イチジクは鉢植えやプランターで育てるとコンパクトに育てることができます。ここでは苗木から育てる、イチジクの鉢植え・プランター栽培について、植え付けから収穫までの育て方の基本から、休眠期の剪定までわかりやすく説明します。
イチジクの苗木の植えつけ方(鉢植え・プランター)
それではここからは、苗木の植えつけ方について説明してきます。
植え付け時期
植え付けや植え替えは厳寒期を除いた11月~3月が適期です。
準備するもの
- イチジクの苗木
- 鉢、プランター(6~8号の深鉢、直径18~24cm程度)
- 果樹の培養土
- 鉢底石
- ハサミ
- トップジンなどの癒合剤(木工用ボンドでも代用可)
苗木の選び方
ホームセンターなどでは、植え付け時期になるとイチジクの苗木が販売されます。1~2年生の苗木が多く出回っています。イチジクは2年生であればその年に収穫が楽しめるものもあるので、早く収穫を楽しみたい場合は2年生の苗木を購入しましょう。
耐寒性や耐病性、樹勢など品種によって異なるので育てる地域や、環境にあった品種を選びましょう。わからない場合には、お店の人と相談して購入しましょう。
苗木は棒苗といわれる、葉がついていない状態で販売されることが多いので、枝の下部が茶色く枯れこんでいるものは選ばないようにしましょう。
容器と土
イチジクには、水はけのよいスリット鉢がおすすめです。苗木より1~2回り大きな鉢を選びましょう。1本仕立てにする場合は、横に幅広いプランターのほうが安定します。
用土は、水はけと通気性のよい土がおすすめです。元肥入りの市販の果樹用の土が便利です。いちじく専用の培養土もあります。自分で配合する場合は腐葉土7・赤玉土3などがよいでしょう。
植え付けの手順
- 手順1苗木の準備
ポットから苗木を取り出し、根が回っている場合は軽く土を落とし、根鉢をほぐします。
- 手順2鉢・プランターの準備
鉢やプランターの底に鉢底石をいれ、その上に果樹用の培養土を入れます。
- 手順3植え付け
苗木を鉢・プランターの中央にいれます。培養土を足して、根を埋めます。深植えにならないようにしましょう。
土と根の隙間がないように、割り箸でつついたり鉢を叩いたりしてなじませ、土の表面を手で押さえます。 - 手順4剪定
棒苗を植え付けた場合は、株元から25cm程度のところで主枝を切り戻します。切り口には傷口を保護するために癒合剤を塗っておきます。
- 手順5水やり
最後に、鉢底から水がでるまでたっぷり水を与えます。
イチジクの鉢植え・プランターでの育て方
イチジクの基礎知識
イチジクは、落葉性のクワ科イチジク属の植物で、学名はFicus caricaと言います。野菜などと異なり樹木なので多年生ですが、耐寒性がやや弱く、関東より北の露地では地植えでは越冬できないとされています。
イチジクは漢字で「無花果」と書く通り、果実の中に花をもつため、外から花を見ることができません(単為結果により、受粉することなく果実ができます)。品種にもよりますが、長いものでは6月下旬から10月中旬くらいの秋まで収穫できる点も特徴です。
日照時間が長い方が好ましいので、日陰ではなく日当たりのよいところをイチジクの置き場として設定しましょう。樹高は1m〜5m程度になりますが、鉢植えでの栽培の場合は剪定をしっかりと行えば、1.5m程度で育てることが可能です。
学名 | Ficus carica |
---|---|
属名 | クワ科イチジク属 |
原産地 | アラビア南部、南西アジア |
樹高・草丈 | 1〜5m |
耐寒性等 | 耐寒性はやや弱く、温暖湿潤な土地で育ちやすい |
品種について
イチジクの品種は日本では30種類以上が流通していますが、果実のなる時期により、「夏果専用種」「夏秋果兼用種」「秋果専用種」の大きく3つに分類されます。夏果は梅雨の時期に収穫が重なるので生産が不安定になる、また秋果の方が収穫量が多い品種が多いため、秋果の方が収穫が容易です。
品種により剪定方法が違うので、必ず品種名がはっきりした苗木を購入しましょう。
品種名 | タイプ | 特徴 |
---|---|---|
桝井ドーフィン | 夏秋果兼用種 | 日本のイチジクの代表品種。大果で、育てやすい。 スーパーで売られているのは大半がこの品種。 |
蓬莱柿(ほうらいし) (早生日本種) | 秋果専用種 | 小果で果肉がやわらかく、酸味が強く独特な風味で人気がある。 耐寒性が強い。日本でも流通が多い品種です。 |
ホワイト・プロリフィック | 夏秋果兼用種 | コンパクトに育ち鉢植えに向いている品種。 豊産で日持ちがよく、非常に味がよい。 |
ビオレ・ドーフィン | 夏果専用品種 | 大果で裂果しにくい品種。多汁で甘味が強く濃厚な味。 樹勢は強く、枝が横に広がって伸びている開帳型になる。 |
栽培環境・水やり
イチジクは日当たりのよい場所を好みます。日当たりがよく雨があまり当たらない場所で管理しましょう。ただし真夏の直射日光は強すぎるため半日陰になる場所で育てます。冬は関東以西では屋外で冬越しが可能ですが、寒冷地では室内で管理しましょう。
