畑での栽培のイメージが強いとうもろこし栽培ですが、プランターでも栽培することができます。ここでは、とうもろこしのプランター栽培について、種まき・苗の植え付けから収穫までの育て方の他、育てやすい品種や病害虫対策までわかりやすく説明します。
とうもろこしのプランター栽培の手順
ここからはプランターでとうもろこしを育てる手順について説明していきます。トウモロコシは露地栽培でも直まきして育てることもできるので、タネから育てるのもそれほど難しくはありませんが、プランター栽培では多くの株を育てないので、市販の苗からも始められます。
セルトレイや、ポリポットに種をまいて育苗してから、植え付けする方法もあります。ポリポットでの育苗の方法は、種まきのところで説明しています。
用意するもの
プランター栽培の手順
- 手順1プランターの準備
プランターに、底が隠れる程度に鉢底石を入れます。
その上から、野菜専用培養土をプランターの上部2〜3cm程度のところまで敷き詰めます。側面を軽くたたいて土を落ち着かせます。 - 手順2苗の植え付け
市販の苗は2株入っている場合は、なるべくポット苗の根鉢を落とさないようにして、2つにわけます。株間を25cm~30cm程度開けて植え付けします。
プランターに穴を空けて、そのまま植えつけします。周りの土を寄せて植え付けして、株元を軽く押さえて水をたっぷり与えましょう
- 手順3支柱立て
草丈が高くなるため、プランター栽培では倒れやすくなるので支柱をたてます。株から3cmほど離れたところに、1mほどの支柱を立て、茎と支柱を紐で結んで誘引します。
- 手順4追肥・土寄せ
追肥は、本葉5枚のころと、本葉7枚~8枚の頃2回行います。
化成肥料を1株あたり5g~10g程度を、株の周りにまいて土と軽くまぜます。
株が倒れないように、土寄せをしておきます。 - 手順5人工授粉
株数が少ない場合は、自然受粉は難しいので、人工授粉を行います。
人工受粉は、一番上の雌花だけ行います。雄花を切り取って、雌花の毛に花粉を振りかけてあげるようにして行います。 - 手順6摘果
トウモロコシは、複数の雌穂を付けて生長していきますが、栄養分を集中させるために1つの雌穂だけを残して他のものは摘果します。
1番上の雌穂の絹糸(ヒゲ、毛)が出始めた頃に実施します。一番大きな雌穂を残し、下のほうの小さな雌穂は取り除きます。
- 手順7収穫
品種によりますが、開花後20日前後で収穫適期を迎えます。絹糸(ヒゲ、毛)が茶色に地縮れてきた頃が収穫のタイミングです。
手で下に倒すようにしてもぎ取ります。
とうもろこしのプランター栽培 育て方
容器・用土
容器は、深さ25cm以上の大型プランターがよいでしょう。横幅55cm~60cm程度の大型プランタ―なら2株植えることができます。株間は20~25cm程度開けるとよいでしょう。
用土は市販の元肥入りの野菜の培養土がよいでしょう。自分で配合する場合は、赤玉土6腐葉土3、バーミキュライト1の割合に苦土石灰を1ℓあたり1g、緩効性肥料を10g程度配合します。
栽培環境・水やり
とうもろこしは高温、多日照の環境を好みます。光飽和点も高いので、日照に当たれば当たるほど生長が良くなります。直射日光のあたる日なたで管理しましょう。
水やりは、タネまきから芽がでるまでは乾燥に注意し、育苗時期は土の表面が乾いたら水やりをします。雄穂の出始めからは、多くの水が必要になります。水切れに注意し1日1回たっぷりと水やりをしましょう。夏は朝、晩2回水やりをしましょう。
種まき
とうもろこしは直まきか、ポリポットなどで育苗をして植えつけする方法もあります。直まきの場合は、株間25㎝の場所に、1ヵ所に3粒、種のとがった部分を下にして差し込み、土をかぶせます。
タネをまく時期より早めに種をまきたい、良い苗を選んで植えつけたい場合などは、ポリポットなどで育苗します。ポリポットでの育苗の方法は下記のとおりです。
- 3号のポリポットに鉢底ネットを入れて、野菜の培養土を入れます。
