乾燥を好むトマトは、多湿になりにくいプランター栽培に向いています。ここでは、トマトのプランター栽培について、タネや苗から始める手順から収穫までの失敗しない育て方を、わかりやすく説明します。。
トマトの栽培について
トマトの基礎知識
トマトはナス科の野菜で、ビタミンC、カロテン、リコピンなどを多く含み、栄養や機能性に優れた野菜です。サイズは大玉・中玉(ミディ)、ミニの3種類がありますが、栽培が簡単なのは丈夫で手間のかからないミニトマトです。
原産は南アフリカのアンデス山脈高原地帯で、強い日差しと、昼夜の寒暖差を好みます。乾燥に強く、多湿になると病気が発生しやすくなります。プランター栽培は多湿になりにくいので、トマト栽培に向いています。
家庭菜園では、畑などの地植え、鉢植え、プランターの他にも、袋栽培や水耕栽培でも栽培ができ、人気があることから栽培キットなども多く販売されています。タネから始めることもできますが、育苗期間が長く発芽温度が高いので、温度管理が難しく難易度があがります。植えつけ時期になると、ホームセンターなどでも多くのトマトの苗が流通するので、苗から始めるのがおすすめです。
作物名 | トマト |
---|---|
科目 | ナス科トマト属 |
原産地 | 南アフリカ |
発芽適温 | 25〜28℃ |
生育適温 | 10℃〜30℃ |
土壌酸度(pH) | 6.0〜6.5 |
育てやすさ | 簡単 |
栽培時期
家庭菜園での栽培時期は春に種まき、苗を植え付けして夏に収穫します。トマトは夏野菜のイメージが強いのですが、日本の7月~8月の高温多湿の気候は苦手なので、それまでに着果するようにするように栽培するのがおすすめです。
品種や場所、環境によって異なるので目安としてください。
トマトの品種
トマトの品種は、世界では10000種類以上あるとされ、日本だけでも280種類以上が登録されています。ここでは大玉と中玉のサイズの品種についていくつか紹介します。
品種名 | サイズ | 特徴 |
---|---|---|
麗夏(れいか) | 大玉 | うまみ、甘み、肉質の良さがよい家庭菜園人気の品種 真っ赤に熟しても皮がやぶれないので、完熟してから収穫が可能 |
イタリアントマト | 大玉 | トマトソースなど調理向きの品種。多収で栽培も容易 |
黄寿 | 大玉 | 果肉・果皮が黄色の大玉トマト。果肉の部分が多く、酸味が少なくて甘い |
フルティカ | 中玉 | 糖度が高く、果肉が割れにくいので病気に強い |
シンディースイート | 中玉 | 多収で、家庭菜園向き |
フルーツルビー | 中玉 | フルーツのような甘さのトマト。実われもしにくい |
トマトのプランター栽培の手順(苗の植えつけ)
トマトの苗は、植え付け時期になるとホームセンターなどでも販売されます。プランターでは数株しか育てないのであれば、苗から育てるのが失敗がないでしょう。苗選びは重要です。
市販の苗の選び方
トマトは苗選びが重要です。トマトの苗には大きく「実生苗」と「接木苗」という種類があります。接木苗は病気に強く、収穫量も多めなので、初心者の人には接ぎ木苗がおすすめです。
- 節と節の間が詰まっていてしっかりしている
- 茎の太さがボールペンや鉛筆の太さと同じくらいである
- 葉の緑色が濃い
- 病害虫の被害に遭っていない(葉に穴などが空いていない)
- 一般的な栽培では一番花(苗の下の方に咲く一番目の花)が咲いている、もしくはつぼみが付いている苗を、家庭菜園では一番花が付く直前くらいの苗を選ぶ
- ポットの鉢底穴から白い根が見える
- 小さな苗は避ける
準備するもの
- トマトの苗
- 深型プランター
- 野菜用の培養土
- 鉢底石
- 肥料
- 支柱(1.5メートル程度)・麻ひも
手順
- 手順1プランターの準備
プランターに、底が隠れる程度に鉢底石を入れます。