水やりは、鉢の表面が乾いたら鉢底から水が出るまでたっぷり与えます。イチジクは水を好むので、生育期には水切れをおこさないように注意しましょう。特に夏場は水をたくさん吸収するため朝、晩与えるとよいでしょう。しかし与えすぎると根腐れをおこすので、鉢の表面が乾いていないうちに水やりをしないようにしましょう。
冬は休眠期にはいるので、水やりは控えめに数週間に1度与える程度にしましょう。
肥料
植え付けのときに元肥として、緩効性肥料を与えその後は6月、8月、9月に追肥します。追肥は速効性の化成肥料を株元にばらまいて施肥します。2年目以降は植え替えない場合には1月頃の施しましょう。
鉢植えの追肥には、緩効性化成肥料がおすすめ。化成肥料は早く効く速効性とゆっくり効く両方の成分を持っているものが多いです。有機肥料は、臭いや虫などが気になるためベランダなどで鉢植えで育てる場合は、有機入りの化成肥料もおすすめです。元肥にも追肥にも使える「マイガーデンベジフル」やハイポネックスジャパンが製造する「錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」などがよいでしょう。
仕立て方
仕立て方はいくつかありますが、プランターの場合は樹高の高くならない「開心自然形仕立」」や「一文字仕立て」がよいでしょう。
開心自然形仕立て
開心自然形仕立ては、主枝を3本決め、斜め上に枝を放射線状に伸ばして仕立てます。果樹の仕立て方の基本で、イチジクの仕立て方としてもよく使われます、樹高が高くなりにくく、管理しやすい樹形で品種を選びません。
一文字仕立て
一文字仕立ては、主枝を2本の残し、その主枝を水平に伸ばして誘引して仕立てます。漢数字の一のように仕立てるので、一文字仕立てと呼ばれます。秋果に向いている仕立て方で、樹勢の強いビオレ・ドーフィンなどには向きません。剪定も容易で、収穫が安定する仕立て方です。
剪定・整枝
植え付け1年目の作業
冬に植え付けした苗は、春になると新芽が出てきます。仕立て方によりますが、残す主枝2~3本を育てましょう。時期は5月中旬ごろ、枝が4本ほどでて、枝に葉が4~5枚付いたころに、元気のよい枝を2~3本残します。
冬になったら開心自然形仕立ての場合は、残した主枝は20cm~30cmほど残して切り戻します。
一文字仕立ての場合は、冬には残した2枝を一文字になるように誘引します。誘引は、支柱を立てるかプランターと紐で結んで、引っ張って誘引してもよいでしょう。
芽かき・枝の間引き
冬に剪定した枝から新梢が伸びてきます。新梢に果実がつくので栄養が分散しないように、長くなる前に切り取ります。時期は各枝に葉が3~4枚付いたころに行います。
開心自然型仕立ての場合は、勢いのある新梢を残して後は根元から取り除きます。主枝1本につき新梢2~3本程度にします。
一文字仕立ての場合は、片側の主枝1本につき3~4本程度がよいでしょう。株が大きくなってきたら40㎝間隔で新梢を芽かきするとよいでしょう。
地際のほうから出てくるひこばえや、新梢も同時に間引きましょう。
摘芯(摘心)
摘芯(摘心)とは、茎や枝の最先端の芽を摘む作業で、ピンチとも呼ばれます。摘芯をすることでわき芽を増やしたり、生長を止めたりすることができます。
いちじくの摘芯は、主枝から伸びる新梢の先端を摘芯します。枝が伸びればその分果実はつきますが、養分が葉や果実に分散してしまい、果実が小さなものしか取れなくなったり日照不足などにもなります。
品種や生育の状況によって摘芯の時期はかわるのですが、おおよその目安は収穫の1ヵ月ほど前が適期です。秋の収穫であれば7月後半から8月初旬に摘芯しましょう。同時に、ひこばえや、実がついていない新梢が枝についている場合は取り除きます。
摘芯をすると、わき芽が伸びてきます。見つけしだいこのわき芽も取り除きましょう。
剪定
収穫後、休眠期に剪定をしましょう。12月~2月が適期です。
夏果は、前年に伸びた茶色の枝に果実がなります。長い枝は、先端を切り詰める弱剪定をします。混みあった枝は根元から切り詰める強剪定をします。
秋果は、春から夏にかけて発生する緑色の枝(新梢)に果実がなります。そのため前年についた主枝は、強剪定をします。新芽1~2個ほど残して短く剪定します。
収穫時期
果実の全体が色づきだしたら収穫のタイミングです。順次収穫していきましょう。熟した果実は、果実を握って上に持ち上げるとポロリと取れます。
イチジクはすぐに熟してしまうので、収穫時期を見逃さないように小まめにチェックしましょう。
まとめ
イチジクは、剪定、芽かき、摘芯などの作業があって大変なように見えますが、プランターでコンパクトに育てれば手間のかからない果樹です。木の寿命は10年ほどと長くはありませんが、挿し木で簡単に増やせるのも魅力です。
そのまま食べるだけでなく、ジャムやオードブル、パスタなどにも使えるおしゃれな果実です。ぜひ自分のお気に入りの品種をみつけて育ててみてください。
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