- タネのとがった方を下にして、土に差し込みます。3粒づつ種をまいて土をかぶせます。
- 発芽するまで土を乾かさないよう、水やりをします。
- 草丈が10cm程度になったら、生育のよい苗を1本残して間引きます。
- 本葉3〜4枚程度になったら、根鉢を崩さないようにして植えつけます。
肥料
とうもろこしのプランター栽培では、肥料は元肥と追肥を行います。元肥とは植え付け時に施す肥料で、プランターなどでは、元肥入りの野菜の培養土などが便利です。肥料がはいっていない土や、自分で配合した場合は、緩効性肥料を土に混ぜて使います。
追肥は、2回~3回、葉や茎の様子を見ながら追肥します。
プランターにタネを直播した場合は、本葉5枚のころと、本葉7枚~8枚の頃、化成肥料を1株あたり5g~10g程度を、株の周りにまいて土と軽くまぜます。苗を植えつけた場合は、雄花がついたら追肥のタイミングです。化成肥料を1株あたり5g~10g程度を、株の周りにまいて土と軽くまぜます。
肥料は、有機肥料がおすすめですがベランダなどで臭いが気になるという人には、有機入りの化成肥料などをつかうとよいでしょう。肥料メーカーから出されている野菜や果菜用の肥料もつかうことができます。ハイポネックスジャパンの「Plantia 花と野菜と果実の肥料」や住友化学園芸の「マイガーデンべフル」などが使えます。とうもろこし専用の肥料もあります。
葉色が薄いなどの肥料不足の症状がでたら、速効性のある液体肥料もおすすめです。
とうもろこしのおすすめの肥料については、詳しい記事がありますのでこちらも参考にしてください。
とうもろこしは野菜の中でも肥料食いの代表格で、肥料が不足すると実入りがわるくなったり、トウモロコシの糖度が上がらなかったりします。甘くておいしいトウモロコシを作るためには肥料はとても大切です。しかし、肥料はあげすぎても肥料焼けして生育がわるくなります。
肥料不足の状況については、こちらで詳しく説明していますので、生育が悪いときには確認してみてください。
人工授粉
トウモロコシは、通常は風によって受粉します。株の頭に雄花が出た少し後に、雌花の絹糸のような毛がでます。この毛で雄花から飛んできた花粉を受け止めて受粉します。
プランターなど、栽培株数が少ない場合は受粉不良で実入りが悪くなることもあるので、人工受粉をしましょう。雄花を切り取って、雌花の絹毛に花粉を振りかけてあげるようにして行います。
授粉後は、鳥や虫に食べられないように、水切りネットをかけておくとよいでしょう。
摘果
トウモロコシは、複数の雌穂を付けて生長していきますが、栄養分を集中させるために1つの雌穂だけを残して他のものは摘除(摘果)してあげましょう。雌穂の間引きのタイミングは、1番上の雌穂の絹糸(ヒゲ、毛)が出始めた頃に実施します。
大きな雌穂だけを残して、下のほうの小さな雌穂は取り除きます。基本的には1番上にある雌穂が1番状態が良いものになりますので、それ以外は取り除くイメージで大丈夫です。このとき、株元の脇芽はそのままにしましょう。株元の脇芽は、光合成をしてくれる重要なエネルギー源となります。
摘除した雌穂は、小さいものはヤングコーンとして食しても良いでしょう。ただし、以下の場合は控えてください。トウモロコシとヤングコーンは全く別の作物なのです。
- トウモロコシ適用の農薬などを散布した場合
- 食用として販売する場合
収穫
スイートコーンは収穫期を逃すと、実が固くなり味が落ちてしまいます。収穫適期を知るには雌穂の絹糸(ヒゲ)が出た日をメモしておきましょう。おおよそ20日後が収穫適期です。絹糸(ヒゲ、毛)が茶色に地縮れてきた頃が収穫のタイミングです。そのころに先端まで実が入っているのを確認して収穫しましょう。トウモロコシは冷え込んだ夜に糖度があがるため、早朝に収穫するのがおすすめです。
収穫したものは時間が経つにつれて甘みがなくなってきますので、早いうちに召し上がることをおすすめします。もし、すぐに食べることができない場合は茹でておきましょう。
病害虫
病気