その上から、野菜専用培養土をプランターの上部2〜3cm程度のところまで敷き詰めます。側面を軽くたたいて土を落ち着かせます。 - 手順2苗の植えつけ
1株なら中央に、2株の場合は株間を30cmほどとり、根鉢よりも大きめの植穴を掘り、水を穴に注ぎます。
水が引いたら、ポットから根鉢をこわさないように苗を抜き、穴に苗を浅めに植えつけます。たっぷり水やりをします - 手順3支柱立て
苗が伸びてきたら、株の横に支柱をたて、紐で支柱と茎を8の字に結んで誘引します。
- 手順4わき芽かき
トマトは主枝を1本だけ残して栽培するのが基本です。茎のつけ根からわき芽がでてきたら、早めに摘み取ります。小さいうちに手で折り取ります。
- 手順5ホルモン処理
ホルモン処理は必須ではありませんが、最初の花に結実すると、実に栄養がいくため果実が付きやすくなります。
1番花の花房に2~3個ぐらい花がさいたら、花房全体にトマトトーンなどのホルモン剤を花房全体にかけます。 - 手順6
- 手順7摘心・適果
トマトが支柱を超えるぐらいまで育ったら、先端近くの葉のつけ根を折って摘み取ります。
果実がゴルフボール大になったら、不良な果実はハサミで切って取り除きましょう。不良果がない場合でも1房に4個になるよう、丸く形の良いものは残して他は摘果することで、他の果実が大きくなります。
- 手順8収穫
開花後55~60日程度で収穫を迎えます。ヘタの近くまで赤くなってから収穫しましょう。
朝の涼しいうちに収穫します。
トマトのプランター栽培 育て方
種から始める場合
種子から育てる場合は、温度管理のしやすいポリポットで育苗します。発芽の温度が高いので、保温して育てる必要があります。
- 9cmのポリポットに育苗用の土を入れ、タネを3~4粒まき、「嫌光性種子」のため5mmほど覆土する
- 土全体が湿って色が変わるくらいまで水やりをする
- 一番目の本葉が2本に、二番目の本葉がでたら、元気な苗を1本残して間引きます。
- 本葉が5枚~6枚ほどになったら一回り大きなポットに植え替えて、育てます。
- 本葉8枚から9枚になったころ、第1花房が咲きかけのころに、プランターに植え替えます。
容器・用土
容器は、深さ30cm以上の深型プランターがよいでしょう。丸形のプランターであれば直径30cmの10号鉢程度に1株、横幅60cm以上の深型プランタ―なら2株植えることができます。
用土は市販の元肥入りの野菜の培養土やトマトの土が便利です。自分で配合する場合は、赤玉土6腐葉土3、バーミキュライト1に、苦土石灰を10ℓあたり15gいれ、緩効性肥料20g程度を元肥として施します。
トマトは、プランターや鉢以外でも培養土の袋などを使った袋栽培も可能です。袋栽培の方法はこちら。
栽培環境
トマトは、日当たりの良い風通しの良い場所で育てましょう。雨、過湿が苦手なので、梅雨時には雨のあたらない軒下などで管理しましょう。
生育適温は、昼と夜の温度差が重要です。昼間は23℃~28℃、夜間は10℃~15℃になるのが最適です。30℃を超えると着果が悪くなります。夜の温度が高すぎると徒長しやすくなります。栽培する地域に合わせた時期に苗を植えつけることが成功のポイントです。
水やりのポイント
水やりは、用土の量や質、天候にもよりますが植え付けして根が活着してからは、用土の乾き具合とトマトの萎れ具合を確認して水やりをします。用土の表面が乾いていても、土中には水がある状態であれば、水やりをしなくても問題ありません。重要なことは植物がどのくらい萎れているかです。
目安としては、春から初夏は週に1回〜2回、盛夏〜晩夏は週に3回〜5回程度の頻度になります。1回にやる水の量は、プランターの底からら水が染み出してくるくらいの量です。水やりは、日の出くらいの時間帯に行いましょう。午後〜夜に水やりをすると、過湿となり、病気になったり、徒長しやすくなったりします。水やりをしすぎて過湿状態にしないことです。
