ヘチマの栽培は簡単で、日の当たる場所であれば畑だけでなくプランターでもよく育ちます。ここでは、ヘチマのプランターでの育て方について、種や苗から始める手順や、収穫までの育て方、支柱立て、肥料、病害虫の対策までわかりやすく説明します。
ヘチマのプランター栽培の手順(苗の植えつけ)
ヘチマの苗は、植え付け時期になるとホームセンターなどでも販売されます。少量なら市販のポット苗も便利です。
市販の苗の選び方
- 本葉3枚~4枚程度
- 葉がきれいで、病気などにかかっていないもの。
- 茎の節と節の間が詰まったおり、徒長(ひょろひょと間延び)していないもの
- ポットの下から出てる根が白いもの
準備するもの
- ヘチマの苗(種から育苗したもの or 市販の苗)
- 大型プランター(深さ30cm以上)
- 野菜用の培養土
- 鉢底石
- 肥料
- 支柱、つるものネット、麻紐
手順
- 手順1プランターの準備
プランターに、底が隠れる程度に鉢底石を入れます。
その上から、野菜専用培養土をプランターの上部2〜3cm程度のところまで敷き詰めます。側面を軽くたたいて土を落ち着かせます。 - 手順2苗の植えつけ
プランターに、株間30cmで苗を植えつけます。
根鉢よりも大きめの植穴を掘り、水を穴に注ぎます。
水が引いたら、ポットから根鉢をこわさないように苗を抜き、穴に苗を植えつけます。株元を軽く押さえ、たっぷり水やりをします。 - 手順3支柱立て
植えつけ後すぐに支柱をたてておきましょう。
支柱を立て、つるが伸びたら、誘引します。 - 手順4摘心
親づるの先端を切って摘心すると、子づるや孫づるが出て枝葉が広がります。草丈50cm程度になったら、親づるの先端から2節程度下を摘芯します。
- 手順5人工授粉
実りが少ないようなら人工授粉します。
雌花が咲いたら、その日の朝早くできれば9時頃までに人工授粉をします。
雄花を摘みとり、花びらを取り除いて雌花の中にある雌しべの柱頭に雄しべの花粉をこすりつけます。 - 手順6
- 手順7収穫
食用にする場合は、果実が若いうちに収穫します。開花後1週間~2週で果実が25cm~30cm程度になったら収穫のタイミングです。
果実の根元部分をハサミで切って収穫しましょう。たわしにする場合は、40日~50日ほど完熟させてから収穫します。
ヘチマの育苗(種まき)
ヘチマの種まきは、直まきも可能ですが、幼苗期の温度管理がしやすいポリポットでの育苗がおすすめです。少量であれば市販の苗も販売されています。

用意するもの
- ヘチマの種
- ポリポット(3号 9cm)
- タネまき用培養土
手順
- ヘチマはそのままだと発芽しにくいので、側面の皮に傷をつけ前日に水に浸けておきます。
- ポットに培養土をいれ、2か所、深さ2cmほどの穴を空けます。
- ひとつの穴に1粒づつ種を入れ、土をかぶせて手でかるく押さえます。
- タネをまいたら、たっぷり水やりをします。
- 双葉が開いたら、生育の良い方を残し、1本をハサミで切って間引きます
- 本葉が3枚~4枚になったら、植え付けます。
育苗のポイント
- 発芽率があまりよくないので、タネは多めにまくとよいでしょう。水に浸ける前に、タネの先端を爪切り等でカットしておくと、水の浸透が良くなり発芽率が上がります。
- ヘチマの発芽温度は高め、25℃~30℃が目標温度です。最低15℃以下にはならないように保温マットや寒冷紗、ホットキャップなどをつかって、低温から守ります。
- 発芽までは、タネが乾燥しないように気をつけましょう。水やりは午前中の暖かくなってきてからあげるとよいでしょう。
- 芽がでたら、すぐに日に当てて徒長しないように育てましょう。
- 種まきから発芽まで7日~10日、育苗期間は約1か月程度です。
ヘチマのプランター栽培 育て方
ヘチマの基礎知識
ヘチマは、沖縄ではナーベラーと呼ばれ食用として炒めものや、スープなどにも使われます。食用の果実は、固い繊維ができる前の果実を若どりしたもので、少し苦味とぬめりがあります。全国的にはたわしや化粧水などに古くから使われてきました。
栽培は日の当たる場所であれば、容易です。夏の暑い時期に盛んに成長し、放任栽培でもよく育ちます。病害虫の被害も少ないため家庭菜園向きの野菜です。つるが、他のものに良くからみつくので、ネットなどを使って緑のカーテンにして日除け代わりにも栽培できます。

