦」があります。自分の使った農薬等も管理できるので、無料ですのでぜひ使ってみてはいかがでしょうか。
その他のほうれん草の栽培方法
ほうれん草は、畑以外でもプランターや土を使わない水耕栽培でも作ることができます。収穫量はすくないですが、気軽につくれる栽培方法です。