トウモロコシは、病気には比較的強いですがモザイク病、倒伏細菌病、すす紋病などの病気にかかることがあります。モザイク病はアブラムシがウイルスを媒介するので害虫対策をしましょう。カビ菌が病気の原因となりますので、梅雨時期などは軒下などで水が当たらない場所で育てるなど注意が必要です。水はけのよい環境で育てましょう。
害虫
トウモロコシの葉が食害を受けたり、色が変色している場合は害虫の可能性もあります。トウモロコシには、アワノメイガの幼虫、アブラムシ、イヨミトウ、アワヨウトウ、カメムシなどの害虫が発生しやすくなります。
これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。アワノメイガが特に注意が必要なので専用の殺虫剤もあります。
とうもろこしの栽培の基本情報
とうもろこしの基礎知識
とうもろこしは、イネ科トウモロコシ属の1年草で、高温、多日照の環境を好みます。畑などの露地栽培では、栽培は比較的簡単で、採れたてが一番甘いことから家庭菜園でも人気があります。
大きく育ち、少数の株数で育てると授粉しにくいことなどから、プランター栽培は露地より少し栽培の難易度は上がりますが、日当たりの良い場所で、肥料をしっかり与えて育てれば、収穫が楽しめます。
熱帯の植物ですので、暑さには比較的強いですが寒さに弱いので、暖かくなってから種まき、定植を行います。播種(種まき)から収穫までは、90日程度。とうもろこしは1株1果が基本です。一番先端についた1本を収穫し、それより下についたものはヤングコーンとして楽しみます。
またとうもろこしは、雌雄異花なので栽培は同じ品種を2本以上育てる必要があります。
作物名 | トウモロコシ |
---|---|
科目 | イネ科トウモロコシ属 |
原産地 | メキシコからアメリカ北部 |
発芽適温(地温) | 25〜30℃ |
生育適温 | 20〜30℃ |
土壌酸度(pH) | 5.5〜7.0 |
育てやすさ | 普通 |
栽培時期
とうもろこしの栽培時期は、関東の直まきの場合は、5月頃に播種をして、7月下旬〜8月頃に収穫するイメージです。セルトレイやポットを使用して苗を育苗する場合は、温度調整をすることができるので、1ヶ月程度早めに播種・育苗をして、収穫時期も前倒しすることができます。
地域 | 播種(タネまき)時期 | 収穫時期 |
---|---|---|
寒冷地 | 5月中旬~6月中旬 | 8月中旬~9月 |
中間地 | 4月中旬~5月 | 7月中旬~8月 |
暖地 | 3月中旬~4月 | 6月下旬~8月上旬 |
品種
一般的に私たちが食べているのは、「スイートコーン」と呼ばれる品種。その他ポップコーンに使われる爆裂種や、家畜の飼料などに使われる品種やコーンスターチに使われる品種などがあります。
ここでは、スイートコーンの品種の中でも育てやすく、草丈が低めでプランターでも育てやすい品種をいくつか紹介します。
品種名 | 概要 | 特徴 |
---|---|---|
ゴールドラッシュ86 | 中早生のイエロー品種。 草丈が175cm前後と低めでコンパクト。 暑さに強く育てやすい。甘味が強く粒皮がやわらか。 | |
わくわくコーン82 | 極早生のイエロー品種 草丈130cm~140cmと低いので倒れにくい コクのある濃い甘さ。中早生の88もあります。 | |
ミルフィーユ | 中早生バイカラー種 草丈は170㎝前後と低めで、倒伏に強い。 甘さが強く、食感もよい。先端の稔実が良い品種 |
まとめ
とうもろこしは、子供から大人まで人気の野菜。畑では初心者でも育てやすい野菜ですが、プランターでは支柱を立てたり人工授粉させたりする手間がかかるので、少し手間はかかりますが、採れたての甘さは格別です。家庭菜園で育てれば、ヤングコーンも食べることができるのでぜひ挑戦してみてください。
畑で育てたい人は、こちらの記事で詳しく説明しています。
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