作物名 | ヘチマ(ナーベラー) |
---|---|
科目 | ウリ科ヘチマ属 |
原産地 | 熱帯アジア |
発芽適温(地温) | 25℃~30℃ |
生育適温 | 20℃~30℃ |
土壌酸度(pH) | 6.0~7.5 |
育てやすさ | 簡単 |
栽培時期
ヘチマの栽培時期は、春にタネをまいて夏から秋にかけてに収穫します。種から育てる場合は収穫までは60日~100日ほどかかります。
地域 | 播種(タネまき)時期 | 植え付け時期 | 収穫時期 |
---|---|---|---|
寒冷地 | 5月~6月上旬 | 6月 | 7月~9月 |
中間地 | 4月中旬~6月中旬 | 5月~7月上旬 | 6月~10月 |
暖地 | 4月~7月 | 4月下旬~8月 | 5月下旬~11月中旬 |
容器・用土
容器は、深さ30cm以上の大型プランターがよいでしょう。丸形のプランターであれば直径30cm以上に1株、横幅80cm程度の大型プランタ―なら2株植えることができます。株間は30cm程度開けるとよいでしょう。支柱用のフレームがついているものも便利です。
用土は市販の元肥入りの野菜の培養土がよいでしょう。自分で配合する場合は、赤玉土6腐葉土3、バーミキュライト1の割合に苦土石灰を1ℓあたり1g、緩効性肥料を10g程度配合します。
栽培環境・水やり
ヘチマは日当たりが良く、風通しの良い場所を好みます。黄色くなった葉は取り除き、根元の葉茎が混みあって切るときは整枝して、日当たりと日照をよくしましょう。
発芽温度・生育温度ともに高めなので育苗時や植え付け直後は、ホットポットや苗カバーなどをすると発芽率や生育がよくなります。
育苗時期の水やりは、発芽までは、タネが乾燥しないように気をつけましょう。水やりは午前中の暖かくなってきてからあげます。植えつけ直後はたっぷり水を与え、その後は土の表面が乾いたら鉢底から水がでるまでたっぷり与えます。
夏は水が不足しがちです。葉がしおれて葉焼けすると、果実に影響がでるため水切れには注意が必要です。夏は朝晩2回水やりをするとよいでしょう。
肥料
プランター栽培の場合肥料は、元肥と追肥を行います。元肥とは植え付け時に施す肥料で、プランターなどでは、元肥入りの野菜の培養土などが便利です。肥料がはいっていない土や、自分で配合した場合は、緩効性肥料を土に混ぜて使います。
ヘチマは、つる性のため生育初期に肥料が効きすぎると、ツルや葉がのびすぎて花や実がつきにくくなる「つるボケ」がおきやすくなります。元肥は控えめにして実がついてからの追肥で実を大きく育てます。追肥は実が付いたら、2週間に1度追肥をします。化成肥料10g程度を株の周りにばらまいておきます。葉色を見て緑色が濃いようなら肥料は控えましょう。
肥料は化成肥料や、有機肥料、液肥も使えます。窒素分が多くなくリン酸が多いものがおすすめ。ハイポネックスの「花と野菜と果実の肥料」や住友化学園芸「マイガーデンベジフル」なども使えます。ヘチマ用の肥料もあります。
収穫が始まったら液体肥料を10日1度ほど水やり代わりにあたえるのもおすすめです。ハイポネックスの野菜の液肥や、マイガーデンベジフル液体肥料などが使えます。
支柱立て
ヘチマは、つるが伸びるため支柱をたてて、つるを誘引して育てます。支柱を立てる方法はいろいろありますが、2つ紹介します。
合掌式
合掌式支柱は、支柱を斜めに交差させて、横に1本渡して固定する方法です。ヘチマの場合は、合掌式に組んだ後、片面にネットを張り、つるを誘引していきます。支柱は、手の届く高さのもので構いません。ネットはキュウリネットや園芸用ネットをつかうとよいでしょう。

緑のカーテンを作りたい場合
緑のカーテンを作る場合には、吊り下げタイプや簡単な立てかけタイプなども使えます。
整枝・摘心
摘芯(てきしん)とは、茎や枝の最先端の芽を摘む作業で、ピンチとも呼ばれます。ヘチマは摘芯をすると元気なわき芽が4~5本の子づるが伸びます。草丈が50cm程度になったら、先端から2節程度下をハサミや手で摘みとります。
日照や風通しをよくするために、株元から20cmまでのつるやわき目は、切り取ります。枯れた葉などがある場合も、取り除いておきましょう。
人工受粉
受粉はハチなどの虫が自然に行いますが、あまり実がならない場合には、人工受粉させます。先に雄花が咲きます。雌花と雄花の違いは、蕾の下がふくらんでいるかいないか。蕾の下がふくらんでいるほうが雌花です。
授粉は朝8時~9時に行いましょう。雄花を摘みとり花弁を取り除きます。雄しべ(葯)を当日咲いた雌花の柱頭に花粉を軽くなすりつけましょう。

収穫
花が咲いた後、1~2週間ほどで収穫の時期を迎えます。ヘチマは野菜として食べるのであれば、緑色の未熟果を収穫します。25cm~30cm程度になれば収穫のタイミングです。ヘタをハサミで切って収穫しましょう。
たわしを作る場合は、果実は若どりせず40日~50日間ほど完熟させて茶色く色が変わったころに収穫します。
ヘチマ水は茎から取ることができるので、収穫が終わったら株元から30cmの位置で茎をカットします。根元のつるを一升瓶やペットボトルに差し込んでおくだけで、一日でヘチマ水が取れます。
一部は食用にし、一部はたわし用に、最後にヘチマ水まで取ることもできます。

病害虫
ヘチマは比較的病害虫に強い植物ですが、病気はうどんこ病、炭疽病(たんそびょう)、つる枯病、軟腐病などの病気にかかりやすいです。葉に斑点がでたり、茶色く枯れたりしてきたら病気を疑いましょう。対策としては梅雨に高温多湿によるカビの被害が多いので、梅雨は軒下で雨があたらないようにし、風通しがよく日当たりの良い場所で育てましょう。
ヘチマの葉が食害を受けたり、色が変色している場合は害虫の可能性もあります。ヘチマはアブラムシ、ハダニ、アザミウマなどの害虫がつきやすいです。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
まとめ
ヘチマは、うまく育てれば1株で15株ほど収穫できるのでプランターでも十分収穫を楽しめます。摘心すれば、ある程度の大きさで育てることができるので、日当たりのよいベランダ栽培も可能です。最近では緑のカーテンとしてゴーヤの代わりに育てている人も多いヘチマ。1株で食用にもたわしにも化粧水としても使え、家庭でも簡単に栽培できるので、ぜひヘチマを育ててみてください。

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