肥料
プランター栽培の場合肥料は、元肥と追肥を行います。元肥とは植え付け時に施す肥料で、プランターなどでは、元肥入りの野菜の培養土などが便利です。肥料がはいっていない土や、自分で配合した場合は、緩効性肥料を土に混ぜて使います。
追肥は、第一果房がピンポン玉くらいの大きさになってきたら、追肥を始めます。その後は第三果房がピンポン玉くらいの大きさになったら化成肥料を1株あたり10g程度与えます。
化成肥料は野菜の栽培によく使われる化成肥料8-8-8などでよいでしょう。その他では、トマト専用の肥料や、追肥には置くだけの錠剤の肥料もおすすめです。肥料によって肥料の効き目の長さもことなるので、パッケージを読んで与えましょう。
液体肥料(液肥)のみの追肥の場合は、1週間〜10日に1回程度の施肥が必要です。1回目の追肥は、雌穂(しすい・めすほ)が分化する直前に、本葉が5~6葉(草丈50㎝程度)になったら追肥をします。窒素分とカリ分の多い化成肥料を、株元に追肥し倒伏防止のため土寄せをしておきます。
着果処理(受粉)
着果処理とは花が咲いた頃に確実に受粉をさせて実をつけるための作業です。風や昆虫など自然の力を利用しても着果することは可能ですが、確実に収穫するためには晴れた日に着果処理を施したほうが良いです。着果処理は、トマトトーンなどのホルモン剤を使う他に、振動処理があります。その名の通り、花房の開花時に毎朝一回程度、支柱を数回叩いて振動を与え、花粉を飛びやすくする方法です。
わき芽かき
わき芽はトマトの成長し、節が増えるたびに出てきます。そのため、わき芽かきは晴れた日に定常的に行いましょう。わき芽は小さいうちに指先でかき取ることがベストです。少なくとも5cmくらいの大きさまでにはかき取りましょう。摘み取ったわき芽は、水挿しやさし床に挿せば増やすことができます。
摘果
適切な生長管理のため、果実がゴルフボール大くらいのときに形の良いものを1果房あたり4個程度残して、ほかは摘果(実を除去)しましょう。特に「裂果」と呼ばれる果実が割れているものや「尻腐れ果」、「乱形果」など異常がある果実は必ず摘果するようにしてください。摘果は、晴れた日に収穫バサミや剪定バサミなどで行いましょう。
病害虫
病気
肥料不足で葉が黄化することもありますが、病害でも葉が黄化したり、枯れることもありますので、まず最初に肥料不足より、病害虫を疑ってください。病気の場合は、病斑や萎縮(しおれ)がおきたりします。
トマトは、モザイク病、黄化葉巻病、萎凋病、疫病、葉カビ病などにかかることがあります。モザイク病はアブラムシが黄化葉巻病は、タバココナジラミがウイルスを媒介するため、害虫対策をしましょう。その他もカビ菌が病気の原因となりますので、排水を良くし、水はけのよい環境で育てましょう。
尻腐れ症は、カルシウムの欠乏によっておこるので病気ではありません。
害虫
トマトの葉が食害を受けたり、色が変色している場合は害虫の可能性もあります。アブラムシ、コナジラミ、オオタバゴカ、ネコブセンチュウ、ハダニ類などの害虫が発生しやすくなります。
これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
またコンパニオンプランツとしてバジルを一緒に育てると害虫を減らす他、バジルが水を吸収しトマトが好む乾燥した環境をつくってくれます。
まとめ
トマトは、手軽に栽培できるキットや土、肥料など専門のものがあるので気軽に始められる家庭菜園です。家庭では、ミニトマトなどは土を使わず、水耕栽培で育てることもできます。ぜひ、お気に入りの品種を選んで、トマトの栽培を楽しんでみてください。
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